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博 士 ( 工 学 ) 伊 藤 正 彦

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 伊 藤 正 彦

学 位 論 文 題 名

燃 料 被 覆 管 用 SUS316 ス テ ン レ ス 鋼 の 耐 ス エ リ ン グ 性 向 上 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

あ る 。

  そ こ で 、 本 研 究 は 、 高 速 増 殖 炉 の 燃 料 被 覆 管 材 料 と し て 使 用 が 予 定 さ れ て い る SUS316系 ス テ ン レ ス 鋼 の 耐 ス エ リ ン グ 性 の 改 善 の た め 、 高 速 増 殖 実 験 炉 を 用 い 中 性 子 照 射 に よ り 、 ス エ リ ン グ 挙 動 、 析 出 物 形 成 や 組 成 変 化 な ど の 組 織 安 定 性 に 及 ぼ す 微 量 添 加 元 素 の 効 果 を 系 統 的 に 調 ベ 、 耐 ス エ リ ン グ 特 性 お よ び 組 織 安 定 性 に 優 れ た 改 良 型SUS316系 ス テ ン レ ス 鋼 開 発 の た め の 合 金 元 素 の 効 果 を 明 ら か に し た 。

  本 論 文 は 、5章 か ら 構 成 さ れ て い る 。

  第1章 は 序 諭 で あ る 。 本 章 で は 、 中 性 子 照 射 損 傷 過 程 お よ び 材 料 特 性 に 及 ぼ す 照 射 効 果 を 概 説 す る と と も に 、 高 速 増 殖 炉 の 燃 料 の 寿 命 を 支 配 す る 合 金 成 分 、 冷 間 加 工 な ど の 材 料 諸 因 子 の 効 果 、 さ ら に 被 覆 管 材 料 の 寿 命 延 長 の た め の 材 料 開 発 の 必 要 性 お よ び 研 究 目 的 に つ い て 記 述 し た 。 特 に 、 高 速 増 殖 炉 用 燃 料 被 覆 管 の 使 用 条 件 及 び 燃 料 被 覆 管 材 料 に 課 せ ら れ た 材 料 諸 特 性 お よ び 被 覆 管 材 料 と レ て SUS316ス テ ン レ ス 鋼 が 選 択 さ れ た 経 緯 等 に 言 及 す る と と も に 、 炉 使 用 条 件 を 満 足 す べ く ス テ ン レ ス 鋼 の 改 良 を 目 的 と し た 材 料 開 発 手 法 に つ い て 述 ベ 、 ま た 、 被 覆 管 の 寿 命 を 決 定 す る 変 形 の 主 要 因 で あ る ス エ リ ン グ の 原 因 と な る ボ イ ド 形 成 過 程 と ス エ リ ン グ 挙 動 に 関 す る 従 来 の 研 究 状 況 に つ い て 検 討 す る と 同 時 に 、 高 速 増 殖 炉 を 用 い 燃 料 被 覆 管 材 料 の 中 性 子 照 射 に よ る 特 性 評 価 の 重 要 性 を 指 摘 し た 。   第2章 で は 、 燃 料 被 覆 管 材 料 が 高 温 度 と 高 線 量 の 中 性 子 照 射 環 境 に 同 時 に 曝 さ れ る こ と を 考 慮 し 、 材 料 組 織 変 化 に 及 ぼ す 影 響 を 、 照 射 効 果 と 熱 時 効 効 果 を 分 離 し 明 ら か に す る 目 的 か ら 、 中 性 子 照 射 材 と 同 じ く 各 種 微 量 元 素 添 加 に よ り 改 良 し たSUS316系 ス テ ン レ ス 鋼 の 溶 体 化 処 理 材 並 び に 20% の 冷 間 加 工 を 施 し た 材 料 に っ い て 、 高 速 増 殖 炉 使 用 温 度 と 同 一 条 件 で 時 効 処 理 を 行 い そ の 内 部 組 織 を 調 ベ 、 析 出 挙 動 に 及 ぼ す 微 量 添 加 元 素 の 組 織 安 定 性 に 及 ぼ す 影 響 を 解 明 し た 。

  時 効 処 理 に よ っ てPお よ びB添 加 材 で は 、M23Ce炭 化 物 、 ラ ー ベ ス 相 、 シ グ マ 相 が 析 出 し 、 さ ら にP、Bに 加 えTi、Nbを 複 合 添 加 し た 材 料 で は 、 あ ら た に 微 細 なMC型 、 及 びM6C炭 化 物 が 析 出 す る こ と を 確 認 し 、 各 析 出 物 の 基 本 組 成 を 同 定 し た 。 さ ら に 、 Tiお よ びNb添 加 材 で は 無 添 加 材 に 比 較 し て 、 析 出 物 の 形 成 温 度 は よ り 高 温 度 側 に 移 行 し 、 ま た 加 工 組 織 の 回 復 6

3 S U

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(2)

が抑制されることを明かにした。

   第3 章 では 、中性 子照 射前 に、予 め材 料の ポイ ドスエ リン グ特 性を検討 する目 的か ら、 イオ ン加速 器に より、二ッケル(Ni ゛)および炭素イオン

( C ゛)照射実験を行いスエリングの照射量および温度依存並びに組織変化 を 明 ら か に し た 。 イ オ ン 照射 は 高 速 増 殖 炉 の 最 大 照 射 条件 以 上 の 150d pa ま で 照 射 し た 。 そ の 結 果 、 150dpa の 高 照 射 量 で も P 、 B 、 Ti 及 び Nb の 複 合 添 加 に よ り 改 良 し た SUS316 系 ス テ ン レ ス 鋼 の 耐 ス エ リ ン グ 特 性 が 優 れ て い る こ と を 明 ら か に し 、 添 加 量 と し て 、 P は 0.04w t % 、 Ti 及 び Nb は 各 々 0.2 及 び 0.lwt % が 最 適 で 、 さ ら に こ れ ら 元素を 複合 添加 する ことに よル スエリング抑制効果が顕著になることを示 し、そ の原 因と して 添加元 素に よる析出物の微細化と加工転位の回復抑制 効果に依ることを明らかにした。

   第 4 章 は 、 異 な る 添 加 元 素 を 含 む SUS316 系 ス テ ン レ ス 鋼 に 溶 体 化 処 理 、 10 % 名 よ び 20 % 冷 闇 加 工 を 施 し 、 高 速 増 殖 炉 で 650 ℃ か ら 92 O ℃ の 温 度 範 囲 で 最 大 100dpa ( 1 . 9xXl027n / m2 ) ま で 中 性 子照射して、転位分布、スエリングおよび析出物等の組織変化に対する、照 射温度 、照 射量 依存 名よび 添加 元素の効果を明らかにした。比較的低照射 でオー ステ ナイ 卜素 地中に フェ ライ ト相 が MeC 炭 化物を 伴い 晶出 すること を見出 し、 これ が炭 化物の 析出 に伴う Ni 濃度低下に起因することを明らか に し 、 フ ェ ラ イ 卜 相 組 成 が 92 % Fe ― 6 % Cr − 2 % Ni に 近 い 組 成 と な っ て い る こ と 同 定 し た 。 ま た、 照 射 に よ っ Ni 、 Si な ど 母 相よ り 原 子 サ イ ズ の小 さ い 原 子 の 濃 度 が 結 晶 粒界 で 増 加 し 、 同 時 に ラ ーベ ス相 、 Y 相、

G 相、 0 相 、 MC 炭 化 物 お よび 燐化 物の 析出 が同定 され 、こ れら 析出物 は、

い ず れ も Ni . Si 濃 度 が 高 く照 射 に よ り 促 進 ま た は 誘 起 され た こ と を 確 認した 。ま た、 燐化 物は照 射初 期に析出するが、照射後期では再固溶また はラ― ベス 相の 析出 核とし て作 用することをはじめて明らかにした。さら に 、溶 体 化 処 理 材 よ り も10 − 20 %の 冷問 加工を 施し たキ オ料 でのス エリ ン グが 低 く 、 そ の 原 因 とし て、 高密 度の 転位導 入、 P 、 B 添加 による 微細 析出物 の形 成と それ による 転位 回復の抑制が主因であることを観察した。

ま た 、 Ti お よ び Nb 添 加 は その 効 果 を さ ら に 改 善 す る こ とを 見 出 し 、 耐 スエリ ング 鋼と して これら 元素 添加が中性子照射環境下でも有効であるこ とを明らかにした。

第 5 章は 本論 文の結 諭で ある 。本章 では 前牽 まで 述べた 研究 成果 を総括す るとと もに 、高 速増 殖炉用 燃料 被覆管の耐スエリング性の観点から、 P 、B Ti お よ び Nb を 微 量 成 分 の 調整 に よ り 複 合 添 加 す る こ と によ り 改 良 し た SUS316 ス テ ン レ ス 鋼 が 非 常 に 優 れ て お り 、 そ の 優 れ た 特 性 は 照 射 下 での相 安定 性の 保持 と安定 な微 細析出物の析出によってもたらされるもの と結諭している。

―249−・

(3)

学位論文審査の要旨

主 査 ′ 教 授   高 橋 平 七 郎 副 査   教 授   鈴 木 朝 夫 副 査   教 授   大 橋 弘 士

学 位 論 文 題 名

燃 料 被 覆 管 用 SUS316 ス テ ン レス 鋼 の 耐スエリ ング性向上に関する研究

そ の 成 果 は っ ぎ の よ う に 要 約 さ れ る 。

  先 ず 、 各 種 元 素 を 徹 量 添 加 し たSUS316系 ス テ ン レ ス 鋼 の 溶 体 化 処 理 材 な ら ぴ に 加 工 度20Xの 冷 間 加 工 材 を 、 高 速 増 殖 炉 使 用 温 度 と 同 一 条 件 下 で の 時 効 処 理 に お い て 、Pお よ びB添 加 材 で は 、M23C6炭 化 物 、 ラ ー ベ ス 相 、 シ グ マ 相 が 析 出 し 、 さ ら にP、Bに 加 えTi、Nbの 複 合 添 加 材 で は 、 新 た に 微 細 なMC及 びMeC炭 化 物 が 析 出 す る こ と を 確 認 し 、 各 析 出 物 の 基 本 組 成 を 同 定 し た 。 ま た 、Tiお よ びNb添 加 に よ り 、 各 析 出 。 物 は よ り 高 温 度 で 析 出 す る と 同 時 に 加 工 組 織 の 回 復 が 抑 制 さ れ る こ と か ら 、 微 量 の 添 加 元 素 は 内 部 組 織 の 安 定 生 お よ び 析 出 微 細 化 に 有 効 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。

  っ ぎ に 、 ポ イ ド ス エ リ ン グ 挙 動 を イ オ ン 加 速 器 に よ る ニ ッ ケ ル (Ni+) お よ ぴ 炭 素 イ オ ン (c+) の 模 擬 照 射 実 験 か ら 、P、B、Ti及 びNbの 複 合 添 加 し た 改 良SUS316ス テ ン レ ス 鋸 は 耐 ス エ リ ン グ 特 性 に 優 れ 、 適 切 添 加 浪 度 と し て 、Pは0.04wtX、Ti及 ぴNbは 各0.2及 ぴ0.1vtXであ るこ と 、ま たこ れ ら 元 素 の 複 合 添 加 に よ ル ス エ リ ン グ の 抑 制 が 一 層 効 果 的 で あ る こ と を 見 い 出 す を ど 添 加 元 素 お よ び 析 出 物 挙 動 と の 関 係 か ら ス エ リ ン グ 挙 動 に 及 ほ す 照 射 I、 温 度 お よ ぴ 組 織 変 化 の 影 響 を 解 明 し た 。   最 後 に 、 高 速 増 殖 実 験 炉 に よ り 、 改 良SUS316ス テ ン レ ス 鋼 の 溶 体 化 処 理 、10%お よ び20X冷 聞 加 工 材 に つ い て 、650℃ か ら920℃ の 温 度 範 囲 で 最 100dpa(1.9Xl027ri/m2) ま で 中 性 子 照 射 し 、 転 位 分 布 、 ス エ リ ン グ お よ び 析 出 物 等 に か か わ る 組 織 変 化 挙 動 を 調 ペ 、MoC炭 化 物 の 析 出 に 伴 う 素 地 中 のNi浪 度 低 下 に 起 因 し た フ ェ ラ イ ト 相 が オ ー ス テ ナ イ ト 素 地 中 に 形 成 さ れ る こ と を は じ め て 見 い 出 し た 。 ま た 、 照 射 に よ りNi、Si濃 度 が 結 昌 粒 界 で 増 加 し 、 さ ら に 高Ni、Si濃 度 の ラ ー ベ ス 相 、 ア 相 、G相 、a相 MC炭 化 物 お よ ぴ 燐 化 物 の 形 成 が 照 射 に よ り 促 進 ま た は 誘 起 さ る こ と を 確 認 し た 。 特 に 燐 化 物 は 照 射 初 期 に 析 出 し 、 照 射 量 の 増 大 と 共 に 不 安 定 と を ル ラ ー ペ ス 相 の 析 出 核 と し て 作 用 す る こ と を 初 め て 明 ら か に し て い る 。 さ ら に 、 ス エ リ ン グ は 溶 体 化 処 理 材 よ り 冷 間 加 工 材 で 低 く 抑 制 で き 、 加 工 に よ る 高 転 位 密 度 の 導 入 とP、B、Tiお よ びNb添 加 に よ る

‑ 250 ‑

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(4)

微析 出物の存在 が回復の抑 制に効果的であることを示し、耐スエリン グ特 性改善にこ れら微量元 素の添加と冷間加工が有効であることを明 らかにした。

  

これを要するに、著者は、高速増殖炉用燃料被覆管材として、P 、B 、Ti およ び

Nb

の成分調 整と複合添 加により改良した

SUS316

ステンレス鋼が 耐ス エリング性 並ぴに照射 下組織安定性に優れた特性を有することを 見い だしたもの であり材料 工学をらびに炉工学に貢献するところ大で ある。

  

よって、,著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格 ある者と認める。

―‑ 251

参照

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