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博士(工学)吉岡隆幸 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)吉岡隆幸 学位論文題名

Ti − Al 系 金 属 間 化 合物 の高 温硫 化腐 食と その合金表面改質への応用に関する研究

学位論文内容の要旨

  

近 年、軽量 かつ高温 強度に優 れた性質を 有する

Ti

Al

系金属間 化合物が 次世代高温 構 造材料と して注目 され、その材料科学・工学的研究が世界的に活発に行われた結果、

機 械的性質 に優れた 素材が開 発され、一 部は実用 化の段階 に達して いる。し かし、実 用 化を目的 とした場 合、高温 での耐環境 性につい ては未だ 充分であ るとは言 えない。

特 に、酸化 反応の機 構解明に 関する研究 に比較し て、苛酷 な腐食を 招来する 硫黄によ る 高温腐食 について の報告例 は極めて少 ない。

  

本 論文は、

Ti

Al

系金属 間化合物 の高温硫化 腐食の動 力学と腐 食機構を 解明すると と も に 、

Ti

の選 択 硫 化反 応に よる

TiAl3

層の 形成をTiAl合金 の耐酸化 性を改善 するた め の表面改 質法とし て応用することを新しく提案し、それを実験的に実証したもので、

6

章より構 成されて いる。

  

1

章は 緒言であ り、まず 、Ti―

Al

系金属 間化合物 が優れた 機械的性 質を発現 する 機構を概 説し、そ れが次世 代高温材料 として期 待される 社会的・工学的背景を述べて いる。次 いで、高 温腐食に 関する従来 の研究を 総括する ことによって、本研究の目的 と重要性 を指摘し た。さら に、耐酸化 性の改善 法として 、合金元素の添加、コーティ ング・表面処理、組織・表面形態の制御、などの従来法の利点と欠点を指摘するととも に 、 新 し い 表 面 処 理 法 を 開 発 す る 必 要 性 に つ い て 言 及 し て い る 。

  

2

章 では,Ti3Al,

TiAl

TiAl3

,そし て純Tiについ て,種々 の硫黄分 圧下で硫 化 実験を行 い、硫化 腐食に対 する合金組 成と硫黄 分圧の影 響について検討した。これよ り、

Al

濃度の増 大に伴い 、

Al2S3

の生成に よって腐 食量は減 少するこ とを明ら かにし た。また、TiAl合金を硫化すると複層構造のスケ―ル(外層はAl2S3とTi硫化物の混合物 で、 内層はTiS主 体の

Ti

硫化 物)が形成 し、合金 表面には

TiAl3

TiAl2

を含む )層が 形成されることを見いだしている。

  

3

章で は、TiAl合金 表面に見 られる

Al

の濃 化現象に ついて、 熱力学的 および動 力 学的観点 からその 機構につ いて詳細な 検討を行 った。そ の結果、硫化反応は反応初期 の外層スケ―ルの形成から内外複層スケ―ルの成長に移行する、二段階の放物線則に従い、Ti

(2)

の選 択硫 化に よる 内層 スケ ―ル の形 成に 対応 して 、合 金 表面 にはAl濃 化層 が形 成されるこ とを明らかにした。腐食反応の律速過程は、反応初期は 外層硫化物スケ―ル中のカチオンの拡 散 で あ る が 、 後 期 で は 合 金 表 面 に 形 成 さ れ たAl濃 化 層 中 の 相 互 拡 散 で あ る 、 こ と を 示 した。

  第4章 で は 、TiAlを 硫 化 す る と 合 金 表 面 にTiAl3(TiAl2を 含 む ) 層 が 形 成 さ れ る 現 象 を 応 用 し て 、TiAlの 耐 酸 化 性 を 向 上 さ せ る 「 硫 化 処 理 」 法 を 新 し く 提 案 し 、 実 験 的 に 検 証 し た 結 果 、 硫 化 処 理TiAl合 金 の 耐 酸 化 性 は 著 し く 向 上 し 、 そ の 防 食 能 は 長 時 間 に 亘 っ て 維 持 さ れ る こ と を 明 ら か に し た 。 さ ら に 、 、 こ の 硫 化 処 理 法 で 形 成 し たTiAl3 層 は 、 従 来 のAl拡 散 浸 透 処理 法で 見ら れる ハ゛ ―スI現象 を完 全に 抑制 でき る、 とい う特 徴 を 有 す る 。 こ の 特 徴 は 、TiAl3層 の 成 長 機 構 と 成 長 応 力 発 生 の 有 無 に 起 因 し 、 硫 化 処 理 法 で は 成 長 応 カ が 発 生 し な い た め で あ る こ と を 明 か に し た 。 硫 化 処 理TiAl合 金 の 耐 酸 化 性 は 、 純 酸 素 雰 囲 気 で は 長 時 間 維 持 さ れ る の に 対 し て 、 空 気 中 で の 腐 食 で は 比 較的早期にフ゛レ―クアウエ―現象が現れることを見いだし、高温酸化に対する窒素がスの影響 を指摘した。

  第5章 で は 、TiAl合 金 の 高 温 酸 化 に 対 す る 窒 素 の 影 響 に つ い て 詳 細 に 検 討 し た 。 そ の 結 果 、 硫 化 処 理TiAlを 空 気 中 で 長 時 間 酸 化 す る と 、Ti02がTiAl2層 を 部 分 的 に 貫 通 し 、 耐 酸 化 性 を 急 激 に 劣 化 さ せ る こ と を 明 ら か と し た 。 こ れ は 、TiはAlよ り もN との 化学 親和 カが 大き く、 酸素 ホ°テンシャルの小さい合金表面ではTiNが形成し、このTiN は 時 間 の 経 過 と と も に 防 食 能 に 劣 るTiozに 酸 化 さ れ る た め で あ り 、Nの 触 媒 的 作 用 を 含 む 酸 化 一 窒 化 反 応 機 構 を 提 案 し た 。 一 方 、Tiの 選 択 窒 化 反 応 を 利 用 し て 予 め 合 金 表 面 にTiNを 形 成 さ せ る と 、 合 金 表 面 に はAl濃 化 層 が 形 成 さ れ る 。 こ の 窒 化 処 理TiAl合 金 は 、 硫 化 処 理 と 同 様 に 、 優 れ た 耐 高 温 酸 化 性 を 有 す る こ と を 明 ら か に し た 。

第6章 は 、 本 論 文 の ま と め で あ る 。

最 後 に 、Ti―Al系 金 属 間 化 合 物 の 耐 硫 化 性 はAl濃 度 の 増 加 と と も に 向 上 し 、 さ ら にTi の 選 択 硫 化 反 応 は 合 金 表 面 にTiAl3を 形 成 し 、 こ れ は 優 れ た 耐 酸 化 能 を 有 す る こ と を 明 ら か に し た 。 硫 化 お よ び 酸 化 に 対 し て 優 れ た 防 食 能 を 有 す る 新 し い 表 面 処 理 法 と し て 、 硫 化 処 理 を 提 案 し た 。

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

Ti ― Al 系 金属 間 化 合物 の 高温 硫 化 腐食 と その合金表面改質への応用に関する研究

  近年 、軽量か つ高温 強度に優 れた高 温構造材 料としてTi‑Al系 金属間化 合物が注目され、材 料科 学的研究 が基礎 および応 用の両面 から広 く行われている。しかし、高温での耐環境性につ いて は、酸化 反応の 機構解明 に比較し て、苛 酷な腐食を招来する硫黄による高温腐食について の報告例は極めて少ない。

  著者 は、先ず 、高温 腐食に関 する従 来の研究 を総括することによって、本研究の目的と重要 性を 指摘し、 さらに 、耐酸化 性の改善 法とし ては従来法(合金元素の添加、コーティング・表 面処理、組織制御、等)では不十分であり、新しし、表面処理法を開発する必要性について言及 している。

  本論 文はTi‑Al系金属 間化合物 の高温 硫化腐食 の動力 学と腐食 機構を解 明するとともに、Ti の選 択硫化反 応によ って合金 表面にTiAl3層が 形成され ること を見いだ し、こ れをTiAl合金の 耐酸 化性を改 善する ための表 面改質法 として 応用することを新しく提案し、それを実証したも のである。

  各種TiーAl合金 の硫化腐 食に対す る合金 組成と硫 黄分圧の影響について検討した結果、Al濃 度の 増大とと もに腐 食量は低 下するこ とを示 し、これ はAl2S3と合金表 面へのAl濃化層の形成 に帰因することを明らかにした。また、TiAl合金では、複層構造のスケール(外層:AloS3とTi硫 化物の混合層、内層:TiS)が形成し、合金表面にTiAl3層が形成されることを見いだしている。

  TiAl合金 表 面に見ら れたAlの 濃化現象 につい て、熱力 学およ び動力学 的観点か ら詳細 な検 討を 行った結 果、Tiの 選択硫化 による 内層スケ ルの形成に対応して、合金表面にはAl濃化層が 形成されることを示した。腐食反応の律速過程は、反応初期は外層硫化物スケ,ル中のカチオンの拡 散 で あり 、 後期 では合金 表面に 形成きれ るAl濃化 層と母材TiAl中の相 互拡散で あるこ とを明 らかにしている。

  TiAlを硫 化 すると合 金表面 にTiAl3(TiAl2を 含む)が 形成さ れる現象 を応用 して、TiAlの 耐 酸 化性 を 向上 させる「 硫化処 理」法を 提案し た。その 結果、そ の防食 能は長時 間に亘 る高 温酸化に対しても維持され、さらに、この硫化処理法で形成したTiAl3層には′1゛−スI現象はを 完全に抑制できることを明らかにしている。

  硫化 処 理TiAl合金の 耐酸化 性は、純 酸素雰 囲気では 長時間維 持され るのに対 して、 空気中 での腐食ではフ゛レ―クアウエー現象が現れることから、高温酸化に対する窒素がスの影響を指摘した。

硫化 処理材の 空気中 での長時 間酸化実 験から 、TiはAlよ りもNとの化学 親和カ が大きく、酸素 ホ°テンシャルの低い合金表面ではTiNが形成し、このTiNは時間の経過とともにTiOaに酸化され、

Al203を主体と する保 護酸化膜 の形成 が阻止さ れるため である ことを推 定して いる。さらに、

Nによる加速腐食機構につL、ても新しい提案を行っている。

‑ 725 ‑

夫 雄

浩 明

敏 達

眞 英

田 川

尾 橋

成 石

瀬 高

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

  これを 要するに、著者はTi―Al系金属間化合物と環境との共存性につL、て、新知見を得ると ともに それを表 面処理 法として 世界に 先駆けて提案したもので、界面制御工学と材料工学に対 して寄 与すると ころ大 なるもの がある 。

よって著 者は、 北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

‑ 726

参照

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