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博士(農学)小熊哲哉 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)小熊哲哉 学位論文題名

Bacillu.s sp んaer LCUSE ―244 株の生産する サイク 口デキストリナーゼに関する研究

学位論文内容の要旨

  マル卜オリゴ糖は、グルコースがa―1,4結合レたホモオリゴマーで、澱粉のa−ア ミラーゼ分解産物とレて古くから知られている物質群であり、食品分野においては甘 味料、医薬品の分野においては、輸液の一成分として主に利用されている。また、マ ル卜オリゴ糖の―種であるサイクロデキス卜リン(CD)は、環の中央部分が疎水性を示 す環状構造であることから、種々の疎水性低分子化合物を補足することにより包接化 合物を形成することが知られており、この性質を利用して食品あるいは医薬品におけ る色、臭い等の安定化およぴ除去、疎水性低分子医薬品の可溶化および安定化への応 用開発が数多く試みられている。このように、マル卜オリゴ糖は、我々の生活に密接 に関わっている物質群である。さらに、近年、臨床診断薬の分野において、膵臓の炎 症マーカーとして測定されている血液及び尿中のa−アミラーゼ活性の基質として澱 粉の代わりにマル卜ペンタオース(Gs)、マル卜ヘプタオース(G7)等の誘導体が使用さ れるようになってきた。

  マル卜オリゴ糖のうちマル卜ース(G2)からマルトヘキサオース(G6)までおよびCD は、澱粉を原料として各種オリゴ糖生成アミラーゼの作用により生産されてきた。し かレながら、重合度が7のG7およびそれ以上の直鎖マル卜オリゴ糖を澱粉から特異的 に生成するアミラーゼは、現在までのところ全く知られておらず、特にG7はアミラー ゼ基質の原料として需要があるにもかかわらず、高純度の製造法が確立されていない 状況にあった。

  本論文は、このような現状に鑑み、有用なG7を澱粉からではなくグルコースの重合 度が7の環状オリゴ糖であるB−CDから生産する方法を企て、.BーCDから著量のG7を 生成蓄積するサイク口デキス卜リナーゼ(EC3.2.1.54)の検索を試み、本方法による G7の大 量製 造の道 を拓 いた 新規 なサ イク 口デ キス 卜リ ナー ゼを 生成 するBacillus sphaericusE―244株を土壌から分離し、次に本菌の生成するサイク口デキス卜リナー ゼの実用性を確認し、さらに本酵素の精製および酵素化学的諸性質の検討、並びに本 酵素の構造遺伝子のクローニングおよび発現に関して検討したことをまとめたもので ある。

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  まず、第一章において、本研究の大まかな研究背景について記載し、続いて第二章 に おい て、8ーCD、グルコアミラーゼおよびグルコース測定試薬を含有したプレー卜 培地を作成することにより、サイク口デキス卜リナーゼの検索をプレー卜上で行える スクリーニング系を構築し、本スクリーニングプレートを用いて四国、沖縄の土壌か ら サイ ク口デ キス トリ ナー ゼ生 産菌 の検索を行い、約5万個のコ口ニーの中から、B

‑CDからG7を 顕著 に生 成蓄 積す る一 菌株を単離し、本菌が、Bacillus sphaericusに 属 す る こ と を 確 認 し 、 Bacillus sphaericusE― 244と 命 名 し た 。   次に第三章において、本菌株によるサイク口デキストリナーゼの生産条件について 検討し、本酵素生産のための最適培地組成を構築すると共に、本菌は、グルコースも 含めたマルトオリゴ糖を炭素源として資化することから、CDを炭素源とした場合にの み サイ ク口デ キス 卜リ ナー ゼを 誘導 生産してB−CDおよびY−CDを水解してマル卜オ リゴ糖を得ていることを明らかにした。また、本菌の生産するサイク口デキス卜リナ ーゼは、既知の酵素と同様に菌体外よりは、むしろ菌体内画分に圧倒的に多く存在し ていることを確認した。.

  続いて第四章において、本菌株の菌体より調製したサイク口デキス卜リナーゼの粗 酵 素液 を用いて、基質2kg仕込み100L反応の規模で卩―CDからのGrの試験製造を実際 に 行 い 、 純 度98%以 上 のG7が 収 率 約35'Xで 生 産可 能であ るこ とを 明ら かに した 。   また 第五章 にお いて 、本 酵素 を菌 体か らTrionXー100によ り抽 出した後、DEAEセ ファロースカラムク口マ卜グラフィー、疎水モードHPLC、およびゲル濾過モードHPLC による一連の手段により、SDS PAGEで単一なバンドを示す段階にまで精製し、本酵素 が 約72kダルトンのサブユニットから構成されるホモダイマーであることを明らかに した。次に精製酵素を用いて本酵素の酵素化学的諸性質にっいて詳細に検討し、本酵 素 が既 知のサイク口デキストリナーゼとは異なり、ロ‑CDに対して最も高い親和性を 持 つ新 規なサイクロデキストリナーゼであることを明らかにし、次いで、8―CDに対 し て最 も高い触媒効率を持つことを示すことにより、本酵素がBーCDから著量のG7を 生 成蓄 積する 理由 を明 らか にし た、 また、本酵素の分子間糖転移反応について検討 し 、本 酵素と比較的性質が類似であると思われたCDグルカノトランスフェラーゼ(EC 2.4.1. 19;CGTase)との性質の差を確認した。

  さら に、第 六章 にお いて 、本 酵素 の分岐CDに対する作用特性にっいて詳細に検討 し、分岐CDからの主要生成物の構造決定を種々のエキソ型糖質分解酵素を利用して行 う こ と に よ り 、本 酵素 が分 岐CDであ る、 グル コシ ル‑aーCD、 マル トシ ル‑a−CDを 水解して各々、6°ー0―Q−D−グルコシルーG6、6°‑O‑Q−D―マル卜シル−G6を主に生 成し、同様にグルコシルー口ーCD、マルトシル‑B−CDカゝら各々、6 ‑0‑a−D―グル コシル‑G7、6 −Qーa−DーマルトシルーG7を主に生成することを明らかにした。すな わち、本酵素が分岐CDに対しては、分岐の位置と最も離れたところに位置するCD環の a一1,4結合を主に水解していることを明らかにした。また、本酵素とB−アミラーゼ を 共役 させて、グルコシルーロ‑CDから6 ‑0‑aーD―グルコシル‑ Gsを生産し、本物

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質がヒトa→アミラーゼによルグルコ―スと6 −0−a―D一グルコシル―G4に水解され る 性質 を利 用し て、a−グルコシダーゼ、グルコアミラーゼおよびB―グルコシダー ゼ 等の 共役 酵素 を必 要とし ない ユ三 一ク なa一ア ミラーゼ活性測定法を開発した。

  最後 に、 第七 章に おいて、本酵素の構造遺伝子をプ口一プ法によルク口ーニング し、また、大腸菌を用いて形質転換を行い、形質転換体において最適pH、比活性、B

―CDに対する親和性が親株のものと同じサイクロデキス卜リナーゼを親株の30倍量発 現させることに成功した。さらに、本酵素の構造遺伝子の全塩基配列の決定を行い、

本酵素を構成するサブユニツ卜が、1776塩基のオープンリーディングフレームにコー ドされた591残基のアミノ酸からなることを明らかにし、かつ、本酵素のアミノ酸一 次配列を既知のアミラーゼ関連酵素のものと比較レ,、本酵素の配列がCGTaseやa一ア ミラ―ゼとは僅かな相同性しかないこと、および、意外にも基質特異性が大きく異な る ネ オ プ ル ラ ナ ー ゼ と 約50%の 相 同 性 が あ る こ と を 明 ら か に し た 。   以上に述べたように、土壌より分離同定されたBacillus sphaericusEー244株の生 産するサイク口デキス卜リナーゼは、 a一グルカンの中でロ‑CDに最Iも良く作用する という点において既知のサイク口デキストリナーゼとは性質が異なった新規な酵素で あり、従来確立されていなかったG7の大量製造を可能にした有用な酵素である。従っ て 、 本 研 究 は ャ 臨 床 診 断 の 分 野 に お い て、 大 き く 社 会 に 貢献 する もの であ る。

(4)

学 位 論 文 審 査の 要旨 主 査    教 授    千 葉 誠 哉 副 査    教 授    匂 坂 勝 之助 副 査    教 授    本 間    守

学 位 論 文 題 名

Bacillu.s sp んaer むCt.LSE −244 株の生産する サ イ ク 口 デ キ ス ト リ ナ ー ゼ に 関 する 研究

  本 論 文 は 、 和 文121頁 、 図37、 表16、10章 か ら な り、 ほ か に参 考 論文9篇 が 付 され て い る。

  マル ト オリ ゴ 糖 は、 グ ルコ ー ス のa−1,4結合から なるホモ オリゴマ ーで、澱 粉 のア ミ ラ ーゼ 分 解 産物 と して 古 く から 甘 味料 や 食 品添 加 物と し て 広く利 用さ れ て き た 。 近 年 は 重 合 度2の マ ル 卜 ー ス(G2) は 輸 液 と して 、 ま た重 合 度5や7 の マル 卜 ベ ンタオー ス(Gs)およ びマル卜 ヘプタオー ス(G7)の誘 導体は、 急性膵 炎 や 耳 下 腺 炎 等 診 断 の た めの 血 中aーア ミ ラ ーゼ 測 定用 基 質 とし て 利用 さ れ て い る。Gsは、 澱 粉 から 特 異的 にGsを 生 成 するGs生 成 ア ミラ ー ゼに よ り製 造され て いる が 、G7に っ いて は 、G7を 特異 的 に 生成 す るア ミ ラ ーゼ が 現在 ま でに分離 さ れて お ら ず、 高 純 度の 製 造法 が 確 立し て いな い 。

. 本研 究 は 、G7を 澱粉 か ら直 接 で はな く 、サ イ ク ロデ キ ス トリ ン 合成 酵素に よ り 生 産 さ れ た グ ル コ ー ス 重合 度7の 環状aー1,4結 合 オリ ゴ 糖 、す な わち8− サ イ クロ デ キ スト リ ン (8一CD)か ら効 率 よ く生 産 する 方 法 の確 立 を意 図 してなさ れ た も の で あ り 、 研 究 の 結 果 は 以 下 の よ う に 要 約 さ れ る 。   1. サ イ ク 口 デ キ ス 卜 リ ナー ゼ (CDase)の 検 索が プ レー ト 上 で可 能 なス ク リ 一 二 ン グ 系 を 考 案 し 、8ーCDか らG7を 顕 著 に 生 成 、 蓄 積 す る 一 菌 株Bacillus sphaelicusE―244を分 宙Iし た。

  2‐ 本 菌 に よ るCDase生 産 条 件 を 検 討 し た 結 果 、 本 菌はCDを炭 素 源と し た 場 合 に の みCDaseを 誘 導 産 生 し 、 主 に8―CD環 を 加 水 分 解に よ っ て開 裂 させG7を 生成 す るこ と を 明ら か にし ` そ の製 造 法を 確 立 した 。

  3. 本 酵 素 を 菌 体 か ら 抽 出後 、DEAEー セフ ァ ロー ス カ ラム ク 口 マ卜 グ ラフ ィ ー、 疎 水お よ び グル 漉 過モ ー ド 高速 液 体クロ マトグラ フィー等 によりSDS−PAGE で 単 一 な 標 品 に ま で 精 製 し、 本 酵 素が 約72kDaの サブ ユ ニ ット か ら構 成 さ れる

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ダイマーであることを認めた。本酵素は、既知のCDaseとは異なり8―CDに最 も高い親和性と触媒効率を持つ新しいタイプのCDaseであることを明らかにし た。

  4.本酵素の分岐CDに対する作用様式について検討し、分岐CDからの生成物 の構造 解析 を行った。本酵素が分岐CDであるグルコシル‑BーCDおよびマルト シルーロ―CDからそれぞれ64ー0 ‑a一グルコシル‑G7および6 −0‑aーマルト シル―G7を生成し、分岐の位置と最も離れた位置のCD環a−1,4結合を開裂させ ることを確認した。

  5.本 酵素 とローアミラーゼを共役させてグルコシル‑B−CDから6゛ー0ーa

−グル コシ ル‑Gsを調製した。ヒ卜a−アミラーゼがこの分岐オリゴ糖からグ ルコースを特異的に遊離させることを明らかにし、臨床用試薬に現在用いられ ているゼーグルコシダーゼ、グルコアミラーゼあるいは8ーグルコシダーゼ等 の共役 酵素 を必要とするa−アミラーゼ測定法とは異なった新しいaーアミラ ーゼ測定法を開発した。

  6.本酵素の構造遺伝子をプローブ法によルクローニングし、同時に大腸菌 を用いて形質転換を行い、最適pH、比活性および8−CDに対する親和性が親株 と同じCDase̲を親株の30倍発現させることに成功レた。本酵素の構造遺伝子の 全塩基配列の決定を行い、そのサブユニットが1776塩基のオープンリーディン グフレームにコードされた591残基のアミノ酸からなることを明らかにした。

本酵素のアミノ酸配列を既知のアミラーゼ関連酵素と比較した結果、その配列 はa‑ア ミラ ーゼやCD合成酵素とは相同性が少く、基質特異性が全く異なるネ オプルラナーゼと約50%の相同性のあることを認めた。

  以上 のよ うに 本研究は、8−CDからのG7の製造法の確立、CDaseの精製と一 次 構造 の解 析、 分岐8‐CDに対する作用様式の解析と分岐8−CDからの生成物 の応用に基づいた新しいa一アミラーゼ測定法の開発を行った。それらの成果 は、学術上のみならず産業的応用面においても寄与するところ大きいと評価さ れる。

.よって審査員一同は、別に行った学力確認試験の結果と合わせて、本論文の 提出者小熊哲哉は博士(農学)の学位を受けるに十分な資格あるものと認定し た。

参照

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