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博士(農学)亀山 哲 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)亀山   哲 学位論文題名

湿原域の濁水氾濫と植生変化に係わる 衛星画像解析手法に関する研究

学位論文内容の要旨

  本研究は,近年多様な価値が再認識されている湿原のモニタリング技術の確立を目的 とし,釧路湿原久著路川を対象として,流域からの累積的影響の解析を行うとともに湿 原氾濫域への濁水氾濫と湿原植生変化に係わる人工衛星画像解析手法の構築を行ったも のである。

  対象流域から湿原に負荷されているインパクト(土砂流送量)の定量化とその動態解 明を行うため,土砂流送量については流域内に定点観測点を4ケ所設け,デジタル濁度 計・水位計・ウォータサンプラーを設置し連続観測(濁度・水位については10分間隔,

採水に関しては大規模な出水時)を行った。これらのデータから各観測点における1995 年9月‑1996年8月の間の土砂流送量と観測点間の収支を算出した。また河川の縦断形 計測と河床堆積土砂調査を行うとともに,河川濁水と湿原表層土砂の粒径を比較した。

  この結果,湿原に流入する土砂の大半(重量割合で約90%)は流域中上流部で生産さ れたウォシュロード(W.L.)であり,湿原に流入するインパクトとしては一番大きく,

年間 流入 量はW.L.約6400t.浮遊 砂約700tであった。さらにこれらの約50%が融雪 出水によって湿原に流入していることが明らかとなった。久著呂川における1966年以後 の河川改修による河川短絡化(明渠排水路造成)は旧河川と比較して約2倍の河床急勾 配化をもたらし,これがかって上流部にあった砂成分堆積域を排水路末端部にまで下流 に移動させる主要因であることが指摘された。また,河床材料の中央粒径と河床勾配と には顕著な対応関係が見られたことから,砂成分の堆積域について河床勾配から逆算し 排水路造成前を推定すると,その堆積域の上流端は1965年のハンノキ林の上流部側境界 と一致していた。排水路末端部付近の堆積土砂は年間でW.L.3200t.浮遊砂700tであ

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り, こ の 堆積 土 砂が 河 道 閉塞 を 招 き出 水 時に濁水 が排水路 外に氾濫 し,湿原 に土砂を堆 積させていることが推測された。

  湿 原 の氾 濫 状 況を 把 握す る た めに , 衛星 画 像 を用 い た氾 濫 濁 水濃 度 指標(WTI:Water TurbidityIndex)を 開 発し , 融 雪期 の 氾 濫濁 水 につ い て 氾濫 濁 水の 濃 度推 定を行っ た。

本研 究 で は濁 水 濃度 推 定 のた め の 衛星 画 像解析に あたルミ クセル分 析を用い た。このミ クセ ル 分 析は 画 像の ー ピ クセ ル に つい て ,その中 に含まれ ている構 成要素( エンドメン ノくー) のスペク トル情報 をもとに 混合スペ クトルを分 解して個 々のエンドメンバーの存 在量(Abundance)を 計算 す る解 析 方 法で あ る。 本 研 究で は 人工 衛 星 画像 にラン ドサット TMを用い,エンドメンバーにハンノキ(イInus japonica).ヨシ(Phragmites australis).高 濃度 の 濁 水(485ppm).低濃 度濁水(10ppm) の4っを選 びミクセ ル分析を 行った。 エンド メン バ ー のス ペ クト ル 測 定は , ハ ンノ キ ・ヨシに ついては 湿原氾濫 域で採取 したものを 室内の分 光計で測 定した。 一方,濁 水につい ては久著路 川の氾濫 域に実験水槽を設置し,

濁水 を 濁 度計 で モニ タ リ ング し な がら 濃 度値毎の スペクト ルをスペ クトルメ ータで測定 した 。 こ れら の スペ ク ト ル情 報 か らエ ン ドメンバ ー点を決 定し,反 射率に変 換されたTM 画像 を も とに ミ クセ ル 分 析を 行 い ,各 エ ンドメン バーにつ いて,そ れらの存 在量を現す 画像 を 作 成し た 。こ の 画 像に お い て, 最 高濃度濁 水のエン ドメンバ ーの存在 量amaxと最 低濃度濁水のエンドメンバーの存在量ami。を用いて,WTI二ニarnax/(amax+amiー)と定義した。

さら に 水 面に 植 生等 の 遮 蔽物 が 存 在す る 状態 に お けるWTIの有 効 性 を検 証する 目的で,

実験 漕 に ハン ノ キと ヨ シ の混 在 し た状 態 の擬似的 湿原を再 現し,混 合スペク トルの測定 を 行 っ た 。 こ の 野 外 実 験 で 得 た 混 合 ス ペ ク ト ル 情 報 か らWTIを 計 算 し , こ のWTIか ら 濁水濃度Cへの変換 式はC ‑ EXP〔(WTIーb)/a〕,  (本研究ではa二ニ0130,b=‑0.80, R =0.91) として 求められ た。出カさ れたWTI画像 はピクセ ルのテク スチャー ノイズが 見 ら れ た た め ,7X7の 平 均 化 フ ア ル タ ー に よ り 平滑 化 処 理を 行 っ た。 こ の画 像 値 に対 し WTIか ら 濃 度 へ の 変 換 式 を 適 用 し て 濁 水 濃 度 の濃 度 ス ケー ル ( 単位ppm)を 決定 し た 。 こ の 作 業 に よ り 久 著 路 川 の 氾 濫 濁 水 に つ い て そ の 濃 度 の 推 定 が 可 能 と な っ た 。   本 研 究で 開 発 され た 解析 方 法 を湿 原 経年 変化のモ ニタリン グ手法に 応用する ことを目 的と し , 湿原 に 負荷 さ れ たイ ン パ クト で ある氾濫 濁水とそ の影響と 考えられ るハンノキ 林 の 変 化 に つ い て検 討 し た。 排 水路 が 完 成し た 直後 の1984 ‑1989年 頃 の湿 原 状 況を 抽 出す る た めに , 氾濫 現 象 の変 化 に つい てTMの 反 射率 画 像を も と にWTI(1984/05/21)と

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WTI(198 9/0 5/19)を作成し,その期間の濁水氾濫域の変化を画像化した。この結果,1984 年の 氾濫 状況 は久 著路 川の 両側 に広 く拡散 して おり ,濃 度も 氾濫 域内でほぼ均一で緩や か に 変 化し てい た。 これ に対 し1989年 では 濁水 の流 れは 河川右 岸ヘ 集中 し,1〜 1.5km 程度 の流 路と なっ て流 下し てお り, さらに 濁水 の先 端は 久著 路川 下流の高層湿原にまで 達し てい るこ とが 確認 でき た。 もう ーつの ハン ノキ 林変 化の 抽出 については,同様にTM 反 射 率 画 像 か らNDVI(1984/08/18)とNDVI(1990/08/03)を作 成し その 変化 量を 抽出 し た 。 こ の 結 果1984〜1990年 に か け て 久 著路 川の 左岸 では ハン ノキ 林が 増加 した のに 対 し , 右 岸 で は ハ ン ノ キ 林 の 増 加 し た 部 分 と 減 少 し た 部 分 の 両 方 が 確 認 さ れ た 。   こ の久 著路 川両 岸の 植生 変化 の相 違と濁 水分 布パ ター ンの 変化 との関係を求める目的 で , そ れ ぞ れ の 画 像 に つ い て 変 化 量 を も と めWTI値 の 変 化 量 をWTI(1989) ーWTI

(1984),NDVIの変 化量 をNDVI(1990)―NDVI(1984)と して 新た な画 像を 作成 した 。 そ の 後GISを 利 用 し , 久 著 路 川 氾 濫 域 の ハ ン ノ キ林 に 格 子 間 距 離100mのグ リッ ドポ イ ン 卜 を 作 成 し て 各 ポイ ン ト に お け るWTIとNDVIの変 化 量 を 算 出 し た 。 そし てそ の空 間 分 布 に つ い て 河 川 両岸 を300m間 隔 で ゾ ーニ ング し比 較検 討を 行っ た。 この 結果 から , 1984〜1989年 間 に 濁水 の 冠 水 が 進 ん だ 領域 では ハン ノキ 林の 成長 が阻 害さ れ, 逆に 濁 水の 氾濫 から 開放 され た領 域で はハ ンノキ 林の 成長 が促 進し てい る傾向が認められた。

すな わち ,左 岸で は一 様に ハン ノキ 林が成 長し てい たの に対 し, 右岸では約60%の領域 で ハ ン ノキ 林の 成長 阻害 が確 認さ れた 。ま たWTIをも とに した 氾濫 の状 況か らは 左岸 で は冠 水し た部 分と 乾燥 化し た部 分が 同程度 であ った のに 対し ,右 岸ではそのほとんどが 冠水状態に変化していることが明らかとなった。

  本 研究 を通 じ, ミク セル 分析 を用 いた衛 星画 像解 析に よる 氾濫 濁水濃度推定手法は,

エン ドメ ンバ ーを 適切 に設 定し 正確 なスペ クト ル情 報を 得る こと ができれば,湿原以外 のダ ム湖 ・湖 沼・ 河口 部・ 沿岸 域等 におけ る濁 水影 響モ ニタ リン グに応用が可能である こと ,ま た, 経年 変化 観測 また 広域 的状況 把握 とい った 時空 間を 考慮したモニタリング シ ス テ ムの 構築 にお いて ,リ モー トセ ンシ ング .GISは極 めて 有効 かっ 効率 的な 手段 で あることを論じた。

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学位論文審査の要旨 主査    教 授    新谷    融 副査    教 授    堀口郁夫 副査    教 授    和    孝雄 副査   助教授    中村太士

学 位 論 文 題 名

湿原域の濁水氾濫と植生変化に係わる 衛星画像解析手法に関する研究

  本 論 文 は , 図66, 表10を 含 む118頁 の 和 文 論 文 で あ り , 他 に 参 考論 文5編 が添 え ら れてい る。

  流 域 に おけ る 水系 的 土 砂動 態のモ ニタリン グ,およ び流域環 境影響評 価のため の長期 モ ニタ リ ング の 手 法構 築 が 流域環 境保全上 の緊急課 題とされ ている。 本研究は ,これま で 明ら か にさ れ て こを か っ た湿原 域に韜け る土砂流 入現象を 解析する とともに ,濁水氾 濫 と植 生 変化 に 係 わる 湿 原 動態の モニタリ ングを目 的とした 衛星画像 解析手法 を構築し たもの であり, 得られた 成果は以下 のように 要約され る。

  1.湿原 流入河川 の土砂流 送による濁 水氾濫機 構

  湿原へ の土砂流 入インパ クトの定量 化とその 動態解明 のために,釧路湿原流入河川(久 著呂川 流域)に 水系的定 点観測シス テム(10分 間隔の濁 度・水位観測と採水)を設定し,

各観測点での土砂流送量の年収支と季節変化を解析した。この結果、,湿原流入土砂の約90

% は流 域 中上 流 部 で生 産 さ れたウ オッシュ ロードで あり,流 入量の約50%が融雪 出水時 のもの であるこ とを明ら かにしてい る。

  ま た 河 床堆 積 土砂 ( 中 央粒 径)と 河床勾配 とに顕著 な対応関 係を確認 し,これ をもと に 粗粒 砂 成分 堆 積 域の 位 置 的変 化 につ い て 検討 し た結 果 , 河川短絡 化による 約2倍の河 床 急勾 配 化が 土 砂 堆積 域 の 下方移 動をもた らしたこ と,また 河川濁水 と湿原表 層土砂と の 粒径 比 較か ら こ の堆 積 土 砂の河 道閉塞が 出水時の 濁水氾濫 と湿原内 土砂堆積 の主因と なって いること を指摘し ている。

  2.衛星画 像ミクセ ル分析に よる氾濫濁 水濃度指 標(WTI)の開発

  画 像 ピ クセ ル 中の エ ン ドメ ンバー 値をもと に混合ス ペクトル を分解す るミクセ ル分析

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を用 い, 幾何 学的 モデ ルにお ける 最高 ・最 低濃 度濁 水の エン ドメンバー寄与率の比から WTIを 算出 する 理論 の構 築を 行っ た。 まず ,ミ クセル 分析 用エ ンド メン バー とし て湿 原 の主構成要素であるハンノキ・ヨシ・最高濃度濁水・最低濃度濁水を用いることとし,それ らの スペ クト ル測 定を ,現地 採取 のハ ンノ キ・ ヨシ は室 内で ,濁水は現地設置の実験水 槽内 で人 為発 生さ せた ものを 濃度 値ご との 計測 によ って 行っ た。っぎに,実験水槽にハ ンノ キ・ ヨシ を混 在さ せた疑 似湿 原を 再現 し, ここ で測 定し た混合スペクトルの解析に よ っ てWTIか ら 濃 度Cへの 変 換 式 を 導 き 出 し た 。 そ し て こ の 変 換 式 が 氾 濫 濁 水 濃度 の 高 精 度 推 定 を可 能 と す る こ と を 検 証 し, ラン ドサッ トTM画像 に応 用し て濁 水氾 濫情 報 の画像化を実現している。

  3. WTIによる濁水氾濫と湿原植生の経年変化解析

  湿 原氾 濫濁 水と その 影響と 考え られ る湿 原植 生( ハン ノキ 林)の時空間変化について 検 討 し て い る。 氾 濫 現 象 の 変 化 に つ い て はTMの 反 射 率 画 像 を も とに 作成 したWTI画 像 から ,近 年に おけ る最 も顕著 な濁 水氾 濫は1984〜1989年 の期 間にあること,そして1984 年に は均 一濃 度で 広く 拡散し てい た濁 水が1989年に は高 濃度 で河川右岸域ヘ集中し下流 高 層 湿 原 に まで 達 し て い る こ と , さ らに 同様 に得たNDVI画像 から 左岸 のハ ンノ キ林 の 増加 と右 岸の ハン ノキ 林の増 加と 減少 が確 認さ れた 。っ ぎに ,この両岸の植生変化につ い てWTI値 変 化 量 とNDVI値 変 化 量 の 新 画 像 を 作 成 し ,GISデ ー タ を 用 い て100m間 隔 の グ リ ッ ド ポイ ン ト に お け るWTIとNDVIの変 化 量 の 空 間 分 布 に つ いて 比較 検討 を行 つ た。 その 結果 ,右 岸の 濁水氾 濫領 域の 約60%で ハン ノキ 林成 長の阻害と左岸の濁水非氾 濫領 域で ハン ノキ 林成 長のほ ぼー 様な 促進 が確 認さ れた 。そ して,これら画像解析から 得た 変動 情報 は, 湿原 の水文 ・植 生変 化の 現地 情報 に対 応し ていること,さらに現地調 査では判別し得ない広域的変動情報であることを考察している。

  4.衛星画像解析の流域モニタリングへの適用

  ミ クセ ル分 析を 用い た衛星 画像 解析 によ る氾 濫濁 水濃 度推 定手法は,エンドメンバー の設 定と スペ クト ル情 報の取 得に よっ て湖 沼・ 河川 ・河 口沿 岸部などの水域における濁 水影 響モ ニタ リン グに 適用が 可能 であ るこ と, また ,広 域的 ・長期的モニタリングにお いて極めて有効かっ効率的手法であることを論じている。

  以 上の よう に本 研究 は,湿 原植 生変 化を もた らす 濁水 氾濫 現象を対象とし,ミクセル 分析 を用 いた 衛星 画像 解析手 法を 新た に開 発し たも ので ,そ の成果は学術的に高く評価 さ れ る と と もに 実 用 面 に 大 き く 貢 献 する もの である 。よ って 審査 員一 同は ,亀 山哲 は 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 認 め た 。

参照

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