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博 士 ( 工 学 ) 岡 本 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 工 学 ) 岡 本 学 位 論 文 題 名

パラメトリック下方変換を用いた光子状態の制御と測定 学位論文内容の要旨

  近年、量子力学の原理を応用した量子情報処理の研究が盛んに行われている。これ により、これまでよりも安全な通信や高速な処理が可能となる。例えぱ、量子暗号で は原理的に盗聴を検知することができるため、盗聴不可能な通信を可能とする。これ は、「単一光子の偏光が、一回の測定では完全に決定することができない」という量子 力学の原理を用いている。また、量子計算では、量子力学の重ね合わせの原理を用い ることで、超並列的な計算が可能である。そのため、原理的に古典計算よりも高速な 計算を可能とするアルゴリズムが存在する。光子は、長距離伝送や、その状態の高精 度 検 出 も 可 能 な 事 か ら 、 量 子 情 報 処 理 の 担 体 と し て 有 カ で あ る 。   しかし、その実現にあたっては、いくっか解決しなけれぱならない問題がある。1 っには、光子を1っずつ高い効率で一定時間ごとに射出するような単一光子源の実現 である。近年盛んに研究されているが、実際の射出部で光子が1つ得られる確率は0.1 程度でしかない。2つ目に、一方の光子の状態に応じて他方の光子の状態を量子的に 制御するゲート素子、制御ノットゲートの実現である。これまでの提案は、複雑詮干 渉計を組みあわせて1つの素子を構成しており、安定動作が困難であった。また3つ 目には、2光子干渉現象のより深い理解である。2光子干渉は制御ノットゲートの動 作の本質をなすが、光子に位相分散が重畳された場合については十分に研究されてい なかった。

  本研究では、それらの課題を解決するためのツールとして、パラメトリック下方変 換に着目した。パラメトリック下方変換とは、非線形光学結晶中に入射されたポンプ 光の光子が、その非線形性に応じ、エネルギー保存則を満たしながら2つの光子へと 変換される過程である。その際、発生する2つの光子対は、発生時刻、波長(エネル ギー)他様々な量子相関を持つ。本研究では、先に述べた課題を解決すべく、そのパ ラメ トリック下 方変換を用 いた光子状 態の制御と 測定に関す る研究を行った。

  その結果、まず1つ目の課題に関しては、発生した2光子の一方を検出してもう一 方の射出を制御することで、一定時間内に光子が1っだけ含まれる単一光子源を実現、

かっ、光子が1つ含まれる確率を0.4にまで高めることに成功した。2つ日の課題に 関しては、特殊な偏光依存性を有する部分偏光ピームスプリッタを用いることで、光

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路干渉計の不要な制御ノットゲートの実証を、パラメトリック下方変換を利用した2 光子源を用いて達成した。また3つ目の課題に関しては、パラメトリック下方変換で 発生した光子対による2光子干渉について、初めて無限大の高次の効果まで取り込ん だ解析を行った。さらに、2光子干渉の結果から位相分散を推定する方法を考案、実 証することに成功した。

  本論文は以下の9章で構成されている。

  第1章では、まず、量子光学や量子情報処理と言った研究においてパラメトリック 下方変換が用いられるようになった歴史的経緯を述べる。そして、本論文の目的と研 究アプローチについて説明する。

  第2章では、本論文で一貫して用いられているパラメトリック下方変換について概 説する。特に、パラメトリック下方変換によって発生する光子対の発生パターンがど のようにして決定されるかを述べる。

  第3章では、パラメトリック下方変換を用いた単一光子源の構築にっいて報告する。

単 一光 子 源 として 性能を高く するための どのような 工夫を行っ たかを述べ る。

  第4章では、単一光子源の出力状態の光子数分布について報告する。単一光子源の 正確な評価を行うためには、出力状態の光子数分布を得る必要がある。そこで、まず、

検出系の影響を補正する方法を述ぺる。次に、得られた光子数分布が何故そのような 分布になったかの詳細な解析について報告する。

  第5章では、狭帯域フイルタの位相分散がパラメトリック下方変換を利用した2光 子干渉に与える影響について解析する。また、無限に高次な位相分散を持った場合2 光子干渉がどのような影響を受けるかを検証する。

  第6章では、パラメトリック下方変換を利用した2光子干渉結果から位相分散を測 定する方法について報告する。まず、理論的に2光子干渉結果から、位相分散の導出 を試みる。次に、実験的な実証を示す。

  第7章では、これまでより安定な制御ノットゲートの構築について報告する。偏光 ごとに反射率の異なる特殊な偏光ピームスプリッタを用いて、光路干渉を必要としな い安定な制御ノットゲートの構築について述べる。

  第8章では、高効率な方法を用いた制御ノットゲートの評価について報告する。制 御ノットゲートを評価するにはその量子的な性質まで含めた評価が必要となる。これ までは、量子プロセストモグラフイーと呼ぱれる方法が用いられてきた。しかしこの 方法 では256も の測定セッ トアップが 必要となる 。そこで、 この章では、32の測 定セットアップですむ方法を用いた評価を行う。

    第9章では、以上の結果にっいて総括を行う。

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学位論文審査の要旨 主査    教 授    笹木 敬司 副査    教 授    末宗 幾夫 副査    教 授    武藤 俊一 副査    助教授   竹内繁樹

学 位 論 文 題 名

パラメトリック下方変換を用いた光子状態の制御と測定

  近年 、量子力 学の原理 を応用し た量子情報 処理の研 究が盛ん に行われている。これ によ り、これ までより も安全な 通信や高速 な処理が 可能とな る。例え ば、量子暗号で は不 確定性原 理を用い ることで 盗聴を検知 すること ができる 。また、 量子計算では、

量子 力学の重 ね合わせ の原理を 用いること で、超並 列的な計 算が可能 である。そのた め、 原理的に 古典計算 よりも高 速な計算を 可能とす るアルゴ リズムが 存在する。光子 は、 長距離伝 送や、そ の状態の 高精度検出 も可能な 事から、 量子情報 処理の担体とし て有 カである 。

  しか し 、 その 実現にあ たっては 、いくっ か解決し なければ ならない問 題がある 。1 っ に は、 光 子を1っずつ 高い効率 で一定時 間ごとに 射出する ような単一 光子源の 実現 であ る。近年 盛んに研 究されて いるが、実 際の射出部で光子が1つ得られる確率はO.1 程 度 でし か ない 。2つ目 に、一方 の光子の 状態に応 じて他方 の光子の状 態を量子 的に 制御 するゲー ト素子、 制御ノッ トゲートの 実現であ る。これ までの提 案は、複雑な干 渉 計 を組 み あわ せ て1つ の素 子 を構 成 し てお り、安 定動作が 困難であっ た。また3つ 目 に は、2光 子 干渉 現 象 のよ り 深い 理 解 であ る。2光 子干渉は 制御ノット ゲートの 動 作の 本質をな すが、光 子に位相 分散が重畳 された場 合につい ては十分 に研究されてい なか った。

  本研 究では、それらの課題を解決するためのツールと.して、パラメトリック下方変 換に 着目した 。パラメ トリック 下方変換と は、非線 形光学結 晶中に入 射されたポンプ 光 の 光子 が 、そ の非線 形性に応 じ、エネ ルギー保 存則を満 たしながら2つの光子 へと 変 換 され る 過程 である 。その際 、発生す る2つの光 子対は、 発生時刻、 波長とい った 様々 な量子相 関を持つ 。本研究 では、先に 述べた課 題を解決 すべく、 そのパラメトリ ッ ク 下 方 変 換 を 用 い た 光 子 状 態 の 制 御 と 測 定 に 関 す る 研 究 を 行 っ た 。   その 結 果 、ま ず1つ 目の 課 題 に関 し ては 、 発生した2光子の一 方を検出し てもう一 方の 射出を制 御するこ とで、一 定時間内に 光子が1っだけ含まれる単一光子源を実現、

か っ 、光 子 が1つ含 ま れ る確 率 をO.4にま で 高めるこ とに成功 した。2つ目 の課題に 関し ては、特 殊な偏光 依存性を 有する部分 偏光ビー ムスプリ ッタを用 いることで、光 路 干 渉計 の 不要 な制御 ノットゲ ートの実 証を、パ ラメトリ ック下方変 換を利用 した2 光 子 源を 用 いて 達成し た。また3つ目の課 題に関し ては、パ ラメトリッ ク下方変 換で 発 生 した 光 子対 による2光子干渉 について 、初めて 無限大の 高次の効果 まで取り 込ん

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だ 解析 を行 った 。さ らに 、2光 子干 渉の 結果 から 位相 分散 を推定する方法を考案、実 証 する こと に成 功し た。

  本論 文は 以下 の9章で 構成さ れて いる 。

  第1章で は、 まず 、量 子光学 や量 子情 報処 理と 言っ た研 究においてパラメトリック 下 方変 換が 用い られ るよ うに なった歴史的経緯を述べる。そして、本論文の目的と研 究 アプ ロー チに つい て説 明す る。

  第2章で は、 本論 文で 一貫し て用 いら れて いる パラ メト リック下方変換について概 説 する 。特 に、 パラ メト リッ ク下方変換によって発生する光子対の発生パターンがど の よう にし て決 定さ れる かを 述べ る。

  第3章で は、 パラ メト リック 下方 変換 を用 いた 単一 光子 源の構築について、報告す る 。

  第4章で は、 単一 光子 源の出 力状 態の 光子 数分 布の 解析 について報告する。まず、

検 出系 の影 響を 補正 する こと で、出力状態の正確な光子数分布を得る。次に、得られ た 光 子 数 分 布 が 何 故 そ の よ う な 分 布 に な っ た か の 詳 細 な解 析 に つ いて 報告 する 。   第5章で は、 狭帯 域フイ ルタ の位 相分 散が パラ メト リッ ク下 方変 換を 利用 した2光 子 干渉 に与 える 影響 につ いて 解析 する 。ま た、 無限 に高次 な位相分散を持った場合2 光 子干 渉が どの よう な影 響を 受け るか を検 証す る。

  第6章で は、 パラ メトリ ック 下方 変換 を利 用し た2光 子干 渉結 果か ら位 相分 散を 測 定 する 方法 につ いて 報告 する 。ま ず、 理論 的に2光子 干渉 結果から、位相分散の導出 を 試み る。 次に 、実 験的 な実 証を 示す 。

  第7章で は、 これ まで より安 定な 制御 ノッ トゲ ート の構 築について報告する。偏光 ご とに 反射 率の 異な る特 殊な 偏光ビームスプリッタを用いて、光路干渉を必要としな い 安定 な制 御ノ ット ゲー 卜の 構築 につ いて 述べ る。

  第8章で は、 高効 率な 方法を 用い た制 御ノ ット ゲー トの 評価について報告する。こ の 章 で は 、 こ れ ま で の256の 測 定 セ ッ ト ア ッ プ が 必 要 な 方 法 に 対 し 、32の 測 定セ ッ トア ップ です む新 しい 方法 を用 いて 評価 を行 う。

  第9章で は、 以上 の結 果につ いて 総括 を行 う。

  これを要するに、著者は、パラメトリック下方変換から発生する光子対を用いることで、

高効率な単一光子源、コンパクトな制御ノットゲート、2光子干渉における位相分散の研 究を行い、有益な知見を示し、光量子情報処理の分野に貢献するところ大なるものがある。

  よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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参照

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