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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 地 球 環 境 科 学 ) 李  宋 鴻

    学位論文題名

  Habitat usefood habits and mating ecology of the Eurasian red squlrrel(SCZ銘ゲ勿Sぴ勿伽アゐL.)

(エゾリス,&f舘嬲ぴ甜な留rゐL.,に.おける生息環境,餌資源利用と繁殖生態)

学位論文内容の要旨

    エゾリス、Scircus vulgarisL.、は旧北区に広く分布し、日本では北海道全域に広 く分布する。近年人間の活動に伴う森林の伐採や分断により、その個体群は著しく減少 してきている地域が増大してきている;この種の保全には分布や生態情報など基礎的な 情報が必要であるが、日本ではこれらに関して不充分な状況にある。このため本研究で は北海道の野幌森林公園において保全上の基礎資料となるエゾリスの生息環境、餌資源 および繁殖生態に関する研究を行った。

野幌森林公園内のエゾリスの分布調査を繁殖期を終え個体数が最大となる夏期に行っ た。予備調査で1個体の行動圏の広さを4haと推定した後に、森林公園2,051haのうち 湿地、沼、建物などの部分を除く1,611haを200x200mの401の区画に設定した。各区 画の中心に半径30cmの広さで小麦粉を散布し、その中心部に餌をおき、誘引された個 体の足跡を確認し生息分布を調べた。この他に従来行われている巣や食痕の確認、目撃 等の方法によっても調査した。

    この結果全体の11.2%にあたる45の区画でエゾリスの存在が確認された。森林公 園内に広く分布していたが、特に3つの地域に集中して見られた。この他に公園に隣接 する樹 木育種センターにも個体が集中していた。生息が確認された45の区画のうち 43の区画が小麦粉による足跡調査法によって知られ、他の方法より高い精度で分布調 査を行うことができた。

  森林夕イプ別では常緑針葉樹の28.2%でエゾリスの分布が確認され。次いで落葉針葉 樹(5.3%) 、針広混交 林(5.2%)、広葉 樹林(3.9%)、その他(O%)となった。

発見された巣のうち89.2%は常緑針葉樹に造られており、落葉針葉樹や落葉広葉樹では 少なかった。

  秋期に用いられていた餌には主として採食に用いられるものと貯食に用いられるもの のニつのタイプがあった。この時期に採食されていたものは20種類あったが主として卜 ドマツ、チョウセンゴョウ、リキダマツ、スト口ープマツなどの針葉樹の種子であった。

貯食に用いられていたのは12種類あったがトドマツの毬果、チョウセンゴョウの種子、

クルミ、クりの実、アカナラのドングりの5種で貯食量の89%、貯食に要した時間の93

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%を占めていた。11種は採食と貯食に用いられたが20種は採食のみであり、クルミは 貯食にのみ用いられた。

越冬期には雌雄間で餌の種類に差はなく、主として貯食した餌資源を利用していた。

繁殖期では雌雄共に針葉樹の若芽や広葉樹や草木の新葉などを採食していたが、雌では 雄よりも貯食した餌の回収率が高かった。繁殖の終了した夏期では種々の針葉樹の毬果 に依存していた。

  貯食に用いる餌資源の選好性をみるために9種類の餌を用いて選択実験を行った。餌 の種類による選択度には有意の差がみられ、選択性と各餌のもつエネルギー量と蛋白量 の 間 に は 正 の 相 関 が み ら れ た が 、 大 き さ や 重 量 と は 関 係 が な か っ た 。   繁殖期の行動を観察するために12個体の雌と14個体の雄に個体標識をっけるとともに ラジオテレメトリーを装着し行動を追跡した。12個体の雌のうち11個体が発情しこの うち5個体は2回の繁殖を行った。繁殖の時期は二月から三月で、2回目の繁殖は五月で あった。この観察をっうじて得られた交尾行動に関して、交尾時間、交尾場所、雄の追 尾時間と社会順位等を記録した。また繁殖期間における体重の毎日の変化を測定した。

雌雄共にこの期間の体重変化は大きかったが、特に雌において著しく、妊娠期のみなら ず出産後の授乳期においても大きく、エネルギー要求量が雌が雄を上回るものと推測さ れた。雄では繁殖期における行動圏が有意に雌よりも広く、およそ6.4倍を示した。

交尾の成功回数によって示される雄の繁殖成功度は精巣の大きさ、繁殖期における行 動圏の広さ、社会順位、体重、秋期におけるエネルギー貯蔵量と正の相関を示していた。

また雌の繁殖回数によって表される繁殖成功度は体重、秋期のエネルギー貯蔵量と正の 相関を示していた。

  本研究はこれまでりス類においては行われていなかった小麦粉を用いた足跡調査によっ て得られた、より正確な生息分布調査に基づぃて行われたものである。分布域、餌資源、

営巣場所など個体群維持にとって針葉樹のもつ重要性が明らかになった。特に繁殖につ いては繁殖期間中に供給される餌資源量のみならず、秋期に準備しうる貯食餌資源量が 繁殖成功度に大きく影響する。研究対象とした野幌森林公園は広さにおいて個体群の縮 小や分断をもたらさないものと、本研究での調査結果である分布状況や行動圏の広さや ヨーロッパにおける研究から推測される。また風倒跡地などに植栽された針葉樹林がエ ゾリスにとって好適な生息環境を形成したものと考えられる。

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学 位 論 文審 査 の 要 旨 主査

副査 副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授 助教授

戸田正憲 甲山隆司 岩熊敏夫 福田弘巳 露崎史朗

     学位論文題名

Habitat use , food habits and mating ecology of the Eurasian red squirrel(Scizt7 ′勿SvulgarisL .)

(エゾリス,Sciurus vulgarisL.,における生息環境,餌資源利用と繁殖生態)

    エゾリス、馳ircus vulgarisL.、は旧北区に広く分布し、日本では北海道全域に 広く分布する。近年人間の活動に伴う森林の伐採や分断により、その個体群は著しく減 少してきている地域が増大してきている。この種の保全には分布や生態情報など基礎的 な情報が必要であるが、日本ではこれらに関して不充分な状況にある。このため本研究 では北海道の野幌森林公園において保全上の基礎資料となるエゾリスの生息環境、餌資 源および繁殖生態に関する研究を行った。

  野幌森林公園内のエゾリスの分布調査を繁殖期を終え個体数が最大となる夏期に行つ た。予備調査で。個体の行動圏の広さを4haと推定した後に、森林公園2,051baのうち 湿地、沼、建物などの部分を除く1,611haを200x200mの401の区画を設定した。各区画 の中心に半径30cmの広さで小麦粉を散布し、その中心部に餌をおぎ、誘引された個体の 足跡を確認し生息分布を調べた。この他に従来行われている巣や食痕の確認、目撃等の 方法によっても調査した。

    この結果全体の11.2%にあたる45の区画でエゾリスの存在が確認された。森林公 園内に広く分布していたが、特に3っの地域に集中して見られた。この他に公園に隣接 する樹木育種センターにも個体が集中していた。生息が確認された45の区画のうち 43の区画が小麦粉による足跡調査法によって知られ、他の方法より高い精度で分布調 査が行うことができた。

  森林タイプ別では常緑針葉樹の28.2%でエゾリスの分布が確認され。次いで落葉針菜 樹(5.3%)、針広混交林(5.2%)、広葉樹林(3.9%)、その他(O%)となった。

発見された巣のうち89.2%は常緑針葉樹に造られており、落葉針葉樹や落葉広葉樹では

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少なかった。

  秋期 に採 食の ため用いられていた餌は20種類あったが主としてトドマツ、チョウセン ゴ ョウ 、リ キダ マツ、スト口ーブマツなどの針葉樹の種子であった。貯食に用いられて い たの は12種類 あったがトドマツの毬果、チョウセンゴョウの種子、クルミ、クリ、ア カ ナラ のド ング りの5種で 貯食 量の89% 、貯 食に要した時間の93%を占めていた。1l種 は 採食 と貯 食に 用いられたが20種は採食のみであり、クルミは貯食にのみ用いられた。

  越冬 期に は雌 雄間で餌の種類に差はなく、主として貯食した餌資源を利用していた。

繁 殖期 では 雌雄 共に針葉樹の若芽や広葉樹や草木の新葉などを採食していたが、雌では 雄 より も貯 食し た餌の回収率が高かった。繁殖の終了した夏期では種々の針葉樹の毬果 に依存していた。

  貯食 に用 いる 餌資 源の 選好性 をみ るた めに9種類の餌を用いて選択実験を行った。餌 の 種類 によ る選 択度には有意の差がみられ、選択性と各餌のもつエネルギー量および蛋 白 質 量 の 間 に は 正 の 相 関 が み ら れ た が 、 大 き さ や 重 量 と は 関 係 が な か っ た 。   繁殖 期の 行動 を観察するために12個体の雌と16個体の雄に個体標識をっけるとともに ラ ジオ テレ メト リーを装着し行動を追跡した。11個体の雌が発情し、このうち5個体は2 回 の繁 殖を 行っ た。 繁殖 の時期 は二 月か ら三 月で、2回目の繁殖は五月であった。交尾 行 動に 関し て、 交尾時間、交尾場所、雄の追尾時間と社会順位等を記録した。また繁殖 期 間に おけ る体 重の変化を測定した。雌雄共にこの期間の体重変化は大きかったが、特 に 雌に おい て著 しく、妊娠期のみならず出産後の授乳期においても大きく、エネルギー 要 求量 が雌 が雄 を上回るものと推測された。雄では繁殖期における行動圏が有意に雌よ りも広く、およそ6.4倍を示した。

  交尾 の成 功回 数によって示される雄の繁殖成功度は精巣の大きさ、繁殖期における行 動圏の広さ、社会J頃位、体重、秋期におけるエネルギー貯蔵量と正の相関を示していた。

ま た雌 の繁 殖回 数によって表される繁殖成功度は体重、秋期のェネルギー貯蔵量と正の 相関を示していた。

  本研究はこれまでりス類におぃては行われていなかった小麦粉を用いた足跡調査によっ て より 正確 な生 息分布に基づいて行われたものである。分布域、餌資源、営巣場所など 個 体群 維持 にと って針葉樹のもつ重要性が明らかになった。特に繁殖については繁殖期 間 中に 供給 され る餌資源量のみならず、秋期に準備しうる貯食しうる餌資源量が繁殖成 功 度に 大き く影 響するなど生息環境、餌資源、繁殖成功度の関係を明らかにした。。研 究 対象 とし た野 幌森林公園では伐採跡地や風倒跡地などに植栽された針葉樹林がエゾリ スにとって好適な生息環境を形成しているものと考えられる。

審査員一同は、これらの成果を高く評価し、また研究者として誠実かつ熱心であり、大学院 課程における研鑽や取得単位なども併せ申請者が博士(地球環境科学)の学位を受けるのに充 分な資格を有するものと判定した。

参照

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