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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 環 境 科 学 ) 庄 山 紀 久 子

     学位論文題名

Effects of reforestation on the recovery of     conifer − broadleaVedmiXedforeSt .   andeValuationofreStorationmethodS

(針広混交林帯開拓跡地における植生回復と再生手法の評価に関する研究)

学位論文内容の要旨

  森林 は 生物 多 様性 保 持を 含 む多 面 的 な環境 機能を有し 、様々な生 態系サーピ ス を 提供 す る。 し かし 、 農地 開 発に よ る天 然林の伐採 などによっ てその機能 低 下 が 危惧 さ れて い る。 ま た放 棄 農地 は 各地 で発生して おり、その 生態系管理 は 重 要 な課 題 とな っ てい る が、 社 会科 学 と生 態学を包括 した分野で あるため複 雑 で あ る。 先 行研 究 にお い て、 放 棄農 地 にお ける植生回 復は数10年の 単位で速や か に 起こ る こと が 、主 に 熱帯 林 地域 で 報告 されている 。植生の回 復は土地改 変 の 度 合い や 残存 す る周 辺 植生 に 依存 し 、強 度の土地改 変を受けた 放棄牧草地 の 植 生 回復 に はい く っか の 阻害 要 因が あ るこ とが明らか にされてい る。複数の 阻 害 要 因が 複 合的 に 作用 す るこ と から 、 植生 回復を目的 としたより 積極的な再 生 手 法 の検 討 が求 め られ て いる 。 本研 究 は、 開拓という 人為的影響 を受けた針 広 混 交 林開 拓 跡地 に おけ る 植生 回 復と 森 林再 生手法を生 態学的知見 に基づいて 評 価 し 、示 唆 を得 る こと を 目的 と した 。

  第1章 では 、 研究 対 象地 で あ る知 床 半島 西 部に 位 置す る 岩尾 別 ・幌 別 開拓跡 地 の 植生 概 要を 説 明す る とと も に、 土 地利 用史を文献 調査によっ てまとめ、 社 会 環 境の 変 化と 土 地利 用 の関 係 につ い て考 察した。研 究対象地に おける原生 林 の 伐 採と 農 地へ の 転換 、 放棄 牧 草地 の 発生 および植林 運動は社会 環境の変化 と 共 に 起こ っ てい た 。社 会 経済 的 混乱 期 にお ける土地利 用政策が地 域的な放棄 地 を 発 生さ せ 、ま た 離農 政 策や 自 然保 護 政策 への転換が 植林運動へ とっながっ て い る こと が 示唆 さ れた 。

  第2章 では 、 森林 再 生を 目 的 とし て 行わ れ る植 林 が植 生 回復 に 及ぼ す 効果に つ い て検 証 した 。 開拓 跡 地の 植 生履 歴 を把 握するため に戦後開拓 以降の空中 写 真 か ら植 生 変遷 図 を作 成 し、 地 理情 報 シス テムを用い て植生変化 の定量的評 価 を 行 った 。推 移行列モデ ルによって (I)開 拓期、(H)放棄 期、(III)植林期 に お ける 植 生面 積 の時 間 変化 を モデ ル 化し た。その結 果、戦後開 拓期に著し く 減 少 した 森 林植 生 の回 復 につ い て、 放 棄期 と植林期で は大きな違 いはみられ な か っ たが 、 集中 的 な植 林 は放 棄 牧草 地 と開 拓後面積を 拡大したサ サ地の面積 減

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少 に寄与していた 。また群落調査の結果から開拓跡地の植生は

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群落に分類さ れ、追跡調査から

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年間の種組成の変化が明らかになった。序列化スコアでは 植栽後およそ40 年経過したカラマツ(工ロrzx ぬempferi) 植林地の種組成は針広 混交林の種組成に近づいていた。このことから、植林は植生回復の阻害要因の 減 少 に 寄 与 し 、 侵 入 種 の 定 着 を 促 進 す る 効 果 を 持 つ こ と を 示 し た 。

  

生存率が高く成長の速い樹種による単一的な植林は、劣化した土地における 森林再生手法として用いられる。研究対象地では、樹木の生育環境が厳しいこ とや近年個体数が増加しているェゾシカ(Cervus 門なヮ

on

)による被食があるこ とから、特定の非在来種を主体とした単一的な植林が行われてきた。一般に、

植林地での林冠疎開は新たな個体の侵入や定着を促進させ、一時的に光環境を 改 善することで林 床個体の成長を促進する効果が期待される。第

3

章では、非 在来種であるカラマツ植林地において、林冠疎開処理や被食除去処理が林床稚 樹の動態や成長に及ぼす効果について検証した。稚樹の動態をセンサス期間の 新規加入率、死亡率によって示した。また稚樹の樹高成長に対する処理効果に ついて、一般化線形混合モデルによる解析を行った。被食除去処理によって、

多種の稚樹が林床に侵入定着し、それらは耐陰性や非耐陰性の種から成る針広 混交林の種構成を反映していた。林冠疎開処理に対する反応は針葉樹と広葉樹 で異なっていた。疎開処理は、稚樹の成木への進級率を高め、光環境に対して 強い可塑性を示すトドマツ(イbies sachalinens お)の稚樹樹高成長を促進させる 一方で、広葉樹稚樹の定着や樹高成長に対しては負の効果を示していた。特に 光に対する可塑性の弱い非耐陰性樹種は、疎開処理によって樹高成長を促進さ れた種によって被圧されている可能性を示唆した。

  

4

章で は、第

1

章から第

3

章で得 られた結果を もとに、森林 再生手法につ い て考察した。第

2

章では、植生回復における阻害要因の減少を目的とした単 一 的な植林の有効 性を評価した。第

3

章では、植林地の林冠構成種交代を目的 とした管理は、稚樹の種構成や生理形態的および生態的特性を考慮し、さらに 特定の種による排他的優占に注視する必要性を指摘した。本研究において、森 林の農地への転換や放棄地の発生には土地利用政策などの社会的要因が影響し、

また植生の回復過程では様々な生態学的要因が関連していることが明らかにな った。さらに、現在の森林再生運動には管理計画の意思決定を行う専門家以外 にも一般市民が投資家として重要な位置を占めており、社会的要因としてより 個人の意志が重要になってくると考えた。持続的な管理のためには非在来種に よる単一植林の有効性とりスクを科学的知見に基づいて評価公表し、合意形成 手法の検討を行う必要がある。本研究で示した歴史的背景や生態学的な情報は、

これらの過程において不可欠なものである。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査   教授   甲山隆司 副査   教授   高田壮則 副査   准教授   春木雅寛 副査   准教授   露崎史朗

副 査

  

特 任 准 教 授

  Ademola BRAIMOH

副査   教授   石川幸男(専修大学北海道短期

    

大学園芸緑地科)

    

学位論文題名

Effects of reforestation on the recovery of     conifer

broadleaVedmiXedforeSt

  andeValuationofreStorationmethodS

(針広混交林帯開拓跡地における植生回復と再生手法の評価に関する研究)

  森林は生物多様性保持を含む多面的な環境機能を有し、様々な生態系サービスを 提供しており、農地開発による天然林の伐採などによってその機能低下が危惧されて いる。放棄農地は各地で発生しており、その生態系管理は重要な課題となっている。

植生の回復は土地改変の度合いや残存する周辺植生に依存し、強度の土地改変を受け た放棄牧草地の植生回復にはいくっかの阻害要因がある。複数の阻害要因は複合的に 作用することから、植生回復を目的とした積極的な再生手法の検討が求められている。

本研究は、開拓という人為的影響を受けた針広混交林帯開拓跡地における植生回復と 森 林 再 生 手 法 を 生 態 学 的 知 見 に 基 づ い て 評 価 す る こ と を 目 的 と し た 。   第1章では、研究対象地である知床半島西部に位置する岩尾別・幌別開拓跡地の植 生概要と土地利用史をまとめ、社会環境の変化と土地利用の関係について考察した。

対象地における原生林の伐採と農地への転換、放棄牧草地の発生および糟林運動は社 会環境の変化と共に起こっていた。社会経済的混乱期における土地利用政策が地域的 な放棄地を発生させ、また離農政策や自然保護政策への転換が植林運動へとっながっ たことを示唆した。

  第2章では、森林再生を目的として行われる植林が植生回復に及ぼす効果について 検証した。開拓跡地の植生履歴を把握するために戦後開拓以降の空中写真から植生変 遷地図を作成し、地理情報システムを用いて植生変化の定量的評価を行った。推移行

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列を用いて、開拓期・放棄期・植林期における植生面積の時間変化をモデル化した。

その結果、戦後開拓期に著しく減少した森林植生の回復において、放棄期と植林期で は大きな違いはなかったが、集中的な植林は放棄牧草地と開拓後面積を拡大したササ 地の面積減少に寄与していた。植物群落調査の結果から開拓跡地の植生は8群落に分 類され、追跡調査から20年間の種組成の変化が明らかになった。序列化スコアでは 植栽後およそ40年経過したカラマツ植林地の種組成は針広混交林の種組成に近づい ていた。このことから、カラマツ植林は植生回復の阻害要因の減少に寄与し、侵入種 の定着を促進する効果を持つことを示した。

  3章では、カラマツ植林地において、林冠疎開処理や被食除去処理が林床稚樹の 動態や成長に及ぼす効果について検証した。生存率が高く成長の速い樹種による単一 的な植林は、劣化した土地における森林再生手法として用いられる。研究対象地では、

樹木の生育環境が厳しいことや近年個体数が増加しているエゾシカによる被食影響こ とから、非在来種のカラマツを主体とした単一的な植林が行われてきた。一般に、植 林地での林冠疎開は新たな個体の侵入や定着を促進させ、一時的に光環境を改善する ことで林床個体の成長を促進する効果が期待される。そこで、稚樹の動態をセンサス 期間の新規加入率、死亡率によって示し、稚樹の樹高成長に対する処理効果について、

一般化線形混合モデルによる解析を行った。被食除去処理によって、多種の稚樹が林 床に侵入定着し、それらは針広混交林の種構成を反映していた。林冠疎開処理は、稚 樹の成木への進級率を高め、光環境に対して強い可塑陸を示すトドマツの稚樹樹高成 長を促進させる一方で、広葉樹稚樹の定着や樹高成長に対しては負の効果を示した。

特に光に対する可塑陸の弱い非耐陰性樹種は、疎開処理によって樹高成長を促進され たトドマツによって被圧されることを示唆した。

  4章では、第1章から第3章で得られた結果をもとに、森林再生手法について考察 した。森林の農地への転換や放棄地の発生には土地利用政策などの社会的要因が影響 し、また植生の回復過程では様々な生態学的要因が関連していることが明らかになっ た。さらに、現在の森林再生運動には管理計画の意思決定を行う専門家以外にも一般 市民が投資家として重要な位置を占めており、社会的要因として、より個人の意志が 重要になってくると考察した。持続的な管理のためには非在来種による単一植林の有 効性とりスクを科学的知見に基づいて評価・公表し、合意形成手法の検討を行う必要 がある。本研究で示した歴史的背景や生態学的な情報は、これらの過程において不可 欠なものであると結論した。

  審査委員一同は,学位申請者の挙げた以上の成果を高く評価した。また、申請者が 研究者として誠実かつ熱心に大学院博士課程における研鑽を積んだことや、単位修得 状況も勘案して,申請者が博士(環境科学)の学位を受けるのに充分な資格を有する ものと判定した。

参照

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