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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 (地 球環 境 科学 )加 藤 悦史

    学 位論 文題名

    Inter‑annual and phenological variation of

    reproductive performance of tree populations     in cool―temperate deciduous forest

( 冷温 帯落 葉樹林 構成 樹種 個体 群の 年間 およ び季節的な繁殖特性の変動)

学位論文内容の要旨

  本研究では冷温帯落葉樹林に生育する樹木個体群、特にハクウンボクとオオモミジの2 種において、年間おょび季節的な繁殖特性の変動を調査し、個体群レベルの特性を明らか にした。

1.ハクウンボクでは、個体群内においてある年に個体が同調して大量開花を起こすこと     に注目し、大量開花年での個体の結実成功がどのような要因によって影響を受けるの     か明らかにした。花粉制限を通した結実成功にたいする花数の影響を、花序、個体、

    個体群の、3つのレベルで考慮した。また資源制限の観点から個体のサイズ、枝にお     ける光条件を考慮した。重回帰分析の結果より、花序あたりの花数と個体あたりの花     序数は結果率に対して負の効果を持っており、局所的な同種個体の集団による花序     数、個体サイズ、枝における光条件が正の効果を持っていることが明らかになった。

    個体レペルでの訪花昆虫に対する誘因効果ではなく、個体の集まりによる誘因効果が     示唆された。

2.大量開花年における繁殖投資の影響が、その後のハクウンボク個体の成長、繁殖、生     存に対して遅延した繁殖のコストとして現われるのかどうかを確めた。繁殖投資とし     て、4‑haの個体群における繁殖個体の全ての花序数を計測し、またデモグラフイッ     クなパラメータとして個体群における死亡個体の有無と個体の幹直径成長を6年間に     渡り調査を行なった。理論的な予測と異なり、個体の繁殖努カと幹の成長率には正の     相関があった。しかしながら大量開花後では、ハクウンボク個体の死亡率が上り、ま     た個体群の平均成長率も下がることが確認された。大量開花後の成長率の減少は、大     量開花年に繁殖を行なったサイズの小さな個体で多くみられ、大量開花後の死亡は、

    成長率と繁殖努カが低い個体で見られた。多くの樹木集団では、種子生産の豊凶現象     が認めらており、進化的な説明として、花粉媒介の成功度、種子補食者に対する効果     など、有利さを中心にこれまで議論がなされてきたが、本研究から、樹木における大

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    量開花 とその年 変動を説 明する上 での繁殖 のコス卜の 重要性が 示唆され た。

3.オオモミジ個体群において、季節内での開花タイミングの詳細を個体のモジュールレ     ベルから調査し、個体群全体での時間的な繁殖特性を明らかにした。また個体群内で     の個体の性表現を調査し、個体群が約8パーセントの雄個体と、両性個体で構成され     ていることを明らかにした。両性個体では、個体内で雄機能と雌機能の時間的な発現     が分れていたが、個体群レベルでみると、雌機能の発現している時期に明らかなニつ     のピークが観察された。雄個体は、個体群の開花期間中全体に渡り少しずつ開花を起     こしていた。個体群の開花期間中での雄花と雌花の比の大きな変化が、オオモミジで     の両性個体の開花順序の二型性と雄個体の存在の維持に影響を及ばしている可能性を   示唆した。

以上のように、冷温帯落葉樹林の樹木個体群において、樹木個体のモジュールレベルでの 花序の調査から、年間、および季節的な変動に関する個体群レベルでの繁殖特性を明らか にした。

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学位論 文審査の要旨 主 査    教 授    甲 山 隆 司 副査    教授    原   登志彦 副査    助教授   大原   雅 副査    助教授   日浦   勉 副査    助教授   工藤   岳

     学位論文題名

  Inter‑annual and phenological variation of reproductive performanCeoftreepopulationS     inCOOl − temperatedeCiduouSforeSt

( 冷 温 帯落 葉樹林 構成樹種 個体群の 年間およ ぴ季節的 な繁殖特 性の変動)

  冷温帯 落葉樹林 に生育する樹木個体群であるハクウンボクとオオモミジの2種を対象に、

年 間お よ び季 節 的 な繁 殖 特 性の 変 動を 調 査 し、 個 体群 レ ベ ルの 特 性を 明 ら かに した。

  ハクウンボクでは、個体群内においてある年に個体が同調して大量開花を起こすことに注 目し、大量開花年での個体の結実成功がどのような要因によって影響を受けるのか明らかに した。 花粉制限 を通した 結実成功に対する花数の影響を、花序、個体、個体群の、3つのレ ベルで考慮した。また資源制限の観点から個体のサイズ、枝における光条件を考慮した。重 回帰分析の結果から、花序あたりの花数と個体あたりの花序数は結果率に対して負の効果を 持っており、局所的な同種個体の集団による花序数、個体サイズ、枝における光条件が正の 効果を持っていた。以上の結果から、訪花昆虫に対する誘因効果が個体レベルでなく、個体 の集ま りのレベ ルで効く ことが大量 一斉開花 をもたらす要因であることを明らかにした。

  大量開花年における繁殖投資の影響が、その後のハクウンボク個体の成長、繁殖、生存に 対して 遅延した 繁殖のコ ストとして現われるのかどうかを確めた。繁殖投資として、4ヘク タールの調査区内の個体群における繁殖個体の全ての花序数を計測し、また個体群における 死亡個 体の有無 と個体の 幹直径成長を6年間に渡り追跡調査した。理論的な予測と異なり、

個体の繁殖努カと幹の成長率には正の相関カsあった。しかし大量開花後にはハクウンポク個 体の死亡率が上り、また個体群の平均成長率も下がった。大量開花後の成長率の減少は、大 量開花年に繁殖を行なったサイズの小さな個体で多く、大量開花後の死亡は、成長率と繁殖 努カが低い個体で顕著だった。多くの樹木集団では.ヽ種子生産の豊凶現象が認めらており、

進化的な説明として、花粉媒介の成功度、種子補食者に対する効果など、有利さを中心に議 論されてきたが、本研究は、樹木における大量開花とその年変動を説明する上での繁殖のコ ストの重要性を示唆したものである。

  オオモミジ個体群において、季節内での開花夕イミングの詳細を個体の当年枝モジュール

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レベルから調査し、個体群全体での時間的な繁殖特性を明らかにした。また個体群内での個 体の性 表現を調 査し、個体 群が8%の雄個体と、92%の両性個体で構成されていることを明 らかにした。両性個体では、個体内で雄機能と雌機能の時間的な発現が分れていたが、個体 群レベルでみると、雌機能の発現している時期に明らかなニっのピークが観察された。雄個 体は、個体群の開花期間中全体に渡り少しずつ開花していた。個体群の開花期間中での雄花 と雌花の比の大きな変化が、オオモミジでの両性個体の開花順序の二型性と雄個体の存在の 維持に影響を及ばしている可能性を示唆した。

  本研究は、樹木の地域個体群全体を対象にしながら、樹木個体の構成要素である当年枝モ ジュールレベルでの繁殖挙動を、全個体樹冠への登攀という手法で解析したものであり、季 節 内 、 そ し て 長 期 の 年 間 の 変 動 の 記 載 と そ の 解 析 の 成 果 は 極 めて ユ ニー ク で ある 。   申請者は、大学院博士課程を通して熱心に野外調査とデー夕解析に取り組み論文にまとめ てきた。その経験を生かして、研究者として実カを発揮していくものと判断する。以上から、

審査員一同は申請者が博士(地球環境科学)の学位に相当する充分な資格を有するものと判 定した。

参照

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