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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 環 境 科 学 )  深 谷 肇 一

学 位 論 文 題 名

Seasonal and spatial variationslnpopulationdynamiCSOf     intertidalbarnaCleCぬ舶aJ刀a丿uSSpp・

(潮間帯に生息するフジッボ(〔為曲ama´usspp.)の個体群動態の季節変異と     空間変異)

学位論文内容の要旨

  個 体群生態学の中心的な課題のーっは、生物の個体群サイズの時間変化 を引 き起こす生態学的な機構を明らかにし、個体群の変動様式を説明する こと である。個体群サイズの変動は、出生率や生存率といった人口統計学 的パ ラヌータに影響する競争や捕食といった密度依存的な過程と、気候変 動の ような密度独立的な過程が相互に作用した結果生じる。これらの過程 が個 体群動態に及ぼす影響は、時間と空間によって異なることが知られて いる が、 その時 空間 変異 性に は未だ 十分理解されていない3つの側面があ る。 それは、季節性、分布範囲に沿った空間変異、個体群動態の変異性と 空間スケールの関連である。

  そこで本研究では、岩礁潮間帯に生息するイワフジッボ属2種を対象に、

(1)個 体群 サイ ズの 変動の 大き さ、(2)個体群増加率、(3)個体群増加率 を決 定する生態学的な過程について、それぞれ季節性と空間変異性を、複 数の 空間 スケー ルで 明ら かに するこ とを目的とした。太平洋沿岸の北緯3 1度から43度にわたる6地域に階層的に配置した調査地において、イワフジ ッポ の個体群サイズの指標となる被度を10年間調査した。得られた被度の 時系 列データに対し、個体群の変動性を理解する上で有効な、しかしこれ まで 同時 に用い られ るこ とは ほとん どなかった2つのアプ口ーチ―個体群 動態モデルを用いた個体群増加率を決定する過程の推定と、.Taylorの冪乗 則 を 用 い た個 体 群 サ イ ズ の 平 均 分 散 関係 の 推 定 ― を 同 時 に 適用 した 。   第 二章では、個体群増加率を決める過程の強度と、その影響の空間スケ ール に見られる季節性を明らかにするため、三陸沿岸の個体群の季節ごと の被 度の変化を解析した。その結果、夏季と冬季では個体群の増加率が大

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きく異なっ ていること が明らかと なった。ま た、増加率を決定する密度依 存的 過 程と 密 度独 立 的過 程 の 強度 と その影 響する空間 スケールも 夏と冬 で大きく異 なっている ことが明ら かとなった 。さらに、固着性生物の個体 群サイズの 指標として しばしば用 いられる被 度の変化は、密度や個体数の 変化と同じ枠組み(口ジスティック成長モデル)で表現することが可能であ ることが明らかとなった。

  第三章では 、イワフジ ツボ属の季 節的な個体 群動態の空間変異を複数の 空間スケー ルで明らか にすること を目的に、 北海道東部から九州南部に及 ぶ日 本 太平洋 沿岸の5つの地域に おける個体 群動態の季 節性と空間 変異性 を調べた。 その結果、 個体群増加 率と増加率 を決める過程の季節性は調査 した地域に 広く認めら れ、またそ の様式は緯 度に沿った地理的な変化があ ることが明 らかとなっ た。一方で 、増加率の 季節性の空間変異は地域間だ けでなく、 地域内でも 存在するこ とが明らか となった。また、個体群変動 の大きさの 時空間変異 は、季節と 地域で共通 したTaylorの冪乗則によって 説明できることが明らかとなった。

  第四章では 、潮位によ って特徴づ けられる本 種の垂直方向の分布範囲に 沿った個体 群動態の変 化を明らか にすること を目的に、北海道東部の個体 群を対象に 、個体群サ イズの変動 の大きさ、 個体群増加率、個体群増加率 を決める過 程の季節と 潮位による 違いを調べ た。その結果、個体群増加率 の確率的な 変動が大き くなること が原因で、 個体群変動サイズの変動の大 きさは分布 範囲の周辺 部ほど高く なることが 明らかとなった。また、個体 群サイズの 変動の大き さは岩礁間 でも大きく 異なり、そのばらっきはTayl orの冪乗則に よって説明 されること が明らかと なった。さらに、個体群増 加率やそれ を決定する 過程は、潮 位と季節に よって大きく異なっていた。

  これらの結果から、(1)個体群サイズの変動の大きさ、(2)個体群増加率、

(3)個体 群増加率を 決定する生態学的な過程は、それぞれ複数の空間スケー ルで 生 じる 季 節的 な 環境 変 動 の影 響 を受け て空間的に 異なってい ると結 論し た 。この ことは、イ ワフジツポ 属2種の 個体群動態 を理解する 上で、

複数 の 空間 ス ケー ル で生 じ る 季節 的 な環境 変動と環境 の空間異質 性の交 互作用を考 慮すること の重要性を 示唆してい る。また、イワフジッボの個 体群動態の 時空間変異 性を理解す る上で、個 体群動態モデルと個体群サイ ズの 平 均分 散 関係 を 同時 に 適 用す る ことが 極めて有効 であること が明ら かとなった。

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学位 論文審査の要旨 主査   准教授

副査   教   授      教    授      教    授      特任助教

野田 東 齊藤 仲岡 小泉

学 位 論 文 題 名

隆史 正剛      雅裕 逸郎

Seasonal and spatial variationslnpopulationdynamiCSOf     intertidalbarnaCleCぬ 施aja/uSSpp

( 潮 間 帯 に 生 息 す る フ ジ ツ ボ ( ( 珊 出ama/usspp. ) の 個 体 群 動 態 の 季 節 変 異 と     空 間 変 異 )

  生物個体群の時間変動におけるパターンとプ口セスを明らかにすることは生態学の中心課 題のーつであり、様々な生物種を対象にした研究が数多く行われてきた。しかしながら個体 群動態の季節性、個体群動態の変異陸と空間スケールの関連性、及び分布範囲に沿った空間 変異陸は未だ十分埋解されていない。一般に個体群動態の変動特陸を記述する際には、個体 数の時系列デ一夕に個体群動態モデルを当てはめることにより、個体群増加率を決定する過 程を推定するという手法と、個体群サイズの平均分散関係(Tayorのべき乗則)にもとづき個 体群サイズによって規格化した個体群変動性を求めるという手法が用いられることが多いも の の 、 こ れ ら ニ つ の 手 法 が 同 時 に 適 用 さ れ た 個 体 群 の 実 証 研 究 は 極 め て 少 な い 。   申請者は、岩礁潮間帯に生息するイワフジッポ属2種を対象に、(1)個体群サイズの変動 の大きさ、り個体群増加率、(3)個体群増加率を決定する生態学的な過程について、それぞ れ季節性と空間変異性を、複数の空間スケールで明らかにした。その方法は、本邦の太平洋 沿岸の 北緯31度か ら43度に わたる5地域に存在する88岩礁においてlO年間にわたり計測され たイワフジツボの被度の時系列データに対し、状態空間モデリングの枠組みに沿って、(1 個体群増加率を決定する諸過程の推定と測定誤差の影響を低減した個体群サイズの推定を行 い、(2)得られた個体群サイズの推定値を用いて平均分散関係を解析するという斬新なもの である。

  第二章では、三陸沿岸の個体群を対象に、被度の増加率を決める過程の強度と、その変化 の空間スケールにおける季節性を解析した。その結果、夏季と冬季では被度の増加率に加え、

密度依存的過程と密度独立的過程の強度とその影響する空間スケールも大きく異なることが 明らかとなった。さらに、固着陸生物においては個体群サイズの指標として汎用されてきた 被度についても、その変化が個体数の場合と同じ枠組頭口ジスティック成長モデル)で表現す ることが可能であることが明らかとなった。

  第三章では、より大きな空間範囲における季節的な個体群動態の空間変異性を解明するた

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め に 、 北 海 道 東 部 か ら 九 州 南 部 の 日 本 太 平 洋 沿 岸 の5つ の 地 域 に お け る 個 体 群 動 態 の 季 節 性 と 空 間 変 異 性 を 調 べ た 。 そ の 結 果 、 イ ワ フ ジ ッ ボ 属 の 個 体 群 増 加 率 と 増 加 率 を 決 め る 過 程 の 季 節 性 は 緯 度 に 沿 っ て 変 化 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。 ま た 、 増 加 率 の 季 節 性 は 地 域 間 だ け で な く 、 地 域 内 で も 大 き く 変 化 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。 そ の 一 方 で 、 個 体 群 サ イ ズ の 変 動 性 は 、 季 節 と 地 域 の 違 い に 関 わ ら ず 共 通 し たTaylorの べ き 乗 則 に よ っ て 説 明 で き る こ と が 明 ら か と な っ た 。

  第 四 章 で は 、 潮 位 に よ っ て 特 徴 づ け ら れ る 本 種 の 垂 直 方 向 の 分 布 範 囲 に 沿 っ た 個 体 群 動 態 の 変 化 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 に 、 北 海 道 東 部 の 個 体 群 を 対 象 に 、 個 体 群 サ イ ズ の 変 動 の 大 き さ 、 個 体 群 増 加 率 、 個 体 群 増 加 率 を 決 め る 過 程 の 季 節 と 潮 位 に よ る 違 い を 調 べ た 。 そ の 結 果 、 個 体 群 増 加 率 や そ れ を 決 定 す る 過 程 お よ び そ の 季 節 性 は 、 潮 位 に よ っ て 大 き く 異 な る こ と が わ か っ た 。 そ し て 、 個 体 群 増 加 率 の 確 率 的 な 変 動 が 大 き く な る こ と が 原 因 で 、 分 布 範 囲 の 周 辺 部 ほ ど 個 体 群 サ イ ズ の 変 動 が 大 き く な る こ と が 明 ら か と な っ た 。 ま た 、 同 じ 潮 位 で も 個 体 群 サ イ ズ の 変 動 の 大 き さ は 大 き く 異 な る こ と も 明 ら か と な っ た 。 そ の 一 方 で 、 個 体 群 サ イ ズ の 変 動 性 は 、 潮 位 や 季 節 の 違 い に 関 わ ら ず 共 通 し たTayorの べ き 乗 則 に よ っ て 説 明 で き る こ と が 明 ら か と な っ た 。

  以 上 の 結 果 に 元 に 、 第 五 章 で は 、 イ ワ フ ジ ッ ボ 属 の 個 体 群 動 態 を 理 解 す る 上 で 、 複 数 の 空 間 ス ケ ー ル で 生 じ る 季 節 的 な 環 境 変 動 と 環 境 の 空 間 異 質 性 の 交 互 作 用 を 考 慮 す る こ と の 重 要 性 を 指 摘 す る と と も に 、 個 体 群 動 態 の 時 空 間 変 異 性 を 理 解 す る 上 で 、 個 体 群 動 態 モ デ ル と 個 体 群 サ イ ズ の 平 均 分 散 関 係 を 同 時 に 適 用 す る こ と の 重 要 性 を 示 し た 。   本 研 究 は 、 個 体 群 の 時 空 間 変 異 陸 の 解 明 に お い て 新 し い 手 法 の 枠 組 み を 提 供 す る と と も に 、 得 ら れ た 結 果 は 個 体 群 サ イ ズ の 平 均 分 散 関 係 の 生 成 メ カ ニ ズ ム へ の 従 来 の 理 論 へ 疑 問 を 投 げ か け る も の で あ る 。 ゆ え に 審 査 委 員 一 同 は 、 こ れ ら の 成 果 を 高 く 評 価 し 、 ま た 研 究 者 と し て 誠 実 か つ 熱 心 で あ り 、 大 学 院 博 士 課 程 に お け る 研 鑽 や 修 得 単 位 な ど も あ わ せ 、 申 請 者 が 博 士

( 環 境 科 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

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参照

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