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VR 構造が動詞コピー構文に生起する状況

第3章 主節に生起する VR 構造―動詞コピー構文における VR 構造―

3.4. VR 構造が動詞コピー構文に生起する状況

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一 方 、E1と E2の 間 「 因 果 関 係 」 が 成 立 し な い 場 合 、E2 は 〈 - 予 期 性 〉 で あ る と 判 断 さ れ る 。〈 - 予 期 性 〉の 結 果 は 必 ず〈 - 制 御 性 〉で あ る が 、一 方 、〈 - 制 御 性 〉 の 結 果 に は〈 - 予 期 性 〉の み な ら ず 、〈 + 予 期 性 〉の 結 果 も あ る 。例 え ば 、前 掲 の 例(3-4)b“他 抽 大 烟 抽 上 瘾 了(彼 は 鴉 片 を 吸 っ て 、 依 存 症 に な っ た)”に つ い て い え ば 、結 果 事 象 の 実 現 が 行 為 者 の 意 向 や 気 持 ち に 反 し て お り 、〈 - 制 御 性 〉で あ る が 、 話 者 は 、 “抽 大 烟(ア ヘ ン を 吸 う こ と)”と “上 瘾(依 存 症 に な る こ と)”の 二 つ の 事 象 の 間 に「 因 果 関 係 」が 存 在 す る と い う 背 景 的 知 識 を 持 つ た め 、話 者 は〈 + 予 期 性 〉 の 結 果 と 認 識 す る 。 こ の 場 合 〈 制 御 性 〉 と 〈 予 期 性 〉 は 一 致 し な い 。

前 述 の よ う に 、 非 使 役 義 動 詞 コ ピ ー 構 文 の 構 文 的 な 意 味 は 動 作 行 為 或 い は 動 作 行 為 に 関 す る 事 物 の 〈 多 量 性 〉 を 表 す 。 一 方 、 使 役 義 動 詞 コ ピ ー 構 文 の 構 文 的 意 味 は あ る 結 果 状 態 が 〈 多 量 性 〉 を 備 え た 動 作 行 為 に よ っ て も た ら さ れ た も の で あ る と い う 因 果 関 係 を 表 す 。〈 制 御 性 〉 の 有 無 と い う 観 点 か ら み れ ば 、 両 タ イ プ は

〈 - 制 御 性 〉 と い う 点 に お い て 共 通 性 を 持 つ 。

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(3-39)他 养 花 养 死 了 。(彼 は 花 を 育 て て い る う ち に 、 花 が 枯 れ て し ま っ た) (3-40)他 炒 菜 炒 糊 了 。(彼 は 料 理 を 焦 が し て し ま っ た 。)

Rが 動 作 主 の 状 態 変 化 を 表 す[C 類]

+ (3-41)老 师 吃 饺 子 吃 腻 了 。(先 生 は ギ ョ ウ ザ を 食 べ 飽 き て し ま っ た 。)

(3-42)他 喝 啤 酒 喝 上 瘾 了 。(彼 は ビ ー ル を 飲 ん で い る う ち に 、 病 み つ き に な っ て し ま っ た)

Rが 第 三 関 与 者 の 状 態 変 化 を 表 す [D類]

+ (3-43)他 讲 笑 话 讲 乐 了 所 有 人 。(彼 は 冗 談 を 言 っ て 、す べ て の 人 を 笑 わ せ た 。) (3-44)爷 爷 砍 柴 砍 钝 了 两 把 斧 头 。(祖 父 が 芝 刈 り を し て し ま う と 、 斧 が 二 つ と も 切 れ 味 が 悪 く な っ た 。)

RがVに 対 す る 話 者 の 評 価 を 表 す [E類]

+ (3-45)他 来 学 校 来 晚 了 。(彼 は 学 校 に 来 る の が 遅 か っ た 。)

(3-46)我 买 东 西 买 贵 了 。(私 は 買 い 物 を し た が 、 高 か っ た 。)

※ 上 記 の 表 に お け る 「 + 」 は 生 起 す る 、 「-」 は 生 起 し な い 、 「 ±」 は あ る 条 件 の も と で の み 生 起 す る こ と を 意 味 す る 。

上 記 の 表 か ら 、VR 構 造 が 動 詞 コ ピ ー 構 文 に 生 起 す る 傾 向 を 以 下 の よ う に ま と め る こ と が で き よ う 。

(ⅰ)VR 構 造 に お け る R が V の 完 成 相 を 表 す 場 合 、 動 詞 コ ピ ー 構 文 に は 生 起 し 難 い 。

(ⅱ)VR 構 造 に お け る R が 受 動 者 の 状 態 変 化 を 表 す 場 合 、 そ の 状 態 変 化 は 〈 意 外 性 〉を 持 つ も の で あ れ ば 、動 詞 コ ピ ー 構 文 に 生 起 す る が 、〈 意 外 性 〉を 持 た な け れ ば 動 詞 コ ピ ー 構 文 に 生 起 難 い 。

(ⅲ)VR 構 造 に お け る R が 動 作 主 の 状 態 変 化 、 第 三 関 与 者 の 状 態 変 化 及 び 動 作 行

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為 の 結 果 に 対 す る 評 価 を 表 す 場 合 、VR 構 造 は 動 詞 コ ピ ー 構 文 に 生 起 す る 。

な ぜ 上 記 の よ う な 生 起 傾 向 を 呈 し て い る の か に つ い て は 、次 の よ う に 分 析 で き る 。 R が V の 〈 完 成 相 〉 を 表 す 場 合 、V の 表 す 動 作 そ れ 自 体 の 展 開 の 仕 方 を 表 す 。 よ っ て 前 項 動 詞Vが 表 す 動 作 は 個 別 的 な も の で な け れ ば な ら な い こ と を 意 味 す る 。 こ れ は 、 ま ず 動 作 行 為 の 〈 多 量 性 〉 を 含 ま れ る 動 詞 コ ピ ー 構 文 の 意 味 機 能 と 矛 盾 す る た め 、 生 起 し な い の で あ る 。 ま た 〈 制 御 性 〉 の 観 点 か ら 見 れ ば 、 動 作 主 は 自 ら 行 う 動 作 行 為 に 対 し 、 い つ 頃 終 了 さ せ る か は あ る 程 度 制 御 で き る た め 、 非 制 御 的 な 事 象 を 表 す と い う 動 詞 コ ピ ー 構 文 の 機 能 と 整 合 性 が 低 い の で あ る 。

VR構 造 に お け る R が 受 動 者 の 〈 + 意 外 性 〉 の 状 態 変 化 を 表 す 場 合 、 意 外 的 な 結 果 は 通 常 制 御 不 可 能 な も の で あ る た め 、 動 詞 コ ピ ー 構 文 に 生 起 し う る 。 一 方 、 も し 受 動 者 に 〈 - 意 外 性 〉 の 状 態 変 化 が 生 じ る 場 合 、 動 作 主 に よ る 〈 制 御 性 〉 が 強 ま る と 解 釈 さ れ る 。例 え ば 、“他 洗 衣 服 洗 干 净 了”と い う 文 で は 、「 服 が き れ い に な る こ と 」は 動 作 主 が「 服 を あ ら う 」目 的 で あ り 、望 む 結 果 で も あ る 。こ の 場 合 、 特 別 な 事 情 が な い 限 り 、 動 作 主 が 「 服 を 洗 う 」 と い う 動 作 行 為 を 遂 行 す れ ば 、 受 動 者 に “干 净(き れ い)”と い う 状 態 を 引 き 起 こ せ る 。 つ ま り 、 動 作 主 が 受 動 者 に 影 響 を 及 ぼ す 程 度 は か な り 高 い と い え る 。 こ の よ う な 〈 制 御 性 〉 が 高 い VR 構 造 は 動 詞 コ ピ ー 構 文 に は 生 起 し 難 い の で あ る 。

最 後 に 、VR 構 造 に お け る R が 動 作 主 の 状 態 変 化 、 第 三 関 与 者 の 状 態 変 化 及 び 動 作 行 為 の 結 果 に 対 す る 評 価 を 表 す 場 合 は 、 何 れ も 動 作 主 自 身 の 意 志 に よ っ て 制 御 で き る 結 果 で は な い た め 、 動 詞 コ ピ ー 構 文 に 生 起 で き る こ と に な る 。

3.5.第 3 章の まとめ

以 上 の 分 析 を 図 示 す る と 、 次 の よ う に な る 。

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【 表 6】

VR構 造 に お け る Rの 限 界 化 の 仕 方 VR構 造 の

〈 制 御 性 〉 の 程 度 (弱 → 強)

動 詞 コ ピ ー 構 文 と の 適 合 性

(低 → 高) Rが Vの 完 成 相 を 表 す

Rが 受 動 者 の 正 常 な 状 態 変 化 を 表 す Rが 受 動 者 の 意 外 的 な 状 態 変 化 を 表 す Rが 動 作 主 の 主 観 的 な 状 態 変 化 を 表 す Rが 第 三 関 与 者 の 状 態 変 化 を 表 す R が V の 結 果 に 対 す る 話 者 の 評 価 を 表 す

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