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VPIN の推定方法とパネル分析の方法

ドキュメント内 学位授与年月日 2020‑03‑21 (ページ 70-73)

3.3 TOPIX Core30 における VPIN と市場流動性

3.3.2 VPIN の推定方法とパネル分析の方法

本節では、①VPIN の推定方法、②VPIN を用いたパネル分析の方法の 2 つを説明する。

まず、VPIN の推定方法から説明する。本章での VPIN の推定方法は、Easley et al.(2012) とやや異なる。Easley et al.(2012)では、先に Volume bar を設定し、Bulk classification に よって、注文を買い主導の注文と売り主導の注文に分類していた。一方、ここでは、約定デ ータを直接、次の(3.9)式のルールに沿って売り主導の注文と買い主導の注文に分類する30

29 具体的には、銘柄コード「8604」を採用し、「6861」は非採用とした。

30 この分類の正当化は、東京証券取引所には制度化されたスペシャリストが存在せず、気 配スプレッドの内部での約定が行われないからである。このため、売り気配側で待機して

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𝑃𝑟𝑖𝑐𝑒𝑡≥ 𝑀𝑖𝑑𝑄𝑢𝑜𝑡𝑒𝑡=1

2(𝐴𝑠𝑘𝑃𝑟𝑖𝑐𝑒𝑡+ 𝐵𝑖𝑑𝑃𝑟𝑖𝑐𝑒𝑡) ⇒ 買い主導の約定としてカウント(𝑉𝜏𝐵) 𝑃𝑟𝑖𝑐𝑒𝑡< 𝑀𝑖𝑑𝑄𝑢𝑜𝑡𝑒𝑡 =1

2(𝐴𝑠𝑘𝑃𝑟𝑖𝑐𝑒𝑡+ 𝐵𝑖𝑑𝑃𝑟𝑖𝑐𝑒𝑡) ⇒売り主導の約定としてカウント(𝑉𝜏𝑆) (3.9)

(3.9)式は、時刻𝑡における約定価格𝑃𝑟𝑖𝑐𝑒𝑡が、仮想均衡価格31𝑀𝑖𝑑𝑄𝑢𝑜𝑡𝑒𝑡よりも高い場合、

均衡価格よりも高い価格での約定を望んだという意味で買い主導の注文と分類される、と いう分類ルールを示している。

続いて、分類された bucket ごとにオーダー・インバランスを計算する。本章では、1 日 を 50bucket となるように、時間で分割した。

最後に、得られたオーダー・インバランスを 1 日で平均して、VPIN の推定値とする。こ の推定手順は、図 3―1 に示す。

【図 3-1 VPIN の推定手順(bucket 作成から VPIN 算出まで)】

次に、VPIN を独立変数、流動性変数を従属変数としたパネル分析の方法を説明する。パ ネルは、TOPIX Core30 をダミー変数𝑖として作成し、日次単位𝑡で作成する。

𝐿𝑖𝑞𝑢𝑖𝑑𝑖𝑡𝑦𝑖,𝑡= 𝛼 + 𝛽1∙ 𝑉𝑃𝐼𝑁𝑖,𝑡+ 𝛽2∙ 𝐶𝑜𝑛𝑡𝑟𝑜𝑙𝑖,𝑡+ 𝛽3∙ 𝑑𝑢𝑚𝑚𝑦𝑖+ 𝜀̃𝑖,𝑡

(3.10)

(3.10)式の従属変数である𝐿𝑖𝑞𝑢𝑖𝑑𝑖𝑡𝑦𝑖,𝑡は流動性を評価する諸変数である。ここでは、

Quote Spread, Effective Spread, Price Impact, Depth_1, Depth_5, Depth10 の 6 つを用い

いる指値注文に相対して約定した注文は、買い主導の注文によるものだと見なせることに なる。NYSE のようなスペシャリストの存在する市場では、気配スプレッド内での約定が 頻繁に発生し、またレコードへの記載時刻にもタイムラグが存在している。そのため、

Lee-Ready(1991)algorithm のような特殊なデータ処理が要求される。また、その他にも VPIN 推定の計算コストを抑えるために、この分類方式を用いている。

31 𝑀𝑖𝑑𝑄𝑢𝑜𝑡𝑒𝑡は仲値と呼ばれ、時刻𝑡における「仮想均衡価格」と解釈されている。すなわ

ち、投資家は時刻𝑡において、資産の価格は𝐴𝑠𝑘𝑃𝑟𝑖𝑐𝑒𝑡以上でもなく、𝐵𝑖𝑑𝑃𝑟𝑖𝑐𝑒𝑡以下でもな いと合意しているとすれば、均衡価格はその中間のいずれかに存在すると考えられる。そ こで、𝑀𝑖𝑑𝑄𝑢𝑜𝑡𝑒𝑡を仮想の均衡価格と仮定するというものである。

65 る。それぞれの定義は以下のとおりである。

𝑄𝑢𝑜𝑡𝑒 𝑆𝑝𝑟𝑒𝑎𝑑𝑖,𝑡= 𝐴𝑠𝑘𝑃𝑟𝑖𝑐𝑒𝑖,𝑡− 𝐵𝑖𝑑𝑃𝑟𝑖𝑐𝑒𝑖,𝑡

(3.11) 𝐸𝑓𝑓𝑒𝑐𝑡𝑖𝑣𝑒 𝑆𝑝𝑟𝑒𝑎𝑑𝑖,𝑡= |2(𝑃𝑟𝑖𝑐𝑒𝑖,𝑡− 𝑀𝑖𝑑𝑃𝑟𝑖𝑐𝑒𝑖,𝑡)|

(3.12) 𝑃𝑟𝑖𝑐𝑒 𝐼𝑚𝑝𝑎𝑐𝑡𝑖,𝑡= |𝑀𝑖𝑑𝑃𝑟𝑖𝑐𝑒𝑖,𝑡+1− 𝑀𝑖𝑑𝑃𝑟𝑖𝑐𝑒𝑖,𝑡|

(3.13) 𝐷𝑒𝑝𝑡ℎ_1𝑖,𝑡= 𝐿𝑖𝑚𝑖𝑡 𝑂𝑟𝑑𝑒𝑟 𝑜𝑛 1𝑠𝑡 𝑄𝑢𝑜𝑡𝑒𝑖,𝑡

(3.14) 𝐷𝑒𝑝𝑡ℎ_5𝑖,𝑡= ∑ 𝐿𝑖𝑚𝑖𝑡 𝑂𝑟𝑑𝑒𝑟 𝑜𝑛 𝑗 𝑡ℎ 𝑄𝑢𝑜𝑡𝑒𝑖,𝑡

5 𝑗=1

(3.15) 𝐷𝑒𝑝𝑡ℎ_10𝑖,𝑡= ∑ 𝐿𝑖𝑚𝑖𝑡 𝑂𝑟𝑑𝑒𝑟 𝑜𝑛 𝑗 𝑡ℎ 𝑄𝑢𝑜𝑡𝑒𝑖,𝑡

10 𝑗=1

(3.16)

(3.11)式で定義される Quote Spread はマーケットメーカーの提示する気配ベースでのス プレッドであり、市場流動性を表す代表的な変数である。Quote Spread は、トレーダーが 最良気配で 1 単位の取引を行う際に支払うと予想される取引コストであり、小さいほど流 動性が高いと考えられている。(3.12)式で定義される Effective Spread は、実際に取引され た約定価格𝑃𝑟𝑖𝑐𝑒と仲値との差であり、分割された bucket の時点ごとに差分を計算する。

Quote Spread が取引事前のスプレッドを表すのに対し、Effective Spread は取引事後の実際 に支払われた取引コストである。Effective Spread も、小さいほど流動性が高いと解釈する。

Price Impact は、時刻𝑡に行われた約定が、次の𝑡 + 1までにどれだけ仲値を動かしたかを表 している。仲値は仮想の均衡価格であると考えられるため、取引がどれだけ均衡価格を変化 させたかを示している。Price Impact は小さいほど、市場の厚みが大きく、市場の流動性は 高いと理解できる。(3.14)式から(3.16)式で与えられる Depth_1、_5 および_10 は、指値板 に執行された指値注文数である。それぞれ、最良気配から 1 番目、5 番目、10 番目までの 累積注文数を用いている。Depth は大きいほど、指値板が注文数で満たされているため、い つでも注文が執行できるという意味で流動性が高いと理解される。

各流動性変数は、一様に流動性変数と呼ばれるものの、その性質が大きく異なると理解さ れている。2 種類の Spread は、投資家一般が支払う取引コストであり、広く多くの投資家 にとって、重要な指標だと考えられている。これに対し、Price Impact は、資産の価値を知 る情報トレーダーにとって重要な指標だと考えられている。これは、情報トレーダーがいか に自身の持つ情報を流出させずに、均衡価格を変化させないかを重要視するためである。ま

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た、Depth は、投資信託や年金基金などの大口注文トレーダーが、いかに一度に大口注文を 執行できるかという流動性消費のポテンシャルに関わるため、主に大口注文投資家にとっ て、重要な指標だと考えられている。

(3.10)式の独立変数は、推定された VPIN およびコントロール変数と銘柄ダミーである。

コントロール変数は、Price, Market Capital, Volatility, Trade Size を加えている。Price は、

価格の対数値、Market Capital は時価総額の対数値、Volatility は収益率のボラティリティ、

Trade Size は約定された注文の平均サイズを用いている。流動性変数、VPIN、コントロー ル変数は、作成するパネルに合わせ 1 日ごとに平均している。

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