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逐次トレードモデルにおける証券市場の効率性―流動性と価格発見―

ドキュメント内 学位授与年月日 2020‑03‑21 (ページ 37-40)

2.3 ディーラー方式と逐次トレードモデルにおける 証券市場の効率性のダイナミクス

2.3.3 逐次トレードモデルにおける証券市場の効率性―流動性と価格発見―

30 る。

𝐵2,𝑆𝑆< 𝐵1< 𝑀1< 𝐵2,𝐵𝑆= 𝐴2,𝑆𝐵< 𝐴1< 𝐴2,𝐵𝐵

(2.70)

証券ディーラーは、買い注文が 2 期連続で到来した場合、証券の真の価値がより高いと 推定する。したがって、売り価格𝐴2,𝐵𝐵が最も高い価格になるのは自然である。逆のこと が、買い価格についても成立する。

以上のように、逐次的トレードモデルでは、注文の逐次的な到来に対して証券ディーラ ーが逐次的に価格を更新し続けるという、価格のダイナミクスを特徴付けることができ る。この利点を使用して、次節では本節で導出された価格のダイナミクスをもとに、証券 市場の流動性と価格発見力のダイナミクスも分析することとする。

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クが高まるからである。証券ディーラーは、このリスクを事前に織り込んで、ビッド・ア スク・スプレッドを広げて提示するのである。

第 2 期におけるビッド・アスク・スプレッドは、第1期に実現した注文の種類で場合分 けして定義する。第 1 期に買い注文が到来したことを所与とするときの、第 2 期のビッ ド・アスク・スプレッドは、

𝑆2,𝐵=𝐴2,𝐵𝐵− 𝐵2,𝐵𝑆

2

(2.73)

とし、第 1 期に売り注文が到来したことを所与とするときのビッド・アスク・スプレッド は、

𝑆2,𝑆=𝐴2,𝑆𝐵− 𝐵2,𝑆𝑆 2

(2.74)

と定義する。それぞれ、第 2 期の買い価格と売り価格を代入すると

𝑆2,𝐵=1

2{𝜇(1 − 𝜇)𝑣 − 𝜇(1 + 𝜇)𝑣}

(2.75) 𝑆2,𝑆=1

2{𝜇(1 + 𝜇)𝑣 − 𝜇(1 − 𝜇)𝑣}

(2.76)

となる。したがって、第 1 期と第2期のビッド・アスク・スプレッドについて、次の命題 2.9 が成立する。

・命題 2.9(逐次トレードモデルにおけるビッド・アスク・スプレッドの更新)

逐次トレードモデルの仮定のもとで、第 1 期と第2期のビッド・アスク・スプレッドの 大小関係について、

𝑆2,𝐵− 𝑆1= −1

2𝜇2(𝑣 + 𝑣) < 0

(2.77)

32 𝑆2,𝑆− 𝑆1=1

2𝜇2(𝑣 + 𝑣) > 0

(2.78) となる。

命題 2.9 における(2.77)式の主張は、トレードが繰り返されるほど、証券ディーラーが 証券の真の価値を学習し、流動性が改善するということである。市場構造、例えば情報ト レーダーの人口比率などが不変であれば、証券市場はより効率的に形成されていく。逆 に、(2.78)からはビッド・アスク・スプレッドが拡大していく様子を理解することができ る。逐次トレードモデルからは、このような流動性の変動に関する含意を引き出すことが できる。

続いて、価格発見力に分析を移す。逐次トレードモデルでは、証券価格のマルチンゲー ル性に焦点を当てる。マルチンゲールとは、将来の証券価格の予測が現在の証券価格に一 致するという性質を指し、数学的には次の(2.22)式が成り立つことと定式化される。

𝐸[𝑝𝑡+1|𝛺𝑡] = 𝑝𝑡

(2.79)

いま、第 1 期に買い注文を観察し、売り価格𝐴1を提示した証券ディーラーが第2期の証 券価格を予測するとする。第 2 期の証券価格の予想は、確率 1/2 で売り注文が来た場合に 提示する𝐵2,𝐵𝑆と確率 1/2 で買い注文が来た場合に提示する𝐴2,𝐵𝐵の期待値となるので、次の (3.80)式となる。

𝐸[𝑝𝑡+1|𝛺𝑡] =1

2𝐴2,𝐵𝐵+1 2𝐵2,𝐵𝑆

(2.80)

上式について(2.67)式と(2.68)式を代入すると、命題 2.10 が導かれる。

・命題 2.10(逐次トレードモデルにおける証券価格のマルチンゲール性)

逐次トレードモデルの仮定のもとで、第1期に買い注文を受け取った証券ディーラーの 第 2 期の予想価格について、

𝐸[𝑝2|𝛺1] = 𝐴1

(2.81) が成立する。

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命題 2.10 は、将来の価格について現在で最良の予測が行われていることを示している。

第1期までに入手できる情報では、現在の証券価格と将来の証券価格の間で裁定を行う機 会は存在しない。したがって、逐次トレードモデルの証券価格はセミストロングフォーム で効率的な市場が形成されていることになる。もし、現実の証券市場でセミストロングフ ォームな情報効率性が成り立っているとするならば、証券価格にマルチンゲール性が観察 されるはずである。これは実証分析の上では、現在の情報から将来の価格に対する傾向的 な自己相関が存在しないことを検定することである。この理論的背景を使用した実証分析 の手法については、2.5.1 の分散比検定で解説される。

以上のように、逐次トレードモデルからは価格発見力の動学的な性質を記述することが できる。

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