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情報トレーダーの需要関数とマーケットメーカーの価格推定

ドキュメント内 学位授与年月日 2020‑03‑21 (ページ 43-46)

2.4 バッチマーケット方式と戦略的トレードモデルにおける証券市場の効率性

2.3.2 情報トレーダーの需要関数とマーケットメーカーの価格推定

本節では、以上のモデルの下で情報トレーダーの需要関数を導出し、マーケットメーカー の価格決定について分析する。

情報トレーダーは、証券の真の価値のうちマクロ要因部分𝑣の実現値を知った上で、次 の(2.85)式で表される最大化問題を解く。

max𝑋𝐼 E[(𝜃̃ − 𝑝)𝑋𝐼|𝑣]

(2.85)

ここで、マーケットメーカーの線形推定(2.84)式を所与とすると、最大化問題は次の ように変形できる。

max𝑋𝐼 E[{𝜃̃ − 𝜇 − 𝜆(𝑋𝐼+ 𝑋̃𝑛)}𝑋𝐼|𝑣]

(2.86)

(2.86)式を𝑋𝐼について微分し一階の条件を用いると、情報トレーダーの需要関数は

(2.87)式と求まる。

37 𝑋𝐼 =𝐸[𝜃̃|𝑣] − 𝜇

2𝜆

(2.87)

ここで、正規分布の条件付き期待値の計算から、

𝐸[𝜃̃|𝑣] = 𝑣

なので、情報トレーダーの需要関数は、(2.88)式となる。

𝑋𝐼 =𝑣 − 𝜇 2𝜆

(2.88)

続いて、マーケットメーカーの価格推定を考察する16。いま、マーケットメーカーの価 格予測は(2.84)式で与えられている。ところで、条件付き期待値の計算から、(2.84)式 は(2.89)式でもある。

𝑝̃ = 𝐸[𝜃̃] +𝐶𝑜𝑣[𝜃̃, 𝑌̃]

𝑉[𝑌̃] {𝑌̃ − 𝐸[𝑌̃]}

(2.89)

(2.84)式と(2.89)式を一致させるように係数を比較すると、パラメーター𝜇と𝜆について 次のように特定することができる。

𝜇 = 𝐸[𝜃̃] −𝐶𝑜𝑣[𝜃̃, 𝑌̃]

𝑉[𝑌̃] ∙ 𝐸[𝑌̃]

(2.90) 𝜆 =𝐶𝑜𝑣[𝜃̃, 𝑌̃]

𝑉[𝑌̃]

(2.91)

16 情報トレーダーがマクロ要因𝑣̃の実現値𝑣を知っているのに対し、マーケットメーカーは これを知らない。よって、マーケットメーカーかた見た情報トレーダーの需要関数𝑋̃𝐼 =

𝑣̃−𝜇

2𝜆も確率変数になることに注意する。

38

情報トレーダーの需要関数(2.88)式を(2.91)式に代入して計算すると、

𝐶𝑜𝑣[𝜃̃, 𝑌̃] = 1 2𝜆𝜎𝑣2

(2.92) 𝑉[𝑌̃] = 1

4𝜆2𝜎𝑣2+ 𝜎𝑛2

(2.93) となる。(2.92)式と(2.93)式を(2.91)式に再度代入し、𝜆について整理すると、

𝜆 =1 2√𝜎𝑣2

𝜎𝑛2

(2.94)

と定まる。この結果を(2.88)式と(2.90)式に代入すると、𝜇と𝑋𝐼が明示的に導出され る。

以上の結果を、命題 2.11 としてまとめておく。

命題 2.11(戦略的トレードモデルにおける証券価格)

戦略的トレードモデルの仮定の下で、次の情報トレーダーの需要関数と証券価格の組み 合わせによる均衡が成立する。

情報トレーダーの需要関数:

𝑋𝐼 =𝑣 − 𝜇 2𝜆

(2.95)

マーケットメーカーの価格推定:

𝑝̃ = 𝜇 + 𝜆(𝑋̃𝐼+ 𝑋̃𝑛)

(2.96) 𝜇 = 𝑣̅

(2.97)

39 𝜆 =1

2√𝜎𝑣2 𝜎𝑛2

(2.98)

命題 2.11 について説明する。情報トレーダーの需要関数(2.95)式は、私的情報によるフ ァンダメンタルの予想値と平均的なファンダメンタルの偏差(𝑣 − 𝑣̅)が大きくなるほど、よ り大きくなる。1

𝜆は、その大きさを増幅させる情報トレーダーによる注文の積極性と解釈す ることができる。この積極性はプライス・インパクト𝜆が大きくなるほど小さくなる。な ぜなら、𝜆が大きいほど1単位の注文がより大きな価格上昇をもたらし、情報トレーダー にとって変動コスト負担を増やすからである。

マーケットメーカーの価格推定(2.96)式は、平均的なファンダメンタルの予測𝑣̅にプライ ス・インパクト項を加えた形となる。プライス・インパクト係数𝜆(2.98)式は、証券の価値 のばらつき𝜎𝑣2が大きくなるほど大きくなる。これは、ファンダメンタルのバラつきが大き い時、マーケットメーカーはより過敏に価格を上下させることで、正確に証券価値を追随 しようとすることを示している。また、ノイズトレーダーからの注文𝜎𝑛2が少ないと予期さ れるときに、𝜆は大きくなる。これは、総注文数に占めるノイズトレーダーの割合が小さ くなることで、マーケットメーカーが情報トレーダーの注文を識別しやすくなり、より確 信をもって価格を変動させるためだと解釈できる。

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