50 al.(2017)指標も研究されている。
本論文では、価格発見力の指標として VPIN を第 3 章にて活用しており、流動性と価格 発見力の関係性を明らかにするために用いられている。
51
補論 A
補論 A では、命題 2.2 の結果を証明する。価格付けパラメーター𝑎、𝑏、そして𝑐について 𝑎、𝜎𝜀2、𝜎𝑛2および𝜎𝑣2に関する導関数を導出する。
𝜕𝑎
𝜕𝑎= −2𝑎𝜎𝜀4𝜎𝑛2(2𝜎𝜀2+ 𝜎𝑣2)
{2𝜎𝑣2+ 𝑎2𝜎𝜀2𝜎𝑛2(𝜎𝑣2+ 2𝜎𝜀2)}2< 0
(A.1)
𝜕𝑎
𝜕𝜎𝜀2= −2𝜎𝑛2(𝑎2𝜎𝜀4𝜎𝑛2− 𝜎𝑣2)
{2𝜎𝑣2+ 𝑎2𝜎𝜀2𝜎𝑛2(𝜎𝑣2+ 2𝜎𝜀2)}2< 0
(A.2)
𝜕𝑎
𝜕𝜎𝑛2= −2𝜎𝜀2𝜎𝑣2
{2𝜎𝑣2+ 𝑎2𝜎𝜀2𝜎𝑛2(𝜎𝑣2+ 2𝜎𝜀2)}2< 0
(A.3)
𝜕𝑎
𝜕𝜎𝑣2= −𝜎𝜀2𝜎𝑛2(𝑎2𝜎𝜀2𝜎𝑛2+ 2)
{2𝜎𝑣2+ 𝑎2𝜎𝜀2𝜎𝑛2(𝜎𝑣2+ 2𝜎𝜀2)}2< 0
(A.4)
𝜕𝑏
𝜕𝑎= −4𝑎𝜎𝜀4𝜎𝑛2𝜎𝑣2
{2𝜎𝑣2+ 𝑎2𝜎𝜀2𝜎𝑛2(𝜎𝑣2+ 2𝜎𝜀2)}2< 0
(A.5)
𝜕𝑏
𝜕𝜎𝜀2= −𝑎2𝜎𝜀2𝜎𝑛2𝜎𝑣2(𝑎2𝜎𝜀2𝜎𝑛2+ 4) {2𝜎𝑣2+ 𝑎2𝜎𝜀2𝜎𝑛2(𝜎𝑣2+ 2𝜎𝜀2)}2< 0
(A.6)
𝜕𝑏
𝜕𝜎𝑛2= −2𝑎2𝜎𝜀4𝜎𝑣2
{2𝜎𝑣2+ 𝑎2𝜎𝜀2𝜎𝑛2(𝜎𝑣2+ 2𝜎𝜀2)}2< 0
(A.7)
𝜕𝑏
𝜕𝜎𝑣2= 𝑎2𝜎𝜀4𝜎𝑛2(𝑎2𝜎𝜀2𝜎𝑛2+ 2)
{2𝜎𝑣2+ 𝑎2𝜎𝜀2𝜎𝑛2(𝜎𝑣2+ 2𝜎𝜀2)}2> 0
(A.8)
𝜕𝑐
𝜕𝛼= −4𝑎𝜎𝜀6𝜎𝑛2𝜎𝑣2
{2𝜎𝑣2+ 𝑎2𝜎𝜀2𝜎𝑛2(𝜎𝑣2+ 2𝜎𝜀2)}2< 0
(A.9)
𝜕𝑐
𝜕𝜎𝜀2=𝑎2𝜎𝜀4𝜎𝑛4(2𝜎𝜀4+ 2𝜎𝜀2𝜎𝑣2+ 𝜎𝑣4) + 2𝑎2𝜎𝜀2𝜎𝑛2𝜎𝑣2(𝜎𝜀2+ 2𝜎𝑣2) + 4𝜎𝑣4
{2𝜎𝑣2+ 𝑎2𝜎𝜀2𝜎𝑛2(𝜎𝑣2+ 2𝜎𝜀2)}2 > 0
(A.10)
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𝜕𝑐
𝜕𝜎𝑛2= −2𝑎2𝜎𝜀6𝜎𝑣2
{2𝜎𝑣2+ 𝑎2𝜎𝜀2𝜎𝑛2(𝜎𝑣2+ 2𝜎𝜀2)}2< 0
(A.11)
𝜕𝑐
𝜕𝜎𝑣2= 𝑎2𝜎𝜀6𝜎𝑛2(𝑎2𝜎𝜀2𝜎𝑛2+ 2)
{2𝜎𝑣2+ 𝑎2𝜎𝜀2𝜎𝑛2(𝜎𝑣2+ 2𝜎𝜀2)}2> 0
(A.12)
以上の結果をまとめると、命題 2.2 で示した比較静学が成立する。(証明終わり)
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補論 B
補論 B では、命題 2.3 の結果を証明する。価格発見力𝐷について𝑎、𝜎𝜀2、𝜎𝑛2および𝜎𝑣2に関 する導関数を導出する。
𝜕𝐷
𝜕𝑎 = −2𝑎𝜎𝑛2𝜎𝑣4
{𝜎𝜀2{𝜎𝑣2+ 𝑎2𝜎𝜀2𝜎𝑛2(𝜎𝑣2+ 𝜎𝜀2)}}2< 0
(B.1)
𝜕𝐷
𝜕𝜎𝜀2=−{𝑎4𝜎𝜀8𝜎𝑛4+ 2𝑎2𝜎𝜀2𝜎𝑛2𝜎𝑣2(𝜎𝑣2+ 𝜎𝜀2) + 𝜎𝑣4} {𝜎𝜀2{𝜎𝑣2+ 𝑎2𝜎𝜀2𝜎𝑛2(𝜎𝑣2+ 𝜎𝜀2)}}2 < 0
(B.2)
𝜕𝐷
𝜕𝜎𝑛2= −𝑎4𝜎𝜀4𝜎𝑛4
{𝜎𝜀2{𝜎𝑣2+ 𝑎2𝜎𝜀2𝜎𝑛2(𝜎𝑣2+ 𝜎𝜀2)}}2< 0
(B.3)
𝜕𝐷
𝜕𝜎𝑣2= −𝑎2𝜎𝑣4
{𝜎𝜀2{𝜎𝑣2+ 𝑎2𝜎𝜀2𝜎𝑛2(𝜎𝑣2+ 𝜎𝜀2)}}2< 0
(B.4)
以上の結果をまとめると、命題 2.3 で示した比較静学が成立する。(証明終わり)
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55
3 章 日本株式市場における情報の非対称性と市場流動性
213.1 はじめに
本章は、日本の株式市場を対象に情報の非対称性を推定するとともに、市場流動性とその 関連を明らかにするものである。
1970 年代に情報の非対称性に関する分析手法が確立して以降、ファイナンス分野におい ても、情報の非対称性が資産価格や証券市場の質(Market quality)にどのように影響してい るかは議論されてきた。
さかのぼれば、証券市場における情報の重要性を指摘した初期の研究に、Fama(1970)が ある。Fama(1970)は、効率市場仮説の概念を提唱し、価格が含有する情報の質によって、
市場の効率性が区分できることを指摘した。私的情報まで反映した価格形成は、ストロング フォームで効率的であり、情報をもとにした裁定機会がないばかりか、価格が資産のファン ダメンタルを完全に伝達するという意味で、情報の非対称性も消失する効率的な市場であ ると考えられる。
その後、情報の非対称性が市場流動性に及ぼす影響は、マイクロストラクチャーの分野で 盛んに分析されてきた。Grossman and Stiglitz(1980)、Glosten and Milgrom(1985)そして Kyle(1985)はその代表である。一般に、情報の非対称性の高い市場では、情報劣位な投資家 が逆選択されるリスクを回避するために、投資行動を消極化する。このことが、市場の流動 性を低下させる要因になると考えられている。Glosten and Milgrom(1985)は、情報の非対 称性が、ビット・アスク・スプレッドの決定要因であることを理論的に示し、Kyle(1985)は プライス・インパクトが、情報の非対称性の拡大によって、増加することを示している。
Grossman and Stiglitz(1980)は、完全に情報効率的な市場が存在しえないことを逆説的に考 察している。また、バブルの発生やリスクプレミアムの増加などを、非対称情報に起因する とする研究は数多く存在する。
以上のように、情報の非対称性は、証券市場の分析において広く研究されてきた。しかし その多くは理論研究が先行するもので、実証研究において、非対称情報の存在を検証する方 法や流動性との関連を論じる研究は、発展が乏しかった。私的情報の有無を数値化する手法 が未確立であるとともに、隠匿されがちな私的情報を計測することが困難であるためであ る。
しかしながら、近年高頻度データが活用されるようになり、投資家の取引行動から情報の 非対称性を計測しようとする試みが生まれ始めている。Easley et al.(1996)モデルは、情報
21 本章の内容は、松本(2018)を加筆・修正したものである。
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の非対称性を、売買行動から推定した先駆的な研究である。
本章では、Easley et al.(1996)モデルをベースに発展し、Easley et al.(2008)および Easley et al.(2012)で提案された VPIN モデルを用いて、日本の株式市場における情報の非対称性 の存在を分析する。さらに、VPIN と市場流動性との関連に着目することで、情報の非対称 性が流動性を低下させているかを検証する。具体的には、TOPIX Core30 銘柄を対象に、パ ネルデータを作成し、VPIN を独立変数とするパネル分析を行った。TOPIX Core30 は、日 本の株式市場を代表する時価総額の大きな銘柄で構成されており、取引頻度も多いことに 加え、指数商品や ETF への組み入れも多いことから、最適執行の関心が強いと考えられる。
推定結果により、VPIN が上昇するにつれて、ビット・アスク・スプレッドやプライス・
インパクトなどの取引コストが、増加しているという結果を得ている。これは、理論研究と 整合的な結果であり、実証的な検証を欠いていた、情報の非対称性と市場流動性の関係に裏 付けを与えるものとなった。また、一部、デプス(指値板の厚み)において、理論研究が予 測できていない投資行動が発見された。板の厚みは、ビットサイドでより敏感に反応し、最 良気配に集中する、つまり最良気配から離れた価格では、流動性が失われているというもの である。
本章の明らかにした点は、次の通りである。まず、VPIN を短期的な価格変動の予測指標 としてではなく、市場に到来する情報量として利用し、流動性との関連性を明らかにしたこ とである。これは、高頻度データの枠組みで、流動性の変化を説明する研究への貢献である と考えている。また、長らく理論分析が先行してきた情報の非対称性と流動性の関係の実証 的な検証となった点である。最後に、既存の研究が解決しきれていない、新しいファクトフ ァインディングを得た点である。
本章の構成は、以下のとおりである。まず、3.2 では情報の非対称性の推定方法に関する 先行研究を整理する。3.2.1 では、その中でも中心的なモデルである PIN について取り上げ、
3.2.2 では、派生的な研究および VPIN について論じる。3.3 では、ティックデータを用い た VPIN の推定とパネル分析を行う。3.3.1 で、データセレクションについて説明したあと、
3.3.2 では、VPIN の推定方法とパネル分析の方法を詳説する。3.3.3 では、推定結果を示し、
その結果に解釈と考察を加える。3.4 では、本章の結論と残された課題を述べる。
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