Rn のn−1次元部分アフィン空間を超平面という. 例えばR2内の直線やR3 内の平面は超平面である.
x0+W を超平面とすると, dimW⊥= 1であるから,aをW⊥ の基底とすればW =⟨a⟩⊥ となる. つまり, 超平面とはx0+⟨a⟩⊥ (a̸=0)の形をした部分アフィン空間に他ならない. a を超平面の法ベクトル(また は法線ベクトル)という. x0= (x(0)i ), a= (ai)とすると,x= (xi)∈Rn に対して
x∈x0+⟨a⟩⊥ ⇐⇒ (a,x−x0) = 0 ⇐⇒ a1(x1−x(0)1 ) +a2(x2−x(0)2 ) +· · ·+an(xn−x(0)n ) = 0 が成り立つ. 最後の等式を超平面x0+⟨a⟩⊥ の方程式と呼ぶ. b=−∑n
i=1aix(0)i と置けば,方程式は a1x1+a2x2+· · ·+anxn+b= 0
とも書ける. また, x= (xi)∈Rn と超平面x0+⟨a⟩⊥ との距離は (a,x−x0)
∥a∥2 a
=(a,x−x0)
∥a∥ =|a1x1√+a2x2+· · ·+anxn+b| a21+a22+· · ·+a2n により与えられる.
x0,x1,x2, . . . ,xn−1 ∈ Rn は一般の位置にあるとし, yj = xj −x0 (1 ≤ j ≤ n−1) と置く. この とき, L = x0+⟨y1,y2, . . . ,yn−1⟩ はx0,x1,x2, . . . ,xn−1 を含む (ただひとつの) 超曲面である. いま y1,y2, . . . ,yn−1 のベクトル積y1×y2× · · · ×yn−1 (cf.§17.4)を a と置くと, aは Lの法ベクトルを与 える. つまりL=x0+⟨a⟩⊥. また,y=x−x0 と置くと,ベクトル積の定義より
(a,y) =y1y2 . . . yn−1 y となるが,この行列式は
1 1 1 . . . 1 1
x0 x1 x2 . . . xn−1 x =
1 0 0 . . . 0 0 0 y1 y2 . . . yn−1 y に一致する. 以上より,超平面L の方程式は
1 1 1 . . . 1 1
x0 x1 x2 . . . xn−1 x = 0 により与えられることがわかる.
問 F.8 L1, L2, . . . , Lrを Rn 内の超平面,ai を Li の法ベクトルとする. このとき,a1,a2, . . . ,ar が1 次 独立ならば,L1∩L2∩ · · · ∩Lr はn−r次元の部分アフィン空間であることを示せ.
演習問題
F.1 Rn の空でない部分集合 Lに対して次の条件(a), (b)は互いに同値であることを示せ:
(a) L は部分アフィン空間.
(b) 任意のx,x′∈Lとスカラーt に対して(1−t)x+tx′∈L.
F.2 Rn の 2つの部分アフィン空間の共通部分は,空集合でなければ部分アフィン空間であることを示せ.
F.3 f :Rn→Rmを線型写像とする.
(1) Rn の部分アフィン空間のf による像は(Rmの)部分アフィン空間であることを示せ.
(2) Rm の部分アフィン空間のf による逆像は, 空集合でなければ(Rn の)部分アフィン空間であるこ とを示せ.
F.4 x0,x1,x2, . . . ,xr∈Rn とy0,y1,y2, . . . ,ys∈Rn に対して次の同値性を示せ:
y0+⟨y1−y0,y2−y0, . . . ,ys−y0⟩ ⊂x0+⟨x1−x0,x2−x0, . . . ,xr−x0⟩
⇐⇒
⟨ ( 1 y0
) ,
( 1 y1
) ,
( 1 y2
) , . . . ,
( 1 ys
) ⟩
⊂
⟨ ( 1 x0
) ,
( 1 x1
) ,
( 1 x2
) , . . . ,
( 1 xr
) ⟩ .
F 幾何学的説明 155 F.5 (1) t(x0, y0), t(x1, y1),t(x2, y2)∈R2が一般の位置にあるとき,これらを頂点とする三角形の面積は
1 2
1 1 1
x0 x1 x2
y0 y1 y2
の絶対値に一致することを示せ.
(2) t(x0, y0, z0),t(x1, y1, z1),t(x2, y2, z2),t(x3, y3, z3)∈R3 が一般の位置にあるとき, これらを頂点と する四面体(三角錐)の体積は
1 6
1 1 1 1
x0 x1 x2 x3 y0 y1 y2 y3
z0 z1 z2 z3
の絶対値に一致することを示せ.
G 内積とデータ解析
本節では,計量ベクトル空間の理論の立場から多変量データ解析の初歩を概説する. 以下ではスカラーの 範囲はRとし,数ベクトル空間Rm を標準的な内積により計量ベクトル空間と見なす.
G.1 基礎概念
40 人のクラスで5 教科の試験を実施すると, その得点の一覧表は (40,5) 型の行列と見なすことができ
る. 同様に,m人(あるいはm個)の対象にn種類の試験や調査を実施すれば(m, n)型の行列が得られる.
上で挙げた例の場合だと,行列の第i行はi番目の人の得点を表し,第j 列はj 番目の教科の得点を表して いる.
(xij) =(
x1x2 . . . xn)
を上のようにして得られた行列とするとき, xj:= 1
m
∑m i=1
xij =(xj,1) m をxj の平均といい,
e
xj :=xj−xj1=
x1j −xj x2j −xj
... xmj−xj
を偏差ベクトルという. ここで1は全ての成分が1であるようなm次のベクトルを表す. また, Cov(xj,xk) := 1
m
∑m i=1
(xij−xj)(xik−xk) =(xej,xek) m をxj と xk の共分散といい,
Var(xj) := Cov(xj,xj) = 1 m
∑m i=1
(xij−xj)2= ∥exj∥2 m
をxj の分散という. Var(xj)はxj の成分のバラツキ具合を測る量で, Var(xj) = 0であることはexj =0, すなわちx1j=x2j=· · ·=xmj と同値である. なお
√
Var(xj) = ∥e√xj∥ m をxj の標準偏差という.
以下では,簡単のためn= 2であるとする. 得られた行列を
(x y)
=
x1 y1
x2 y2 . . . . xm ym
と書くことにし, x,y の平均と偏差ベクトルをx, y と ex,ye で表す. また,x,y の成分が表している量(変 量という)を単にx, yと書くことにする. 2m個のデータx1, y1, x2, y2, . . . , xm, ym をxy平面上のm個の 点(x1, y1),(x2, y2), . . . ,(xm, ym)として表したものを散布図という.
G 内積とデータ解析 157