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Timoshenko 梁理論

ドキュメント内 構造と連続体の力学基礎 (ページ 110-113)

G MEMORANDUM H

B.3 Timoshenko 梁理論

このLagrangeの未定乗数Pの物理的な意味はこの例から少しはわかり易くなったと思うが,最小化問題と して別の見方をすると,例えば(ϵ =0)という付帯条件に掛けた「高額な罰金」と考えてもいい。例えば「接触 問題」で必要になる制約条件を数値解析に組み込むために用いることができるペナルティ法も同じ考え方であ る。もう一つほぼ同様な未定乗数の使い方として,ゴムのような非圧縮性材料に対する定式化も挙げられる。

もし体積変形が生じないゴムのような材料の場合は,変形に対する付帯条件が ϵkk =0 あるいは ∂uk

xk

=0 (B.40)

となるので,これに未定乗数pを乗じてHooke弾性体の汎関数を改訂すれば,最終的なつり合い式は式(3.159) のNavier-Stokes式の静的な場合の

µ ∂2ui

xjxj

+ ∂p

xi

+Xi=0 (B.41)

になる。pは引張を正とした静水圧に相当し,体積変形が生じないことの反力として生じた内力である。Hooke 弾性体の支配方程式に非圧縮性を導入する場合に,単純に体積変形を零にするとこのpの項は生じない。また

Hooke弾性体の材料定数の性質において,単純にν → 1/2としてしまうと体積弾性係数Kが無限大になり,物

理的には理解し難い。

で定義した。

式(B.44)は,軸力が軸線の伸びと,曲げモーメントが軸線の曲率と,せん断力がせん断変形と仮想仕事になっ

ており,非常にわかり易い形をしている。ただ式(B.45)のように,断面力の定義が一見複雑になっている。し かしそれは,せん断変形の影響で変形後の基底ベクトルが断面に垂直にはなっておらず,したがって直応力σ も断面に直交した方向を向いていないから複雑に見えるだけなのである。例えば軸力は直応力の断面法線方向 成分σcosΓだけで定義されている。曲げモーメントも同様である。せん断力はせん断応力τだけでは定義され ず,直応力σの断面内方向成分σsinΓも足された形で定義されていることに注意する必要がある。そう考える と逆に,この式(B.45)の断面力の定義は非常に論理的・合理的であることがわかる。

式(B.9) (B.11)を考慮しながら,各変形成分の変分をとると

δϵ=cosϑ δu−sinϑ δw−√g0 sinΓ0δϑ, δκ=δϑ, δγ=sinϑ δu+cosϑ δw+√g0 cosΓ0δϑ という関係がある。また外力仮想仕事はBernoulli-Euler梁の式(B.26)と同様に考えればいい。したがって,式

(B.44)と以上の関係式を用いて変分を実行しEuler方程式を導くと,つり合い式が

(Ncosϑ+Vsinϑ)+p=0, (B.46a)

(−Nsinϑ+Vcosϑ)+q=0, (B.46b)

M−√g0 (VcosΓ0NsinΓ0)=0 (B.46c) と求められる。あるいは式(B.11)の関係を用いると,モーメントのつり合い式(B.46c)は

M−(1+ϵ)VN =0 (B.47)

とも表すことができる。また境界条件は

u=与える あるいは ni (Ncosϑ+Vsinϑ)=Fi, (B.48a) w=与える あるいは ni (−Nsinϑ+Vcosϑ)=Si, (B.48b) ϑ=与える あるいは niM =Ci (B.48c) となる。ここにniは式(4.26)で定義した記号である。

B.3.2 構成方程式

構成関係については式(B.43)の内力仮想仕事項の組を見る限り,直応力σと物理的伸びeとを,せん断応力 τとせん断変形γとを何らかの関係で結び付ければ,それが一つの明快な構成方程式の候補である。つまり

σ=E e, τ=Gγ (B.49a, b)

と考えるのが素直であろう。ここにEGはそれぞれ何らかの弾性係数であるが,もちろん前者をYoung率,

後者をせん断弾性係数と考えていい。しかし,式(B.11)の関係と式(B.45)の断面力の定義とから明らかなよう に,このままでは断面力と変位成分との関係は複雑な非線形関係になり,例えばBernoulli-Euler梁の式(B.30) のような明快な関係を得ることはできない。

したがって,構成関係については何らかの近似をせざるを得ない。ここでは弾性範囲に限定していることを 考えると,ひずみそのものはかなり微小なものとして取り扱っていいだろう。そう考えると,式(B.14)より

cosΓ≃1, sinΓ≃ γ

1+ϵ (B.50a, b)

と置いてよさそうだ。式(B.50b)の分母のϵを1に対して無視していないのは,座屈で考慮すべき座屈前の縮 み量を適切に考慮するためである。式(B.49) (B.50)を断面力の定義式(B.45)に代入して微小ひずみの仮定を用 いて近似すると,その「第1次近似」としての構成方程式を

N =EAϵ, M=EIκ, V=GktAγ+N γ

1+ϵ (B.51a, b, c)

と置いていい。ktは式(A.7)で定義された補正係数である。この式(B.51c)の第2項は,式(B.45c)にある直 応力のせん断力への寄与分であり,非常に重要な項である。

ただ,軸力は式(B.51a)のように伸びひずみに比例した断面力なので,この式(B.51c)でその第2項はひずみ の2次項になり,第1項に比べて無視していいようにも思われる。つまり

V =GktAγ (B.52)

というのも,微小ひずみの範囲で論理的にも可能な一つの理論となり得る。これは微小変位理論の枠組での構 成則と形式的に一致している。こちらを「第2次近似理論」と称しておく。

B.3.3 近似支配方程式

以上をまとめると,「第1次近似」の範囲の基礎的な支配方程式は

u=(1+ϵ) cosϑ+γsinϑ−1, w=−(1+ϵ) sinϑ+γcosϑ, (B.53a, b) ϑ= M

EI, ϵ= N

EA, γ= V

GktA+ N 1+ϵ

(B.53c, d, e)

であり,つり合い式が

(Ncosϑ+Vsinϑ)+p=0, (B.54a)

(−Nsinϑ+Vcosϑ)+q=0, (B.54b)

M−(1+ϵ)VN=0 (B.54c)

となる。微小ひずみの近似をしておきながら,ϵを1に対して無視していない所が数箇所あるが,(1+ϵ)の部 分はそのすべてを残してある。しかし一般には伸びひずみは非常に小さいから,このϵを無視した理論をさら に微小伸び近似と呼んでもよさそうだ。しかし,運動学的な記述においてϵを1に対して無視してしまうと伸 びを無視したこと(Elastica)になってしまうので,式(B.53a) (B.53b)では決して無視することはできない。そ れに対し,式(B.53e)と式(B.54c)のϵは無視できる。それはそれぞれ

γ= V

GktA+N , MVN=0 (B.55a, b)

となる。この枠組をこの文書では「第1次近似の微小伸び近似」と呼ぶことにする。

これに対して「第2次近似」の範囲の基礎的な支配方程式は,式(B.53e) (B.55a)を式(B.52)で置き換えたも のである。

B.3.4 座屈荷重

片持ちTimoshenko梁の座屈を例としよう。その場合には,座屈直前の解は

u=− P

EAx, w=0, ϑ=0, ϵ=− P

EA, γ=0, N=−P, V=0, M=0

である。Bernoulli-Euler梁の場合と同様,この解からの摂動を与えて,∆のついた摂動量についてすべての支 配方程式を線形化する。その摂動量に対する固有値問題を解けば,座屈荷重Pcrが「第1次近似理論」では

π2 4 = ζ (

1−β2ζ)2

1−(β2t)ζ (B.56)

のような3次方程式の解(岩熊の座屈公式2)になる。ここに ζ ≡Pcr2

EI , β≡ 1

λ (B.57a, b)

であり,βは厚さ(太さ)パラメータで細長比λの逆数。αtは式(A.15)で定義したせん断変形に関するパラ メータである。さらに「微小伸び近似」の場合は

ζ = π2/4

1+αtπ2/4 (B.58)

であり,これはいわゆるEngesserの公式に一致する。

5 10

2.5 5 ζ

λ 式(B.32)

式(B.33)

式(B.56) 式(B.59)

式(B.60)

式(B.58) E Gkt =47

15

Engesser mod-Engesser

図B.2 座屈荷重の比較 これに対し,式(B.51c)のせん断力と変形の関係に軸力の

寄与分を無視した理論,つまり式(B.52)を用いた「第2次 近似理論」の枠組の中で柱の座屈荷重を求めると

ζ= 1− √ 1−π2(

β2−αt) 2(

β2−αt) (B.59)

となる。これは「第2次近似理論」で座屈前の縮みの影響 を考慮していることから,例えば「つるまきバネ」のよう に座屈前に比較的大きな縮み量のある部品の座屈公式とし て文献[95]では紹介されている。さらに上述の「微小伸び 近似」をこの「第2次近似」に加えると,座屈荷重は

ζ=

√1+αtπ2−1

t (B.60)

となり,改訂Engesser公式になる。

二つのEngesser公式と式(B.59)は文献[95]にも書かれているが,式(B.56)の伸びを考慮した第1次近似理 論の座屈荷重は著者オリジナル[43]である。もし「つるまきバネ」のせん断に関する構成則が式(B.51c)の方 だと判断されれば,式(B.56)も「つるまきバネ」の座屈荷重になる。参考のために図B.2には,非常に短い柱 の場合の比較を示した。幅10 mm高さ160 mmの矩形断面でPoisson比をν=1/3として,強軸回りに座屈する ものとした。

ドキュメント内 構造と連続体の力学基礎 (ページ 110-113)