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非線形挙動の解析的予測の例

ドキュメント内 構造と連続体の力学基礎 (ページ 67-70)

12.6.1 局所化条件

鋼の引張試験では,降伏後にL¨uders帯と呼ばれる筋が観察される場合がある。多結晶体であることから,こ れは巨視的なすべり線として認識されており,結晶方位とは無関係な向きに生じるせん断帯である。これを解 析的に予測する手法として,文献[40]のアプローチを紹介しよう。

法線方向の単位ベクトルをνとするある不連続面があり,その面上で局所的なすべりが生じているとすると,

その不連続面を境に速度勾配には式(12.188)と同様に

⟨vi,j

⟩=giνj (12.201)

という不連続量gが生じる。この⟨vi,j⟩は不連続面を挟むvi,jの不連続量を表している。しかしながら,連続体 の枠組でこのような不連続現象をモデル化する場合には,ちょうど第11.5.2節のすべり線理論のように考えざ るを得ず,上述の速度勾配の不連続は「生じようとしている」変形として捉えることになる。したがって連続 体であり続ける以上は,この速度勾配の不連続面を境にした力の増分は連続していなければならないので,式

(12.131)の応力増分の境界条件を参考にして

⟨νjn˙ji

⟩=0 (12.202)

が成立しなければならない。n˙はnominal応力速度である。

材料がどのようにモデル化されていようと,形式的には増分構成則を

˙

nji=Fjiklvk,l (12.203)

37村外志夫先生のimpotent eigenstrainがこれかな?呵呵。

38正確な図は文献[51]を。

のような関係に変換することができるので,これに式(12.201)を代入した上で式(12.202)に代入すれば,応力 増分の連続条件が

jFjiklνl

) gk=0 (12.204)

と表される。したがって,このような不連続gが生じ得るための必要条件を det(

νjFjiklνl

)=0 (12.205)

のように求めることができる。これが,変形の局所化の発生条件として知られている。なお,式(12.201)で表 される局所化した変形は,物体中に例えば単独で発生するような不連続面に相当している。したがって,構造 部材の弾性座屈のような周期的な集中変形はあくまでも分散的な分岐解に相当していることから,厳密には局 所変形とは呼ばない。文献[40]でも,一様な場の解から分散的な解への分岐の方が先に生じることが述べられ ている。

ところで,微小変形理論の枠組で紹介したDruckerの安定公準式(11.60)からは σ˙i jϵ˙i jp ≥0

という条件が派生する。これに弾塑性接線構成則を代入すると

ϵ˙i jpCi jklep ϵ˙kl≥0, σ˙i j=Cepi jklϵ˙kl (∗)

を得る。もし,弾性ひずみが無視できるほど小さく,上式(12.201)のすべりが生じようとしているとすると ϵ˙i j≃ϵ˙i jp = 1

2

(giνj+gjνi

)

が成立するので,これを上式(∗)に代入して整理すると gj

iCi jklep νl

) gk≥0

がDruckerの安定材料の定義になる。このgについての2次形式が正定値である条件は

det(

νiCepi jklνl

)≥0 (∗∗)

であり,この特異条件(等号の成立)が式(12.205)の局所化条件と整合するように見える。しかし,式(12.203) のFは比例載荷であっても材料と応力等の関数F(材料,σ, ϵp,· · ·)であるのに対し,微小変形理論のCepは比例 載荷では材料定数にしか依存しない。したがって式(∗∗)の等号成立は,材料そのものの不安定に相当し,変形 の局所化とは関係が無い。したがって,微小変形理論では一般に式(12.205)の局所化条件は成立しない。微小 変位理論で座屈が予測できないのと同じである。

12.6.2 構成則の違いによる代表的な例

ここも最も基本的なPrandtl-Reussの塑性モデルと,2種類の亜弾性とでモデル化された材料の結果[104]を示 しておく。一つはCauchy応力のJaumann速度で等方弾性を定義した場合であり,もう一つはTruesdell応力 速度を用いた場合である。弾性は次式の定数係数を持った接線的なHooke則に従うものとする。

Ci jkl=µ(

δikδjlilδjk

)+λ δi jδkl (12.206)

ここにµとλはLam´e定数である。まずCauchy応力のJaumann速度を用いて等方亜弾性を定義した場合には

σ˙i j=2µdi j+λ δi jdkk− µ2 µ+H

σi jσkl

σ2 dkl+wikσk j+wjkσki (12.207)

40 45 50

−0.2

−0.1 0 0.1 σ0 0.2

µ

θ(度)

H/µ=−102

−103

H/µ=0

103 104

(a) Cauchy応力のJaumann速度を用いた場合

40 45 50

−0.2

−0.1 0 0.1 σ0 0.2

µ

θ(度)

H/µ=−102

−103

H/µ=0

103 104

(b) Truesdell応力速度を用いた場合

図12.26 局所化発生応力と向き(塑性的平面ひずみ状態)

となる。Hは硬化係数で,ここでは降伏応力τyが相当塑性ひずみϵpの関数とするので H≡∂τyp)

∂ϵp , ϵp

履歴

2dpi jdpjidt (12.208a, b) と定義した。一方,亜弾性にTruesdell応力速度を用いた場合には

σ˙i j=2µdi j+λ δi jdkk− µ2 µ+H

σi jσkl

σ2 dkl (12.209)

+ µ

µ+Hσi jdkk− µ 2(µ+H)

σi jσlm σ2

(vl,kσkm+vm,kσkl)+vi,kσk j+vj,kσki−σi jdkk

となる。この2式の比較から,両式の右辺第4項以降に,選択した応力速度による違いが含まれる。もちろん 亜弾性部分の違いは塑性部分にも影響を及ぼしており,例えば式(12.209)の右辺第5項は引張で見かけのせん 断抵抗を弱める効果を持つことがわかる。

さて,式(12.207) (12.209)からFを求めた上で,式(12.205)の局所化条件を満足する応力と硬化係数の関係

を求めよう。ただし文献でも対象としているように,いわゆる「塑性的平面ひずみ」状態,つまり,式(12.167) の流れ則を満足する塑性ひずみ増分のx3方向成分が零になる状態を対象とする。したがって応力状態は

dp33=0 → σ33 =0 → σ33 =1

2(σ1122) を満足しているものとする。

この条件下で局所化が発生する可能性を図12.26に示した。引張試験を念頭に置いて,x1軸方向の応力σ11 = σ0のみの1軸状態を対象とした。縦軸が局所化発生応力レベルであり,横軸はその局所変形帯の向きである。

図からも明らかなように,一点鎖線と点線で表した負または零の硬化係数の(軟化)状態なら,任意の応力状 態で局所化が発生する可能性があり,その局所変形帯の向きがこの図から求められる。一方,正の硬化係数の 硬化状態(図中の実線)では,ある限定された向きに,ある特定の応力レベルでしか局所化が発生しないこと がわかる。しかも,この図に示したような硬化係数のオーダーを持つ材料の場合には,その局所化発生応力は 材料定数の一桁小さいくらいの,非常に大きな応力レベルになっていて,現実的な予測ができていないことが 明らかである。これはよく知られた結論であり,一般に,独立した局所変形が発生するのは,材料が軟化した かなりあとであるとされている。しかもその前に周期的な変形の集中が生じるとされている。結局,この二つ の図を見比べる限りは,弾性構成則に用いる応力速度の選択による差はそれほど大きくない。

104 102 102

101 100 σcr

µ 平面ひずみ(引張)

H/µ

Truesdell Jaumann convected

104 102

35 40 45 θ(度)

H/µ

Truesdell Jaumann

convected

(a)引張状態の局所化発生応力と向き

104 102

102 101 100 σcr

µ 平面ひずみ(圧縮)

H/µ

Truesdell Jaumann convected

104 102

45 50 55 θ(度)

H/µ

Truesdell Jaumann convected

(b)圧縮状態の局所化発生応力と向き

図12.27 塑性的平面ひずみ状態で生じる局所化発生応力と向き

具体的に,正の硬化状態で発生する可能性のある局所化応力レベルと向きをまとめたのが図12.27である。

比較のためにconvected応力速度で弾性構成則を表した場合の結果も載せておいた。軟鋼のような零の硬化状 態が存在する材料であれば,現実的な応力レベルで局所化が発生して,その帯の向きは載荷方向から45度方向 になっている。この角度は,第11.5.3節の微小変形理論で予測された局所化の角度と一致する。しかし,ちょっ とでも硬化がある場合には,局所化発生応力レベルはとても大きくなる。その結果は,弾性を定義する構成則 に用いる応力速度の選択で若干異なり,Truesdell応力速度を用いた方が,Cauchy応力のJaumann速度を用 いた材料モデルよりも,比較的現実的な応力レベルでの局所化を予測しているが,オーダー的にはさほどの違 いは無いことがわかる。つまり,ここで説明したような方法で,実験で観察される孤立した局所帯の発生を予 測することは困難であることを示している。文献[50]では,別の構成モデルの例として,第12.5.4 (3)節で概 説した非共軸モデルを用いた場合の結果を示している。このモデルはそもそも不安定な特性を持っていること から,得られる局所化発生応力レベルは現実的にはなるものの,それで本質的なことがわかるわけではない。

ドキュメント内 構造と連続体の力学基礎 (ページ 67-70)