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2 1 次元熱伝導方程式 — 放物型偏微分方程式

ドキュメント内 構造と連続体の力学基礎 (ページ 188-193)

H.3 複合材料の平均特性

I. 2 1 次元熱伝導方程式 — 放物型偏微分方程式

そこで式(I.6)のように解の候補を設定すると,最終的にその未知関数ci(t)に対する方程式が

˙

ci(t)=λici(t) となるので,それぞれの解が

c1(t)=k1 exp(5t), c2(t)=k2 exp(3t), c3(t)=k3 exp(7t) と求められる。これを初期条件に代入することによって

k1=et1α

|e1|2 =6

1 =6, k2=et2α

|e2|2 =7+8 2 = 15

2 , k3= et3α

|e3|2 = 7−8 2 =−1

2 を得るので,最終的な解が

u(t)=6 exp(5t)e1+15

2 exp(3t)e2−1

2 exp(7t)e3

と求められる。3元連立ODEを解く際の固有値問題と固有ベクトルの直交性との重要性を実感してもらえた だろうか。

I.2.2 固有値問題

第I.1節では次の連立ODE

u(t)˙ = A u(t) (∗)

を解くために,解を次式で仮定した。

u

3

i=1

ci(t)ei

ここにeiは行列Aに関する式

A ennen (∗∗)

で定義される固有値問題の固有ベクトルだった。では,これを踏まえて熱伝導式(I.15)を眺めると,行列によ る作用を微分作用素で置き換えて

Ak2

x2

とすることによって,それが式(∗)と同じ形式になっていることがわかる。したがって式(∗∗)からのアナロジー として次のような固有値問題

k d2

dx2 fn(x)=λn fn(x) (I.17)

を解くことが,元々の熱伝導方程式を解く道筋を与えてくれそうなことが推測できる。再度,この新しい(微 分方程式で表した)固有値問題と行列の固有値問題とを比較しながら列挙しておこう。まず解くべき式は

u(t)˙ =A u(t) あるいは u(x˙ ,t)=kd2u(x,t) dx2 . である。そして,まず解くべき固有値問題は

A ennen あるいは kd2fn(x)

dx2n fn(x) で表される。最後に元々の問題の解を級数表示して

u=

3

n=1

cn(t)en あるいは u(x,t)=∑

n

cn(t)fn(x)

のように置けば熱伝導方程式が解けそうだ。これが初期値境界値問題を固有関数を用いて解く手法である。

代表例として,初期条件が式(I.11)で与えられた熱伝導方程式(I.15)を解いておこう。境界条件としては,

棒の左端が断熱されていて,右端には温度0度の巨大な氷が付着しているものとする。したがって境界条件は

u

x(0,t)=0, u(a,t)=0 (I.18a, b)

で与えられる。まず解くべき固有値問題は式(I.17)で与えられるので

k fn′′(x)=λnfn(x) (I.19)

を解けばいいことになる。ここにプライムはxに関する微分である。また固有関数fn(x)の境界条件も式(I.18) と等価にしくしておく必要があるので,それは次式で与えられる。

fn(0)=0, fn(a)=0 (I.20a, b)

実は解いてみればわかるのだが,固有値がλn <0の場合にのみ非零の固有関数fn(x)が存在するのだ。した がって式(I.19)の一般解は

fn(x)=An sinξnx+Bncosξnx, ξn≡ √

−λn/k.

と求められる。これを境界条件式(I.20)に代入すると

ξAn=0, An sinξna+Bn cosξna=0. を得る。つまり

An=0, Bn cosξna=0.

であるが,第2式には二つの可能性がある。一つはBn=0であり,これは当たり前の結果(棒が0度のまま)

であり,今欲しい答ではない。これに対してもう一つの可能性は

cosξna=0 (I.21)

であり,つまり

ξna=2n−1

2 π → ξn= (2n−1)π

2a (I.22)

であればよく,この場合はBn,0は不定になる。これが欲しい結果であり,結局固有関数と固有値が fn(x)=cos

((2n−1)πx 2a

)

, λn=−k

((2n−1)π

2a )2

, n=1,2,· · ·,∞ (I.23a, b) のように求められるのだ。ここは重要なステップなので,わからない人は手を動かすこと。

式(I.19)からi番目の固有関数は

fi′′(x)=1 kλifi(x)

を満足するので,これにある固有関数fj(x)を乗じて0からaまで積分しよう。つまり仮想仕事の原理だが

a

0

fjfi′′dx=1 kλi

a

0

fjfidx を得る。さらに左辺を部分積分して境界条件式(I.20)を用いると

fj fia0

a

0

fj fidx=−

a

0

fjfidx を得る。したがって上式からは

a

0

fj fidx=1 kλi

a

0

fjfidx

という関係が成立する。同様に,j番目の固有値問題の式に fi(x)を乗じて同じ積分をすると

a

0

fifjdx=1 kλj

a

0

fifjdx を得る。この2式を辺々引き算すれば

0=1 k

i−λj

) ∫ a

0

fifjdx となるが,式(I.23b)から二つの固有値は異なりλij(i, j)なので

a

0

fi(x)fj(x) dx=0 ⇒ ⟨fi,fj⟩=0 i, j (I.24) が成立する。この式の左辺は二つの関数の「内積」と呼ばれる。そしてその内積が零になるので,固有関数同 士はお互いに直交していると呼び,式(I.24)が直交性の定義である。

I.2.3 固有関数を用いた解

第I.1節のODEと同じように,偏微分方程式(PDE)の解も次のような級数解で求めてみよう。

u(x,t)=∑

i=1

ci(t)fi(x) (I.25)

この式(I.25)を式(I.15)に代入すると

i=1

˙

ci(t)fi(x)=k

i=1

ci(t)fi′′(x) を得るが,右辺に式(I.19)の関係を用いると

k

i=1

ci(t)1

kλi fi(x)=∑

i=1

ci(t)λifi(x) となる。したがって未知関数ci(t)について解くべき上式は

i=1

˙

ci(t)fi(x)=∑

i=1

ci(t)λi fi(x)

となる。ここで辺々固有関数fn(x)との内積をとり,直交条件式(I.24)を用いればn番目の項だけが抽出できて

˙

cn(t)⟨fn,fn⟩=λncn(t)⟨fn,fn⟩ → c˙n(t)=λncn(t) を得る。したがってcn(t)の一般解が

cn(t)=An exp (λnt) (I.26)

と求められるので,u(x,t)の一般解が u(x,t)=∑

n=1

An exp



−k

((2n−1)π

2a )2

t



cos

((2n−1)πx 2a

)

(I.27) となる。ここでは式(I.23b)のλiを代入した。あとは初期条件からAnを求めればいい。

式(I.27)を初期条件式(I.11)に代入すると

u(x,0)=∑

n=1

An fn(x)=u0(x). を得るので,再度固有関数fi(x)との内積をとって直交性を利用すると

n=1

An

a

0

fi fndx=

a

0

fiu0dxAifi,fi⟩=⟨fi,u0⟩ → Ai=⟨fi,u0

fi,fi⟩ と求められる。したがって最終的な解が級数表示で

u(x,t)=∑

n=1

fn,u0

fn,fn⟩ exp



−k

((2n−1)π

2a )2

t



cos

((2n−1)πx 2a

)

(I.28) のように求められる。ここの二つの内積の陽な形は

fn,u0⟩=

a

0

u0(x) cos

((2n−1)πx 2a

)

dx, ⟨fn,fn⟩=

a

0

cos2

((2n−1)πx 2a

) dx= a

2 (I.29a, b)

である。結局,解は次式のように求められる。

u(x,t)= 2 a

n=1

(∫ a

0

u0(η) cos

((2n−1)πη

2a )

dη )

exp



−k

((2n−1)π

2a )2

t



cos

((2n−1)πx 2a

)

(I.30) この解が時間と共に零に収束しないといけないことは容易に推測できる。というのも,外部からの入熱は無く,

左端は断熱され右端は0度を維持するからだ。確かに式(I.30)の指数関数の中の係数は負になっている。

0.5 1 0.5

1 u(x,t)

u0

x a k t

a2 =0 0.0001

0.001 0.005 0.05 0.2

O

図I.1 熱問題の例 初期条件が一様u0(x)=u0=const.の場合は

fn,u0⟩=u0

a

0

cos

((2n−1)πη

2a )

dη=2au0(−1)n+1 (2n−1)π となるので,解は次式になる。

u(x,t)=

n=1

4u0(−1)n+1 (2n−1)π exp



−k

((2n−1)π

2a )2

t



cos

((2n−1)πx 2a

)

級数で40項を用いた場合の結果を図I.1に示した。有限個 の項しか使ってないので,特に初期に近いkt/a2 = 0や

0.0001のときの結果はあまりよくない。ただし右端x = a

の温度は零のままだし,左端x=0の温度勾配も零のままになっていて断熱条件をきちんと満足している。

I.2.4 非零の境界条件 熱伝導方程式は斉次の

u(x,t)

t =k2u(x,t)

x2 (I.31)

のままだが,境界条件が零ではない

u(0,t)=Tl, u(a,t)=Tr (I.32a, b)

の場合を解いておこう。ここにTlTrは与えられた温度だ。初期条件は式(I.11)と同じとする。

固有値問題を定式化するに当たって,境界条件を零にするために関数を変換して v(x,t)u(x,t)−{

Tl+(TrTl)x a }

(I.33) と置くと,v(x,t)に対する境界条件は

v(0,t)=u(0,t)Tl=0, v(a,t)=u(a,t)Tr=0 (I.34a, b) のように零境界条件になる。また

{

Tl+(TrTl)x a }

という項は一定なのでvとuの熱伝導方程式は同じく次 式になる。

∂v(x,t)

t =k2v(x,t)

x2 (I.35)

ただし初期条件はその項の分だけずらして次式で与えられる。

v(x,0)= fˆ(x), fˆ(x)≡ f(x)−{

Tl+(TrTl)x a }

(I.36a, b) 関数v(x,t)の問題は境界条件以外は前節の問題と同じだ。対応する固有関数をvn(x)とすると

vn(x)=An sinξnx+Bn cosξnx, ξn≡ √

−λn/k

である。境界条件式(I.34)に代入するとBn =0とAn sinξna =0を得る。第2式から意味のある固有関数が存 在するためには

sinξna=0 でなければならないので

ξna=nπ → ξn=nπ a

を得る。したがって次のように固有関数と固有値を得る。

vn(x)=sin (nπx

a

), λn=−k

(nπ a

)2

(I.37a, b) 境界条件によって固有関数と固有値が違ってくることを実感して欲しい。したがってvの初期条件を考慮して 解v(x,t)を求めると,最終的な解u(x,t)が次のように求められる。

u(x,t)=∑

n=1

fˆ(ξ), vn(ξ)⟩

⟨vn(η), vn(η)⟩ exp (λnt)vn(x)+{

Tl+(TrTl)x a }

(I.38)

I.2.5 非斉次問題

最終的に非斉次の一般的な問題は

u(x,t)

t =k2u(x,t)

x2 +F(x) と非零境界条件で与えられる。解法については波動方程式の節で説明する。

演習問題I-1

1. 次の熱伝導方程式を与えた境界条件の下で解け。

u(x,t)

t = ∂2u(x,t)

x2 , (0<x<1,0<t) u(0,t)=0, u(1,t)=0 ただし初期条件は

u(x,0)=

 −1, 0≤x<1/2

+1, 1/2x≤1

とし,t=0, 0.0005, 0.0025, 0.01, 0.06の解を図示せよ。このノートの結果を公式として用いるのではな く,各自基礎式から始めて級数解を求めよ。

2. 0<x<1, 0<tで次の問題を解け。

u

t = ∂2u

x2 +cosx

初期条件と境界条件はu(0,t)=2,u(1,t)=3,u(x,0)=5とし,t=0, 0.0005, 0.0025, 0.01, 0.06の解を図 示せよ。

3. 0<x<1, 0<tで次の問題を解け。

u

t = ∂2u

x2 +sinx, ∂u

x(0,t)=0, u(1,t)=0, u(x,0)=cos 7πx

ドキュメント内 構造と連続体の力学基礎 (ページ 188-193)