• 検索結果がありません。

( S さん,小 4  男,韓国)

ドキュメント内 1.「子どもの貧困」の発見 (ページ 61-64)

お金と関わる人間関係の構造

インタビュー例 2 ( S さん,小 4  男,韓国)

インタビュアー:自分の分を自分で買う時と,友だち に買ってあげたり買ってもらったりするとき,どちらが 多いですか。

S:一緒に食べるときが多い。

Table 7 友だち関係尺度についての各因子尺度得点の

平均と標準偏差

自己限定 相互交換

日本

小5 3.71(0.92) 3.34(0.95)

中2 3.45(0.95) 3.24(0.92) 高2 3.23(0.77) 3.61(0.72) 全体 3.49(0.91) 3.38(0.89)

韓国

小5 2.95(0.72) 3.56(0.91) 中2 2.50(0.76) 3.88(0.79) 高2 2.56(0.67) 4.06(0.61) 全体 2.66(0.74) 3.84(0.80)

中国

小5 3.05(0.86) 3.44(1.05) 中2 2.96(0.87) 3.85(0.84) 高2 2.98(0.79) 3.98(0.64) 全体 3.00(0.84) 3.74(0.90)

ベトナム

小5 2.86(0.83) 4.17(0.85)

中2 2.68(0.75) 3.91(0.71)

高2 2.75(0.75) 4.15(0.70)

全体 2.76(0.78) 4.10(0.75)

注.( )内の数字は標準偏差。因子負荷量.40以上の項目の平 均値を尺度得点として使用。

1)紙面関係上,インタビューの手続きやデータに関する詳細は載せ られないが,全体的な雰囲気などを簡単に記しておく。4か国に おけるインタビュー調査は,協力してくれる子どもと同じ国の研 究者,そして子どもにとっては外国人である研究者(通訳含めて 3-4人)が家庭を訪問し,通訳を介しながら行われた。「お家に外 国人がやってきて,質問される」という場面自体,子どもにとっ ては新奇な場面であるので,4か国の子どもたちは少し緊張しつ つも好奇心を持って一所懸命に答えてくれる雰囲気だった。おご りと関連する質問において,特に小学校の低学年は,「したこと があるかないか」という問いにはすぐ答えるが,それが「良いか 悪いか,どうしてそう思うか」という価値規範の質問には,必ず しもスムースに答えるわけではなく,当たり前のようにとってき た行動について,インタビューをきっかけに初めて考え出す様子 があった。しかし,学年が上がるにつれて,価値規範に関する質 問にもはっきり答える場合が多くなり,他の国での例を紹介する と「自分とは違う」という感想を示すと同時に「自分たち」と「他 の国の人たち」を改めて意識するようになる場合もあった。また,

研究者から「ほかの(国の)子は,こう答える人もいるけど,そ れに関してどう思う?」というふうに,自分たちとは異なる考え 方が出されると,質問そのものの理解がずれる場合もあり,著者 らは「そのズレ」こそ,意味あるものとして捉えている。詳しく は,呉(2011)参照。

インタビュアー:自分だけ買って食べるときってある?

S:一人でいるとき

インタビュアー:おー,じゃ他の友だちと一緒にいる ときにはだいたい分けて食べる?

S:はい。

インタビュアー:うーん,そうか。他の国の子に聞い たら,お小遣いは自分のために使うものだから,人にお ごるのはよくないという子もいたけど,どう思う?

S:利己的に思う。

インタビュアー:あー,そしたらね,他の国の子には ね,相手の人が負担を感じるからあまりおごらない方が いいという人がいたけど,どう思う?

S:自分で買ってあげると,また次は買ってくれるし,

私がお金がない時は,友だちが買ってくれたりするのは いい。

小学校4年生で,おごらないで自分の分だけ解決する ことに関して「利己的」と意味づけられており,お金を 媒介に「互いに関わる関係」の中でそれぞれの分を獲得 しており,そのやり方に関しては悪いイメージはあまり 見られない。

インタビュー例3(Yさん,小3・女,Iさん,小1・女,日本)

インタビュアー:お小遣いで友だちにおもちゃを買っ てあげることはいいかな,悪いかな

Y・I:悪い

インタビュアー:どうして悪いと思う?

I:それは,自分のお父さんが働いたお金だから,そ れを友だちに渡しちゃだめ。

Y:自分の金で買った方がいい。自分のお金だとお誕 生日とか,ほんとうはもっと高い金で買いたいんだけど,

買いたかったなと思ったのが買えなくなる。

インタビュアー:そうなんだー。じゃ,友だちにおや つ買ってあげることはどうかな。

Y・I:悪い

インタビュアー:どうして?

Y・I:さっきと同じ。

IとYは姉妹で,小学校低学年であるにもかかわらず,

自分なりの意見・論理をはっきりと言語化している。I は,「お父さんが働いたお金だから」という理由づけで,

お金を用いる友だち関係は良くないとしており,Yは,

「買いたかったものが買えなくなる」と自分なりの「消 費欲求や管理の見通し」に関連して理由づけをしている。

インタビュー例4(Hさん,高校1年,ベトナム)

インタビュアー:普段はみんなで食べるときはどうい うお金の払い方をしますか

H:一人だけ払います。たくさん持っている人が払い ます。次は他の人が払います。例えば,割り勘でそのと き食べたら,そのときお金持ってない人がいたらみんな で食べられないじゃないですか。

インタビュアー:そうか。そういう人も食べられるよ うに。

H:お金を持っている人が先に払って,今は持ってな いけど,いつか持っているときに払います。

インタビュアー:他の国で話したんですけど,おごっ たらおごられた人が申し訳ないと感じるからある意味相 手を困らせることにもなると思う人もいますが。

H:そういう考えに賛成できるかどうかはっきり言え ないですね。 … おごったりすることはお金の問題だけ じゃなくて人間関係の問題 … おごったりおごってくれ たりしないと人間関係はいつまでも変わらないというか 良くならない。やっぱりおごったりおごってくれたりし た方がいいから。

ベトナムの高校1年生のHは,「食べられない人が出 ないように」,また,「仲良くなるために」という理由づ けでおごりの発生を正当化し,おごりは「お金の問題で はなく,人間関係の問題」だと強調している。この答に「相 互扶助の論理」や「社交性向上の論理」をみることもで きるだろう。

これまで見てきた質問紙の友だち関係尺度の結果やイ ンタビュー調査場面で語られたことばの意味を総合する と,お金をめぐる友だち関係においての「自己限定」を 好む日本の子どもたちは,「自分の分に関する自己責任」

の方へ生活規範が働き,「相互交換」を好む韓国やベト ナムの子どもは「互いの状況を見ながら相互責任」の方 へ生活規範が働いていると考えられる。

お金と関わる親子関係(お金を媒介にする親子関係の認識)

親からお小遣いをもらう,自分が持っているお金を親 のほうに回すなど,子ども達は親とどのようなやり取り をし,どのような考え方をしているのだろうか。親子の 間でのお金の関係に関する7項目の質問項目に対して,

「まったく反対」1点〜「どちらとも言えない」3点〜「と ても賛成」5点の5件法で評定してもらい,それを得点 化した。これらの項目の得点を用いた探索的因子分析(主 因子法,バリマックス回転)をおこなった(Table 8参照)。

因子分析の結果,2因子構造を採択し,第1因子には「 子 の金は親の金 意識」,第2因子には,「親約束厳守」と 命名した。それぞれの因子において,負荷量が0.40以 上の項目の平均値を尺度得点とし,国別,学年段階別の 平均を,Table 9に示す。

「 子の金は親の金 意識」については,日本が2.6台 で最も低く,韓国,中国,ベトナムはすべて3.0台を超 えており,その中でベトナムの値が最も高い。また,「親 約束厳守」は,日本,韓国,中国の全学年とベトナムの 小学生においては平均3点を超えており,どちらかとい うと親から自分のお金を確保しようとしていることが分 かる。ただし,4か国を比較してみると,日本とベトナ ムのパターンが最も対照的で,日本の子は自分が持つお

金は自分のものという意識が強く,またお小遣いへの約 束厳守などの要求も強い。一方,ベトナムの子どもは,

自分が持っているお金も本当は親のお金であるという意 識が強い分,自分の分を確実に確保しようとする要求も 相対的に弱い。韓国と中国は,日本とベトナムの中間の 値を示しており,「自分のもの」とか「親のもの」とい う意識の差がそれほど大きくはなく,両方とも調節され るなかでゆるやかに認識されていると考えられる。

以下に親子関係と関わるインタビューの例を示す。

インタビュー例5(K 高校3年,女,日本)

インタビュアー:普段身につけているお金は?

K:多い時10,000円,少ないとき1,000円。

インタビュアー:どうして(親が)お金をくれるよう になったのですか。

K:やっぱり自分でお金の管理ができるようにとか。

インタビュアー:例えばお手伝いをしてもらうような お金ってありますか。

K:お手伝い,定期的にではないですけど,もらった りするので,その分手伝いとかする。(中略)

インタビュアー:自分で貯めたお金は,自分のものな のかお母さんのものなのですか?

K:自分のものだと思っている。

インタビュー例6(S,小4 男,韓国)

インタビュアー:(人々に)もらってしまったお金っ ていうのは,もう,本当だったら自分のものだから,う

〜ん,自分の好きなように使ったって構わないと思うん だけど,そういうふうな考えはどう思いますか?

S:もちろん,自分がもらったんだけど,その親戚か らもらうこと自体が,お母さん・お父さんの関係で,そ の親戚からもらっているし,結局,自分のお父さんお母 さんも,その親戚の子どもにあげているので,結局,お 互いさまで,本当は自分がもらったんだけど,お父さん お母さんなしには考えられないお金ですね。だから,完 全にこれは自分のものというのは,逆に,悪い考え方だ と思う。

インタビュー例7K,中学2年,男,中国)

インタビュアー:それじゃ,お年玉に戻るんだけど,

貯金する2,000元(約25,000円)ていうのは,貯金通

帳とかは誰が管理しているんですか?

K:親のところに。はい。

インタビュアー:あなたは自分では使えないですか?

K:はい。

インタビュアー:そのお金はどういうふうになってい くんでしょうか?

K:そのお金はおそらく親につかわれちゃう。

インタビュアー:でも,それは自分のなのにおかしいっ

Table 8 親子関係尺度 探索的因子分析結果(主因子法,バリマックス回転)

子の金は親の金

意識 親約束厳守 共通性

2.親は私から借りたお金を返さなくてもいい。 0.69 0.00 0.48

3.もし私に臨時にたくさんのお金ができたら,その月のおこづかいを減らされてもいい。 0.65 -0.05 0.43 6.おこづかいをくれたのは親なので,おこづかいは私のお金ではなく親のお金である。 0.48 0.01 0.23 1.親の代わりに,私が自分のおこづかいで細かいお金などを払うのはいいことである。 0.42 0.04 0.18 4.親が私におこづかいをくれることを約束したら,どんなことがあってもその約束

は守るべきである。 – 0.34 0.64 0.52

固有値 2.17 1.09

Table 9 親子関係尺度についての各因子尺度得点の平

均と標準偏差

子の金は親の金 意識 親約束厳守

日本

小5 2.63(0.85) 3.86(1.33)

中2 2.51(0.82) 4.07(1.16)

高2 2.76(0.77) 3.78(1.08) 全体 2.63(0.82) 3.91(1.21)

韓国

小5 3.49(0.94) 3.38(1.32) 中2 3.11(0.86) 3.59(1.12) 高2 3.11(0.87) 3.71(1.08) 全体 3.23(0.91) 3.57(1.18)

中国

小5 3.52(1.02) 3.25(1.50) 中2 3.21(1.04) 3.37(1.43) 高2 3.74(0.85) 3.19(1.27) 全体 3.47(1.01) 3.27(1.41)

ベトナム

小5 4.14(0.91) 3.08(1.69)

中2 3.49(0.89) 2.92(1.29)

高2 3.63(0.82) 2.96(1.33)

全体 3.72(0.90) 2.98(1.42)

注.( )内の数字は標準偏差。因子負荷量.40以上の項目の平 均値を尺度得点として使用。

ドキュメント内 1.「子どもの貧困」の発見 (ページ 61-64)