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消費世界の広がりとお金使用における 価値判断

ドキュメント内 1.「子どもの貧困」の発見 (ページ 56-60)

お金を支払う項目や支払主体の移行

実際に子ども達はどのようなもの・ことに,どうやっ てお金を払っているのだろうか。「文房具を買う」「友だ ちにおやつをおごる」など計25項目に対して「1.そう いうものにお金を払ったことがない」「2.親がはらって くれる」「3.親から特別にお金をもらう」「4.自分のお 小遣いやお年玉で払う」のうち当てはまるものを選んで もらった(複数選択可)。それぞれの4つの選択肢の選 択割合の,学年による変化パターンの項目間での共通性 を取りだすだめ,国別にクラスター分析(グループ間平 均連結法)を行った。各国で,4つのクラスターに分類 し,内容に合わせて再整理してまとめた。各クラスター の項目は,学校段階による支払い方の変化が共通の項目 群を構成していると考えることができる。クラスターの 名称は小学校5年生と高校2年生の時の支払いの主体の 変化を見て命名した。Table 2は,小学校5年生の支出 のパターンをベースにして,支出パターンの変化をまと Table 1 質問紙調査の対象者

大阪 ソウル 北京 ハノイ・ハイフォン

男 女 合計 男 女 合計 男 女 合計 男 女 合計

小学5年生 149 143 292 119 107 226 126 124 250  88 109 197 中学2年生 122 125 247 131 123 254 101 138 239 100  99 199 高校2年生  66 108 174 136 126 262  63 139 202 190 198 388

めたものである。

親支出ベースの項目を見ると,学校納付金や家の食材 などは親支出継続だが,そのほかは,「親支出から子支 出へ」「親支出から親特別へ(特別に親にもらってから 自分で支出)」の項目になっている。4つの国による程 度の差はあるにせよ,小学校5年生の段階から高校2年 生になっていくにつれて,親が払う・親と一緒に支払う という行動パターンから,子どもが親から離れた状態で 自分が支払うパターンになっている。

子支出ベースをみると,具体的な支出項目は日本が もっとも多く,アクセサリーやゲームセンター,カラオ ケなど遊びに関係する項目が多く入っている。相対的に 中国とベトナムの項目数が少なく,アクセサリー,ゲー

ムセンター,カラオケなどが入ってないことから,日本 や韓国の方が相対的に,小学校の段階から勉強関連だけ ではなく,遊びと関連する消費世界への参加が広がって いることが読みとれる。また,非支出ベースの部分を見 ると,中国やベトナムにおいては非支出から子支出へ なっている項目が多く,中国やベトナムでは小学校5年 の段階では消費活動があまりないが, 高校2年生の段階 では子どもが参加する消費の領域が広がり,親主体の消 費から子ども主体の消費へ移行していく様子が伺われ る。

お金使用における善悪判断と許容度判断

小学校5年の段階から高校2年の段階まで実質子ども 主体の消費が増え,子どもの消費領域が広がったとして

Table 2 各項目への支出者の変化に基づく国別クラスター分析のまとめ

食材 学校納付金 参考書・問題集 交通費 日用品 自分の服 遊園地 外食 映画 文房具 お菓子や飲み物 ゲームセンター 貯金・寄付 友だちにプレゼント 家族にプレゼント おやつを友だちにおごる CD アクセサリー カラオケ 友だちに金を貸す おもちゃ 漫画 友だちと賭け事 友だちにご飯をおごる

日本

親支出 ベース

親支出継続 親支出から子支出へ 子支出

ベース 子支出優勢増加 非支出

ベース 非支出から子支出へ

韓国

親支出 ベース

親支出継続

親支出減少と親特別増加 子支出

ベース 子支出優勢増加 非支出

ベース 非支出から子支出へ

中国

親支出 ベース

親支出減少と 子支出増加 子支出

ベース 子支出優勢増加 非支出

ベース

非支出から子支出へ 非支出継続

ベトナム 親支出

ベース 親支出から親特別へ 子支出

ベース

子支出優勢増加 親支出減少と非支出継続 非支出

ベース 非支出減少と子支出増加

注.「親支出ベース」とは,小5段階で親の支出が優勢であった項目,「子支出ベース」とは小5段階で子どもが自分で支払っていた項目,「非 支出ベース」は小5段階ではお金の支払ったことのない項目。また,「変化のパターン」は学年の上昇に伴って生じた変化の特徴を表す。

も,子どもが自分が持っているお金で何でも自由に買っ てもよいわけではない。子どもなりに,善い使い方,・

悪い使い方の認識をしている。

お金使用に関する善悪判断に関しては,上記と同様の 25項目について「1.よくない使い方だと思う」「2.ど ちらとも言えないと思う」「3.よい使い方だと思う」の 3段階で評定してもらった。また許容度判断に関しても,

同じ25項目について「1.そういう使い方はゆるされな いと思う」「2.自分のお金でも保護者の許可が必要だと 思う」「3.自分のお金で自由に使えると思う」の3段階 に評定してもらった。4か国・3学年の結果の全体につ いて,25項目の各項目得点を対象に善悪判断・許容度 判断それぞれについて因子分析を実施したところ(主因 子法,バリマックス回転),いずれも3因子が抽出された。

各因子で負荷量が高い項目はすべて,善悪判断・許容度 判断の両因子分析において共通であった。そこで,抽出 された各因子名を善悪判断・許容度判断で共通とし,第 1因子を「遊び」,第2因子を「生活・学習」,第3因子 を「友だち」と命名した(Table 3, 4参照)。因子ごとに,

因子負荷量が高い項目の得点の平均値を各因子の尺度得 点とし,国別および学年別にTable 5にまとめた。

尺度得点すべてで学年段階の上昇に伴い,善悪の判断 も許容度の判断も値が上がっており,この点は4か国す べてで共通であった。前述の結果も踏まえるならば,学 年の段階が上がるにつれて子ども達の消費世界への参与 も広がり,それが善悪・許容度判断に影響したものと考 えられる。また,「生活・学習」の一部を除き,善悪判 断よりも,その使い方は許されるだろうと判断する許容 度判断の方の値が高い場合が多いことから,それほど良 いとは思わない場合でも実際にはお金を使えることとし て考えられている。

国別の値を比較してみると,「遊び」の善悪・許容度 は日本が最も高く,続いて韓国,中国,ベトナムの順で ある。つまり,日本は遊びにお金を使うことは普通であ り特に悪いと認識することはない。反対に中国・ベトナ ムでは,遊びの善悪判断の平均は1点台であり,遊びに お金を使うのは良くないこととして認識されていると考 えられる。

Table 3 善悪の認識 探索的因子分析結果(主因子法,バリマックス回転)

遊び 生活・学習 友だち 共通性

16 カラオケに行く 0.65 – 0.11 0.28 0.51

11 流行歌などのCDを買う 0.64 – 0.03 0.13 0.43 14 アクセサリーを買う 0.62 – 0.04 0.13 0.40 10 ゲームセンターに行く  0.59 – 0.19 0.01 0.38  9 おもちゃを買う  0.57 – 0.05 – 0.05 0.33

15 映画をみる 0.56 0.16 0.24 0.40

13 まんがを買う 0.51 – 0.03 – 0.18 0.30  1 おかしや飲み物を買う 0.51 0.00 0.18 0.29

12 遊園地に行く 0.50 0.24 0.16 0.34

 2 外食をする 0.49 0.01 0.28 0.32

 4 自分の服を買う 0.42 0.33 0.10 0.29

22 家で使う日用品を買う – 0.02 0.66 0.05 0.44

 5 参考書・問題集を買う – 0.07 0.63 0.07 0.40

23 家のおかずの食材などを買う – 0.11 0.62 0.06 0.40

 7 給食費や学費など学校納付金を払う – 0.28 0.52 0.14 0.37 25 困っている人のために学校や教会や街などで寄付する – 0.03 0.52 0.03 0.27

 3 文房具を買う 0.09 0.50 – 0.05 0.26

 6 通学の交通費を払う – 0.04 0.46 0.28 0.29 21 家族にプレゼントを買ってあげる 0.24 0.44 0.01 0.25 17 おやつを友だちにおごる 0.22 – 0.06 0.70 0.55

18 友だちにご飯をおごる 0.22 0.10 0.64 0.47

19 友だちにお金を貸す 0.07 0.11 0.55 0.31

固有値 3.77 2.94 1.72

また,「友だち」の善悪・許容度は韓国が最も高く,

次に中国,ベトナム,日本の順であった。韓国では友だ ち関係に貸し借りやおごりなどお金を使うのは普通のこ ととして認識しているが,日本では良くないこととして 認識されているのである。消費世界の広がりにおいては 最も近い日韓であるが,友だちと関わるお金の使い方の 善悪・許容度判断には隔たりが大きい。

「生活・学習」の値は「遊び」や「友だち」に比べて,

4か国のすべてで値が高い。子ども達にはそれにお金を 使うこと自体が必要で望ましい領域として認識されてい る。「生活・学習」の善悪は,ベトナムより日本が低いが,

許容度は日本の方が高い傾向が見られること,善悪の値 より許容度が低いのは,日本,韓国,中国においては小 学校段階でしか見られないが,ベトナムではすべての学 年において善悪より許容度が低いことから,ベトナムの 子どもたちは消費の世界への参与そのものに警戒的であ ることが推察される。以下のベトナムのインタビューか らその状況が読み取れる。

インタビュー例1(Zさん 中3 女,ベトナム)

インタビュアー:普通,お金をどれくらいもっていま すか。

Z:普通はですね,あまり持ってない。ほとんどない。

必要であれば,ちょっとお父さんとかお母さんに頼んで その時もらいますので。

インタビュアー:それはいくらもらいますか。

Z:時々,一日分(食事代)だけもらいますね。時々 お父さんが1週間分のときもあるけど,一日平均1,000

(約5円)か2,000ドン。

インタビュアー:Zさんはお金の環境には満足します か。

Z:満足できますね。

インタビュアー:どういうものは買ってよくて,どう いうものは買ってわるいかってこと,ちょっと教えてく ださい。

Zさん:まだ,学生ですから,勉強に必要なもの,勉 強になる雑誌とか参考書,それは買っても良いです。あ とは自分の飾り物などは,まだですね。必要ないと思う ので。

Table 4 許容度の認識 探索的因子分析結果(主因子法,バリマックス回転)

遊び 生活・学習 友だち 共通性 10 ゲームセンターに行く  0.76 – 0.04 0.17 0.61

16 カラオケに行く 0.75 0.09 0.33 0.68

11 流行歌などのCDを買う 0.74 0.15 0.22 0.62

14 アクセサリーを買う 0.73 0.16 0.18 0.60

15 映画をみる 0.68 0.23 0.28 0.60

13 まんがを買う 0.68 0.07 0.01 0.47

 9 おもちゃを買う  0.67 0.14 0.07 0.47

12 遊園地に行く 0.61 0.31 0.20 0.51

 2 外食をする 0.52 0.25 0.33 0.44

 1 おかしや飲み物を買う 0.50 0.23 0.26 0.37

 4 自分の服を買う 0.49 0.37 0.10 0.39

22 家で使う日用品を買う 0.13 0.62 0.05 0.40

 5 参考書・問題集を買う 0.11 0.60 0.12 0.39

 6 通学の交通費を払う 0.03 0.57 0.34 0.44

23 家のおかずの食材などを買う 0.07 0.56 0.07 0.33

 3 文房具を買う 0.22 0.50 0.09 0.30

 7 給食費や学費など学校納付金を払う – 0.14 0.49 0.10 0.27 25 困っている人のために学校や教会や街などで寄付する 0.13 0.48 0.11 0.26 21 家族にプレゼントを買ってあげる 0.30 0.42 0.11 0.28

19 友だちにお金を貸す 0.20 0.21 0.71 0.60

18 友だちにご飯をおごる 0.33 0.28 0.70 0.68

17 おやつを友だちにおごる 0.41 0.21 0.65 0.64

固有値 5.58 3.20 2.38

ドキュメント内 1.「子どもの貧困」の発見 (ページ 56-60)