第 8 章 その他の手法 87
10.4 欠測メカニズムに対する感度分析(感度分析 2)
10.4.4 PMM による感度パラメータ ∆ を用いた感度分析
以下,PMMの感度分析について示す.6章の記載をベースライン+4時点の場合に修正して記載する.6章で はベースラインを含めた4時点で,ベースライン時点の値は常に観測される状況であった.一方,今回はベース ライン以後4時点であり,時点1から欠測しうる.投与後の4時点のベースラインからの変化量をY1, Y2, Y3, Y4 とおく.
ここでは6.7.4節で紹介した以下の制約条件を用いる.これはNRC(2010)の5章で紹介したPMMの感度分
析の方法に対応する.
(6章) Case 7:NFMV+ACMV+∆
gs−1(Ys|Y1, ..., Ys−1) = f≥s(Ys−∆|Y1, ..., Ys−1)
=
∑T j=s
ωsjfj(Ys−∆|Y1, .., Ys−1) (10.3) ベースライン+4時点のデータの分布関数は NFMVにより以下の通り式変形できる.なお,ω43+ω44 = 1, ω32+ω33+ω34= 1である.後ほど,簡単のためδ=ω43とおき,ω44= 1−δを代入する.
f4(1234) = f4(1234)
f3(1234) = f3(123)f3(4|123)
= f3(123)g3(4|123) f2(1234) = f2(12)f2(3|12)f2(4|123)
= f2(12)g2(3|12)f≥3(4|123) (∵NFMV)
= f2(12)g2(3|12) [ω43·f3(4|123) +ω44·f4(4|123)]
= f2(12)g2(3|12) [
δ·g3(4|123) + (1−δ)f4(4|123) ]
(∵ω43=δ, ω44= 1−δ) f1(1234) = f1(1)f1(2|1)f1(34|12)
= f1(1)g1(2|1)f1(3|12)f1(4|123)
= f1(1)g1(2|1)f≥2(3|12)f≥3(4|123) (∵NFMV)
= f1(1)g1(2|1) [ω32·f2(3|12) +ω33·f3(3|12) +ω34·f4(3|12)]
×[ω43·f3(4|123) +ω44·f4(4|123)]
= f1(1)g1(2|1) [ω32·f2(3|12) +ω33·f3(3|12) +ω34·f4(3|12)]
×[
δ·g3(4|123) + (1−δ)f4(4|123) ]
(∵ω43=δ, ω44= 1−δ)
= f1(1)g1(2|1) [
ω32·g2(3|12) +ω33·f3(3|12) +ω34·f4(3|12) ]
×[
δ·g3(4|123) + (1−δ)f4(4|123) ]
f0(1234) = f0(1)f0(2|1)f0(34|12)
= g0(1)f0(2|1)f0(3|12)f0(4|123)
= g0(1)f≥1(2|1)f≥2(3|12)f≥3(4|123)
= g0(1) [ω21·f1(2|1) +ω22·f2(2|1) +ω23·f3(2|1) +ω24·f4(2|1)]
×[
ω32·g2(3|12) +ω33·f3(3|12) +ω34·f4(3|12) ]
×[
ω43·g3(4|123) + (1−ω44)f4(4|123) ]
(∵NFMV)
= g0(1) [ω21·f1(2|1) +ω22·f2(2|1) +ω23·f3(2|1) +ω24·f4(2|1)]
×[
ω32·g2(3|12) +ω33·f3(3|12) +ω34·f4(3|12) ]
×[
δ·g3(4|123) + (1−δ)f4(4|123) ]
(∵ω43=δ, ω44= 1−δ)
= g0(1) [
ω21·g1(2|1) +ω22·f2(2|1) +ω23·f3(2|1) +ω24·f4(2|1) ]
×[
ω32·g2(3|12) +ω33·f3(3|12) +ω34·f4(3|12) ]
×[
δ·g3(4|123) + (1−δ)f4(4|123) ]
(10.4) ここで,
δ=ω43= α3f3(123)
α3f3(123) +α4f4(123), 1−δ=ω44= α4f4(123) α3f3(123) +α4f4(123) ω32= α2f2(12)
α2f2(12) +α3f3(12) +α4f4(12), ω33= α3f3(12)
α2f2(12) +α3f3(12) +α4f4(12), ω34= α4f4(12)
α2f2(12) +α3f3(12) +α4f4(12),
ω21= α1f1(1)
α1f1(1) +α2f2(1) +α3f3(1) +α4f4(1), ω22= α2f2(1)
α1f1(1) +α2f2(1) +α3f3(1) +α4f4(1),
ω23= α3f3(1)
α1f1(1) +α2f2(1) +α3f3(1) +α4f4(1), ω24= α4f4(1)
α1f1(1) +α2f2(1) +α3f3(1) +α4f4(1) である.
また,g1(2|1),g2(3|12),g3(4|123)は未特定の分布の確率密度関数であるが,6.5.4節で紹介した通り,ACMV の制約条件を与えることにより特定可能となる.さらに感度パラメータ∆の値を解析者が設定することによ り,観測データと欠測データの分布の乖離度合いを仮定することができる.つまり,
gs−1(Ys|Y1, ..., Ys−1) =f≥s(Ys−∆|Y1, ..., Ys−1) (10.5) を上の式に代入する.個別に書き下すと
g0(1) = f≥1(1−∆) g1(2|1) = f≥2(2−∆|1)
g2(3|12) = f≥3(3−∆|12) (10.6)
g3(4|123) = f4(4−∆|123) となる.
なお∆を設定した場合でも,∆をMARからのずれと考えるならば,efficacyの評価(estimand 3である)を 行うことに変わりはないと考えられる4.上記の内容を,NRC(2010)におけるPMMの感度分析と対応する形で 記載しておく5.まず,観測データの条件付き分布の平均は以下のようになる.なお,以下たとえばE[Y1|R≥1]
とはf≥1(1)の平均,E[Y2|Y1, R≥2]はf≥2(2|1)の平均である.Rは欠測識別変数ではなく,最終観測時点で ある.
E[Y1|R≥1] = µ1 E[Y2|Y1, R≥2] = µ2+Y1β2 E[Y3|Y2, R≥3] = µ3+Y′2β3 E[Y4|Y3, R= 4] = µ4+Y′3β4
(10.7)
次に,NFMVの仮定から
E[Y2|Y1, R= 0] =E[Y2|Y1, R≥1]
E[Y3|Y2, R= 0] =E[Y3|Y2, R= 1] =E[Y3|Y2, R≥2]
E[Y4|Y3, R= 0] =E[Y4|Y3, R= 1] =E[Y4|Y3, R= 2] =E[Y4|Y3, R≥3]
が成り立つ.最後に,gに対して,式(10.6)を代入すると,以下のようになる.
E[Y1|R= 0] = µ1+ ∆ E[Y2|Y1, R= 1] = µ2+ ∆ +Y1β2 E[Y3|Y2, R= 2] = µ3+ ∆ +Y′2β3 E[Y4|Y3, R= 3] = µ4+ ∆ +Y′3β4
(10.8)
ここで,たとえばE[Y1|R= 0]はg0(1) =f≥1(1−∆)の平均である6.
PMMにおいてもSMと同様,感度パラメータを動かした下で興味のある推定値の安定性を確認することに より欠測メカニズムに対する感度分析を実行する.なお,感度パラメータの持つ意味は,SMとPMMで大きく 異なるため,注意が必要である.SMの感度パラメータは観測確率に対するMARからの乖離度合いを,PMM の感度パラメータは応答変数に対するMARからの乖離度合いを表している.感度パラメータ∆の設定範囲 はSMと同様,関連試験の結果を参考に事前に定義しておく.PMMの詳細な解析手順の説明は6.5.4節〜6.5.6 節,6.7.4節,6.10.4節を参照.
シミュレーションデータに対してPMMにより感度分析を行った際に用いたマクロプログラム(%delta_pmm)を 以下に示す.さらに解析結果を図10.7,図10.8,表10.6,に示す.ACMV+∆の制約条件の下,感度パラメー タを-3〜3の範囲(1区切り)で設定したもとで解析し7,興味のある推定値(最終時点の群間差)を求めた.
その結果,感度パラメータの値が小さくなるほど,群間差の値が小さくなる傾向がみられた.群間差の最小値 は-2.20であった.
4一方で,∆を「投与中止後の悪化(投与中止による影響を考慮している)」と考えるならば,effectivenessの評価と考える方が妥当か もしれない.この点についても,引き続き検討が必要であろう.
5NRC(2010)とは状況が少し異なるため,厳密には一致しない.また,少し追加の条件付けが必要となる.
6式(10.6),式(10.8)間で,感度パラメータ∆の符合が−から+へ変わっているように見えるが以下の式変形の通り,一致することが
分かる.∫ Y2·f≥2(
Y2Y1)
dY2=µとしたときに,E[Y2|Y1, R= 1]はg1(2|1)の期待値であり,
E[Y2|Y1, R= 1] =
∫
Y2·g1(2|1)dY
=
∫ Y2·f≥2
(Y2−∆Y1) dY2
=
∫
(Y2−∆)f≥2(
Y2−∆Y1) dY2+ ∆
∫ f≥2(
Y2−∆Y1) dY2
= µ+ ∆
7感度パラメータは両群に対して共通の値を設定している
%delta_pmm(datain = inputds,
trtname = trt,
subjname = id,
visname = time,
basecont = %str(v0), postcont = %str(val),
seed = 34535499,
nimp = 10,
deltavis = %str(first), deltacont = %str(&delta), deltacontarm = %str(0,1), deltacontmethod = %str(meanabs), favorcont = %str(&fav), primaryname = val,
analcovarcont = %str(v0), analmethod = mmrm,
repstr = %str(un),
trtref = 0,
dataout = data0imputed1, resout = pmmresults1 );
• &deltavisでは感度パラメータの設定を,欠測した最初の1時点のみとするか("FIRST"),欠測した時点 以降すべてとするか("ALL")を指定する.
• 上記&delta,&favに入力する内容及び表6の感度パラメータは以下の通り対応する.
(&delta,&fav,感度パラメータ)=
(3, high, -3.0),(2, high, -2.0),(1, high, -1.0),(0, high, 0.0),(1, low, 1.0),
(2, low, 2.0),(3, low, 3.0)
図10.7:感度パラメータごとの両群の点推定値± SE(PMM) 図10.8:感度パラメータごとの群間差± SE (PMM)
表10.6:感度パラメータごとの解析結果(PMM)
時点4における各群の
解析手法 感度パラメータ 点推定値(SE) 群間差 群間差のSE 実薬群 プラセボ群
-3.0 -11.37(0.69) -9.18(0.71) -2.20 0.962 -2.0 -11.31(0.69) -9.09(0.71) -2.22 0.962 -1.0 -11.25(0.69) -9.00(0.71) -2.25 0.963 PMM:NFV (NCMV) 0.0 -11.19(0.69) -8.91(0.72) -2.27 0.965 1.0 -11.13(0.69) -8.83(0.72) -2.30 0.969 2.0 -11.07(0.69) -8.74(0.72) -2.33 0.973 3.0 -11.00(0.70) -8.65(0.73) -2.35 0.979