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制約条件 CCMV,NCMV,ACMV を仮定した PMM

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第 6 章 Pattern-Mixture Model 50

6.5 制約条件 CCMV,NCMV,ACMV を仮定した PMM

最初に,全時点のデータの同時密度関数を示す.脱落のパターンをR= 1,…, T とし,R=tt時点まで 観測されたことを意味する.このとき,パターンtに対する全ての時点のデータの同時密度関数は

f (

Y1, ..., YT, R=t|X,eθ,ψe )

= ft

(

Y1, .., Yt|X,eθ )

× ft (

Yt+1, Yt+2, ..., YT|Y1, .., Yt,X,eθ )

× f

(

R=t|X,ψe )

(6.1) と表せる.ただし,Xは共変量,eθは応答変数に関するパラメータ,eψは欠測パターンに関するパラメータを 示す.右辺の1つ目の部分ft

(

Y1, .., Yt|X,eθ

)は,観測データの分布のため,特定可能となる.2つ目の部分 ft

(

Yt+1, Yt+2, ..., YT|Y1, .., Yt,X,θe )

は,欠測データの分布のため,制約条件を適用することで特定可能とな る.なお,簡単な記載とするため,以降の節において共変量X,応答変数に関するパラメータθe及び欠測パ ターンに関するパラメータψe は除いて記載する.

6.5.1 欠測データの分布を特定可能にする制約条件

以下,制約条件CCMV, NCMV, ACMVを扱うが,基本的な考え方に共通部分があるため,Thijs et al. (2002) が示した一般形をはじめに示す.(s1)時点までの応答変数,Y1, ..., Ys1のデータを与えた上で,全てのパ

ターン(j=s, ..., T)をもとにYsが特定可能となるCCMV,NCMV,ACMVを扱える一般的な制約条件は,

ft(Ys|Y1, ..., Ys1)

| {z } 特定不能な密度関数

=

T j=s

ωsjfj(Ys|Y1, ..., Ys1)

| {z }

特定可能な密度関数

, s=t+ 1, .., T (6.2)

= ωssfs(Ys|Y1, ..., Ys1) +· · ·+ωsTfT(Ys|Y1, ..., Ys1)

と表せる.また,(6.2)式において,sとtの大小関係は,各制約条件を示すうえで必要な情報となるため,注 意したい.右辺の密度関数は,fs(Ys|Y1, ..., Ys1),· · ·, fT(Ys|Y1, ..., Ys1)の重み付き和であり,最終観測時 点Rs以上となっているため,これらのYsの条件付き分布は特定可能であることが分かる.この密度関数

がinterior familyの密度関数であり,イメージを以下の表6.1に示す.4時点の脱落パターンの○×の表におい

て,○×の表を縦方向に眺め,×の分布を○の分布の一次結合で示した混合分布を interior familyの密度関数 と呼び,一次結合の係数が(6.2)式のωsjに相当する.

表6.1:計画された時点が4の場合の脱落パターン(○:観測,×:欠測)

時点1 時点2 時点3 時点4 パターンA ○ ○ ○ ○ パターンB ○ ○ ○ × パターンC ○ ○ × × パターンD ○ × × ×

さらに,特定不能な密度関数が図6.1の欠測データ(点線)に対応し,特定可能な密度関数が観測データ(実 線)に対応している.これから見ていく制約条件CCMV, NCMV, ACMVは,縦方向のどの○を,どのように

×に結びつけるのかの違いで表すことができ,重み ωsjの設定により,3つの制約条件を具体的に表すことが できる.

6.5.2 CCMV

CCMV (Little, 1993)は以下の条件である.

ωT ,T =ωT1,T =ωT2,T =...=ωt+1,T = 1 かつ,

ωsj= 0, j̸=T.

この制約条件下でYsの条件付き分布は

ft(Ys|Y1, ..., Ys1) =fT(Ys|Y1, ..., Ys1), s=t+ 1, ..., T (6.3) となる.これは最後まで測定された完了例の情報から欠測の情報を補完するものである.完了している場合の データを利用するため,多くの被験者が完了している場合には有用である.また,非単調な欠測のときにも利 用が容易である.具体的に,4時点までの経時測定データにおいて,CCMVを用いた場合に特定不能である密 度関数がどのように特定されるかを示す.

f3(4|123)

| {z }

×の式

=f4(4|123)

| {z }

○の式

(以下,同様)

f2(3|12) =f4(3|12), f2(4|123) =f4(4|123)

f1(2|1) =f4(2|1), f1(3|12) =f4(3|12), f1(4|123) =f4(4|123)

CCMVのイメージは,表6.1において全ての×の分布を時点 4まで観測されているパターンAの各時点の○の 分布で補完することである.また,CCMVで特定される分布を表6.2に示す.

表6.2: CCMVで特定される分布(太字:×の部分) 時点1 時点2 時点3 時点4 パターンA f4(1) f4(2|1) f4(3|12) f4(4|123) パターンB f3(1) f3(2|1) f3(3|12) f4(4|123) パターンC f2(1) f2(2|1) f4(3|12) f4(4|123) パターンD f1(1) f4(2|1) f4(3|12) f4(4|123)

6.5.3 NCMV

NCMVは以下の条件である.

ωT ,T =ωT1,T1=ωT2,T2=...=ωt+1,t+1= 1 かつ,

ωsj= 0, j̸=s.

この制約条件下でYsの条件付き分布は

ft(Ys|Y1, ..., Ys1) =fs(Ys|Y1, ..., Ys1), s=t+ 1, ..., T (6.4) となる.これは,欠測したパターンに対して,一番近いパターンの情報から欠測の情報を当てはめるものであ る.具体的に,4時点までにおける経時測定データにおいて,NCMVを用いた場合に特定不能である密度関数 がどのように特定されるかを示す.

f3(4|123) =f4(4|123)

f2(3|12) =f3(3|12), f2(4|123) =f4(4|123)

f1(2|1) =f2(2|1), f1(3|12) =f3(3|12), f1(4|123) =f4(4|123)

NCMVのイメージは,表6.1において「×の分布」を「一番欠測パターンが近い○の分布」で補完することで ある.例えば,パターンCとパターンDの時点3の×の分布は,パターン Bの時点3の○の分布で補完する.

また,NCMVによって特定される分布は表6.3である.

表6.3: NCMVで特定される分布(太字:×の部分) 時点1 時点2 時点3 時点4 パターンA f4(1) f4(2|1) f4(3|12) f4(4|123) パターンB f3(1) f3(2|1) f3(3|12) f4(4|123) パターンC f2(1) f2(2|1) f3(3|12) f4(4|123) パターンD f1(1) f2(2|1) f3(3|12) f4(4|123)

6.5.4 ACMV

ACMV(Molenberghs et al., 1998)は以下の条件である.

ft(Ys|Y1, ..., Ys1) = fs(Ys|Y1, ..., Ys1)

= f(Ys|Y1, ..., Ys1, R≥s)

= f(Y1, ..., Ys1, Ys, R≥s) f(Y1, ..., Ys1, R≥s)

= f(Y1, ..., Ys1, Ys|R=s)f(R=s) +...+f(Y1, ..., Ys1, Ys|R=T)f(R=T) f(Y1, ..., Ys1|R=s)f(R=s) +...+f(Y1, ..., Ys1|R=T)f(R=T)

= αsfs(Y1, ..., Ys1, Ys) +...+αsfT(Y1, ..., Ys1, Ys)

αsfs(Y1, ..., Ys1) +...+αTfT(Y1, ..., Ys1)  (ただし,f(R=j) =αj)

=

T j=s

αjfj(Y1, ..., Ys)

T j=s

αjfj(Y1, ..., Ys1)

=

T j=s

αjfj(Y1, ..., Ys1)

T l=s

αlfl(Y1, ..., Ys1)

fj(Ys|Y1, .., Ys1)

=

T j=s

ωsjfj(Ys|Y1, .., Ys1), s=t+ 1, ..., T. (6.5) ただし,ωsj= αjfj(Y1, ..., Ys1)

T l=s

αlfl(Y1,· · ·, Ys1)

ここで記載されているαjは,全被験者数に対する観測された脱落パターンjの被験数の割合を示す(Molenberghs

et al., 1998).具体的に,4時点までにおける経時測定データにおいて,ACMVを用いた場合に特定不能であ

る密度関数がどのように特定されるかを示す.

f3(4|123) =f4(4|123)

f2(3|12) =f3(3|12), f2(4|123) =f4(4|123)

f1(2|1) =f2(2|1), f1(3|12) =f3(3|12), f1(4|123) =f4(4|123)

ACMVのイメージは,表6.1において全て×の分布を×の時点が観測されている全てのパターンの○の分布で 補完することである.例えば,パターンDの時点2の×の分布は,時点 2が観測されている全てのパターン

A,B,Cの時点2の○の分布で補完する.また,ACMVに特定される分布は表6.4である.

表6.4: ACMVで特定される分布(太字:×の部分) 時点1 時点2 時点3 時点4 パターンA f4(1) f4(2|1) f4(3|12) f4(4|123) パターンB f3(1) f3(2|1) f3(3|12) f4(4|123) パターンC f2(1) f2(2|1) f3(3|12) f4(4|123) パターンD f1(1) f2(2|1) f3(3|12) f4(4|123)

Molenberghs et al. (1998)は以下の定理1を示した.定理の証明はAppendix Bで述べる.

定理1:脱落を伴う経時測定データにおいて,MARとACMVは同値である

6.5.5 制約条件( CCMVNCMVACMV )の利用

制約条件(6.2)式を完全データの分布関数の(6.1)式に代入すると,各パターンtの観測データの密度関数を

用いて,全ての時点データの同時密度関数が以下の式で示せる.

ft(Y1, ..., YT) =ft(Y1, .., Yt)

Tt1 s=0

 ∑T

j=Ts

ωTs,jfj(YTs|Y1, ..., YTs1)

 (6.6)

具体的に,4時点までにおける経時測定データにおいて,CCMV,NCMV,ACMVを用いて4パターンの同時 密度関数を示す.なお,ω33+ω34= 1, ω44= 1である.簡略化のため,後ほどω:=ω33とし,ω34= 1−ωと おく.

f4(1234) = f4(1234)

f3(1234) = f3(123)f3(4|123)

= f3(123)ω44·f4(4|123) (∵CCMV, NCMV, ACMV共通)

= f3(123)f4(4|123) (∵ω44= 1) f2(1234) = f2(12)f2(3|12)f2(4|123)

= f2(12) [ω33·f3(3|12) +ω34·f4(3|12)]ω44·f4(4|123) (∵(6.6))

= f2(12) [ω·f3(3|12) + (1−ω)f4(3|12)]f4(4|123) (∵ω33=ω, ω34= 1−ω, ω44= 1) f1(1234) = f1(1)f1(2|1)f1(3|12)f1(4|123)

= f1(1) [ω22·f2(2|1) +ω23·f3(2|1) +ω24·f4(2|1)]

×33·f3(3|12) +ω34·f4(3|12)]ω44·f4(4|123) (∵(6.6))

= f1(1) [ω22·f2(2|1) +ω23·f3(2|1) +ω24·f4(2|1)]

×·f3(3|12) + (1−ω)f4(3|12)]f4(4|123) (∵ω33=ω, ω34= 1−ω, ω44= 1) (6.7) 次に,各制約条件においてωの設定を行う.ここで各制約条件に対してCase Xという形で記載する.

Case 1: CCMV

ω=ω33=ω22=ω23= 0, ω44=ω34=ω24= 1

このとき,(6.7)式におけるCCMVを用いた4パターンの同時密度関数は以下となる.

f4(1234) = f4(1234)

f3(1234) = f3(123)f4(4|123) f2(1234) = f2(12)f4(3|12)f4(4|123) f1(1234) = f1(1)f4(2|1)f4(3|12)f4(4|123) Case 2: NCMV

ω=ω33=ω22= 1, ω34=ω23(1) =ω24(1) = 0

このとき,上記の例におけるCCMVを用いた4パターンの同時密度関数は以下となる.

f4(1234) = f4(1234)

f3(1234) = f3(123)f4(4|123) f2(1234) = f2(12)f3(3|12)f4(4|123) f1(1234) = f1(1)f2(2|1)f3(3|12)f4(4|123) Case 3: ACMV

ω=ω33= α3f3(12)

α3f3(12) +α4f4(12), 1−ω=ω34= α4f4(12) α3f3(12) +α4f4(12), ω22= α2f2(1)

α2f2(1) +α3f3(1) +α4f4(1), ω23= α3f3(1)

α2f2(1) +α3f3(1) +α4f4(1), ω24= α4f4(1)

α2f2(1) +α3f3(1) +α4f4(1) ただし,αj=f(R=j)とする.

このとき,上記の例におけるACMVを用いた4パターンの同時密度関数は,Case 3で指定したωを(6.7)式 に代入した場合である.以上より,すべての時点のデータが特定可能となった.また,欠測メカニズムとして MARを仮定する場合には,Case 3のようなを制約条件を設定することになる.

O’Kelly and Ratitch(2014)は,制約条件の使い分けについて以下のように述べている.

CCMVは,欠測データの分布を完了例のみの分布を用いて解析しているため,バイアスが入る可能性が ある

NCMVは,欠測データの分布に一番近いパターンの分布を用いて解析しているため,そのパターンの例 数が十分に存在しない可能性があり,パラメータの推定が不安定になる場合がある

ACMVは,欠測メカニズムMARを仮定しているため,MARを仮定した解析を主解析とした場合の,

欠測メカニズムに対する感度分析としては有益でない

したがって,MARを仮定した解析(たとえば,MMRM)を主解析とした場合,上記の制約条件を用いた感度分 析としてはどれも十分なものでない方法である,と述べている.また,O’Kelly and Ratitch(2014)には,MAR を仮定したMIが制約条件ACMVを用いたPMMとみなせることも記載されている.一方,本タスクフォース 内での議論であるが,例えば「臨床試験の前半時点の脱落による理由が有害事象,後半時点の脱落による理由 が無効中止」の場合,ACMVを適用すると,前半時点の脱落被験者及び後半時点の脱落被験者の観測されて いるデータをひとまとめに利用することになり,利用するデータの適切性に疑問が生じる可能性があるとの意 見があった.このケースであれば,ACMVよりもNCMVも利用することが妥当になるかもしれない.また,

O’Kelly and Ratitch(2014)の上記3点の指摘のうち,CCMVとACMVの指摘はデータに依存しない指摘なの に対し,NCMVの指摘はデータに依存する指摘であるため,各パターンのデータが十分であり,上述のような NCMVが当てはまる場合もあるとの意見もあった.

6.5.6 制約条件( CCMVNCMVACMV )を仮定した PMM の実装手順

これまでは欠測データの分布の特定に関する内容であったが,ここでは推定に関する実装手順を示す.

Step1

各脱落パターンt(= 1, ..., T)における観測されたデータの分布ft(Y1, .., Yt)に対してモデル化を行い,観 測された分布のパラメータの推定を行う.

Step2

制約条件としてCCMV,NCMV,ACMVのいずれかを選択する.

Step3

Step2で選択された制約条件を用いて,未観測のデータの条件付き分布ft(Yt+1, ..., YT|Y1, ..., Yt)を特定す る.その際,この条件付き分布は重みωで表現されている混合分布となるため,以下の2つのStep(3-1

及び3-2)が必要となる.

Step3-1

(6.2)式は混合分布を示しているため,混合分布を構成している密度関数から1つの分布を選択する.具

体的には,(6.2)式において(T−s+ 1)個の重みωsj(s=t+ 1, ..., T;j=s, ..., T)の中から一つそれに 対応する密度関数fj(Ys|Y1, ..., Ys1)を選択するするため,一様分布に従う確率変数U の乱数を発生さ せる.添え字s1つに対して1個の一様乱数を発生させる.添え字sは(T−t)種類存在するため,対応 する乱数も(T −t)個必要となる.下記の条件を満たすときk(=s, ..., T)番目の密度関数(コンポーネ ント)が選択される.

k1

j=s

ωsj≤U

k j=s

ωsj, (k=s,· · · , T, k≥2) 0≤U ≤ω11, (k= 1)

Step3-2

k番目の密度関数より乱数としてYsのデータを発生させる.

Step4

Step3-2により得られた乱数を用いて,多重補完を適用する.

Step5

多重補完されたデータを適切な解析モデル(MMRMなど)を用いて解析する.

Step6

多重補完の枠組み(Rubinのルール,6.8節で説明)で薬剤の効果の推測を行う.

以上より,簡単に流れをまとめると以下となる.

1. モデルの特定(MARの場合:ACMV)

2. MIを用いて欠測データの補完 3. 補完後,各データに対して別々に解析 4. 3.の解析結果をまとめて,1つの結論を出す

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