第 8 章 その他の手法 87
11.3 Analytic Road Map に関する注意点
11.2.5 Estimand 6
Estimand 6は,最初に割り付けられた治療の影響の因果効果に注目して,計画されたエンドポイントでの
effectivenessを評価するestimandである.投与中止後のデータも基本的には収集し,データの解析に含める方
向ではあるものの,興味の対象は最初に割り付けられた治療であるため,rescue medication使用後のデータは 使用せず,その後は無治療(対照群と同様の治療)であることを想定する.そのため,rescue medication使用 後のデータに対しては,「無治療」と考えられるような値で補完を行う必要がある.そのための方法として,
• BOCFによる補完(4章, 6章)
• プラセボ群を参照群としたcontrolled imputation (pMI)による補完(6章)
等が考えられる.どのような補完方法・補完モデルがよいか,は疾患領域・薬剤の特性を踏まえ,試験ごとに 検討が必要である.
11.2.6 Estimand 4
投与期間と応答変数を1つに合わせたAUCで評価するため,各被験者で使用できる応答変数の値は1つ
(ベースライン値を合わせると2つ)である.そのため
• t検定
• ANOVA
• ANCOVA
を用いることが考えられる.施設等を変量効果として用いる場合は,
• LMM(Appendix A)
による解析も可能である.
11.2.7 Estimand 5
治験薬の投与された最終時点のデータが評価の対象のため,estimand 4同様,各被験者で使用できる応答変 数の値は1つ(ベースライン値を合わせると2つ)である.そのため
• t検定
• ANOVA
• ANCOVA
を用いることが考えられる.施設等を変量効果として用いる場合は,
• LMM(Appendix A) による解析も可能である.
図11.1: Analytic Road Map(著者らによる加工あり)
この図はあくまで「主要なestimandとしてefficacy,主解析の欠測メカニズムとしてMAR」等を選択した場 合のものである.たとえばeffectivenessを主要なestimandとした場合や,MNARを仮定した解析を主解析と した場合,このまま使用することは難しい.しかし,本質的に検討すべき項目の多くは共通していると思われ るため,内容をよく理解した上で,適切に変更して使用することが望まれる.
参考文献
[1] Mallinckrodt, C. H. (2013). Preventing and treating missing data in longitudinal clinical trials. Cambridge University Press.
第 12 章 シミュレーションによる検討
12.1 はじめに
本章では,主解析の選択を目的とした架空の事例におけるシミュレーションについて紹介する.想定した試 験(うつ病の第III相試験,慢性疼痛の第III相試験)に対して,estimandとしてはestimand 3(efficacy),欠 測メカニズムとしてはMARを仮定した場合に,図12.1に示した「Analytic Road Map(Mallinckrodt, 2013)を 少し加工した図」において主解析の候補となっているMMRM,MI,wGEEのうち,いずれを主解析に用いる か検討するため,上記3手法の性能比較(検出力,αエラーなどの比較)を2つのシミュレーションに基づき 行った.また,これまで広く用いられてきているLOCF ANCOVAとOC ANCOVAの性能も合わせて検討した.
図12.1: Analytic Road Map(著者らによる加工あり)
1つ目のシミュレーションでは,うつ病の第III相試験を想定し,欠測メカニズムがMARのデータならびに MNARのデータを作成し,性能比較を行った.欠測メカニズムがMARのデータだけでなくMNARのデータ も作成した理由は,実際のデータでは欠測メカニズムがMNARになる可能性があることを考慮し,その場合 の各手法の性能を評価するためである.
2つ目のシミュレーションでは,慢性疼痛の第III相試験を想定し,MCARとMARの欠測メカニズムを混合 させたデータならびにMCARとMNARの欠測メカニズムを混合させたデータを作成し,性能比較を行った.
欠測メカニズムを混合させた理由は,欠測理由が複数あることを考慮し,その場合の各手法の性能を評価する ためである.
なお,本章で提示する結果は,2つのシミュレーション・シナリオに基づくものであるため,各手法の特徴 を掴むには有用であるが,一般化するにはより詳細な検討が必要である.すなわち,実際に主解析の手法を検 討する際は,個別の試験の状況に応じたシミュレーションの条件を設定することが重要である.