ISP CISP B
4.3 Network-aware P2P 配信方式の提案
この章では,BitTorrentをベースとしたコンテンツ配信プラットフォーム上で,トラフィッ ク局所化を可能とするNetwork-aware P2P提案手法(NaP2P)について説明する.
P4P手 法手 法手 法手 法 提 案 手 法提 案 手 法提 案 手 法提 案 手 法
iTracker App-Tracker
ピア情報
ピアリスト 作成
n-Tracker
ピア情報
ピアリスト
ピアリスト 作成
ISP ASP
ピアのネット ワーク情報
p-Tracker
ISP ASP
•ネットワーク情報をASPへ開示.
•ASPは第3機関からさらなるネットワー ク情報の入手が必要だが,
詳細は決まっていない.
•ネットワーク情報を公表しない.
•実装がシンプルで容易.
図4.1.提案手法とP4Pとの違い
4.3 Network-aware P2P配信方式の提案 51
本提案手法は,P2Pトラフィックを局所化する関連研究P4Pと類似した手法である.提案 手法とP4P手法の違いを,図4.1に示す.
P4P手法は,ISPが管理する候補ピアのネットワーク構成情報を,ASPが管理する app-Tracker(BitTorrentのTrackerに相当)に通知し,ASPがapp-Tracker内で,取得したネッ トワーク構成情報を基にピアリストを作成する仕組みである.しかしながら,本手法は,ISP とASPに対しいくつかの課題がある.まず第1に,ネットワーク情報がASPに公開される 点である.ISPは,セキュリティおよびビジネス戦略の観点から,通常他の機関にネットワー ク情報を公開することは望まない.第2に,ASPは他の機関からさらなるネットワーク情報 の取得を必要とするが,これはP4Pでは明確に定められていない.第3に,ISPが経路情報 を公開しても,ASPでピアを優先的に選択するために,ISPが希望する制御方法になるとは 限らない.
こ の 問 題 点 を 解 決 す る た め ,本 提 案 手 法 は ,ピ ア リ ス ト は ISP が 管 理・運 用 す る n-Tracker(P4PのiTrackerに相当)上で作成し,これをp-Tracker(BitTorrentのTrackerに相 当)へ返信する.このような手法とすることで,ISPはネットワーク情報を公表することなく,
また,容易に実装できる仕組みとした.さらに,ISPでピアの優先順に従ったピアリストを作 成することで,ISPが希望するトラフィック制御が可能となる.
n-Tracker n-Tracker
p-Tracker
ピアテーブル
トポロジ情報 データ
n-Tracker
ルータピア
Segment 1
Segment 2
Segment 3
ルータ
ピア
ルータ
ピア
図4.2.NaP2Pアーキテクチャ
本手法実現のために,図4.2に示す通り,ISPで運用・管理するn-Trackerを各セグメント に配置する.n-Trackerは,ネットワーク情報をセグメント内のルータや他のネットワーク機 器から収集する機能を有する.収集したネットワーク情報を基に,ピアがセグメント内か否か 優先付けする.
図4.2のp-Trackerの役割は,BitTorrentのTrackerと同様,ピアの状態を監視し,ピア テーブルの更新や,ピアからピアリスト要求に対する応答を行う.オリジナルBitTorrentの
Trackerとの違いは,ピアからの要求を直接ピアに返信せずに,n-Trackerにリダイレクトす
る.p-Trackerはどのn-Trackerへ要求を転送すべきかが解らないため,クライアントソフ
トを少し修正した.ピアがp-Trackerにピアリストを要求すると,同一セグメントに属する n-Trackerに向け要求を転送する.
要求ピア p-Tracker n-Tracker
ピアリスト要求
(要求ピアアドレス,要求ピアリスト数m,
n-Trackerアドレス,)
ピアリスト要求
(候補ピアアドレス,要求ピア アドレス,要求ピアリスト数m) ピア登録
ピアリスト応答
(peer 1, peer 2, …, peer m) Network-aware ピア選択アルゴリズム
ピアリスト応答
(peer 1, peer 2, …, peer m)
図4.3.NaP2P通信手順
NaP2P通信手順を図4.3に示す.要求ピアは,ピアリストに設定する候補ピアの数m(以
後,「要求ピアリスト数」と呼ぶ),要求ピアアドレス,n-Trackerアドレスを指定して,所 望コンテンツに対するピアリストをp-Trackerに要求する.p-Trackerは,候補テーブルに 登録されているリモートピア情報と共にn-Trackerに対し要求を転送する.n-Trackerでは,
Network-awareピア選択方法に従い,リモートピアを優先順に選択したピアリストを作成す
る.ピアリスト作成後,優先付けしたピアリストは,n-Trackerからp-Trackerへ,そして要 求ピアへ転送される.
ピアリストは,n-Tracker上で,図4.4に示すピア選択方法で作成される.n-Trackerは,
4.3 Network-aware P2P配信方式の提案 53
m*(1-S
r)
外部セグメント ピア
※1
(ランダム選択)
m*S
r同一セグメントピア m = ピアリスト数
S
r= 同一セグメント ピア選択率
1 2 3 4 5 6 m-1 m
peer list
(ISP
が
P2Pトラヒックのセグメント局所率を制御することを仮定
)※1 同一セグメントピアで選択されていないピアを含む.
図4.4.優先付けピアリスト
最初に要求ピアと同一セグメントに属するリモート候補ピアをm*Sr個選択する.ここでSr は同一セグメントピア選択率であり,同一セグメント内に属するピアが選択される割合をSr (0<=Sr<=1)で示す.そして,他のセグメントに属するリモート候補ピアをm*(1-Sr)個ラ ンダムに選択する.もし同一セグメントに属するリモート候補ピアがm*Sr個存在しない場 合,同一セグメントのリモート候補ピアを全て選択し,残りを他セグメントの候補ピアの中か らランダムに選択する.また,リモート候補ピア数がm未満の場合,ピアリストは上記ピア選 択方法を使用し全リモート候補ピアをピアリストに設定する.なお,図中の外部セグメントピ アには,外部セグメントピア,および,同一セグメントピアに選択されなかったピアを含む.
従って,Sr=0の場合,既存のBitTorrentのピア選択と同じになる.
ISPネットワークは,1つもしくは複数のASで構成される.特に大規模ISPは,ネット ワークの運用目的やネットワークスケーラビリティ向上のために,複数のサブネットワークセ グメントに分割した階層化構造を適用している.ネットワークセグメント間でネットワーク情 報を交換するために,OSPF(Open Shortest Path First )の代わりに,プライベートASとし てi-BGP (Internal Border Gateway Protocol)プロトコルが使用される.
図4.2の中の各セグメントは,ASに相当すると仮定すると,n-Trackerはi-BGPを通し てネットワーク情報を収集することができる.このアーキテクチャは,他のISPに対し,自 ISPで管理しているネットワーク情報の公開を要求しないため,ISPにとって望ましい手法で ある.
本手法は,複数の地域ネットワークで構成されるISP内部に対しても適用可能である.本
シナリオでは,P2Pトラフィックは,図4.2の地域に相当する各セグメントネットワークと仮 定したエリアネットワーク内に局所化される.エリアネットワークがOSPFエリアで運用し ている場合,n-TrackerはOSFPモニタ機能[57]を使用することでISPネットワークトポロ ジ情報は収集可能である.