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3.3 実機を用いた実験室内環境による性能評価実験
P2Pプログレッシブダウンロードでは,P2Pオーバレイネットワークに参加する全ピアが,
再生時刻までにビデオ再生順にピースを収集することができる.もし全ピアの上り/下り回線 速度とも十分に高速であれば,P2Pプログレッシブダウンロードは有能なコンテンツ配信手 段となる.よって,上下対称で,かつ,高速回線であるFTTHを使用することが,P2Pプロ グレッシブダウンロードに望ましい.
しかしながら,現在未だに多くのADSLユーザが存在する.ADSL回線はFTTH回線と異 なり,回線速度が低速だけでなく,上り/下り回線速度が非対称である.また,局舎からの距 離に応じて回線速度が減少する.
現在のアクセスネットワークは,FTTHとADSLが混在した異種混在ネットワーク構成で ある.ゆえに,高速/低速回線が共存したこのような異種アクセスネッワーク上で,P2Pプロ グレッシブダウンロードの性能評価が必要である.
3.3.1 実験環境
FTTHとADSL混在ネットワークにおけるプログレッシブダウンロードの性能評価を行う ためには,現実的な環境で実験することが重要である.そこで,実際のFTTH機器を使用し,
実験室内に実験環境を構築した.
FTTHとADSL混在ネットワーク環境を構築するために,GE-PON(Gigabit Ethernet-Passive Optical Network)システムを用いた.また,ADSL回線を模擬するために,FTTH 回線の上り/下りをそれぞれ非対称なADSL回線速度に設定した.本構成で,FTTHとADSL 混在実験ネットワークを実装させた.
図3.2に室内実験構成図を示す.この構成は,複数の宅内ユーザがISP内の中央サーバに 接続していることを示す.図に示す通り,オリジンサーバと制御サーバを収容したPCは,
OLT(Optical Line Terminal)とL3SW(Layer 3 SWitch)の GbE(Gigabit Ethernet)イン ターフェースを介して接続した.ADSLの上り/下りの回線速度は,回線状態やADSLタイ プにより異なるが,ノードが局舎から数キロメートル離れた位置に存在する時のデータ転送速 度に相当した値とした.各ファイバリンクはONU (Optical Network Unit)で終端され,PC はONUのイーサネットポートに接続した.
実験は,PC29台を使用し,3.4GHz Intel Pentium4 processor CPU,1GByte RAMを搭
3.3 実機を用いた実験室内環境による性能評価実験 31
Origin server OLT + Control server (Grid Delivery® System)
L3 SW
100Mbps(U)/100Mbps(D)
1Mbps(U)/10Mbps(D) FTTH Link
ADSL Simulated Links file download
TCP Connection for P2P Segmented file
(256KByte pieces)
Start first
Start secondly ONU
Start to the 29th Start thirdly ONU
ONU
ONU Splitter
(32port)
GE-PON system
図3.2.室内実験構成図
表3.1.実験諸元
項目 パラメータ
ピアPC 使用PC 29台
性能 OS Windows XP SP2
CPU Intel Pentium(R) 4 3.40GHz
RAM 1GByte
インターフェース 100/1000Base-T クライ クライアントソフトウェア起動時刻 約5秒毎
アント クライアントソフトウェア終了時刻 全ピアのダウンロード完了後 データバッファリングサイズ 512KByte(=2ピース) ビデオ ファイルサイズ 18MByte
コンテンツ ピースサイズ 256KByte サブピースサイズ 32KByte
再生速度 384kbps
ファイルフォーマット wmv v7
再生時間 6分54秒
チェックサム整合性 SHA-1
載する全て同一性能のPCを用いた.
P2Pプログレッシブダウンロードを実装したグリッド・デリバリー°Rシステムクライアン トソフトウェアを,Windows XPが動作するPC上にインストールした.また,配信コンテ ンツは,サイズ18MByte,再生速度384kbpsで,全PC同一のコンテンツを配信させた.そ の他実験パラメータを表3.1に示す.
3.3.2 実験結果
3.3.1章で示した実験系を用いて,プログレッシブダウンロードの性能評価実験を行った.
プログレッシブダウンロード配信手順は,各PCにインストールされているクライアントソフ トウェアを起動し,本実験用に用意したコンテンツに対するメタファイルを取得すると,コン テンツのダウンロード要求が行われピースのダウンロードが開始する.各クライアントソフト ウェアは,1台ずつ5秒間隔に起動させた.メディアプレーヤは,ピースのダウンロードおよ
びSHA-1照合によるデータ整合性確認が最初の2ピース分処理された後,自動的に再生を開
始する.
オリジンサーバからピアへのダウンロードは,unchokeでピア数を制限しサーバ配信負荷を 削減させることができる.また,最大unchoke数は,オリジンサーバで設定可能である.最
大unchoke数が1の時,最初にオリジンサーバにアクセスした1ピアだけがサーバからのウ
ンロードを許可され,このピアのunchoke時間が終了するまで他のピアはchokeとなる.
実験は,FTTHノード数とオリジンサーバの最大unchoke数の関数として,各ピアを測定 した.そして,P2Pプログレッシブダウンロードの平均ダウンロード速度は,開始から終了時 刻までにダウンロードしたファイルサイズと共に算出した.各実験結果は,ピア数に対するダ ウンロード速度のグラフとし,X軸はダウンロード速度順にノードを並べ替えている.
3.3.2.1 FTTH回線の効果
FTTHリンクのアップロード高速性を評価するために,FTTH存在ネットワークにおける ダウンロード速度の向上について実験した.
ADSL回線のみで構成したADSLネットワークと,FTTHが存在するFTTH/ADSL混在 ネットワークにおいて,ダウンロード速度を測定した結果を図3.3に示す.オリジンサーバの 最大unchoke数は1とした.
ADSLネットワークは,平均ダウンロード速度が360kbpsで,コンテンツ再生速度384kbps より僅かに遅く,殆どのノードは,再生直後に停止する.
これに対し,FTTH/ADSL混在ネットワークは,FTTHノードが最初にダウンロード開 始した場合,オリジンサーバから13Mbpsの高速ダウンロードが行われた.従って,下り回
線速度10MbpsのADSLノードはオリジンサーバからのダウンロードを許可されないが,上
り回線速度100MbpsのFTTHノードからピースをダウンロードできた.他のADSLノー
ドは,1Mbpsの上り回線,10Mbpsの下り回線速度でピースを転送するが,FTTHノードは
100Mbpsの上り回線速度で同時に4ノードまでダウンロードすることが可能である.このこ
とは,FTTHノードが全体のダウンロード速度に著しく貢献していると言える.
図3.3では,14個のADSLノードが1Mbps以上で高速ダウンロードを行った.さらに,
ADSLノードの中の最低ダウンロード速度でさえ,ADSLの平均ダウンロード速度の2倍以 上の速度が得られた.これは,コンテンツ再生速度に比べ2倍以上高速であった.さらに,
FTTHと接続したノードの平均ダウンロード速度は,12.78Mbpsであり,これに対しADSL
3.3 実機を用いた実験室内環境による性能評価実験 33
0 2 4 6 8 10 12 14
0 5 10 15 20 25 30
D o w n lo ad S p ee d [ M b p s]
Peer Number
FTTHピア
(100Mbps UP, 100Mbps DOWN)
FTTHピア数 = 1 FTTHピア数 = 0
図3.3.FTTHピア数=0,および,FTTHピア数=1のダウンロード速度分布
ネットワークは,3.43Mbpsであった.この実験結果より,P2Pプログレッシブダウンロード を行うために,最低1つFTTHノードあれば,ADSLノードのダウンロード速度を改善する ことができると言える.
3.3.2.2 FTTHピア数とダウンロード速度
FTTHノード数の増加に伴い,ダウンロード速度が高速になると予想し, FTTHノード数 の効果について評価を行うため,FTTH/ADSL混在ネットワーク上のFTTHノード数に対 するダウンロード速度を測定した.
本実験は,ネットワーク上のFTTHノードが最初に起動した後,残りのADSLノードの順 次ダウンロードを開始する.さらに,最大unchoke数を,FTTHノード数と同数にした.す なわち,全FTTHノードはオリジンサーバからコンテンツをダウンロードすることになる.
図3.4は,FTTHノード数を1,2,4,8と変化させた場合の各ノードのダウンロード速度 を示したものである.図より,FTTHノードのダウンロード速度はFTTHノード数の増加と 共に改善された.FTTHノード数1と8の平均ダウンロード速度は,それぞれ12.78Mbpsと 26.15Mbpsであり,約2.1倍増加した.
ADSLノードのダウンロード速度は,FTTHノードよりは少ないものの改善された.また,
0 10 20 30 40
0 5 10 15 20 25 30
D o w n lo ad S p ee d [ M b p s]
Peer Number
FTTHピア数, unchoke数 = 1 FTTHピア数, unchoke数 = 2 FTTHピア数, unchoke数 = 4 FTTHピア数, unchoke数 = 8
ADSL ピ ア
(1Mbps UP, 10Mbps DOWN) FTTH ピア
(100Mbps UP, 100Mbps DOWN)
図3.4.FTTHピア数,および,最大unchoke数変化にけるダウンロード速度分布
速度の遅い21個のADSLノードの平均ダウンロード速度は,FTTHノード数を1から8へ 増加させると,0.97Mbpsから2.83Mbpsとなり,約2.9倍増加した.
以上の結果より,FTTHノード数の増加は,ADSLノードのダウンロード速度の改善に貢 献することを確認した.
3.3.2.3 FTTHノードのダウンロード開始順序
次にFTTH/ADSL混在ネットワーク上でFTTHノードのダウンロード開始順序による効
果を実験評価する.本実験では,オリジンサーバの最大unchoke数を1,FTTHノード数も1 とした.このFTTHノードの起動順序を1,2,8番目と変化させて,各ノードのダウンロー ド速度を測定した.
実験結果を図3.5に示す.FTTHノードが最初にダウンロード開始した場合,コンテンツ ファイルはオリジンサーバから高速ダウンロードされるため,13個のADSLノードが1Mbps 以上のダウンロード速度となった.しかし,FTTHノードが2番目,8番目にダウンロード 開始される場合,殆どのADSLノードのダウンロード速度は,1Mbps以下であった.すなわ ち,ADSLの上り回線速度がボトルネックとなり,FTTHの高速下り回線の性能が効果的に 活用されていない.
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