2.3 P2P トラフィック制御手法
2.3.4 提案方式と関連研究の比較
2.3 P2Pトラフィック制御手法 25
GeoIPなど公表されているサービスから得るものである.
「距離実測型」には,pingによりピア間のホップ距離を測定して近くのピアを検索する手法 を,L. Shengらが提案した[16].そして,「CDN型」として,既存のCDNを用いることで ネットワーク構成情報を取得する手法を,D.R.Choffnesら [32]やC.Tianら [15]が提案して いる.
これらの4つの手法は,ネットワーク情報を用いてピア選択制御をASP側で行う特徴が ある.
本論文提案方式は,「ISP管理ネットワーク情報型」に属する.しかし,ネットワーク情報 を用いてトポロジを意識したピア選択制御をISP側で行うため,ISPが懸念するISPが管理 する内部ネットワークトポロジ情報を公表することなく制御することが可能なため,ISPには 導入が容易な手法である.また,本提案方式の導入で,ASPはピア選択制御をISPに移行す るため,新たにネットワーク情報収集機能を追加する必要がなく,かつ,ASPのサーバ負荷 が軽減でき,ASPにおいても利点となる.
第 3 章
ブロードバンド環境における P2P プ
ログレッシブダウンロード配信方式 に関する分析
本章では,まず始めにP2Pコンテンツ配信の性能・課題分析のため,ブロードバンド環境 下におけるP2P配信技術を用いたビデオストリーミング配信に関し,実験によるP2P配信特 性調査・分析結果について述べる.P2Pストリーミング方式として,ファイルのダウンロー ドしながら再生を行うP2Pプログレッシブダウンロード配信を使用し,FTTHおよびADSL 混在ブロードバンド環境をGE-PON(Gigabit Ethernet-Passive Optical Network)システム を用いて疑似的に構築し,約30台のPC間でP2Pプログレッシブダウンロード配信実験を 行った.これにより,FTTH回線の配信貢献を明確にした.さらに,インターネット上で実証 実験を行い,実験で生じたダウンロードパフォーマンス劣化の原因を分析し,得られた知見よ
り現在のFTTH/ADSL混在ネットワーク環境で,P2Pプログレッブダウンロードを用いた
ビデオストリーミングサービスを提供するために効果的な配信手法を提案する.
3.1 はじめに
ブロードバンドアクセスネットワークが光ファイバ高速コアネットワークと共に広く展開さ れて以来,インターネット上のビデオコンテンツ配信サービスやそのトラフィック量が著しく 増加している.これに伴い,インターネットサービスプロバイダ(ISP)とキャリアはこの膨 大なトラフィックを転送するために,バックボーンネットワークを広範囲に渡り拡大しなけれ ばならない.また,アプリケーションサービスプロバイダ(ASP)は,多数のユーザにコンテ ンツを提供するために,高性能サーバおよび高速回線を用意しなければならない.膨大なコン テンツを配信するために,ISPやキャリアはAkamai Technologies [2]やIPマルチキャスト 技術のようなキャッシュベースのコンテンツ配信システムを採用している.しかし,これら設 備は高額であり,コスト効率性,拡張性に欠ける.
P2Pベースのコンテンツ配信技術は,アクセスリンク帯域やコンテンツの配信や蓄積に,
3.1 はじめに 27
ユーザPC上のハードディスクなどのエンドユーザのリソースを使用するため,上記技術と比 較し費用対効果が期待される.BitTorrentはオリジナルソフトウェアがオープンソースで入 手可能なため,様々なアプリケーションの中で,P2Pベースのコンテンツ配信プラットフォー ムとして,BitTorrentの仕組み[45] [9]が使用されている.
BitTorrentは,複数のISPネットワークに存在するピア間でファイルのピースを配信する
ファイル共有プロトコルである.BitTorrentは,ピースの収集順序を,従来のランダムから 再生順に収集するようオリジナルプロトコルを修正することで,ビデオストリーミングのプ ログレッシブダウンロードに適用することが可能である.現在,いくつかの商用P2Pベース のビデオストリーミングシステムが利用できる [46] [17].しかし,P2Pプログレッシブダウ ンロードがフィールド環境に展開されると,プログレッシブダウンロード性能に問題が発生 する.データはユーザの貢献次第でアップロードされるため,回線速度の遅いユーザがダウ ンロード速度を劣化させ,特定のユーザのストリーミング再生が停止(play loss)する.この
play lossを避けるため,要求したピースは,順次再生時間に遅れることなく収集されなければ
ならない.
これまでに,P2P型ビデオストリーミング [47] [48]やファイル共有[49] [50]に関して数多 くの分析結果が報告されている.これらは,ネットワーク資源の使用やend-to-end性能評価 に焦点をあてたものであり,またこれら殆どは,シミュレーションで評価したものである.ゆ えに,P2Pビデオストリーミングを実環境で配信した時の性能評価には,これら分析結果は有 効でない.
本論文では,実際のフィールド環境を再現するために,商用ネットワーク装置を使用し FTTHおよびADSLを模擬したセットアップにおいて,各PC上でP2Pプログレッシブダ ウンロードソフトウェアを実行させた配信実験を行った [51] [52].また,フィールド実験は,
ユーザが自宅のPCからアクセスし,実際のインターネットを介したコンテンツ配信実験を実 施した.本実験は,FTTHとADSL混在アクセスネットワークにおいて,ADSLと対照的に アップロード速度が高速なFTTH回線の配信貢献に焦点を当てた.
プログレッシブダウンロードを実現するために,上下対称でかつ高速なFTTH回線が,ピ ア間で高速にピースを交換するために非常に重要である.日本のブロードバンドアクセスネッ トワークの契約者数は,図2.6に示す通り,2009年12月時点では合計約31万人,その内訳 は,FTTHが約17万人,DSLが約10万人,CATVが約4万人であり,それぞれの比率は,
54%, 31%, 13%である.FTTH回線は急速に浸透しているものの,未だに多くのADSL回
線が存在する.ADSLは回線速度が上下非対称であり,上り回線速度は下り回線速度よりもか なり遅い.FTTHサービスが十分に展開されると,P2Pプログレッシブダウンロードを用い たビデオストリーミングは,実用的な仕組みとなる.
本章は以下3つから構成される. まず,ビデオストリーミングサービスを提供するために 要求されるFTTH回線の浸透方法に関して,実験環境および実環境で実験を実施し,調査分 析する. 次に,実験環境および実環境で生じた性能劣化に関し分析を行う.そして最後に,分 析結果より,実際のブロードバンドアクセスネットワークにおいて,P2Pプログレッシブダウ ンロードシステムを適切に運用するための手法を提案する.