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インターネットにおける P2P トラフィックに関する課題

2.2 インターネットにおける P2P トラフィックに関する課題

2.2.1 インターネットトラフィックの動向

インターネットにおけるP2Pトラフィックの課題を整理するために,まず,近年のインター ネットトラフィック動向について説明する.

図2.5に総務省が2010年2月に発表した平成21年度の「日本のインターネットトラフィッ クの推移」[20]を,図 2.6に同じく総務省が2010年3月に発表した「1契約あたりのトラ フィック量の推移」[21]を示す.

グラフより,日本のインターネットのトラフィック量は年々増加していることが確認でき る.日本のブロードバンドサービス契約者のダウンロードトラフィック総量は,2009年11月 の時点で推定1.36Tbps,2008年11月は988.4Gbpsであり,この1年で約1.4倍(37.9%増) であった.アップロードトラフィック総量も2009年11月で推定943.4Gbps,2008年11月 で689.5Gbpsで,1年間で約1.4倍(36.8%増)であり,ダウンロードおよびアップロードト ラフィックともほぼ同等の増加率であった.2008年後半から2009年前半はやや増加率が鈍 化しているものの,年間で比較すると,過去5年間で最高の増加率となった.

また,2009年時点での日本におけるブロードバンドサービス契約者(FTTH,DSL,CATV) は約31万人で,その内訳はFTTHが約17万人,DSLが10万人,そしてCATVが4万人 で,FTTH利用者が約54%を占めている(図2.6).1契約当りのトラフィック量は,ダウン ロード,アップロードそれぞれ,43.2kbps,29.9kbpsであった.

402.7

277.1

269.4 298.1 319.7

424.5 469.1 523.6

636.6 721.7

812.9 879.6

988.4 1234.0

1362.9

539.7

109.8 236.4 258.5 278.8 320.2 354.3

400.5 468.7

512.5 567.5

631.5 689.5

860.8

943.4

0 200 400 600 800 1000 1200 1400

1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11

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6 (Gbps)

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(2008.11)

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2.5.我が国のインターネットトラフィックの推移(平均) (文献 [20]より)

2.6.ブロードバンド契約者数の推移 (文献[21]より)

トラフィックの流入に関しては,2007年5月時点では国内協力プロバイダー以外の国内プ ロバイダーと,国内の主要IX(Internet eXchange point)で交換されるトラフィックが最も多 かった.ところが,2007年11月からは国外プロバイダーから国内協力プロバイダーに流入す るトラフィックが最多となり,国外から国内のISPに流れ込むトラフィックが増加している.

次に,トラフィック量をアプリケーション別に見る.図2.7は,国内ISPのPOI(Point of interface)で測定した2006年1月から2008年5月のトラフィック量の変化を示したグラフ である.このグラフより,ダウンロードトラフィックは,2006年当時はP2Pアプリケーショ ンが全体の半数以上を占めていたが,2008年時点では,P2PよりもHTTPやストリーミン グが占める割合が大きくなった.P2Pアプリケーションの割合は2年間でほぼ横ばいで,ト ラフィック総量に対する割合は減少しているものの,2008年時点で全体トラフィック量の約 1/3をP2Pアプリケーションが占めている(図2.7(a)).一方アップロードトラフィック量は 年々増加していることが確認できる(図2.7(b)).

今後のトラフィック量に関しては,世界のインターネットトラフィック量は,2014年まで に2009年のトラフィック量の4倍になり,引き続きTV, VoD, インターネットビデオ, P2P を含む映像配信が,世界のコンシューマトラフィックの91%を占めるようになるとの予測が 行われている[1].

以上の傾向より,今度も益々コンテンツ配信が普及すると共に,国内のみならず海外からも コンテンツ配信によるトラフィックが増加すると推測される.

2.2 インターネットにおけるP2Pトラフィックに関する課題 17

(a) ダウンロードトラフィックの変化

(b) アップロードトラフィックの変化

2.7.P2Pアプリケーションがトラフィック総量に占める割合(文献[22]より)

2.2.2 ISP における P2P トラフィックの課題

P2Pコンテンツ配信は,サーバの配信負荷を軽減し,ユーザ数増加に伴う設備増強を抑える ことが可能なため,ASPにおいて有益な配信手法である. しかし一方,P2P配信トラフィッ クによりISPの回線が圧迫されているため,一部のISP事業者で帯域制御など実施している が,これが「ネットワークの中立性」[23] [24]に関し,問題視されている.ここではP2Pト ラフィックが要因となる課題について説明する.

帯域占有と帯域制御問題

 P2P トラフィックは,同じピースが何度もAS間を横断するため,非効率なトラ フィックの削減が必要である.この状態が継続された場合,ISPのバックボーンや特定 のISP間接続トランジット回線の帯域が圧迫され,Webやメール,CDNコンテンツ配 信など他のアプリケーショントラフィックに対して遅延が発生するなど影響を及ぼす可 能性が生じる.また,P2Pトラフィックは,P2Pユーザの上位10%で総トラフィック

量の60%以上を占有している [24].このユーザ(「ヘビーユーザ」と呼ぶ)に対し,一 部のISPで帯域制御を実施している.ISPにより対応は異なるが,日本では約28%の 事業者が既に対応している[25].

著作権法問題

 P2Pコンテンツ配信は1990年後半から世界中で行われてきたが,多くのP2Pコン テンツ配信は,著作権侵害に関わる訴訟でP2Pに不利な判決となり,配信サービス停 止を強いられてきた.しかし,著作権法に従わない配信が後を絶たない.日本では,平 成22年1月に著作権法が改正された[26].これによりキャッシュを用いた配信が可能 となり,日本国内においては不法なコンテンツは削減されつつある.

コスト負担の公平性

 インターネットの構造は,階層化構造になっている.下位のAS(Autonomous Sys-tem)を取得したISPは,上位ISPとトランジット契約して経路情報を取得し,他AS へデータを送信する.ゆえに,下位ISPはトラフィック量に応じた料金を上位ISPへ 支払う従量課金制のモデルを多く採用している.現在のP2Pは,冗長化した同一ピー スが何度もISP間を転送するため,転送する度に課金されることになる.トランジッ トASの場合は,他AS間で送受信するP2Pトラフィックも中継するため,タダ乗り と呼ばれるトラフィックが発生し,このトラフィックに対する課金も強いられる.さら に,最下位のISPは,契約ユーザにこの分の料金負担を依頼することは困難で,どこか らもコスト回収が行えず,コスト負担の公平性問題が生じている.この問題解決のため にも,コスト削減とした,非効率なP2Pトラフィックの削減が必要である.