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Mewāṛī Gītagovinda 細密画の作品の特徴

ドキュメント内 学位の分野 文学 (ページ 57-64)

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ており、真珠や花輪の首飾りなどの装飾品を身に着けている118。頭には孔雀の羽飾りのつい た被り物が描かれている119。女性は、中央が垂れ下がった、様々な柄や色のスカートを穿き、

チョーリー(colī)120を着用し、オールニー(oṛhnī)121を身に纏っている。さらに、耳飾り や真珠の首飾りなどの装飾品を身に着けている。ラーダーも同じ装いだが、一貫して朱色の チョーリーとオールニーを身に着け、中央が朱色で花柄模様のついた金色のスカートを穿 いている。Vatsyayan は、このセットは一人の画家による作品としているが122、人物、特に クリシュナの描写や自然描写には様々な様式があるため、複数の画家によって描かれたと 考えられる。

場面構成を見ると、ほとんどの Folio の場面上部には白い線と青色で空が描かれている。

場面の下には濃い青色でヤムナー川が常に描かれており123、物語の舞台がヴリンダーヴァ ナ124であることを示している。決定的瞬間が切り取られているのではなく、複数の場面が一 枚に収められており、特にバナナの木や白い花で飾られたアーチ状の褥や丘のような場所 を設けることで場面が区切られる。このアーチ状の褥はメーワール派で多く見られ、

MewāṛīGGでは頻繁に描かれていることから、この褥の描写も作品の特徴と言えよう。また、

一枚の絵の中に同じ人物が複数描かれることがある。Vatsyayan によると、この表現方法は 時間の経過を表しているとし、これを物語的叙述表現としている。彼女はこれらの表現方法 を用いることで、二人の登場人物(クリシュナとラーダー)の異なる情緒が表されていると も述べており125、筆者も彼女の解釈に同意するものである。

さて、セット1の年代について述べる前にセット2の絵画的な特徴を、図13を基に確認 しておこう。セット2 もセット 1 と同様に一偈につき一枚の絵が描かれており内容も忠実 で、外枠の様式や人物と自然の描写もほとんど類似している。しかし場面の構成について

Vatsyayanは、複数の場面が一枚に収められてはいるものの、セット1に比べて平面的な配

置であり、全体的な構図は精巧ではないと指摘している126。さらに色彩についても、セット 1に比べると鮮やかさに欠けており、派手で洗練されていないとされる127。このようにセッ ト2は1の続きではあるが、構図や色遣いに違いが見られる。

また、セット2の内容に少し触れておくと、このセットはGG 10.1からGG 12.26までが 含まれているわけだが、GG 12はクリシュナとラーダーの交媾の描写が歌われており、Folio

118 クリシュナの衣装は、他のMewāṛ派に描かれるクリシュナの衣装と異なっていると言われる

[Vatsyayan 1987: 131]。また、折り重なったスカートを穿かず、ドーティーのみ描かれる場合もある。

119 MewāṛīGG が描かれた絵画工房の規模は明らかではないが、クリシュナの被り物や人物の顔つきには

様々なスタイルが見られる。

120 女性がサリーなどを着用する際に上半身に身に着ける丈の短い半袖のブラウスのこと。

121 女性が頭から掛けたりして身に纏う綿あるいは絹製の上衣のこと。

122 [Vatsyayan 1987: 136]

123 Folio 70にはヤムナー川が描かれていない。

124 クリシュナに関する様々な説話の舞台となっている森のことで、彼は幼少期・青年期をそこで過ごし たとされる。

125 Ibid., 2

126 [Vatsyayan 1987: 137]

127 Ibid., 137

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にはその場面も忠実に描かれている。交媾の描写は、Orissaの細密画とBasohlī派に見られ るが、ラージャスターンや西インドの細密画には滅多に見られないと言われている128。交媾 の描写がタブー視されていたかは定かではないが、MewāṛīGG に忠実に描かれているのは、

バクティ思想を重んじていたためか、あるいは単に娯楽のためとも考えられるだろう。

では、これらのセットの年代について確認していきたい。現在確認できる奥書はセット2 に見られると言われ129、その奥書には「1714年Saṅgrām SiṅghがBhaṭṭa Rūpajīに描かせた」

と書かれている130。また、Nidhi BhatnagarによるとSaṅgrām Siṅgh Ⅱの時代に171枚が描か れたとされる131。したがって、少なくともセット2の作成年代と作者は奥書の通りであると 言えよう132。一方のセット1は、作成年代は明らかにされていないが、Vatsyayanは人物の 描き方や色遣いから17世紀後半に描かれたと推測している。MewāṛīGGは所在が明らかで

はないFolioも多いため、それらが発見されるとセットの分類も変わる可能性があるが、セ

ット1と2に関しては、17世紀後半から18世紀前半にかけて作成されたと考えるのが妥当 と思われる。

最後にセット3について述べる。Vatsyayanによると、このセットは18世紀半ば頃のもの と推測されており、他のセットよりも絵画的に劣ったものであると主張される133。前のセッ トは一偈につき一枚の絵が描かれていたのに対して、このセットは複数の偈がまとめて描 かれている。図14に挙げた作品を見てみると、外枠はこれまでと同様であり、上部にラー ジャスターニー語で場面の説明がされている。色彩はパステル調で、草花や木々は豊富に描 かれている。場面には空の描写は無く、ヤムナー川は複数の波線で表現されている。また、

多くの鳥と一匹の猿が描かれている。GGには猿は登場しないため画家が独自に描き入れた ものと考えられる。人物に注目すると、クリシュナの装いはほとんど前のセットに類似して いるが、ここではサンダルではなく靴を履いている。クリシュナはどの流派においても、ほ とんどの場合が裸足かサンダルを履いた状態で表されるため、独特の描写であると言える。

また、ラーダーも前のセットと類似した装いではあるが、身に着けている服の色や柄が明ら かに異なっており、ヒロインにしてはいささか地味な印象を受ける。Folio の構図に関して は、これまでのセットと同様に複数の場面が収められており、バナナの木や褥などで区切ら れている。また、同じ人物が複数描かれているため時間の流れが表現されている。

このように、セット3は外枠や構図などは他のセットと類似しているが、色彩や人物の服 装などには明らかな違いが見られる。

128 Ibid., 137

129 Ibid., 136

130 [Andhare 1987: 87]。また、Bhaṭṭa Rūpajīは画家であり詩人でもあると言われている[Vashistha 1995:

70]。そのため、Folio上部のラージャスターニー語のキャプションも彼によって書かれたと考えられる。

131 [Bhatnagar 2000: 59]

132 Bhaṭṭa Rūpajīは絵画と詩の両方を描いたと言われている[Vashistha 1995: 70]

133 [Vatsyayan 1987: 230]

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図版

9 Soraṭhī rāginī: 愛人あるいは夫に パーン(嗜好品)を渡す女性、

Mewāṛ(チャーワンド)、

1605年作成、

Nāsir ’ud Dīn作、

British Museum所蔵

[1978, 0417, 0. 3]

図 10 Gītagovinda: ラース・リーラーを 踊るクリシュナと牛飼い女たち、

Mewāṛ(ウダイプル)、

1635年作成、

Sāhibdīn作、

British Museum所蔵

[1959, 0411, 0. 7]

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11 銀 製 の 像 を 吟 味 す る

Mahārāṇā Amar Siṅgh Ⅱ、

Mewāṛ、 1705年作成、

作者不明、

Metropolitan Museum所蔵

[2003. 238]

12 セット1. Folio 29 (GG 1.29) [2016年9月11日Āhāṛ Museumにて筆者撮影]

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13 セット2. Folio.223 (GG 1.29) [2016年9月7日Albert Hall Museumにて筆者撮影]

14 セット3. Folio 34. おそらくGG第3編第7の歌を描いたものと考えられる、

[Vashistha 1995: 図版]

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詩における別離の恋のラサとその絵画

GGは作品全体を通して恋のラサが喚起される作品であるが、KumbhāとŚaṅkaramiśraの 註釈書によれば、各偈文には別離の恋のラサが喚起される個所もあるとされる。そこで本章 では、GGの別離の恋のラサが表現されている箇所を取り上げ、実際の絵画ではどのように 詩の内容が描かれ、ラサが表現されているのか考察を行う。また、本論文第1章の別離の恋 のラサに関する問題点で指摘した内容を踏まえて考察していく。

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