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Folio 70 に見られる情趣

ドキュメント内 学位の分野 文学 (ページ 116-122)

3.5 MewāṛīGG Folio 70

3.5.5 Folio 70 に見られる情趣

以上のように、Folio 全体を通して画家による意匠を確認することができた。では、この 作品からはどのようなラサが体験できるか検討していきたい。

本論文第 1 章で見てきた芸術論書に従い人物の描写を確認してみる。まず、クリシュナ は、華麗な衣装と装飾品を身にまとい、牛飼いの女性たちと戯れている描写から、愛着の恋 のラサを感じ取ることができよう。次に、ラーダーは、無表情で座りサキーと会話をしてい る。場面の下に描かれた二人の男性は、ただ座って会話をしているようであるが、特に向か って左側の人物の目じりはやや下がっており、どこか物悲し気な雰囲気である。ラーダーと この男性は、泣いたりうつむいたりしている姿で描かれてはいないが、クリシュナたちとは 明らかに対照的な様子で描かれている。

さて、Kumbhāによると、この偈文には別離の恋のラサが表現されていると言われており、

アショーカ樹の花の開花や、池の木立から吹く風、マンゴーの花のつぼみが芽吹くこと、黒 バチが飛び回る音は、別離のvibhāva(感情を喚起する条件)であるとされていた。そして 実際の絵画では、池の木立(庭)から吹く風とマンゴーの木が描かれていることが明らかと なった。これまで考察してきたように、ここでもクリシュナとラーダーを対照的に描くこと で別離を表現していると言えるが、それだけではなく、池の方角から吹く風の描写を的確に 取り入れることで風の冷たさを感じさせ、ラーダーの苦悩をさらに強調していると考えら れる。すなわちこの風は、vibhāvaとして絵画においても重要な役割を果たしていると言え る。したがって、人物が悲しみに暮れる様子は描かれていないものの、悲哀のラサが体験さ れる作品であると考えられる。

228 アショーカ樹の花とマンゴーの花については[西岡 2002: 41, 111-112]を参照した。

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図版

絵画の右上に小尖塔が見られる。Folio 70と同様にドーム下の縁は、角度を示すために 反るように描かれている。

44 宮廷にてJethi(格闘家)による格闘技を見物するMahārāṇā Saṅgrām Siṅgh、

Mewāṛ派、1715-1718年作成、Śiva Nivāsa Palace所蔵、[Topsfield 2009: 21]、

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赤土の塀や、レンガのような屋根の家が描かれている。

図 45 Gogundā(ウダイプルにある町)にて行われるMahārāṇa Rāja Siṅgh IIの Barāta(花婿たち)の行列、

Mewāṛ派、1755年作成、Śiva Nivāsa Palace所蔵、[Topsfield 2009: 50-51]、画 像の一部を拡大

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図 46 Folio 70場面1と孔雀の拡大図

図 47 Folio 70場面1の二人の男性の拡大図

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48 Folio 70場面2の拡大図

図 49 Folio 70場面3の拡大図

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