• 検索結果がありません。

Folio 104 に見られる情趣

ドキュメント内 学位の分野 文学 (ページ 153-158)

3.8 MewāṛīGG Folio 104

3.8.6 Folio 104 に見られる情趣

GG 4.19では別離の恋のラサが表現されているということが明らかとなった。では絵画と

してはどのようなラサが喚起されるだろうか。これまで見てきたように、ViDhaに従えば悲 哀のラサが体験される作品と言えるが、このFolioは、苦悩しているラーダーが中心的に描 かれているため、彼女の描写に焦点を当てて考察したい。

ここに描かれるラーダーは、倒れ込んだり這いつくばったりする様子で描かれている。そ して、クリシュナとラーダーは明確に分けて描かれていることから別離が強調されている と言える。さらに、死の神をラーダーのいる場面に描いていることから、ラーダーが死の淵 にいることを想像させる。以上、鑑賞者はこれらの描写を経て、離ればなれになってしまっ た深い悲しみや、クリシュナに対する愛の苦熱を体験することができるだろう。したがって、

このFolioは別離の同情を描いていると言え、絵画としては悲哀のラサを体験させる作品で

あると考えられる。

133

図版

【GG 3.13】

bhrūpallavaṃ dhanur apāṅgataraṅgitāni bāṇā guṇaḥ śravaṇapālir iti smareṇa | tasyām anaṅgajayajaṅgamadevatāyām astrāṇi nirjitajaganti kim arpitāni || 3.13 ||

「小枝のような眉は弓、揺れる流し目は矢、耳の先端(耳朶)は弦」とスマラ(カーマ 神)が〔言いながら〕、アナンガ(カーマ神)への勝利を〔もたらす〕生きた女神であ るあの人に、世界を征服する武器を渡したのだろうか。

【ラージャスターニー語試訳】

gītagoviṃdaropatra |85| bhrūpallavaṃ | śrīkrasna manasuṃ kaheṃ heṃ | rādhārī bhrakuṭī rūpī dhanuṣa || kaṭākṣa rūpī bāṃṇa heṃ | śravaṇapāliguṇa heṃ | e sagalā kāṃmadevarā jītavārāsastra heṃ | mela vārī jāyagā kave he | iṇeśastre || tīnalokajīteneṃ | rādhārā śarīrareviṣe melpā heṃ ||

『ギータ・ゴーヴィンダ』の貝葉85。bhrūpallavaṃ(小枝のような眉)。クリシュナ様が 心の中で言っています。ラーダーの眉のような弓、流し目のような矢、耳朶のような弦。

これらすべてがカーマ・デーヴァの勝った武器です。邂逅〔の愛〕の勝利を歌い語って います。この武器は、三界を征服するために、ラーダーの身に相応しいのです。

63 Folio 85 (GG 3.13) [2016年9月11日Āhāṛ博物館にて筆者撮影]

134

【GG4.9】

śrījayadevabhaṇitam idam adhikaṃ yadi manasā naṭaṇīyam | harivirahākulaballavayuvatisakhīvacanaṃ paṭhanīyam |

mādhava manasijaviśikhabhayād iva bhāvanayā tvayi līnā sā virahe tava dīnā || 4.9 ||

シュリー・ジャヤデーヴァの語るこの優れた〔歌〕が、心によって演じられるべきなら ば、ハリと離れて途方に暮れている牛飼い女の女友達の言葉も詠じられるべし。

マーダヴァ様、カーマ神の矢を恐れるかの如く、あなた様と離れて惨めな彼女(ラーダ ー)は、空想であなた様にすがっています。

【ラージャスターニー語試訳】

gītagoviṃdaropatra |94| śrījayadeva | śrījayadevakavi kahe he || thomhāro atisaya bhaṇita ||

sadāmanohara he || harīrā viraha kare vyākula || isī jyā rādhikā || tiṇīrī saṣīro vacana gāvajo ||

『ギータ・ゴーヴィンダ』の貝葉 94。śrījayadeva(シュリー・ジャヤデーヴァ)。詩人 シュリー・ジャヤデーヴァが語っています。あなたは誇張して語られます。いつも魅力 的です。ハリと離れて動揺しています。このようなラーディカーです。彼女の、サキー の言葉が詠じられます。

図 64 Folio 94 (GG 4.9) [2016年9月11日Āhāṛ博物館にて筆者撮影]

135 図 65 Folio 104裏面

66 場面1の拡大図

136

67 場面2の拡大図 図 68 場面3死の神の拡大図

69 場面3ラーダーとサキーの拡大図

137

詩における悲哀のラサとその絵画

これまでのところ、別離の恋のラサが表現されている偈文を中心に、それらを絵画として 表した場合の意匠とラサについて考察を行ってきた。そこでは、詩に別離の恋のラサが表現 されていても、絵画としては悲哀のラサが喚起されるFolioもあるのではないかと考察した。

では、偈文において悲哀のラサが表現されている場合は、絵画ではどのように描かれてい るのか考察していきたい。

悲哀のラサに関する記述は、GG 1.32とGG 7.37281に見られる。しかし、GG 7.37を描い

たFolio 176は、Saffronart282にて確認できるものの、現在の所蔵は明らかでないためここで

はGG 1.32を扱うこととする。

ドキュメント内 学位の分野 文学 (ページ 153-158)