• 検索結果がありません。

I/Q アンプシェアリング技術

ドキュメント内 著者 伊藤 朋彦 著者別名 ITO Tomohiko (ページ 84-88)

最も電力効率が高い2.5bit/stageの変換ステージ構成を採用した。また、我々が先に提案 したI/Qアンプシェアリング技術[2][3]による回路構成の工夫により、オペアンプの利用 効率を向上した。さらに、疑似差動オペアンプを用いることで、広い信号振幅と低消費電 力化の両立を図った。この疑似差動オペアンプでは、新規に開発した利得段2段のゲイン ブーストアンプを使うことで、従来よりも低消費電力で、かつ、12bit精度を確保できる 十分なDCゲインを確保した。結果として、電源電圧1.2Vながら消費電力 55mWとい う従来比で大幅な電力削減を達成した。

47 従来のアンプシェアリング技術(a)t=0(b)t=Ts/2[4]

つの動作モードを繰り返すことで信号を前段から後段へ伝達するが、この動作モードは、

奇数段と偶数段で互いに半クロック(Ts/2)ずつずれている。

図47(a)は、t=0の動作モードを示しており、奇数段はホールドモード、偶数段はサン

プルモードである。4章でも説明したように、アンプシェアリング技術では、オフセット キャンセルを省略することで、サンプルモードではオペアンプが不要となる。よって、偶 数段ではオペアンプは不要であり、奇数段にのみオペアンプが存在すればよい。

図47(b)は、t=Ts/2の動作モードを示しており、奇数段はサンプルモード、偶数段は ホールドモードに変化する。このとき、t=0では奇数段にあったオペアンプの接続先を スイッチで切り替え、偶数段で利用する。こうすると、A/D変換器の動作を妨げること なく、オペアンプ数を変換ステージ数の半分程度に削減して低消費電力を図ることがで きる。

しかしながら、5.3.1節で述べたように、パイプライン型では前段ほどサンプル容量が 大きいので、奇数段の方が偶数段に比べオペアンプが駆動しなければならない負荷容量が 大きい。よって、奇数段と偶数段でオペアンプを共用化する場合、オペアンプの電流を奇

48 I/Qアンプシェアリング技術(a)t=0(b)t=Ts/2[3]

数段に合わせて設計せざるを得ず、このオペアンプを偶数段で使用する場合はオーバース ペックになり、結果として、オペアンプ数が半減しても、消費電力は半減しない。さらに、

この従来のアンプシェアリング技術では、駆動する負荷容量が大きいS/H回路のオペア ンプは共用化できないため、オペアンプの消費電流削減効果が小さい。このような理由か ら、先に実施した4章での試作においては、従来のアンプシェアリング技術の消費電力削 減効果は約22%であった。

これらの欠点を改善し、電力効率を向上する技術として、先に提案されたI/Q アンプ シェアリング技術[2][3]がある。

現在の無線通信用ICでは、無線信号の位相の変化に情報を載せて送信し、受信側にお いて直交復調を行う場合が多い。直交復調では、互いに90°の位相差を持つ2つのベー スバンドアナログ信号、I信号(In-phase Signal)とQ(Quadurature Signal)信号をデジ タル信号に変換するため、同じ性能のA/D変換器を2つ必要とする。I/Qアンプシェア リング技術では、このI信号用とQ信号用の2つのパイプライン型A/D変換器の同じ変 換ステージ間で、オペアンプを共用化する。

図48は、I/Qアンプシェアリング技術を示す。図48(a)は、t=0での動作を表す。上 側がIch用のA/D変換器を、下側がQch用のA/D変換器をそれぞれ示す。Ich側では、

奇数段の変換ステージがサンプルモード、S/H 回路および偶数段の変換ステージがホー ルドモードである。反対に、Qch側では、S/H 回路および偶数段の変換ステージがサン プルモード、奇数段がホールドモードである。IchとQchの2ch合計でオペアンプ数は9 つ存在し、それぞれホールドモード側で利用されている。

図48(b)は、t=Ts/2での動作を表す。Ich/Qchともに動作モードが変化し、Ich側で は、S/H回路および偶数段の変換ステージがサンプルモード、奇数段がホールドモードと なり、Qch側では、奇数段の変換ステージがサンプルモード、S/H回路および偶数段の変 換ステージがホールドモードとなる。この動作モードの変化に合わせて、全オペアンプの 接続先が切り替わる。このように、I/Qアンプシェアリング技術では、オペアンプが同じ S/H回路間、および、同じ変換ステージ間で共用化される。

I/Q アンプシェアリング技術では、図47の従来技術と異なり、1ch当たりのオペアン プ数を完全に半分にすることが可能である。また、同じ特性を持つ2つのA/D変換器間 での共用化であり、オペアンプが駆動する負荷容量が変わらないため、オペアンプに流す 電流がオーバースペックになることがなく、結果として、パイプライン型A/D変換器の 消費電力を50%削減する事が可能となる。

ドキュメント内 著者 伊藤 朋彦 著者別名 ITO Tomohiko (ページ 84-88)