第 3 章 RC 部材に対する付着特性および必要格点数
3.6 FEM 解析法の概要
(a)解析方法
図-3.6.1に解析に用いた解析モデルの一例を示す。本解析には,汎用数値解 析ソフトであるDianaを用いて,3次元非線形解析を行った。解析モデルは1/1モ デルである。コンクリートおよびPCMは四角柱ソリッド要素,CFRPグリッドも ソリッド要素を用いてモデル化を行った。また,CFRPグリッドとPCMの間にイ ンターフェース要素を用いた。
解析は載荷点部の節点にY方向強制変位20mmを与えることにより実施した。
収束計算にはNewton-Raphson法を採用し,収束判定条件としてはエネルギーノ
ルムを0.5%と設定した。なお,収束条件を満足しない場合(最大反復数 10回)
には収束計算を打ち切り,次の解析ステップへ不釣合い力を持ち越す方法を採 用した。境界条件は,支点部の節点にY方向変位成分を拘束した。
(a)モデル (b)CFRP グリッド
図-3.6.1 解析モデル(例:FP50VH)
(b)材料構成則
本研究では,コンクリート要素に分布ひび割れモデルを適用して解析を実施 した。図-3.6.2(a)にコンクリートの応力-ひずみ関係を示す。圧縮側の構成則 に関しては,強度試験から得られた圧縮強度 fc’を用い,圧縮ひずみが 3500μ で はコンクリート標準示方書19)に基づいて定式化した。また,降伏の判定にはvon
Misesの降伏条件を用いている。
一方,引張側に関しては,コンクリート標準示方書による引張軟化曲線を適用 している(図-3.6.2(b))。図中のA,heqおよびGfは,それぞれの要素の体積,
等価要素長およびコンクリート引張破壊エネルギーである。Gf は CEB-FIP
Modelcode22) に基づいて,式 3.6.1のように定義している。
7 . 0
0 '
0
f cm
f f
G f
G c (3.6.1)
ここで,fcm0=10N/mm2,Gf0は粗骨材径に対応して決定される定数である。
PCM
コンクリート CFRPグリッド
-41-
なお,本研究で適用した分布ひび割れモデルの場合,引張側の軸方向ひずみ のコンターレベルが図中のε1に達した時点でひび割れが発生し,ε3に達した時 点でひび割れが開口していることを意味している。
(a)圧縮側 (b)引張側
図-3.6.2 コンクリートの構成則
CFRPグリッドには図-3.6.3に示すような引張強度に達したら応力およびひ ずみがゼロになるvon Misesモデルとした。
図-3.6.3 CFRP グリッドの構成則
(c)接触面要素に適用した応力-相対変位関係23), 24)
本研究では,接着剤別に接触面に Bond-Slip モデルを適用している。これは,
別途実施した付着強度試験より,連続繊維シート-コンクリート間の付着応力
-相対変位関係(τ-δ 関係)導出方法を適用することで,ストランドシート表 面のひずみ分布よりτ-δ関係を導出した。
位置xにおける付着応力τ(x)は,ストランドシートのひずみ分布の勾配を用い て,式 3.6.2より求めた。
dx x E d
x dx t
x x d
tCFRP CFRP CFRP CFRP CFRP
f
(3.6.2)
f 'c σ(MPa) ɛ(×10-6)
002) . 2 0 002 ( . ' 0 85 .
0
fc
f t σ(MPa)
f t/ 4
ɛ1 ɛ2 ɛ3 ɛ(×10-6)
E ft
1
eq t
f
h f
G
0.75
2
eq t
f
h f
G
5
3
-f t0 f t0
ɛt0
-ɛt0 Ew
ɛ(×10-6) σ(MPa)
-42-
ここで,σCFRP(x):位置xにおけるCFRPの引張応力(N/mm2),tCFRP(x):位置 xにおけるCFRPの厚さ(mm),ECFRP:CFRPの弾性係数(N/mm2),εCFRP(x):位置 xにおけるCFRPのひずみである。
また,位置xにおける相対変位δ(x)はCFRP端部から位置xまでのひずみ分布 を積分し,式(3.6.3)より求めた。
x dxx CFRP
f
0
(3.6.3)
τ-δ関係算出方法を図-3.6.4に示す。ひずみ分布は,ひずみゲージによる計 測値を直線で近似している。従って,付着応力はその直線の傾き(図-3.6.4(a)),
相対変位は直線下の面積から得られる。そして,2つの隣り合うゲージ貼付け位 置の中央の位置で τ-δ 関係(図-3.6.4(b))が得られる。本研究では,3 箇所 のうち平均的な挙動を示した1箇所より得られた値をその試験体のτ-δ 関係と して採用した。また,試験結果より算出したτ-δ 関係が付着応力および相対変 位を低下点途中までしか算出できない場合はτ-δ 関係の直線化の面積が界面剥 離破壊エネルギーとなることから,試験より得られた界面剥離破壊エネルギー と同一になるように推定した。図-3.6.5 に上記の算出方法で得た τ-δ 関係お よび本解析で使用したτ-δ関係を示す。
(a)付着応力算出方法 (b)τ-δ関係
図-3.6.4 τ-δ関係算出方法
図-3.6.5 算出した Bond-Slip モデルの構成則 dε
dx ε
距離 δ
τ
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
0 0.5 1 1.5 2
付着応力(N/mm2)
変位(mm)
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