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CFRP グリッドを RC 部材に接触配置し PCM で増厚した付着試験の概要 27

第 3 章 RC 部材に対する付着特性および必要格点数

3.3 CFRP グリッドを RC 部材に接触配置し PCM で増厚した付着試験の概要 27

(1) 試験目的

3.2 で述べた実施した九大式付着強度試験では,試験を行ってきた試験体は PCMでブロックを作製しその中にCFRP グリッドを埋め込んだ試験体であるた め,無限遠のコンクリートかぶりを有し,PCM吹付け厚10mm程度の実構造物 を模擬しておらず,コンクリート,CFRPグリッドおよび PCMの付着機構につ いては未検討という問題があった。そこで九州大学で開発した試験装置(九大式 付着試験機)を用い,既設コンクリートに CFRP グリッドを接触配置し,PCM 吹付けで増厚一体化させて実構造物に即した試験体を作製し,付着試験を実施 したが,試験体の性状および施工の過程でいくつかの問題があったと考えられ たため,試験体作製方法等について再度検討する必要があるとの結論に至った。

そこで本試験では,九大式付着試験機の検討事項を踏まえ,新たな試験体を作 製し既設コンクリート,CFRPグリッドおよび PCMの付着機構についての検討

0 10 20 30 40 50

0 0.5 1 1.5 2 2.5

変位 (mm)

荷重 (kN) Type 1

Type 2 Type 3 Type 4 Type 5 Type 6

0.0 0.5 1.0

Type 1 Type 2 Type 3 Type 4 Type 5 Type 6 Type 7 Type 8

試験値/設計値

最大荷重(kN) 最大ひずみ(µ) 弾性係数(×     ) 8034

20.7 1.84

8231 21.6

2.07 44.07672

2.04 45.68336

2.10 8034 40.7

1.98 8524 44.1

1.93 7521 38.3 2.02

7523 37.7 1.85

105N/mm2

-28-

および格子筋間隔の違いや縦筋の有無による挙動の変化,CFRPグリッド間の応 力伝達機構を明らかにすることを目的とした。

なお,この試験では,縦筋を有さない試験体(FP50N,FP75N,FP100N)および 縦筋を有する試験体(FP50VH,FP50VL,FP75VH,FP100VH)の載荷試験を実施 した。

(2) 試験体概要

試験体の種類を表-3.3.1に示す。試験体は7種類(各3体)とし,増厚材に は高強度型PCM および低弾性型PCMを使用した。また補強筋は全てCFRP グ リッドとし CR-5 を用いた。格子筋間隔を規格品である 50mm,75mm および

100mmとした。また,CFRPグリッドの応力伝達機構を明確にする目的として,

ひずみゲージを貼付けた。試験体形状を図-3.3.1,試験体の格点部詳細および をひずみゲージ貼付箇所を図-3.3.2に示す。試験体の作製にあたっては,まず 既設コンクリートを作製し,コンクリート材齢 1 週において表面をバキューム ブラストで処理した。ブラスト材にはアルミナを使用し,投射密度は 30N/mm2 とし,5min/m2を目安に行った。その後,コンクリート材齢4週において CFRP グリッドを設置し,プライマーを塗布しPCMのコテ塗を行った。なお、本研究 ではコンクリートとグリッドおよび PCM との付着機構を検討するため,CFRP グリッドの設置には固定用のアンカーを設置しなかった。

ブロックからの突出量は両試験体共に自由端側を 30mm とし,変位計が接す るため,端面は平滑な面に仕上げた。固定端側は試験機の形状に合わせた。

更に,試験機に固定するために固定端側に鋼管スリーブを取付け,膨張材を用い て CFRP グリッドと鋼管スリーブを定着させた。鋼管スリーブを取り付けるエ リアのCFRP グリッドには,横筋を 22mm(鋼管スリーブ径)残して定着した。

表-3.3.1 試験体種類 試験体 グリッド

規格 PCM種類 格子数 層数 縦筋の 有無

横筋の長さ (mm) FP50N

CR-5 50×50mm

高強度型 5

1

無 25

FP50VH 有 75

FP50VL 低弾性型 有 75

FP75N CR-5

75×75mm 高強度型

4

無 37.5

FP75VH 有 37.5

FP100N CR-5

100×100mm 高強度型 無 50

FP100VH 有 100

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(a)FP50N (b)FP50VH (c)FP50VL

(d)FP75N (e)FP75VL

-30-

(f)FP100N (g)FP100VH 図-3.3.1 試験体概要

(a)FP50N (b)/(c) FP50VH/FP50VL

(a)FP75N (b)FP75VH

(c)FP100N (d)FP100VH 図-3.3.2 試験体格点部詳細およびひずみゲージ貼付け位置

350 30

50 25 4@50=200 25 50

50 150 250

U1 D2 D1

U2 D3 D4 D5

U3 U4 U5 500

D0

350 30

500 4@50=200

250

D1 D2 D3 D4 D5 D0

DR2

DL2 100 200

50 50 25

25

DR3 DL3

50 25 25 50

375 30

150 250 3@75=225

75

D1 U1

D2 U2

D3 U3

D4 U4 500

D0 D0 D1 D2 D3 D4

375 30

3@75=225 500

150 250 300

DR2 DL2 DL3

DR3

25 50 50 25

25 50 30

150 250 50 25

450 3@100=300

100

D1 U1

D2 U2

D3 U3

D4 U4 500

D0 D0 D1 D2 D3 D4

450 30

500 3@100=300

200 300 350

DR2 DR3

DL2 DL3

25 50 50 25

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(3) 使用材料

コンクリートの配合は40-12-20H(早強コンクリート:圧縮強度40N/mm2,ス

ランプ 12cm,骨材の最大寸法 20mm)を使用した。コンクリートの実測材料特

性を表-3.3.2 に示す。PCM は高強度型および低弾性型を使用した。高強度型 PCM はコンクリートの 2 倍程度の圧縮強度を有し,低弾性型 PCM は弾性係数 がコンクリート1/2程度で追従性に優れた材料である。コンクリートおよびPCM の材料特性を表-3.3.3に示す。

CFRP グリッドは格子 50mm×50mm,75mm×75mm および 100mm×100mm の CR-5とした。CFRPグリッドの設計材料特性を表-3.3.4に示す。

表-3.3.2 実測材料特性(コンクリート)

試験体 コンクリート種類 圧縮強度 (N/mm2) 弾性係数 (×104N/mm2) FP50N

早強

44.0 3.20

FP50VH FP50VL

FP75N 44.0 3.20

FP75VH 37.1 2.69

FP100N 44.0 3.20

FP100VH 37.1 2.69

表-3.3.3 材料特性(PCM)

試験体 PCM種類 圧縮強度 (N/mm2) 弾性係数 (×104N/mm2)

設計 実測 設計 実測

FP50N 高強度型

69.6 68.2

2.70 2.70

FP50VH 高強度型 63.5 2.82

FP50VL 低弾性型 34.6 39.4 1.40 1.18

FP75N 高強度型

69.6

68.2

2.70

2.70

FP75VH 高強度型 63.5 2.82

FP100N 高強度型 68.2 2.70

FP100VH 高強度型 63.5 2.82

表-3.3.4 設計材料特性(CFRP グリッド)

規格 断面積 (mm2)

設計厚さ (mm)

引張強度 (N/mm2)

弾性係数 (×105N/mm2)

格子間隔 (mm)

単位重量 (g/m2)

CR-5 13.2 3.0 1400 1.00

50×50

630 75×75

100×100

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(4) 作製手順

(a)既設コンクリート型枠

既設部型枠を図-3.3.3および図-3.3.4に示す。型枠の寸法の誤差は各辺長

の1/100以下とした。試験体の載荷面に接する側板の平面度は0.02mm以内とし,

ひび割れ防止抑制のため溶接金網(φ6,50×50)を設置した。かぶりはインサート を使用し確保した。しかし,縦筋を有さない試験体の試験より既設コンクリート 部分に顕著なひび割れは生じていなかったため,縦筋を有する試験体の試験で は溶接金網の設置は省略した。また,縦筋を有さない試験体の試験では既設コン クリートの厚さを 75mm としていたが,試験時に設置が困難となるため,縦筋 を有する試験体の試験では既設コンクリート厚さを50mmとした。

図-3.3.3 縦筋を有さない試験体 図-3.3.4 縦筋を有する試験体

(b)コンクリート打設

既設部のコンクリート打設状況を図-3.3.5に示す。コンクリート打設後に表 面をコテで押さえ平滑にした。コテ塗り後状況を図-3.3.6に示す。

図-3.3.5 コンクリート打設状況 図-3.3.6 コテ塗り後状況

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(c)ブラスト処理

既設部のブラスト状況を図-3.3.7に示す。また,ブラスト前後の試験体状況 を同図(b),(c)に示す。

(a)ブラスト状況

(b)ブラスト処理前状況 (c)ブラスト処理後状況 図-3.3.7 既設部ブラスト処理

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(d)ひずみゲージ保護および貼付け状況

ひずみゲージ保護状況を図-3.3.8 および図-3.3.9 に示す。本来であれば,

ひずみゲージ保護のため,ロウの塗布の後,SBテープVNテープを貼付け保護 する必要があるのだが,予備試験より,これらを貼付けると厚さが厚くなり,グ リッドおよび PCM,グリッドおよびコンクリートの付着力に顕著に影響がでる ことが確認できたため,ひずみゲージ保護用ロウ塗布後はビニールテープで巻 くのみの保護とした。ひずみゲージ貼付および CFRP グリッドの設置状況を図

-3.3.12 に示す。3体中 1 体は全箇所にひずみゲージを貼付け,残りの 2 体は 下側に貼付けた。

図-3.3.8 ひずみゲージ保護用ロウ 図-3.3.9 ひずみゲージ保護作業

図-3.3.10 ひずみゲージ保護状況① 図-3.3.11 ひずみゲージ保護状況②

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(a)FP50N (b)FP50VH/FP50VL

(c)FP75N (d)FP75VH

(e)FP100N (f)FP100VH 図-3.3.12 CFRP グリッド設置およびひずみゲージ貼付状況

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(e)PCM コテ塗り状況

PCM打設状況を図-3.3.13に示す。コンクリート材齢4週においてCFRPグ リッドを設置し,プライマーを塗布しPCMのコテ塗りを行った。

(a)FP50N (b)FP50VH/FP50VL

(c)FP75N (d)FP75VH

(e)FP100N (f)FP100VH 図-3.3.13 PCM コテ塗り後状況

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(f)試験体完成状況

完成した試験体を図-3.3.14に示す。

図-3.3.14 完成試験体

3.4 固定用鋼管スリーブおよび膨張材

(a)鋼管スリーブ

鋼管スリーブの構造を図-3.4.1 に示す。圧力配管用鋼管 25Asch60(外径:

φ34mm,肉厚:3.9mm,質量:2.89kg/m)長さ 200mm を使用した。鋼管スリー

ブの設計上の材料特性を表-3.4.1に示す。

図-3.4.1 鋼管スリーブ構造図

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表-3.4.1 鋼管スリーブの設計材料特性 規格 降伏強度

(N/mm2)

引張強度 (N/mm2)

弾性係数

(N/mm2) ポアソン比

STPG370 215 370 2.00×105 0.3

(b)膨張材

CFRP グリッドを試験機固定用鋼管スリーブに定着させるための膨張材はブ ライスターを使用した。膨張圧の管理は,鋼管スリーブ中央の相対する表面に,

軸方向および円周方向にひずみゲージをそれぞれ貼付け,ひずみの測定値から 式(3.4.1)により膨張圧を求める方法で行った。目標とする膨張圧は40N/mm2 とし,膨張圧が目標値を越えた後に載荷試験を行った。

) ) (

1 ( 2

) 1 (

2 2

z s s

s

e v

v k

P E  

  (3.4.1)

ここに,Pe:膨張圧 (N/mm2)

Es:スリーブのヤング係数 (N/mm2) k:スリーブの外内径比(外径/内径)

vs:スリーブのポアソン比

εθ:スリーブ円周方向ひずみの平均値 (×10-6) εz:スリーブ軸方向ひずみの平均値 (×10-6) (c)付着応力度算定方法

付着応力度を次式で計算し,JIS Z 8401によって有効数字3けたに丸めた。

  A

P (3.4.2)

ここに,τ:付着応力度 (N/mm2) P:引張荷重 (N)

A:付着面積 (mm2)

α:PCMの補正係数に対する補正係数,α=30/ f’c

f’c:同時に作製した円柱試験体の材齢 28 日における圧縮強度 (N/mm2)

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