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FATF の機能の特徴

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 55-63)

第3章 アンチ・マネーロンダリングレジームにおけるアクターの機能と役割

3.1 FATF

3.1.4 FATF の機能の特徴

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(FATF 類 似 地 域 的 組 織 の 加 盟 国 ) に も 属 さ な い 非 協 力 的 な 国 ・ 地 域 を Non-Cooperative Countries and Territories: NCCT)と呼び公表に踏み切った。

マネーロンダリングの資金は金融規制の厳しいところから緩いところに流れる。

但し、金融システムを経由することが多いことから、こうした名指しされた国所在 の金融機関は取引ができない状況に陥った。グローバルなマネーロンダリング対策 としては相応の効果があった35

こうした一連の施策と並行して、FATF は国際的な権威を高めることも行っている。

FATF は世界銀行や IMF と連携することにより、その存在感を高め権威付も忘れて いなかった点も特筆できる。

以上がFATFの成功要因として、研究者で広く認められているFATFの成長プロセ スである。次項からは、知のプロセスの視点からFATFの成功要因を考察する。

3.1.4.2 知識のクリエーターとしてのFATF(FATF40の勧告)

FATF40 の勧告が作成された過程はすでに述べた。この項では、この 40 の勧告

の改訂過程を知のプロセスの視点からとらえることとする。

一般に研究者の間では、FATF はルール・セッター(ルールの制定者)と呼ばれる ことが多い。確かに FATFは 1990 年以前には存在しない領域(法制度と金融システ ムの融合と国際協力)に踏み込み、40 の勧告を支柱として様々にマネーロンダリン グ対策に取り組んできた。40の勧告は 1990年に作成されたが、その後その時々の社 会事象に合わせて改訂を積んできた。FAFT を「作業部会」の名のごとく期間限定の 存在、と創設者(G7主催国官僚)が位置づけたことが、その存在意義を都度確認す ることにつながった伏線と見ることも可能である。

野中・竹内(1996)は、組織的知識創造の要素として

① 人の暗黙的な知識ベースをてこに、「共同化」によってそれを組織全体に広める。

② 組織内部のレベルや境界を超えてその知識を増幅すなわち「転移」する。

③ 促進強化を図る。

④ 新しい知を絶え間なく創り続ける。

ことであるとしている。(野中・竹内 1996:92) これをそのまま、40の勧告の創造に置き換えると、

① 世界各国のマネーロンダリング対策の法律・金融・警察の専門家が、FATF とい う金融作業部会での参集を機に、集結された知識が、一義的にワーキンググルー プで結集された。

② 異なるテーマで知識を積み上げたワーキンググループが、その知識を増幅した。

35 その後、NCCTの公表は取りやめとなったが、現在でも高リスク・非協力的な国の公表は継続して

いる(201610月時点で北朝鮮のみ。FATF http://www.fatf-gafi.org/、2017/1/20 アクセス。

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③ 「40」という集約された論点にまとめあげられた。

④ 40 の勧告として公表し、かつ、社会変化を捉えながら、絶えず改良を加えられ ていくことを約束した

と現すことができる。

国際連合は主権国家の政治的な思惑が絶えず働いているが、FATF はマネーロンダ リング対策に特化しており、単一イシューにて、こうしたパワーポリテックスが働 きにくかったこと、FATF 自体が他の国際機関のような法的な強制力を保有していな かったこと(40 の勧告はあくまで勧告の域をでない)、時代時代のパラダイムシフ トを的確に捉え36、40 の勧告を適宜、社会情勢に適応するように改訂してきたこと も40の勧告が陳腐化しない要因であると言える37

3.1.4.3 知識の提供者としてのFATF

FATF は、現在も、相互審査の実施と評価に関するワーキンググループ、マネーロ ンダリングとテロ資金調達に関するワーキンググループ、タイポロジー(類型学)

に関するワーキンググループ、国際協力レビューグループ38の4つのワーキンググル ープを定期的に開催し、活発な活動を実施、これらワーキンググループでの分析成 果を公表している。

FATF は創設以来、特定の分野や活動のマネーロンダリングやテロ資金調達の脆弱 性に関する研究を実施している。マネーロンダリングやその他の犯罪目的のために どのように悪用されるのかの分析が中心である。

分析内容をタイポロジー(類型学)研究として公開し、マネーロンダリングとテ ロ資金調達に対するセクターの脆弱性の分析を継続的に実施していることで、絶え ず最新のマネーロンダリング及びテロ対策を睨んだ知識を発信していることが特徴 といえる。こうした情報の発信は近年加速しており、FATF がパブリック・セクター、

プライベート・セクターを問わず、マネーロンダリング対策における知識のプロバ イダーとしても役割を果たしているといえる。

36 ACAMS国際会議でのFATF議長、前事務局長の講演

Roger Wilkins, Financial Action Task Force (FATF)Former President, Keynote Speech, ACAMS 14th Annual AML & Financial Crime Conference, LAS VEGAS,U.S.A

http://www.acams.org/2015/10/25アクセス。

37 例えば、2004年の特別勧告は、テロ対策を追加したもの。2012年の新勧告には大量破壊兵器等の対

応も盛り込まれた。

38 FATF MANDATE 2012-2020

48 刊行物の分類

図 3.1 刊行物の分類1

FATF ウェブサイトをもとに作成 2017年1月末現在

出 典 :FATF ウ エ ブ サ イ ト http://www.fatf-gafi.org/(2017/1/31 ア ク セ ス )

図 3.2 刊行物の分類2

FATFウエブ・サイトをもとに作成 2017年1月末現在

出典:FATFウエブサイトhttp://www.fatf-gafi.org/(2017/1/31アクセス)

3.1.4.4 「場」ファシリテーターとしてのFATF

FATFは、議長を固定しておらず、加盟国による任期 1年の輪番制としている。加 盟国の代表者及びオブザーバーが参加する総会は年 3回(2月、6月、10月)開催さ

282, 45%

145, 23%

72, 11%

60, 10%

46, 7% 13, 2% 8, 1% 3, 1%

相互審査 FATF全般 FATF勧告

高リスク・非協力国 方法論

汚職 金融包摂

大量破壊兵器拡散

1 1 2 3 6 10 20 36

56 50 48 64 74

56 55 46

64

0 10 20 30 40 50 60 70 80

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

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れるが、内 1 回は原則議長国、残り 2 回は事務局があるパリにて開催されることと なっている。

加盟国は、経済力でみても大国・小国もあり、社会体制の異なる国も存在する。

これらの国々に 1 年任期で議長を就任させることにより、中立性と公平性を保つと 同時に、議長国での開催により「場」の活性化も実現している(2017 年は韓国が議 長国)。

もとより、FATF は創設当初から、マネーロンダリングのリスクが高いカリブ海諸 国や東南アジアを念頭におき、FATF 類似組織の設立に腐心した。FATF で蓄積され たマネーロンダリング対策の知識や、その運営形態ノウハウを伝授することで、地 域密着型のミニFATFという「場」を準備させたわけである。

FATF は、マネーロンダリング対策という共通目標を実現させるために法律・金 融・警察といった様々な職能部門が一緒に働く自己組織化チームを、地域密着とし てマネーロンダリングが実際起こっている現場により近い「場」を創設させること に成功したといえる。

FATF会議近景

図 3.3 FATF会議近景

出典:FATF 25年史(2014:6)

3.1.4.5 40の勧告

FATF40 の勧告は、経緯でも述べた通り、FATF のドライブ・エンジンである。

FATF40 の勧告の分析は中川(2008)及び Gilmore に(2011)詳しいが、参考にしな

がら以下ひも解いていくことにする。

・1990年勧告

1990 年勧告は、4 部構成となっている。第 1 部は、マネーロンダリング対策の基 本的な指針、第 2 部は国内法上の対応すべき刑事司法上の処置、第 3 部は金融機関

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がマネーロンダリング対策として整備すべき処置、第 4 部は国際協力となっており、

この構成は現在の 2012年版まで不変である。また、4部構成といっても1部は 3勧告、

2部は 5勧告、3部は 21勧告、4部は11勧告となっており、金融機関絡みである 3部に その主要な勧告が割かれている。勧告の力点は、当時まだ世界的な批准が十分でなか ったウイーン条約の批准促進がその目的であり、勧告の構成も、既存のマネーロン ダリング対策の概念・知識を広くグローバルに定着させることがその主旨であった ことが伺われる。つまり、この勧告の公表により少なくとも加盟国のマネーロンダ リング対策の知識水準をあわせ、かつ引き上げることが FATF の目的であり、ソフ ト・ローとしての FATF 勧告の位置づけの確立を模索していた時期といってよい。

(FATF 1991:16)

・1996年勧告

1996 年に公表された改訂勧告は、一部マイナーチェンジはあったが、ほぼ初回の 内容が踏襲された。この勧告で注目したいのは、各国政府による FIU の設立の推奨 である。FIUは正式名をFinancial Intelligence Unitと称する。日本では、現在は犯罪収 益移転防止対策室との名称にて警察庁傘下に位置付けられる組織として定着した。

発足当時は金融庁管轄下にあったことも興味深い。FIU を束ねる政府間会合として エグモント・グループが設立されたのが1995年である。

・2003年の40の勧告の改訂

FATFおよびFATF40の勧告はさらに進化を遂げていく。2003年の勧告はその当時

の社会要請、国際情勢に合わせ、4 部構成のスタイルを基本不変としながらも、アン チ・マネーロンダリング知識関連として新しい知識・用語を積極的に取り入れてい く。その代表的な知識・用語とは、1988 年にバーゼル委員会「マネーロンダリング の目的による銀行システムの犯罪的悪用の防止」と、1997 年に公表された「実効的 な銀行監督のためのコアとなる諸原則」にて専門用語として記載された CDD、KYC、

PEP と い っ た 用 語 で あ る 。CDD は 、Customer Due Diligence、KYC は Know Your

Customer、PEPはPolitical Exposed Personの略であり、邦訳では顧客管理、顧客確認、

政治的に重要な人物である。そもそもわかりにくい概念である。本邦でも最近、犯 罪収益移転防止法の改正により法制度へのインプットがなされたが、法制度への盛 り込みには相応の時間を要した。

2001 年の米国同時多発テロ事件により、FATF は、Combating the Financing of Terrorism :CFT)の概念を取り入れている。

学術的には、マネーロンダリングとテロ資金供与は区別されるべきであるとされ、

現行ものこの考え方に変化はない。なぜなら、マネーロンダリングは、違法な資金 の洗浄をベースにしている。こうした背景もあり、FATF は国際的な機関としてのミ

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