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疑わしい取引分析の事例比較

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 96-100)

第4章 日本のマネーロンダリング対策

4.3 疑わしい取引報告制度のナレッジマネジメント

4.3.5 疑わしい取引分析の事例比較

JAFICの疑わしい取引事例

JAFIC は、疑わしい取引の事例として 26 事例を公表している。MAXQDA を利用

してコーデイングを実施し、分類をおこなった一覧が以下である。金融機関を利用 した詐欺等の事例は確認できたが、いわゆる金融犯罪に関した事例は確認できなか った66

65 警視庁インタビュー、2016511日。

66 本邦におけるマネー・ロンダリングの事例は、城(2007)でも紹介されているが、いずれの事例も伏

字が多く、残念ながら分析にまでは至らなかった。また、金融庁担当者にインタビューを申し込んだ が実現には至らなかった(2017/10/16)。

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表 4-7 マネロンダリング事案の推移

出典:JAFIC、FATF勧告実施に関する関係省庁連絡会議国が実施する資金洗浄及び テロ資金に関するリスク評価に関する分科会(2014)掲載事例をもとに筆者作成

本邦事例とエグモント・グループによる事例の比較

JAFIC が公表している事例とエグモント・グループの事例を一変量のグラフで示

したものが以下である。

図 4.7 JAFIC,エグモントグループ事例の比較

出典:JAFIC、FATF勧告実施に関する関係省庁連絡会議国が実施する資金洗浄及び テロ資金に関するリスク評価に関する分科会(2014)、Egmont Group of Financial Intelligence Units (2014b) をもとに筆者作成

属性 種類 内容1 内容2

マネー・ローンダリング 身代金

売春 空き巣

非対面取引 窃盗

実質的支配者が不透明な法人 詐欺 売春 労働者派遣法違反 商品・サービスの属性に着目したリスク評価 法律・会計専門家 貸金業法等違反

郵便物受取サービス事業者 わいせつ

宝石・貴金属 窃盗

投資 横領

保険

売春 強盗殺人

資金移動業者 不正送金

小切手等

貸金庫 貸金業法等違反

内国為替 詐欺

風俗 貸金業法

預金取引 覚醒剤

詐欺 預貯金口座 火災保険金

貸金業法等違 偽ブランド品販売 犯罪収益当等隠匿・収受

取引形態に着目したリスク評価

外国との取引 現金取引

反社会的勢力

外貨両替

預金金融機関が取り扱う商品・サービス 顧客の属性に着目したリスク評価

本邦事例(26事例) エグモントグループ(20事例)

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事例の抽出であり単純比較はできないが、エグモント・グループの事例は、細分 化され、かつ詳細な分析が施されている。

エグモント・グループの疑わしい取引事例

エグモント・グループは疑わしい取引事例として 20 事例を公表しているが、その 中の1事例(バハレーン国の事例を)サンプルとして紹介する。

バハレーン国の事例(要約)

中東における腐敗、マネーロンダリング、テロリストの調達(バーレ ーンFIUよりの報告))

ケーススタディは、バーレーンと他の中東の国で現在係争中である。

他の人物と共に、バハレーンの著名人 A と女性のビジネスアソシエー トに関するものである。不審な取引報告書(STR)は、3 年前に地元の 銀行から FIU に情報が届いたときに、初動調査を開始した。当局は、

さまざまな疑わしい活動に気づいて、容疑者の A 口座、企業、仲間と の会合、さまざまな国の様々な人々とのコミュニケーションを綿密に監 視し始めた。調査 2008年初頭に、FIUは「A」に関する情報を受け取り ました。

この情報は、「A」が彼の公職を濫用しており、不適切な手段によっ て政治的コミュニティにおける彼の義務を侵害していることを明確に示 していた。

地元の贈収賄に巻き込まれ、腐敗し、これらの違法行為の性質を隠す ためにマネーロンダリング業務を行っていることが明確に示された。

さらに、資産の国際的な制裁を受けて、新しいチャネルを使ってテロ 組織が資金洗浄を行うことを助けるために、マネーロンダリング活動を 実施した。

反経済犯罪局の捜査では、「A」にはテロリスト団体の国内外の団体 や組織が所属していた。彼の個人口座に洗浄された資金が入金される と。彼は手数料を取ってテロ組織に移した。この事件は、「A」の銀行 口座および家族の口座を調査する権限について、検察庁が関与した。ま た、すべての容疑者に関わる電話会話を監視する権限も与えられた。

この調査では、「A」は中東女性の B 社と契約し、欧州銀行の小切手 を現金化し、金額を「A」に 600 万ユーロの額で譲渡するテープ式の電 話会話によって示された。これは違法行為によって得られたものと思わ れた。

データ

情報

知識

知恵

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この事例には以下の図解も添付され、3 ページにわたり詳細な分析がなされている。

図 4.8 エグモント・グループ事例

Egmont Group of Financial Intelligence Units (2014b:9-20)

本事例のポイントは現場担当者の判断によりナレッジマネジメントが働いたと思 われる点である。バハレーンは人口 1 百万人規模の小国である。イスラム教スンニ 派の大国サウジアラビアとシーア派のイランに囲まれているが、独自に中東の金融 立国として発展してきた国である。本邦の金融機関も複数拠点を現在も有しており、

中東の金融センターの地位をドバイに譲ったとは言え、依然、金融産業が中心の国 といえる。そして、実際、このようなマネーロンダリング、テロ資金供与の事件が 現実に世界で発生しているという事実である。そして、詳細な分析を行い、かつ、

公表することでアンチ・マネーロンダリングの知識を高度化している事例である。

社会環境の変化に伴いマネーロンダリングが絡む犯罪も複雑化している。本邦に おいても、監督庁からの時宜を得たタイポロジーの提供による巧妙化した犯罪を未 然に防止するためのナレッジマネジメントが望まれる。

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