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エグモント・グループ

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 67-72)

第3章 アンチ・マネーロンダリングレジームにおけるアクターの機能と役割

3.3 エグモント・グループ

3.3.1 エグモント・グループの概要

1990 年に公表された FATF勧告 29及び 40 にてマネーロンダリング対策の為に各 国は資金情報機関(以下 FIU)を設立すべきことを明記した。これら FIU を束ね情報 交換を活発化させることを目的として設立されたのがエグモント・グループである。

エグモント・グループは 1995 年にベルギーブラッセルのエグモント城に各国の FIU が集結して形成されたことにネーミングが由来し、情報交換・トレーニング・専門 知識の共有を目的として、国際的な FIU の非公式なネットワークとして設立された。

1996 年には、エグモント・グループの作業部会は、FIU を再定義し、国家の中央官 庁の中で、金融情報の開示を集約、分析し、これらの情報・分析を所管部署に周知 する責任部署と定義した(尚、同定義は、テロ資金供与防止に関する FIU の役割の

追加(2004 年)、FATF 新勧告(2012 年)により 2013 年に改正されている)。

(Egmont Group of Financial Intelligence Units 2014)

..2 エグモント・グループの機能と役割

エグモント・グループの役割は、FIU 間での情報交換、訓練、専門知識の共有の 分野での協力を通じ、FIU の能力とスキルを向上させることであり、犯罪組織と戦 うために、ベストプラクティスの交換を奨励し、促進することであるとしている。

そのために、情報交換のセキュリティを強化し、戦術的な分析ツールを改善するだ けでなく、異なる技術部門のより良い関与を促進するために、犯罪組織が使用して いる新しい手口も迅速に収集し、FIU 情報システムを充実させている42。エグモン ト・グループは設立以来各国 FIUの加盟促進を図り、現在では 151 の FIUが所属、

総会は年 1回であるが、傘下に4つのワーキンググループ43、地域部会等を有してい る。特徴的なのが、マネーロンダリング、テロ資金供与の犯罪に特化した事例分析

42 エグモントグループ年次報告書2014-2015 議長発言(Egmont Group of Financial Intelligence Units 2015:x-xiii)。

43情報交換、メンバーシップ・サポート、政策と手順、技術援助訓練, (Egmont Group of Financial Intelligence Units 2015)。

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を行い、その分析結果を所属 FIUに、FATF40の勧告で取り上げた「疑わしい取引報 告」として集約し、分析・還元していることである(2013年に 20事例をガイドライ ンとして公表 第4章で詳述)。

エグモント・グループは、2014 年に活動の見直しの一環として、事務局が位置す るカナダ、トロントの大学にコンサルティングを依頼し、その報告書内容を公開し ている。報告書の抜粋は以下の通り。

トロント大学によるコンサルティング内容の抜粋

1. エグモント・グループの役割:エグモント・グループは、国際的な

AML / CFT44基準を国内レベルで実施する責任を負う機関である FIU を代表す

る唯一の国際機関として、国際的および国内的なAML / CFTの取り組みの橋渡 し機能を有している。同グループは、マネーロンダリングとテロ資金供与に対 する世界的な戦いにおいて重要な役割を果たすため、グローバルなAML / CFT ネットワークに十分浸透しており、ネットワーク統合を強化する任務を有す る。

2. 課題:秘匿性の高い情報を扱いつつ透明性を高める手法、膨大な情報の 適切な分類と分析及び公開、明確な戦略的目標の確立、FIU 間の情報交換の活 性化と利害関係機関との積極的な情報交換「対話のパートナー」としての地位 の確立。

3. グローバルなマネーロンダリング対策ネットワークの概念図

図 3.8 AFT/CFTネットワークモデル

出典:トロント大学調査書(2014:13)訳 筆者

3.3.3 垂直な知識のコミュニテーターとしてのエグモント・グループ

エグモント・グループは、FATFによる40の勧告 20条に記載ある収集された「疑 わしい取引」といった特殊専門知識を分析し、今後の犯罪防止に役立てるための知

44 Anti-Money Laundering /Combating Fight Against Terrorismの略語

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識の体系化を担う組織である。グローバルなマネーロンダリング対策の中で、いか に秘匿性の高い知識に解決策を添えて、当該知識の最適な利用者に対して適切に伝 達するかという高度な任務を担っているといえる。世界各国で収集された「疑わし い取引」は法律に基づいた届出制度により各国の FIU へ提出され、分析される。エ グモント・グループではこの分析された知識をさらに分析し、他の FIU と共有し、

活用させていることになる。このプロセスを知識の特異性に立脚した特殊な知識の 高度化と活用と説明したい。

ネットワークモデルから明らかなように「疑わしい取引」といった単一イシュー にも拘わらず、マネーロンダリング対策という社会現象に取り組むために、国内外 のネットワークが融合するモデルが形成されている。このネットワークは、グロー バル・ナレッジマネジメントのひとつの形態と考えたい。

3.4 ウォルフスバーグ・グループ

3.4.1 設立背景と運用形態

次にウォルフスバーグ・グループについて説明する。

ウォルフスバーグ・グループは、1999 年にグローバルなマネーロンダリング対策 が必要との認識で一致をみた、グローバルな金融活動を展開する先進国の大手金融 機関を中心に形成された民間金融機関による会合である

会合は現在 13 金融機関45で構成され、メンバーは欧米の金融機関が中心であるが アジアからは唯一、三菱東京UFJ銀行が参加している。

ウォルフスバーグ・グループの運営形態も前述した FATF/APG/エグモント・グル ープとほとんど変わらない。総会は年 3 回、内 6 月はスイスのウォルフスバーグで 開催され、同時に世界の主要金融機関のアンチ・マネーロンダリング担当者、政府 関係者との交流の場も設けられる。これは、関係者の間では、ウォルフスバーグ会 議と称され、民間金融機関と政府関係者の交流の場となっている(参加者は官・民併 せ100名程度)46

また、事務局は HSBC(香港上海銀行)内に設けられており、メンバー行の若手 行員を集めたアカデミーの開催、テーマを決めた作業部会での議論(例コレスポン デント銀行のあり方、経済制裁動向)を踏まえレポートの公表もおこなっている。

Pieth and Aiolfi (2003)は、同グループへの参加金融機関の業務領域は、世界のプ

ライベートバンク市場の 60%以上、主要オフショア市場の 50%以上を占有している

45 Banco Santander、Bank of America、Bank of Tokyo-Mitsubishi-UFJ、Barclays、Citigroup、Credit Suisse、

Deutscheld Bank、Goldman Sachs、HSBC、JP Morgan Chase、Société Générale、Standard Chartered Bank、

UBS,の13の金融機関、http://www.wolfsberg-principles.com/、2017817日アクセス。

46 K氏 インタビュー、2017/10/3。

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と分析する。Pieth and Aiolfi (2003)は、同グループの活動を、マネーロンダリング 対策のなかで、プライベート・セクターが、グローバリゼーションの進展のなかで、

国際レベルで積極的に関与していくことの必要性を強調した。

そして、こうしたプライベート・セクターが、パブリック・セクターと積極的に 関わっていく行動をとらえ、集団行動イニシアティブ(Collective Action Initiative)

と呼んだ。その特徴を、競合他社間の集まりであっても、集団行動の目標が、マネ ーロンダリング対策やその他グローバルに共通した倫理観を打ち立てるなど、最終 的に自己の利益につながる目標と参加者が判断すれば、こうした集団行動は成功す る可能性が高いとしている47

3.4.2 知識のファシリテーターとしてのウォルフスバーグ・グループ

ウォルフスバーグ・グループは、1999 年以来、定期的に会合を持ち、コミュニケ ーションを図っており、傘下にワーキンググループを有して活動していることは説 明した。

そして、プライベート・セクターの立場から、ワーキンググループ48での成果をガ イドライン等として公表し、マネーロンダリング対策における民間の視点からの国 際水準の高度化への貢献を模索している。

ここでは、プライベート・セクターのグローバル・ナレッジマネジメントの視点 か ら 、 「 マ ネ ー ロ ン ダ リ ン グ 防 止 質 問 書 (The Wolfsberg Group Anti-Money

Laundering Questionnaire)」と 2006 年に公表された「マネーロンダリング対策のた

めのリスク・ベースアプローチのガイドライン( Guidance on a Risk Based Approach for Managing Money Laundering Risks - March 2006)」を取り上げたい。

マネーロンダリング防止質問書は、I.一般的な AMLの方針、慣行、手順、II. リス ク評価、III. KYC、デューデリジェンス、デューデリジェンスの強化を知る、IV. 報 告不能な取引と不法に取得されたファンドとの取引の防止と検知、V.トランザクシ ョン・モニタリングの5項目28質問に及ぶYES,Noの質問状である。

ウォルフスバーグ・グループは、国際金融ネットワークへの参加に必須なコルレ ス銀行の締結審査のための質問状として、この質問状を開発した。

一義的にウォルフスバーグ・グループ間での利用のために開発されたが、現在は、

金融機関がコルレス契約を締結するための必須アイテムとなっている。海外の金融

47 Gemma Aiolfi and Hans-Peter Bauer(2012),”The Wolfsberg Group” Collective Action: Innovative Strategies to Prevent Corruption. 。(Pieth, M (ed). 2012:97-112)

48 ワーキンググループは 5~10 程度。コレスポンデントバンキングの在り方や経済制裁等のトピック

を取り扱い。ワーキンググループのリーダーの判断にもよるが、開催頻度は月 1 回程度で、参加行が グローバルに及びことから、電話会議は主体。重要な案件についてはロンドン在の金融機関に集まり 議論を行う(K氏インタビュー、2017/10/3)。

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