p S
細胞を利用した再生医療に倫理的 問題があると考えるかどうかを︑それぞれ尋ねました︒
まず
ES
細胞については︑﹁問題がない﹂と答えた教
聞はゼロでした︒
﹁未
検討
・対
応中
﹂を含め︑大半の教
団では
ES
細胞が受精卵の破壊を伴っている点に倫理
的問題があると考えていることが明らかになりました
︒
次に
ipS
細胞ですがES
細胞と比較して﹁問題があ る﹂ H← 日教 団︑
﹁問 題は ない
﹂
O
←2教団というように︑倫理的問題点がない
(少
ない
)
という見方が
増えています︒しかし﹁未対応・検討中﹂も日教団←
口教団に増えており︑現時点ではipS細胞に倫理的
な問題があるかどうかの判断を保留している教団も少
なからずあることがわかります︒
Q 5 ・
Q 7 E S
細 胞・ipS
細胞による再生医療の許容範囲
どのような目的ならば
ES
細胞・ipS
細胞を利用した再生医療を許容できるか︑質問しました
︒
しか し
回答方法の設定にミスがあっ
たの で
(﹁どれも許容でき
ない﹂と﹁無回答﹂の区別が判然としないケl
スあ
り)
︑ 数値はあくまでも参考として捉えていただきたいと思 いま す
︒
E
細胞については︑﹁認め得ない﹂あるいは認めて
S
も﹁治療﹂までという回答が多く見られました
︒
Q 4
で倫理的問題ありと指摘した教団が多かったことを考えれば︑これは当然の傾向かもしれません︒
112
一方
I P
S
細胞に つい ては
︑﹁ 認め 得な い﹂
の比
率が
ぐんと下がり︑﹁治療のみ可﹂﹁予防以上も可﹂とする
数値も増加しています︒
E
S細胞と異なりipS細胞
には倫理的な問題点がないと見る教団が多かった
Q 6
の結果が反映されていると言えるでしょう︒
しか
し︑
積極 的に 認め ると いう 傾向 とは 別に
︑﹁ 未検 討・ 対応 中﹂
の数値が上がっていることも注目されます︒
Q 8
再生医療に関する研究の展望
再生医療に関して︑今後教団としてどう研究・対応
するつもりなのか︑展望を尋ねました ︒自由記述され
た回答を当方にて分類し︑次のように集計しました︒
積極的に対応
::
:4
教団(日%)
関心を持って対応
::
:7
教団 (四
%)
しばらく様子を見たい
::
:5
教団 (H
%)
とくに対応の予定なし:::8
教団 (辺
%) 無回 答: :: 日教 団( お% )
研究活動報告
アン ケー トか ら見 える とと
以上のアンケート結果から︑国内宗教教団ではまだ
再生医療が生命倫理に関わる問題として大きな関心を
集めていないことが窺えます︒アンケートからは︑脳
死臓器移植や安楽死・尊厳死︑それに自殺/自死など﹁い
のちの終わり﹂の問題にはかなり積極的に取り組んで
いることがわかりましたが︑反面︑生殖補助医療や人
工妊娠中絶などの﹁いのちの始まり﹂についての取り
組みは多くないことが明らかになりました︒再生医療
に関しても︑現状ではほとんどの教団が未対応かそれ
に近い状況にあります︒そして何らかの対応を取って
いる
教団
でも
︑
それ
は E
S細胞利用に関するものが多
く ︑
ipS細胞についてはまだ判断しかねるというの
が大勢となっています︒
国内宗教教団の現状がわかったところで︑次にその
理由について考えてみましょう︒なぜ囲内の宗教教団
では︑総じて再生医療への対応が不活発なのでしょう
台
第一の理由は︑近年の再生医療の進展状況があまり 、
にも急速であること︑さらにそれが高度に専門化され
ていることです︒各国が巨額の資金を投じて激しい研
究開発競争を繰り広げているため︑文字通り日進月歩
で研究・応用技術が進展しています︒当事者でもなけ
れば︑それをリアルタイムに把握することは困難です︒
そしてその最先端の動向は一定程度以上の専門的な
知識を持った人でなければ適切に理解も評価もできま
せん
︒専門家ではない一般人がフォローするには︑よ
ほどの関心と熱意︑根気を持っていなければならない
でしょう︒
実際
︑
とくに中小規模の伝統仏教教団では
宗派内でそのような人材を得られず対応が困難だとい
う悩みも寄せられました︒確かに︑生命倫理問題に積
極的に取り組んでいるのは比較的規模の大きい教団が
多いのが実状です
︒新日本宗教団体連合会(新宗連)
所属の教団からは︑新宗連が開催する研修会が情報の
入手と自教団の対応の検討に大いに役立っているとの
報告がありましたが︑全日本仏教会などに同様の対応
を期待したいという意見もありました︒
第二にこれまでの再生医療に対する宗教界からの
反応は﹁
ES
細胞の利用への反対﹂という一
枚看
板で
︑
それ以外の視座や切り口がなかったことが挙げられま
す︒
ES
細胞は受精卵の破壊を伴います︒ヒトの受精
卵を﹁人間﹂と同等の存在とみなすか否かは各教団に
よって少なからず相違しますが
E
S
細胞の利用に関して 見解 を表 明し た各 教団 は︑ おお むね
﹁望 まし くな い﹂
という方向性を共有していたといえます︒しかし受精
卵に由来しない
ipS
細胞が樹立されたことで︑その
ような宗教界の論理(ロジ
ック
)
は有効性を失ってし
まいました︒受精卵の破壊を伴わない方法が確立され
たのなら︑反対する理由はないということにならざ
るをえません︒
第三に︑脳死臓器移植や安楽死・尊厳死などとは異
なり︑現状では再生医療は純粋に﹁医療﹂の問題であ
ると認識されていることです︒脳死臓器移植の場合︑ 臓器移植という﹁医療﹂を行うために﹁死の定義﹂の
114
変更(拡大)が必要となりました︒それに対して宗教
界は︑おおむね﹁脳死は人の死ではない﹂という立場
に立ち︑﹁死の定義﹂は文化・宗教の問題であり︑それ
を安易に変更すべきではないと論陣を張りましたが︑
再生医療についてはそのような問題点は見当たらない
ので﹁医療﹂の専門家たちに任せておこう︑といった
雰囲気があります︒
しかし︑再生医療をめぐっては現在︑各国でさまざ
まな倫理的問題点が指摘され出しており︑その多くは
まさに文化・宗教に絡む問題です︒現在の日本では
再生医療研究は国家的 ︒プロジェクトとして位置付けら
れ強力な推進力を得ていますので︑日本国内ではなか
なかその負の側面が取り上げられることはありません︒
このような現状なればこそ︑再生医療の倫理的問題点
を指摘し社会全体で議論していく雰囲気を創ること
宗教界がそれを担うことが必要なのではないでしょう
力、
研究活動報告
(吉
田淳
雄
・名 和清
隆)