• 検索結果がありません。

E S 細胞

ドキュメント内 教化研究 No.21 (ページ 106-111)

は受精後時間をへて徐々に形成されるとしてそのた め受精卵の提供や着床前診断︑受精卵や胎児の研究利

用に対して柔軟に対応しています︒

アメリカの長老派教会では︑匪よりも病気で苦しむ

人に重点を置いています︒そのため

ES

細胞研究は

重病に苦しむ人を救うのに役立つと認めています

タl派神学者の

ES

細胞研究賛成派は︑﹁善行﹂という

人道的原則を用いて説明しています︒キリスト教は他

人のためになる行為を善行とみなしますが

E

研究活動報告

釈である﹁キヤl

ス ﹂

の四種類があります ︒ここでは

シャリl

アについて詳しくは述べませんが︑現代のイ スラム社会において生命倫理で扱うような新しい問題

群への対処は︑ウラマl

(ク

ルア

i

ン学

︑ハ ディ

l

ス学

︑ イスラム法学︑神学などイスラムの教えに関する様々 な学問を修めた知識人)による解釈によっているとい

うことができます︒

イスラム教徒が多い中東では

ほとんどの国が中絶 を違法として禁止しています

しかし︑現実には頻繁 に中絶が行われています

国や法学者の見解によって その規定は異なるようです

︒中絶を認める法学者の間

でも問題になっているのは︑どの時点で﹁いのちのは じまり﹂が認められるかという点です

︒これについて

は︑受精から受精卵に魂が入るのが四

O

日後や八

O

日 後

一 二

O

日後といろいろな説があります︒

例えばエジプトでは︑妊娠ないし出産が母親の健康 に大きな危険となる場合に中絶を認めてきました

︒胎

児に傷害がある場合も考慮されることがあるようです

一方で強姦による妊娠については中絶が認められ

ていません︒

このような基準を守らずに手術を行なっ た医師には最高十年の懲役刑が科されます

︒イラン

レバ

ノン

リビア︑オマ!ン︑シリアアラブ首長国

連邦

︑ イエメンなど他のイスラム国家でも同様です

中絶については︑﹁プライバシーに関する女性の権利﹂

と﹁生命に関する権利﹂という対立する

二つの権利間

での問題として捉えられ︑後者が優先されるべきであ

るという解釈がある一

方で︑胎児は生きている人間で はないので殺人には当たらないという対照的な解釈も

あります︒

再生医療に関するイスラム教の具体的な見解を見て

いくと︑イスラム教では

E

S

細胞やその他の再生医療

に関して︑教義にもと"ついた統一

見解はありません

これ まで と同 様︑

ウラ マ

l

が社会全体の倫理的判断に

基づいて状況倫理的な判断をしています ︒

ユダ ヤ教

ユダ

ヤ教

では

イスラム教同様に信者に対してユダ

ヤ法による行動指針の規定を行なっています︒主に

宗教指導者であり法学者であるラビによる解釈によっ

て現代社会の問題に対応しています︒

注意

した

いの

が︑

ユダヤ教はユダヤ民族の宗教ですが︑他の宗教と同じ

く考え方の違いから数種類の教団が並存している点で

す︒代表的な分類として︑原理主義を標梼する教団︑

近代社会に適応する教団︑そして急進的に教義を変え

ていこうとする教団の三種類です︒それぞれが︑現代

社会の問題に対して別個の法解釈を行っているといっ

てもよいでしょう︒

基本

的に

ユダヤ教において中絶は認められていま

す︒それは︑妊娠から四

0

日間の存在は人間の生命で

はなく︑水のようなものに近い存在として捉えられる

からです︒

つま

り︑

ユダヤ教にとって受精卵や初期の

杯については倫理的な問題はありません︒

その

ため

E

S

細胞をめぐって倫理問題は存在しないという立場

106 

に立っています︒

ユダヤ教における

E

S

細胞研究賛成派によれば

二L

ダヤ教戒律のハラハーには︑救命と治療のための行為

は基本的に正義とみなされるといっています︒

また

実験室で旺を壊すことは殺人になるかどうかについて

は︑殺人に当たらないとしています︒

このような意見を持つラビは少なくありません︒

OOO

年の生命倫理学に関する政府評議会に用意さ

れた

声明

文で

エルサレム大学のエリオット・ドlフ

師は︑救命と治療の行為をユダヤ教徒の義務であるた

め ︑

ES

細胞研究を進めることも義務であるとしてい

す︒

たま

イェシlパ!大学のモシェ・ドヴィド

テンドラl師は︑聖書による法も救命の義務をユダヤ

教徒に課していると論じています(前掲スコット著

E

S

細胞の最前線﹂)︒

研究活動報告

仏教

界で

は︑

E S細

胞・

ipS細胞の研究に関して︑

生命の誕生に関する教義的根拠が明確でないため︑倫

理的判断はまず見当たりません︒

その

一方で︑再生医

療の技術の応用に関しては状況倫理(その場その場の

状況によって判断する)で対応するとの見解が各国の

仏教界には見られます︒ipS細胞に関しては︑医療

的な問題はないとしています︒問題は︑その最先端医

療を何に使うかという意図のところで︑雄々な仏教的

理解が議論されています︒主な仏教国の現状をみてい

きましょう︒

タイでは︑再生医療に関して倫理的指針はありませ

ん︒しかし︑人の命を救うという道徳的倫理観から︑

E

S細胞︑臓器移植は可能ではないかとされています︒

実際に︑成体幹細胞の開発に取り組んでいる企業もあ

ります︒

台湾では︑たとえば中絶は合法であるとされていま

す︒

また︑臓器移植などは日本よりもかなり多くおこ

なわれています︒

しか し

︑仏教系医療機関である慈済

会では中絶を行っていま

せん

スリランカでは再生医療を独自に研究するという方 針はありません

仏教教団による声明もありません

中絶・自殺に関しては︑殺生戒などの観点から禁止さ

れています︒

(戸

松義

・粛藤知明)

囲内宗教界の対応状況

ーアンケート調査をもとに│

再 生 医 療 は 近 年 急 速 に 進 展 し た 医 療 領 域 で

す︒

一九九八年のヒト

ES

細胞樹立がその第一のエポック

になりましたが︑それは旺(受精卵)の破壊を伴うた

め倫理的な問題を惹起し︑今日に至っています

しか

し二

OO

六年︑京都大学の山中伸弥教授によって

l p

S細胞が樹立されました︒

ipS

細胞は臨

(受

精卵

)

の破壊を伴わない多能性幹細胞です︒ipS細胞樹立

という第二のエポックは︑受精卵の破壊という倫理的

問題がクリアされたものと見なされた点で重要な意昧

を持っています︒そして現在︑世界各地で再生医療に

関する研究が大きく︑激しく進展しているのです︒

このような再生医療をめぐる状況に対して︑国内の

宗教教団はどのような対応を取っているのでしょうか︒

E

S

細胞に関しては︑受精卵の破壊という点で否定的

な見解を表明した教団がありましたが︑ipS細胞が

樹立されて以降︑とくに声明等を発表した教団はまだ

ないようです︒

今回︑当プロジェクトでは国内の主要宗教教団に対

してアンケート調査を行い︑それらの教団が再生医療

についてどのような見解を持ち︑どのような対応をとっ

ているのか︑その現状把握を試みました︒アンケート

では同時に︑再生医療以外の生命倫理に関連する諸分

野についても聞き取りを行っています︒ここではアン

ケl卜の分析・総合を通して︑圏内宗教界の対応状況

についてまとめてみたいと思います︒

アン ケー トの 概要

1 0 8  

アンケートは二

OO

九年二月に︑日本宗教連盟傘下

の教派神道連合会・全日本仏教会・日本キリスト教連

合会・新日本宗教団体連合会に属する団体を中心に︑

﹃宗

教年鑑﹄等から教会・信者数の多い団体などを抽出し

回答を頂戴しました た一四六教団に郵送で送付し︑このうち三七教団から

アンケートにお答

(回

答率

お%

)︒

教派神道連合会 え下さった教団を所属別に示すと次の通りです︒

4教

全日本仏教会

日本キリスト教連合会

新日本宗教団体連合会

その他(仏教・神道系) 四教団

‑教団

8教

個々の教団名は挙げませんが︑日本の宗教教団の中 5教団

で比較的規模が大きい教団からは軒並み回答を頂戴す

が多かったことも特色です︒ ることができました︒また︑伝統仏教教団からの回答

研究活動報告

アンケートは全8問(属性に関する質問を除く)

で ︑

①生命倫理の諸問題全般に関する研究・対応の状況(問

1 1 2 )

と ︑

②再生医療(とくに

E S胞や細

ipS

細胞 )

に関連する倫理的問題の研究の現状(問

3 1 8 )

を調

査しました︒個々の設問と回答の集計結果は別途掲載

しておきます︒

以下

アンケート結果を①生命倫理の諸問題全般︑

②再生医療に分けて整理分析し︑最後に︑アンケート

から見えてくる国内宗教教団の対応状況についてまと

めてみたいと思います︒

ま {

ドキュメント内 教化研究 No.21 (ページ 106-111)