は受精後時間をへて徐々に形成されるとしてそのた め受精卵の提供や着床前診断︑受精卵や胎児の研究利
用に対して柔軟に対応しています︒
アメリカの長老派教会では︑匪よりも病気で苦しむ
人に重点を置いています︒そのため
ES
細胞研究は
重病に苦しむ人を救うのに役立つと認めています
︒
タl派神学者の
ES
細胞研究賛成派は︑﹁善行﹂という
人道的原則を用いて説明しています︒キリスト教は他
人のためになる行為を善行とみなしますが
E
研究活動報告
釈である﹁キヤl
ス ﹂
の四種類があります ︒ここでは
シャリl
アについて詳しくは述べませんが︑現代のイ スラム社会において生命倫理で扱うような新しい問題
群への対処は︑ウラマl
(ク
ルア
i
ン学
︑ハ ディ
l
ス学
︑ イスラム法学︑神学などイスラムの教えに関する様々 な学問を修めた知識人)による解釈によっているとい
うことができます︒
イスラム教徒が多い中東では
ほとんどの国が中絶 を違法として禁止しています
︒
しかし︑現実には頻繁 に中絶が行われています
︒
国や法学者の見解によって その規定は異なるようです
︒中絶を認める法学者の間
でも問題になっているのは︑どの時点で﹁いのちのは じまり﹂が認められるかという点です
︒これについて
は︑受精から受精卵に魂が入るのが四
O
日後や八O
日 後一 二
O
日後といろいろな説があります︒例えばエジプトでは︑妊娠ないし出産が母親の健康 に大きな危険となる場合に中絶を認めてきました
︒胎
児に傷害がある場合も考慮されることがあるようです
が
一方で強姦による妊娠については中絶が認められ
ていません︒
このような基準を守らずに手術を行なっ た医師には最高十年の懲役刑が科されます
︒イラン
レバ
ノン
︑
リビア︑オマ!ン︑シリアアラブ首長国
連邦
︑ イエメンなど他のイスラム国家でも同様です
︒
中絶については︑﹁プライバシーに関する女性の権利﹂
と﹁生命に関する権利﹂という対立する
二つの権利間
での問題として捉えられ︑後者が優先されるべきであ
るという解釈がある一
方で︑胎児は生きている人間で はないので殺人には当たらないという対照的な解釈も
あります︒
再生医療に関するイスラム教の具体的な見解を見て
いくと︑イスラム教では
E
S
細胞やその他の再生医療に関して︑教義にもと"ついた統一
見解はありません
︒
これ まで と同 様︑
ウラ マ
l
が社会全体の倫理的判断に
基づいて状況倫理的な判断をしています ︒
ユダ ヤ教
ユダ
ヤ教
では
︑
イスラム教同様に信者に対してユダ
ヤ法による行動指針の規定を行なっています︒主に
宗教指導者であり法学者であるラビによる解釈によっ
て現代社会の問題に対応しています︒
注意
した
いの
が︑
ユダヤ教はユダヤ民族の宗教ですが︑他の宗教と同じ
く考え方の違いから数種類の教団が並存している点で
す︒代表的な分類として︑原理主義を標梼する教団︑
近代社会に適応する教団︑そして急進的に教義を変え
ていこうとする教団の三種類です︒それぞれが︑現代
社会の問題に対して別個の法解釈を行っているといっ
てもよいでしょう︒
基本
的に
︑
ユダヤ教において中絶は認められていま
す︒それは︑妊娠から四
0
日間の存在は人間の生命ではなく︑水のようなものに近い存在として捉えられる
からです︒
つま
り︑
ユダヤ教にとって受精卵や初期の
杯については倫理的な問題はありません︒
その
ため
︑
E
S
細胞をめぐって倫理問題は存在しないという立場106
に立っています︒
ユダヤ教における
E
S
細胞研究賛成派によれば二L
ダヤ教戒律のハラハーには︑救命と治療のための行為
は基本的に正義とみなされるといっています︒
また
︑
実験室で旺を壊すことは殺人になるかどうかについて
は︑殺人に当たらないとしています︒
このような意見を持つラビは少なくありません︒
二
OOO
年の生命倫理学に関する政府評議会に用意された
声明
文で
︑
エルサレム大学のエリオット・ドlフ
師は︑救命と治療の行為をユダヤ教徒の義務であるた
め ︑
ES
細胞研究を進めることも義務であるとしてい
ま
す︒
たま
︑
イェシlパ!大学のモシェ・ドヴィド
テンドラl師は︑聖書による法も救命の義務をユダヤ
教徒に課していると論じています(前掲スコット著
﹁
E
S
細胞の最前線﹂)︒研究活動報告
義
仏教
界で
は︑
E S細
胞・
ipS細胞の研究に関して︑
生命の誕生に関する教義的根拠が明確でないため︑倫
理的判断はまず見当たりません︒
その
一方で︑再生医
療の技術の応用に関しては状況倫理(その場その場の
状況によって判断する)で対応するとの見解が各国の
仏教界には見られます︒ipS細胞に関しては︑医療
的な問題はないとしています︒問題は︑その最先端医
療を何に使うかという意図のところで︑雄々な仏教的
理解が議論されています︒主な仏教国の現状をみてい
きましょう︒
タイでは︑再生医療に関して倫理的指針はありませ
ん︒しかし︑人の命を救うという道徳的倫理観から︑
E
S細胞︑臓器移植は可能ではないかとされています︒
実際に︑成体幹細胞の開発に取り組んでいる企業もあ
ります︒
台湾では︑たとえば中絶は合法であるとされていま
す︒
また︑臓器移植などは日本よりもかなり多くおこ
なわれています︒
しか し
︑仏教系医療機関である慈済
会では中絶を行っていま
せん
︒
スリランカでは再生医療を独自に研究するという方 針はありません
︒
仏教教団による声明もありません
︒
中絶・自殺に関しては︑殺生戒などの観点から禁止さ
れています︒
(戸
松義
晴
・粛藤知明)
2
囲内宗教界の対応状況
ーアンケート調査をもとに│
再 生 医 療 は 近 年 急 速 に 進 展 し た 医 療 領 域 で
す︒
一九九八年のヒト
ES
細胞樹立がその第一のエポック
になりましたが︑それは旺(受精卵)の破壊を伴うた
め倫理的な問題を惹起し︑今日に至っています
︒
しか
し二
OO
六年︑京都大学の山中伸弥教授によって
l p
S細胞が樹立されました︒
ipS
細胞は臨
(受
精卵
)
の破壊を伴わない多能性幹細胞です︒ipS細胞樹立
という第二のエポックは︑受精卵の破壊という倫理的
問題がクリアされたものと見なされた点で重要な意昧
を持っています︒そして現在︑世界各地で再生医療に
関する研究が大きく︑激しく進展しているのです︒
このような再生医療をめぐる状況に対して︑国内の
宗教教団はどのような対応を取っているのでしょうか︒
E
S
細胞に関しては︑受精卵の破壊という点で否定的な見解を表明した教団がありましたが︑ipS細胞が
樹立されて以降︑とくに声明等を発表した教団はまだ
ないようです︒
今回︑当プロジェクトでは国内の主要宗教教団に対
してアンケート調査を行い︑それらの教団が再生医療
についてどのような見解を持ち︑どのような対応をとっ
ているのか︑その現状把握を試みました︒アンケート
では同時に︑再生医療以外の生命倫理に関連する諸分
野についても聞き取りを行っています︒ここではアン
ケl卜の分析・総合を通して︑圏内宗教界の対応状況
についてまとめてみたいと思います︒
アン ケー トの 概要
1 0 8
アンケートは二
OO
九年二月に︑日本宗教連盟傘下
の教派神道連合会・全日本仏教会・日本キリスト教連
合会・新日本宗教団体連合会に属する団体を中心に︑
﹃宗
教年鑑﹄等から教会・信者数の多い団体などを抽出し
回答を頂戴しました た一四六教団に郵送で送付し︑このうち三七教団から
アンケートにお答
(回
答率
お%
)︒
教派神道連合会 え下さった教団を所属別に示すと次の通りです︒
4教
団
全日本仏教会
日本キリスト教連合会
新日本宗教団体連合会
その他(仏教・神道系) 四教団
‑教団
8教
団
個々の教団名は挙げませんが︑日本の宗教教団の中 5教団
で比較的規模が大きい教団からは軒並み回答を頂戴す
が多かったことも特色です︒ ることができました︒また︑伝統仏教教団からの回答
研究活動報告
アンケートは全8問(属性に関する質問を除く)
で ︑
①生命倫理の諸問題全般に関する研究・対応の状況(問
1 1 2 )
と ︑
②再生医療(とくに
E S胞や細
ipS
細胞 )
に関連する倫理的問題の研究の現状(問
3 1 8 )
を調
査しました︒個々の設問と回答の集計結果は別途掲載
しておきます︒
以下
︑
アンケート結果を①生命倫理の諸問題全般︑
②再生医療に分けて整理分析し︑最後に︑アンケート
から見えてくる国内宗教教団の対応状況についてまと
めてみたいと思います︒