第 3 章 協同的トムソン散乱電子項スペクトルの計測
3.3 CCD プラズマのトムソン散乱計測システム
本研究では, 測定対象にCCDプラズマを用いた. CCDプラズマへのトムソン散乱法 適用のためには, 時間・空間的に制御されたプラズマが周期的に生成される必要があ る. したがって放電回路は, 高電圧を高速で立ち上げることができるパルス電源を使 用し, 周期的に動作しながらも次の放電に影響を及ぼさない形態であることが望まし い. 図3.3に, 本研究で作製したパルスマイクロ放電生成回路を示す. 高電圧を高速で 立ち上げるパルス電源は, 直流電源(高砂製作所製, PS-LG-05P20, 最大電圧5 kV)と 高速・高電圧半導体スイッチ(BEHLKE製, HTS 50-06)を組み合わせることで実現し た. 電源の立ち上がりに高速性が求められるのは, 放電発生のジッターを小さくし, 短パルス(<10 ns)のレーザー入射との同期をとるためである(時間的制御). 図3.4 に半導体スイッチの性能と外観を示す. 直流電源によりコンデンサを充電し, 高速・
高電圧半導体スイッチによるスイッチングによりパルス電圧を発生させている. 図 3.5に放電電極を示す. 電極には直径 1.6 mmの針電極(曲率半径 40 m)と直径2.4 mmの半球電極を使用し, ギャップ間隔は500 mとしている. 電極材料はタングステ ンである. 針対半球電極対にすることで電界を局所的に集中させている. 電極にかか る電圧が放電開始電圧を超えるとプラズマが生成され, 発生した電荷が消弧用コンデ ンサに蓄積される. このとき, 放電現象と消弧用コンデンサおよび並列抵抗からなる 回路の時定数の差を利用する. 即ち, 放電現象は 10 ns 程度の短い時間内で起こるの で並列接続された抵抗は高抵抗(1 MΩ)であるため, 電流は流れずに消弧用コンデン サにのみ電荷が蓄積する. コンデンサに蓄積された電荷による逆電界により外部電界 が打ち消されることで放電は終了する. その後, 並列に接続された抵抗を通り電荷が 放出されることで, 周期的に動作させても次の放電に影響を与えない.
69 200 pF
50 Ω
3 kΩ 1 MΩ
V
I 50 Ω
Switch
50 pF Electrode
DC
C2 C1
BEHLKE HTS 50-06
25 kHz 最大動作周波数
150 ns オン時間
4~15 ns (Vout=2 kV) 立ち上がり時間
最大ピーク電流 60 A 最大動作電圧 5 kV
25 kHz 最大動作周波数
150 ns オン時間
4~15 ns (Vout=2 kV) 立ち上がり時間
最大ピーク電流 60 A 最大動作電圧 5 kV
図3.3 局在化パルスマイクロ放電生成システム
図3.4 高速・高電圧半導体スイッチの性能
70
φ 2.4 mm
0.5 mm φ 2.4 mm
0.5 mm
0.5 mm
Radial Direction
Axial Direction
Laser
0 200 -200
z(μm) x(μm)
2000 - 200 φ=2.4 mm
図3.5 放電電極 (a) 電極写真. (b)電極周辺におけるx軸, z軸設定
(a)
(b)
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図 3.7 に CCD プラズマのためのトムソン散乱計測システムを示す. 計測用光源には Nd:YAGレーザー(Continuum製, Surelite III)の第2高調波(λ= 532 nm )を用いた. そ の最大出力エネルギーは400 mJ, パルス幅は8 ns, 繰り返し周波数は10 Hzである. レ ーザー光は直線偏光しており, この偏光方向がチャンバー底面に平行, 観測軸に垂直 となるように, チャンバー内に入射する. レーザーはレーザー集光レンズ(f = 200 mm) を通してチャンバー内に入射され, 針-半球電極間に集光される. トムソン散乱光の
一部は, f = 120 mmの第1受光レンズで受光して一旦平行光になった後, f = 250 mmの
第 2 受光レンズでトリプル分光器の入射スリット上に結像した. これにより, 散乱体 積の断面は分光器入口スリット上で約 2 倍に拡大される. トムソン散乱計測時, 分光 器は, その入射スリットの高さ方向がレーザービーム通過方向となるように配置した.
得られた散乱光は, トリプル分光器によって迷光やレーリー散乱光などの信号を十分 に低減し, ICCDカメラ(Princeton 社製, PI-MAX UNIGEN II)により電気信号に変換 される. 検出器に ICCD カメラを用いているので, 一度の計測で全波長と同時に, レ ーザー軸方向(図 3.5(b)の x 方向)の空間分の取得が可能となっている. プラズマの 発生タイミングとレーザーの入射タイミングは遅延パルス発生器(Stanford Research
Systems 製, DG535)を用いて同期させており, ns単位でレーザーの入射タイミングを
変化させることができる. これにより, プラズマ内の電子密度・電子温度の時間変化 を計測することが可能である. 電極位置はそれぞれxyz軸方向に10 μm単位で移動可 能である. プラズマ内の z 方向(図 3.5 (b)参照)の空間分布を計測する時は, 一度真 空チャンバーを空け, それぞれの電極を移動させて行った. CCDプラズマの電極ギャ ップ間は 500 m と狭いため, その表面で, トムソン散乱光よりもはるかに強いレー ザーの乱反射光が発生し, 分光器内に迷光という形で入り込み, 計測の障害となった.
迷光を低減するために, 差分散型の 3 回折格子分光器を作製した. その概要は 2 章の 図2.17で示したものと同等であるので, ここでは簡単な説明に留める. 分光器は3枚 のホログラフィック回折格子(島津製作所製, サイズ58 mm × 58 mm, 刻線本数1200
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本/mm, ブレーズ波長500 nm), 6枚のアクロマートレンズ(L1 ~ 5 : f = 220 mm, 直径
50 mm , L6 : f = 250mm, 直径50 mm), 1枚のアルミ平面ミラー, レーザー波長ストップ,
および中間スリットで構成される. レーザー波長ストップは, 厚さ50 mのタングス テン板に, 中央の幅400 mの部分を残して, その両端に高さ10 mm, 幅5 mmの2つ の四角い穴を開けた逆スリット型の構造をしており, ここでブロックされる波長範囲 は計測レーザー波長(532nm)から±0.76nmとなる. 観測面にはICCDカメラを設置し ており, その1ピクセル当りの観測幅は13 mである. 装置関数幅は, 3段目の分光部 の逆線分散を式計算した値 3.3 nm/mm と入口スリット幅 100m で決定し, 半値全幅
(FWHM)で 0.33 nm である. 本研究で用いたトリプル分光器の装置関数を図 3.8 に示
す. レーザー波長ストップを取り外している場合, 中心波長での光強度に対して,
= 1nmでの強度は10-3であった. レーリー遮光板を取り付けた場合, 中心波長での 光強度が10-5に減衰し, = 1 nmではその値からさらに2 × 10-3減衰していた. つまり, レーザー波長ストップを取り付けたトリプル分光器の= 1 nmでの迷光リジェクシ ョン性能は約108である(49). これにより, > 1 nmの波長域では, 迷光を十分に低減 し, トムソン散乱計測を可能とした.
補足的に, 発光分光法を用いた測定も行った. 電子密度のクロスチェックとして, 水素H線(=486.3 nm)のシュタルク広がり測定を行った(46). このとき, 放電ガスに
は0.1%の水素ガスを混入した. 計測は, LTSシステムと同様の受光系を用いて行った.
波長分解能を高めるため, 入口スリット幅を50 mにし, 約0.17 nmの波長分解能を 得た. シュタルク広がり幅( λs)と電子密度の関係は次式で得られる.
2 / 3 22
3) 1.1 10 ( ( ))
(m nm
ne s (3.1)
ガス温度の評価のためには, 放電ガス中に窒素ガスを 0.1%混入し, 窒素分子の 2nd positive system (C3u→B3g, =375~381 nmの範囲内) を観測した [18]. 発光スペクト
2
/
3
22
3 ))((101.1)
( nmm
n se
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ルから窒素分子の回転温度が得られる. 高気圧プラズマでは分子間の衝突が頻繁であ るので, 回転温度と並進温度が一致すると考えられる [91]. このことを利用して, ガ ス温度を評価した.
74 Electrode Set
Triple Grating Spectrometer
Beam Dump f=120 mm
f=250 mm
f=200 mm Nd:YAG
Laser
ICCD Camera
Electric
Circuit Delay
Generator Electrode Set
Triple Grating Spectrometer
Beam Dump f=120 mm
f=250 mm
f=200 mm Nd:YAG
Laser
ICCD Camera
Electric Circuit Electric
Circuit Delay
Generator Delay Generator
図3.7 レーザートムソン散乱計測システム
図3.8 トリプル分光器の装置関数
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