第 2 章 高気圧マイクロプラズマとその診断手法
2.4 光学的手法による高気圧マイクロプラズマの診断
2.4.2 発光分光法
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下で静的シュタルク効果による分裂を生じる. しかしこの分裂幅は, 発光原子の周囲 のイオンの動きにより不規則に揺らぐ. したがってシュタルク電場の揺らぎの確率分 布を求めれば, スペクトル線のプロファイルが得られる.
プラズマ中のシュタルク広がりは, 水素原子について最もよく研究されていて, 理 論と実験のよい一致が確認されている. 水素原子のスペクトル線の中でも, バルマー
β線(Hβ:波長486.1 nm)がスペクトル広がりが大きく, 可視域で他の線からも孤立
しているので, 実用的に最も重要である. 詳しい計算の結果によると, Hβ線のシュタ ルク広がりの半値全幅Δλ / (nm)と電子密度ねne (m-3)の間には次の関係がある.
, / (2.31)
係数C(ne, Te)は電子密度と温度の弱い関数である. 電子密度が1021 (m-3)の時, 電子温 度が5000 Kから40000 Kの間で変化しても, C(ne, Te)の値は1.11×1022~1.16×1022と,
わずかに5%変化するにすぎない. ドップラー広がりの影響は, 電子密度が1021(m-3)
以下ではその補正が必要である. 電子密度1020(m-3)でガス温度40000 Kとするとシュ タルク広がりとドップラー広がりが同程度となる. もし測定対象のプラズマに水素原 子が含まれていないならば, プラズマを乱さない範囲で少量の水素ガスを添加して電 子密度測定に用いることが考えられる.
2.4.2.2 窒素2nd positive 線を利用した中性粒子温度計測 [65] [18]
大気圧非平衡プラズマのガス並進温度の近似値として, 回転温度を求めるという手 法が利用されている. 通常の可視・紫外域発光分光法では, 分子の電子状態が変化す る際のスペクトルが計測されるが, この際, 振動状態も回転状態も変化しうる. 通常 の分光器では, 分解能が不足する上に線スペクトルもドップラー広がりなど種々の要 因で広がるため, 測定されたスペクトルの回転構造を分離することは一般には不可能
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である. しかし, 回転構造が分解不能でもその包絡線が精度よく計測できれば, 回転 励起状態の密度分布は温度Trの回転温度で定められるボルツマン分布に従うことを 仮定し, 理論計算により別途求めた理論スペクトルとの比較により, 回転温度を求め ることが可能である.
発光分光計測により, 振動温度と回転温度を求める具体的方法を述べる. 一般に, 分子の輻射遷移の線強度は次式で与えられる.
′, ′, ′→ ′′, ′′, ′′ ′, ′, ′→ ′′, ′′, ′′ ′, ′,′ (2.32)
ここに, ′, ′, ′→ ′′, ′′, ′′ は, カッコ内の遷移に伴う放射束で, シングルプライ ムは遷移の上準位, ダブルプライムは下準位, n, v, Jはそれぞれ電子状態量指数, 振動 量子数, 回転量子数, Aは遷移確率, Nn', v', J'は遷移の上準位状態の数密度である. ここ で, 振動・回転それぞれの準位密度分布が振動温度Tv, 回転温度Trのボルツマン分布 に従うと仮定すれば, 遷移の上準位密度を以下のように書き直すことが可能である.
′, ′, ′ ′ ′/ 2 ′ 1 ′/ (2.33)
ここに, Nn'はvやJによらない定数, εvおよびεJはそれぞれ第v振動準位, 第J回転準 位のエネルギーレベルである. 一方, 遷移確率については以下のように書き表わすこ とが可能である.
′, ′, ′→ ′′, ′′, ′′ 64
3 ′⋅ 1
2 ′ 1| | ′ ′′ ′ ′′ (2.34)
上式で, ν0は中心周波数(=c/λ0), |R| は遷移双極子モーメントと呼ばれる物理量, gn'
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は電子状態n'の統計的重み, gv'v''はFranck-Condon因子, SJ'J''はHonl-London因子である. (2.34) 式を(2.32) 式に代入して整理すれば, 発光強度 ′, ′, ′→ ′′, ′′, ′′ を振動依
存強度Iv'v''と回転依存強度IJ'J''の積に比例すると記述できる. すなわち,
′, ′, ′→ ′′, ′′, ′′ ′ ′′ ′ ′′ (2.35)
ここにKnは上下準位の振動量子数や回転量子数によらない定数で, またそれぞれの 強度項は
′ ′′ ′ ′′ ′/ (2.36)
′ ′′ ′ ′′ ′/ (2.37)
と書く事ができる.
上式を用いれば, 上下準位の電子・振動・回転のそれぞれの振動数を指定すれば, そ の遷移の発する発光強度が理論的にTv, Trの関数として計算される. しかし, 実際に 放出される光子は, 広がりを有する分布を持ち, それらが重ね合わさったものがスペ クトルとして観測される事となる. ドップラー広がりの考察の項で述べたように, 通 常の分光計測系を用いている場合であれば, 線広がりに対する影響としては, ドップ ラー広がりや圧力広がりは無視できることが多く, 検出系で決まる装置関数に等しい と近似できる.
一方, 発光線の波長は遷移に関する上下準位のエネルギー差から計算される. そこ で, 各分子のエネルギー準位を求める必要がある. 分子のエネルギー準位ε(n, v, J)は 電子状態n, 振動準位v, 回転準位Jのエネルギー準位のそれぞれのエネルギーεn, εv, εJ
の和として以下のように表わされる.
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, , (2.38)
さらに分子分光学の教えるところによると, 分光学的に求められた定数を利用し, 振 動エネルギーや回転エネルギーを, 以下のように求めることができる.
1/2 1/2 ⋯ (2.39)
1 1 ⋯ (2.40)
ここに
1/2 ⋯ (2.41)
である. 上式に現れるεn, ωe, xe, Be, αeはいくつからの分子気体励起状態について既に 求められており, それを利用することができる. 例えば, 酸素や窒素などについては 文献にいくつかの励起状態について定数がまとめられている. これらから上準位と下 準位のエネルギーを求め, その差から発光線の中心波長が決定される. したがって, 当該波長に
′, ′, ′ → ′′, ′′, ′′
′ ′′ ′ ′′ ′/ ′/ (2.42)
の強度が装置関数で定まる広がりをもって現れ, これを各振動回転の励起状態につい て適切に総和をとれば, 実際に測定できるバンドスペクトルを理論的に求めることが 可能となる.
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