第 3 章 協同的トムソン散乱電子項スペクトルの計測
3.5 実験結果の考察
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ィッティングが可能な理論スペクトルの Δλpeakや α を決定し, その結果から電子密 度・電子温度の測定精度を求めた. 図3.15に, 電子項スペクトルの中心波長での強度
(B)とピーク波長での強度(A)の強度比(A/B)と, α の関係を示す. 図 3.11 に示 したスペクトルにおいてA/Bの値は, ショットノイズによるスペクトルのゆらぎから, 最大で3.2, 最小で2.8である. これは図3.15(b)から, 1.64<α<1.79に対応する. Δλpeakを 一定(2.57 nm)とし, α=1.64, 1.71(最小二乗法より求めた, 実験結果に最もよく一致 する値), 1.79に対応したスペクトルを図3.16に示す. α=1.64の時ne=4.28×1022 m-3, Te=1.03 eV, α=1.79の時ne=4.7×1022 m-3, Te=0.95 eVである. 次に, αを固定(1.71)し, フ ィッティングが可能な Δλpeak の最大値, 最小値を求めた. フィッティングの結果を 図 3.17 に示す. 同図より, Δλpeakの最大値は 2.63nm, 最小値は 2.53nm である. Δλpeak
=2.53nmの時ne=4.4×1022 m-3, Te=0.97 eV, Δλpeak =2.63nmの時ne=4.75×1022 m-3, Te=1.05 eVである. これらの結果を図3.18にまとめる. 図3.18より, 電子密度・電子温度の曖 昧さは, 最大で±10%と結論づけられる.
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図3.15 電子項スペクトル形状とαの関係. (a) スペクトルピーク強度(A)とスペク
トル中心強度(B)の説明. (b) αとA/Bの関係.
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2
-6 -4 -2 0 2 4 6
Δλ(nm)
Signal Intensity (arb. unit)
A B
0 1 2 3 4 5 6 7
1 1.2 1.4 1.6 1.8 2 2.2
A/B
α
α対A/B 対応曲線 (a)
(b)
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図3.16. フィッティング可能なαの最大値(1.79)と最小値(1.64)の評価. Δλpeakは固定(2.57 nm).
図3.17 フィッティング可能なΔλpeakの最大値(2.63 nm)と最小値(2.53 nm)の評価.
αは固定(1.71).
α=1.64
α=1.79 0
0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
-4 -3 -2 -1 0
α=1.69
Δλ(nm)
Signal Intensity (arb. unit))
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
-4.0 -3.8 -3.6 -3.4 -3.2 -3.0 -2.8 -2.6 -2.4 -2.2 -2.0 -1.8 -1.6
Signal Intensity (arb. unit)) Δλpeak=2.63nm
Δλpeak=2.53nm
Δλpeak=2.57nm
Δλ(nm)
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図3.18 Δλpeak, αと電子密度, 電子温度の関係
0.92 0.94 0.96 0.98 1 1.02 1.04 1.06 1.08 1.1 1.12
4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 4.6 4.7 4.8 4.9 5 5.1 Te(eV)
ne(×1022m‐3) (Δλpeak, α) = (2.53, 1.64)
(2.53, 1.71)
(2.53, 1.79)
(2.57, 1.79) (2.57, 1.71)
(2.57, 1.64)
(2.63, 1.64)
(2.63, 1.71)
(2.63, 1.79)
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次に, 測定密度下限について考察する. 本研究で用いた ICCD カメラにおいて, フ ォトカソード(量子効率ε= 35% at 532 nm)に入射した信号光は, 光電子に変換され, マイクロチャネルプレート(MCP) で約 104倍に増幅された後, フォスファーで再び光 に変換されて, ファイバーカプリングにより CCD 素子の各ピクセル内に電子(以下 では, 電子数の単位に electrons を用いる)として蓄えられる. フォトカソ-ドで発生 した1個の光電子は, 最終的に上記の増倍・変換過程を通じて, 約240 electrons(最大 ゲインでは600 electrons)となる. 図3.11(b)の信号例で, 差波長=2.5 nm での波長方 向1ピクセル(波長幅43 pm)での信号強度を見積もってみる. レーザーの有効エネ ルギー2.3 mJ, 電子密度4.6×1022 m-3, 散乱長55 m(これは, 半径方向にCCD画素で 10ピクセルに相当), 受光立体角0.11 sr, 受光系透過率0.1, 動的形状因子0.25, ICCD カメラ量子効率0.35の各数値より, レーザー1ショット当りの光電子数は120個と見 積もられる. ピーク波長での波長方向1ピクセル(空間方向には10ピクセル)の受光 の割合はこれの約1%である. 信号は, 2000ショットにわたり積算しているので, 光電 子数としては, 2400個となる. CCD上の電子数としては, これの240倍として, 5.8×105
electrons となる. 信号のショットノイズを決めるのは, 光電面での光電子数の平方根
であり, ショットノイズはCCD上では, Nsh=12000 electrons となる. 暗電流(1ピクセ
ル当り0.75 electrons/sec)を10ピクセルで200秒積算することになるので, 総電荷量
は1500 electrons でその揺らぎ(暗電流ノイズ)はND=39 electrons となる. もう一つ の主なノイズ源は, ICCD カメラの読み出しノイズであり, これは 1 ピクセル当り 8 electrons なので, 10ピクセルでは10の平方根倍してNR=25 electrons である. 明らか に, Nsh >> ND~NRであり, SN比は約50となる. このSN比の見積り値は, 図3.11(b)の 実測値の揺らぎの程度と矛盾しない. 電子密度が100分の1以下の1020 m-3 となっ ても, ショットノイズが主なノイズ源であることに変わりはない. ただし, SN 比を 10 程度に高めるため, 蓄積ショット数を増やしたり, 波長方向の分解能を落とした り(電子密度 1020 m-3 では非協同的散乱領域に入りスペクトルはガウス型分布とな
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るので, 図3.11ほどの波長分解能は必要ない)といった工夫は必要である. 本研究で 測定した時刻(t=25 ns)は, 図3.9から分かるように, 放電電流が減少し, プラズマ が再結合する過程である. 放電電流が増加する時刻(0<t <10 ns)では, 陽極から陰 極に向けて高速で移動する発光領域(正ストリーマヘッド)が観測される. ストリー ヘッドを測定対象するためには, 電子密度 1018 m-3 までの計測を可能とする必要が ある. 電子密度 1018 m-3 の測定を行うとすると, スペクトル半値部で 1 チャンネル
(空間方向に10 pixel, 波長方向に1 pixel)に期待される光電子数は10-4個程度と極め て小さい. この場合, 空間方向に20 pixel, 波長方向に10 pixelのbinningを行うとして,
12000ショット(約20分)の積算をおこなうことで, SN~5を達成することが可能と
なる.
3.6 まとめ
トムソン散乱計測法を非平衡大気圧プラズマへ適用する第一歩として, CCDプラズ マを対象に計測を行った. 放電電極形状の最適化や, 電圧の高速立ち上がりが可能な 放電回路の構築などにより, 放電発生の時間空間的ばらつきを十分に抑えた. これに より, 多数回ショットによる繰り返し計測を可能とし, 十分な SN 比での LTS 計測を 実現した. 更には十分な時間空間分解能を持つ高い感度の受光系を開発することによ り, 高い精度での2次元的な電子密度・電子温度分布の測定を可能とした.
得られた結果について, 様々な角度からその妥当性を調査した. 逆制動放射加熱に よるレーザー吸収の影響は, 計算による見積もり, 実験結果の両面から, 無視できる ことを示した. 本研究結果では, LTS スペクトルはすべて協同的散乱領域にあり, 電 子密度・電子温度の決定は, 電子スペクトル形状のみから実行でき, その誤差は最大 でも±10%以内であることを示した. 電子密度に関しては, シュタルク広がり幅を利 用した別手法での計測も行った. その結果はLTS計測結果と矛盾しないものであった.
これらの結果から, LTS 法が大気圧非平衡プラズマの優れた計測手法であることを示
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した. さらに, 同システムを用いた時の検出密度下限について検討を行い, 1018 m-3 の 電子密度まで測定できることを示した. このことは, これまで十分な計測が行われて こなかった, ストリーマフェイズでのLTS計測の可能性を示唆するものである.
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