DG II vbc n
5.1 AF を三相接続時の高調波抑制法 .1 AF を三相接続時の制御の指標
第4章で示したように,AFが二相接続されている場合には,すべての高調波電流 を∆接続された負荷および単相AF内を介して環流させ,その∆結線外への流出抑 制が可能となる。したがって,AFを三相接続時においては高調波電流抑制という目 的の他に,異なる指標がなければAFの動作を一意に決定することができない。以下 では,AF三相接続時の動作を決定するための二つの指標を示す。
相電流も含めた高調波電流抑制を行う場合
本論の目的は ∆接続負荷の外部へ流出する高調波電流を抑制することであるが,
AFがすべての相に接続された場合,∆接続負荷の相電流の高調波電流も抑制可能で ある。この動作は,各AF近傍の高調波電流を補償する従来法で達成できる。この方 法の利点の一つは,各単相負荷が発生する高調波電流を各負荷の近傍で抑制するため,
電力品質改善効果が最も高い点である。その他の利点として,この方法では∆接続負
荷を環流する電流が発生しないため,環流電流に伴う損失を低減可能である。環流電 流に伴う損失としては,送配電線の抵抗成分による損失や,柱上変圧器における損失 などが挙げられる。欠点は,すべての高調波電流を近傍で補償するため,AFが必要と する容量は最も大きいことである。
環流電流を除いた高調波抑制を行う場合
∆接続負荷の外部へ流出する高調波電流のみに着目した場合,その∆結線内を環流 する高調波電流は問題とならない。そこで,元々環流している高調波成分を除いて高 調波補償を行うことで,最小限のAF出力で目的が達成可能となる。この方法を用い た場合,∆接続負荷を環流する電流は残留することになるが,AFの動作によって増 加することはないため大きな問題にはならないと考えられる。また,環流電流を補償 しないことで,各AFの出力電流が小さくなるため,AFの損失を小さくすることが 可能であることも利点の一つである。
5.1.2 環流電流を除いた高調波抑制の実験
本研究では,DGが十分な余剰容量を有すると仮定しているため,容量が不足するこ とを考慮していない。しかしながら,実際にはDGの容量は有限であるため,限られ た電力容量で高調波抑制を行う必要がある。したがって,高調波抑制に必要な所要容 量は小さいことが望ましい。そこで,本節では5.1.1節で述べた「環流電流を除いた高 調波抑制」に着目し,どの程度の電力容量低減効果があるのかを実験により確認する。
これまでに述べたように,負荷平衡状態においては3次高調波電流は∆接続負荷を 環流することでその流出が抑制される。また,逆相·正相成分のみから成る5·7次高 調波電流は,∆接続負荷を環流せず,外部に流出する電流となる。したがって負荷平 衡時において,3次高調波を補償せず,5·7次高調波成分のみを補償することで,環流 電流を除いた高調波抑制が達成できる。
本実験におけるAFの動作は以下の二種類である。
従来法 · · · 近傍に接続された負荷が発生するすべての高調波を抑制
周波数制限 · · · 3次高調波を除いて,近傍負荷からのすべての高調波電流を抑制
(V) 0 350
-350 Line voltage (vab, vbc, vca)
(A) 0 5
-5 Line current (ipa, ipb, ipc)
(A) 0 5
-5 Compensation current (iAF I) (a) No compensation
(A) 0 5
-5 Line current (ipa, ipb, ipc)
(A) 0 5
-5 Compensation current (iAF I) (b) Conventional control
(A) 0 5
-5 Line current (ipa, ipb, ipc)
(A) 0 5
-5 10 ms Compensation current (iAF I) (c) Frequency limitation control
vab vbc vca
ipa ipb ipc
図5.1 実験結果
表5.1 三相変圧器一次電流の次数別高調波電流量とTHD(図5.1)
current i3 (A) i5 (A) i7 (A) THD (%)
ipa 0.08 0.58 0.09 27.6
(a) No compensation ipb 0.16 0.65 0.16 33.3
ipc 0.15 0.51 0.49 27.1
ipa 0.09 0.04 0.08 5.4 ( - 80.4%) (b) Conventional control ipb 0.10 0.03 0.06 5.2 ( - 84.4%) ipc 0.02 0.08 0.04 4.2 ( - 84.5%) ipa 0.05 0.05 0.01 3.2 ( - 88.4%) (c) Proposed control ipb 0.17 0.09 0.02 8.7 ( - 73.9%) ipc 0.18 0.07 0.05 8.9 ( - 67.1%)
図5.1は,実験回路における(a)AF動作前,(b)従来動作後,(c)周波数制限動作 後における三相変圧器の一次電流波形ipa,ipb,ipcとAF出力電流波形iAF Iを示す。
(a)AF動作前において,すべての線電流が大きく歪んでおり,ipa,ipb,ipcのTHD はそれぞれ27.6%,33.3%,27.1%であった。また,線電流のすべての波形がほぼ同一 の波形となっていることから,負荷平衡に近い状態であることが確認できる。(b)従 来法動作において,線電流の波形が正弦波形状に改善している。このときのipa,ipb, ipcのTHDはそれぞれ5.4%,5.2%,4.2% であり,AF動作前と比較して大きく低減 されている。(c)従来法動作においても,線電流の波形がほぼ正弦波形状に改善して いる。しかしながら,ipa,ipb,ipcのTHDはそれぞれ3.2%,8.7%,8.9% と,従来 動作の結果と比較してipb,ipcのTHDが大きい値となった。
表5.1は,三相変圧器一次電流の各次高調波成分と THDをまとめたものである。
5・7次調波の実験結果は,従来法と周波数制限法の間で大きな差異がない。一方,3 次高調波電流に関して,周波数制限法のipb,ipc には従来法よりも大きな3次高調波 電流が含まれている。その理由は,使用した負荷が完全な平衡状態ではないことによ り,3次高調波の特性が異なっていたためである。(a)と(c)の3次高調波の値に着 目するとほぼ等しい結果となっていることがわかる。すなわち,正確な負荷平衡であ れば,(c)に含まれる3次高調波電流はゼロとなり,従来法と同等の線電流波形にな ると考えられる。
補償電流波形の振幅に着目すると,従来法よりも周波数制限の方が小さくなってい る。(b)従来法,(c)周波数制限の時の補償電流はそれぞれ(b)1.82 A,(c)0.78 A であり,周波数制限時は従来法に対して42%に低減された。単相ダイオード負荷にお いて3次高調波電流の発生量はもっとも多いため,環流電流を補償しないことは容量 低減効果が高いと言える。
以上より,負荷平衡状態における単相高調波補償に関して,以下の結論が得られた。
• 線電流の高調波電流に着目した場合,∆接続負荷を環流する電流を補償せずと も,補償した場合と同等の高調波補償効果を得ることが可能
• 環流電流の補償を制限することで,補償電流の大幅な低減が可能
最後に,本実験においては制御の簡易化のため平衡負荷を使用したが,不平衡負荷 にも対応する場合には各AFの制御指令値は以下のように設定される。
iAF I =iLab h−izero h iAF II =iLbc h−izero h iAF III =iLca h−izero h
ただし,izero hは負荷が発生する高調波電流の零総成分を表し,以下式で与えられる。
izero h= iLab h+iLbc h+iLca h
3 (5.1)