DG II vbc n
4.4 所要容量比較
本項で,従来法と提案法における高調波補償に要する電力容量について検討する。
三相系統への高調波電流の流出抑制を目的とし,図4.1(b)におけるisa, isb, isc に含 まれる高調波成分を除去するために必要な容量を考える。AFの台数は,上記目的を 達成可能であり,かつ可能な限り少ない台数とする。本検討において,系統電圧には 高調波成分が含まれていないものとし,また,考慮する高調波成分は単相負荷が発生 する中で支配的な3次,5次,および 7次の成分のみとする。まず,以下に従来法お よび提案法使用時の容量計算式を示す。
4.4.1 従来法の所要容量
従来法を用いた場合,高調波電流が三相系統に流出することを抑制するためには,
すべての負荷にAFを接続する必要がある。すなわち,図4.1(b)の回路において,b-c 相間にもAFを接続しなければならないため,三つのDGが必要となる。このとき必 要な電力容量は,各負荷が生成する高調波電流と系統電圧(100 V)の積で表すことが できる。したがって,従来法で必要となる電力容量Sconvを各線間に接続されたAF の電力容量の和とすると,Sconvは以下式で表される。
Sconv =Sc ab+Sc bc +Sc ca
=ILab h×Vab′ +ILbc h×Vbc′ +ILca h ×Vca′ (4.20) このとき,Sc ab,Sc bc,およびSc caは従来法適用時におけるa-b,b-c,およびc-a 相間に接続されたAFの容量をそれぞれ示す。ここで,ILab hは,ILabの3次高調波 成分ILab 3, 5次高調波成分ILab 5, および7次高調波成分ILab 7 を用いて以下式で表 されるものとする。
ILab h =
√
ILab 32 +ILab 52 +ILab 72 (4.21)
ILbc h,ILca h についても同様とする。
4.4.2 提案法の所要容量
提案法を用いた場合,4.2で述べたように,AFが二相に接続されていれば目的は達 成できる。このときのトータル所要容量Spropは,二台のAFが接続される相によっ て異なる。例として,図4.1(b)のようにa-b相間とc-a相間にAFが接続されている 場合を考える。このとき,Spropは以下の式で表される。
Sprop =Sp ab+Sp ca (4.22)
ただし,Sp ab およびSp caは,提案法使用時における,a-b相間およびc-a相間に接 続されたAFの所要容量をそれぞれ示す。
以下,Sp ab に着目し,その計算法について示す。まず,5 次および7 次高調波補 償のための所要容量について考える。三相回路の負荷平衡時において,5次および7
次高調波電流はそれぞれ逆相および正相電流となる。そこで,iLab 5 とiLbc 5および iLab 7とiLbc 7の位相差が 2π3 であるとすると,IAF Iの5次高調波成分IAF I 5 と7次 高調波成分IAF I 7 はそれぞれ以下式で表される。
IAF I 5 =
√
ILab 52 +ILbc 52 +ILab 5×ILbc 5 (4.23)
IAF I 7 =
√
ILab 72 +ILbc 72 +ILab 7×ILbc 7 (4.24) (4.23)式と(4.24)式からわかるように,提案法を用いたAFが出力する5次および7 次高調波電流は自相の負荷電流iLab h による成分だけでなく,他相の負荷電流iLbc h の成分を含む。結果として,この場合はiLbc hが零である場合を除いて,従来法より も大きくなる。
次に,3次高調波補償のための所要容量ついて考える。三相回路の負荷平衡時にお いて,各単相負荷から発生する3次高調波電流は同位相となる。したがって,iLab 3
とiLbc 3の位相が等しいものとすると,IAF I 3 は以下式で表せる。
IAF I 3 =|ILab 3−ILbc 3| (4.25)
(4.25)式からわかるように,提案法における補償電流の3 次高調波成分はILab 3 と
ILbc 3 の実効値の差分によって与えられる。したがって,負荷が平衡状態に近いほど
補償電流は小さくなり,完全な負荷平衡状態では零となる。これは,3次高調波電流の 多くが∆接続負荷を環流するので,AFが補償せずとも三相系統に流出しないためで ある。
最終的に,iLabに接続されているAFの所要容量Sp abは,上記のIAF I 3,IAF I 5, IAF I 7 を用いて
Sp ab =
√
IAF I 32 +IAF I 52 +IAF I 72 ×Vab′ (4.26) と表せる。
4.4.3 比較結果
前項で得られた式を用いて,従来法と提案法の所要容量比較を行う。n次高調波電 流の実効値は,高調波規格「JIS C 61000-3-2」におけるクラス D機器の高調波限度
値を適用した。クラスDに区分される機器としてはパソコンやテレビなどがあり,本 研究が対象とする住宅負荷として一般的な負荷が含まれる。クラスDにおける3次,
5次,7次高調波電流の限度値は基本波電流に対する比で定められており,それぞれ
78.2%,43.7%,23.0%である。計算に使用する電圧は低圧系統を対象としているこ
とから100 Vとした。また,各負荷電流の基本波電流実効値について,ILbc f および
ILca f を次式で定義する。
ILbc f =k1×ILab f (4.27)
ILca f =k2×ILab f (4.28)
以上の条件で所要容量を計算する。
従来法使用時におけるab相に接続されたAFの所要容量Scab は(4.21)式に基づい て以下のように表される。
Sc ab h =
√
ILab 32 +ILab 52 +ILab 72 ×Vab′
=
√(78.2 100
)2
+
(43.7 100
)2
+
(23.0 100
)2
×ILab f ×Vab′
≈0.925×ILab f×Vab′ (4.29)
同様にして,Sc bc,Sc caも以下のように求められる。
Scbc ≈0.925×k1×ILab f×Vbc′ (4.30) Scca ≈0.925×k2×ILab f×Vca′ (4.31)
(4.20)式に示すように,以上の各AFの容量を足し合わせることで従来法における所
要容量Sconvが導出できる。
提案法使用時でbc相間にAFが接続されていない場合において,ab相に接続され たAFの所要容量Sc abは(4.23)–(4.26)式に基づいて以下のように表される。
Sp ab =
√
IAF 32 +IAF 52 +IAF 72
=
√
ILab 32 +ILbc 32 −2×ILab 32 ×ILbc 32 ×Vab′
=
√(8553.93 10000
)
×(1 +k21)− 9791.79
10000 k1×ILab f×Vab′
≈
√8554k21−9792k1+ 8554
100 ×ILab f ×Vab′ (4.32)
表4.1 従来法と提案法の所要容量
Phases with AF
Required Power (VA)
Sc ab 0.925ILab f ×100 Conv.
method all phases Sc bc 0.925k1ILab f×100 Sc ca 0.925k2ILab f×100 a-b & b-c Sp ab
√8554×k22−9792×k2+8554
105 ×ILab f ×100
Sp bc
√8554×k21−9792×k1×k2+8554×k22
105 ×ILab f ×100
Prop. b-c & c-a Sp bc
√8554×k21−9792×k1+8554
105 ×ILab f ×100
method Sp ca
√8554×k22−9792×k2+8554
105 ×ILab f ×100
c-a & a-b Sp ca
√8554×k21−9792×k1×k2+8554×k22
105 ×ILab f ×100
Sp ab
√8554×k21−9792×k1+8554
105 ×ILab f ×100
他の条件における,AFの所要容量も同様の計算により求めることができる。
以上の計算により得られた各条件ごとのAF所要容量をまとめたものが表4.1であ る。表4.1よりわかるように,提案法における個々のAFの所要容量はAFが接続さ れる位置によって異なる。以下では,図4.1(b)と同様にa-bおよびc-a相間に提案法 の適用されたAFが接続されている場合を比較対象として検討する。従来法と提案法 におけるa-bおよびc-a相間のAFの所要容量比は以下式で表される。
Sp ab Sc ab ≈√
1 +k1(k1−1.145) (4.33)
Sp ca
Sc ca ≈
√ 1 + k1
k2 (k1
k2 −1.145 )
(4.34) また,高調波補償に必要なDGの総容量の比率は,(4.20)式および(4.22)式より
Sprop Sconv
= Sp ca+Sp ab Sc ab+Sc bc+Sc ca
(4.35) となる。
図4.4は,負荷の変化に対する,提案法と従来法の所要容量比の変化を示す。ただ し,k1 は1 に固定し,k2 のみを0.7から1.3まで変化させた。このときの負荷不平 衡率は,k2 が0.7および1.3のときに最大となり,その値は33%となる。a-b相間の AFの容量比について,これはk1 のみに依存しているため一定値(0.92)となってい
Requiredpowerratio 1.4
1.0
0.0
0.7 0.8 0.9 1.0 1.1 1.2 1.3
k2
: Sp ab/Sc ab : Sp ca/Sc ca : Sprop/Sconv
図4.4 従来法と提案法の所要容量比(k1= 1)
る。したがって,提案法によりa-b相間のAFの所要容量は8% 減少する。c-a相間 のAFの容量比について,k2 の変化に応じて大きく変化することがわかる。k2 = 0.7 のとき容量比は約1.19であり,従来法と比較して提案法は19 %の容量増加となる。
一方で,k2 = 1.3のとき容量比は約0.84であり,従来法と比較して提案法は16 %の 容量低減となる。総容量について,k2に応じて変化しているが,一様に0.65程度の値 となることがわかる。したがって,提案法を用いることで高調波補償に必要なAFの 総容量は35%低減可能となる。