DG II vbc n
5.2 高調波最小化制御
補償電流波形の振幅に着目すると,従来法よりも周波数制限の方が小さくなってい る。(b)従来法,(c)周波数制限の時の補償電流はそれぞれ(b)1.82 A,(c)0.78 A であり,周波数制限時は従来法に対して42%に低減された。単相ダイオード負荷にお いて3次高調波電流の発生量はもっとも多いため,環流電流を補償しないことは容量 低減効果が高いと言える。
以上より,負荷平衡状態における単相高調波補償に関して,以下の結論が得られた。
• 線電流の高調波電流に着目した場合,∆接続負荷を環流する電流を補償せずと も,補償した場合と同等の高調波補償効果を得ることが可能
• 環流電流の補償を制限することで,補償電流の大幅な低減が可能
最後に,本実験においては制御の簡易化のため平衡負荷を使用したが,不平衡負荷 にも対応する場合には各AFの制御指令値は以下のように設定される。
iAF I =iLab h−izero h iAF II =iLbc h−izero h iAF III =iLca h−izero h
ただし,izero hは負荷が発生する高調波電流の零総成分を表し,以下式で与えられる。
izero h= iLab h+iLbc h+iLca h
3 (5.1)
表5.2 3章,4章,および5.1.2にて提案した接続状況別のAF動作
Output current of each AF
Active AF AF I AF I & AF II AF I & AF II & AF III iAF I iLab h− ibc h+ica h
2 iLab h−ica h iLab h− iLab h+iLbc h+iLca h
3
iAF II - iLbc h−ica h iLbc h− iLab h+iLbc h+iLca h
3
iAF III - - iLca h− iLab h+iLbc h+iLca h
3
5.2.1 提案制御の詳細と動作
高調波最小化制御を適用時,AFの出力電流指令値は以下式で与えられる。
i∗AF I h =
∑∞ n=2
(isa n−isb n)×N ×Ks (5.2)
i∗AF II h =
∑∞ n=2
(isb n−isc n)×N ×Ks (5.3)
i∗AF III h =
∑∞ n=2
(isc n−isa n)×N ×Ks (5.4)
N は三相系統と単相負荷との間に接続される柱上変圧器の巻線比を示し,Ksはフィー ドバックゲインを示す。N は,柱上変圧器を省略した本研究の検討回路の場合は1と なる。上式からわかるように,提案法の指令値はすべての次数調波において共通の式 で表される。したがって,(5.2)–(5.4)式は以下のように書き換えることができる。
i∗AF I h = (isa h−isb h)×N ×Ks (5.5)
i∗AF II h = (isb h−isc h)×N ×Ks (5.6)
i∗AF III h = (isc h−isa h)×N ×Ks (5.7)
表5.2は,3章,4章,および5.1.2でそれぞれ提案した制御法の動作をまとめたも のである。以下では,提案制御法が表5.2のすべての制御法を包含していることを確 認する。また,以下ではN = 1として議論を行う。
isa
isb
isc iLab iLbc iLca
iab
ibc
ica AF I
AF II AF III
iAF I
iAF II
iAF III
+ –
+ –
+ –
+ – – + – +
図5.2 三つのAFの出力電流と各電流の関係.
一つのAFが動作時の挙動
AF Iのみが動作している状況を考える。図 5.2は実験回路の電流フロー示す。図
5.2においてiAF II およびiAF III が零であることを考慮すると,(5.5)式は以下のよう
に変形できる。
iAF I h = (isa h−isb h)×Ks
=Ks× {2 (iLab h−iAF I h)−iLbc h−iLca h} (5.8)
さらに,iAF I h について解くと以下式が得られる。
iAF I h = 2Ks
2Ks+ 1iLab h− Ks
2Ks+ 1(iLbc h+iLca h) (5.9) Ksが1よりも十分大きい値に設定されているとき,定常状態におけるiAF I h が得ら れ,以下式となる。
iAF I h =iLab h− iLbc h+iLca h
2 (5.10)
これは,表5.2に示されるように,3.6.3にて提案した動作を実現している。図5.3は AF Iのみが動作する際の高調波電流経路を示す。
isa
isb
isc
iLab
iLbc iLca
iab
ibc
ica AF
I iAF I
: iLbc h+i2 Lca h
図5.3 提案法を適用したAFが一つ動作している時の高調波電流計路
本動作の特徴として,一次電流の高調波成分は以下式のように得られる。
ipa h =−3iLbc h+iLca h
2 ×N′ (5.11)
ipb h= 0 (5.12)
ipc h= 3iLbc h+iLca h
2 ×N′ (5.13)
ただし,N′ は三相変圧器の変圧比である。上式からわかるように,提案法を適用し たAFが一つだけ動作しているとき,三相の一次電流のうち一相だけ高調波電流が零 になる。したがって,提案法が正しく動作しているかは,三相変圧器一次電流を確認 することで判断できる。すなわち,三相の中で一つの相が正弦波形状になっていれば,
意図した動作になっていると言える。
二つのAFが動作時の挙動
AF IおよびAF IIが動作している状況を考える。図5.4は検討回路において,AF I
とAF IIが提案動作を行った時の高調波電流の挙動を示す。図5.4に示されるように,
4章で述べた高調波環流制御と同様の動作となる。
以下,提案法を適用したAFを二相接続時に高調波環流制御が実現できることを数 式的に説明する。前項と同様に,図5.2においてiAF III が零であることを考慮し,提 案法における各AFの出力電流指令(5.5)式および(5.6)式を変形すると以下の式が得
isa
isb
isc
iLab
iLbc iLca
iab
ibc
ica DG
I
DG II
iAF I
iAF II
: iLab h−iLca h : iLbc h−iLca h
: iLca h
図5.4 提案法を適用したAFが二つ動作している時の高調波電流計路
られる。
iAF I h = 2Ks
2Ks+ 1iLab h− Ks
2Ks+ 1(iLbc h+iLca h −iAF II h) (5.14) iAF II h = 2Ks
2Ks+ 1iLbc h− Ks
2Ks+ 1(iLca h +iLab h−iAF I h) (5.15) (5.15)式を(5.14)式に代入し,iAF I hについて解くと以下式のようになる。
iAF I h = 4Ks2+ 2Ks
3Ks2+ 4Ks+ 1iLab h− 2Ks2+Ks
3Ks2+ 4Ks+ 1(iLbc h+iLca h) + 4Ks2+ 2Ks
3Ks2+ 4Ks+ 1iLbc h− Ks2
3Ks2+ 4Ks+ 1(iLca h+iLab h) (5.16) Ksが1よりも十分大きい値に設定されているとき,定常状態におけるiAF I h が得ら れ,以下式となる。
iAF I h = 4
3iLab h− 2
3(iLbc h+iLca h) +4
3iLbc h− 1
3(iLca h+iLab h)
=iLab h−iLca h (5.17)
同様にして,(5.14)式を(5.15)式に代入することで,iAF II hも求めることができ,以 下のようになる。
iAF II h =iLbc h−iLca h (5.18)
isa
isb
isc
iLab iLbc
iLca
iab
ibc
ica
AF I
AF II AF
III iAF I
iAF II
iAF III
: iLab h−izero h
: iLbc h−izero h
: iLca h−izero h : izero h
図5.5 提案法を適用したAFが三つ動作している時の高調波電流計路
これは,表5.2に示されるように,高調波環流制御と同様の動作となる。以上より,提 案法を適用したAFを二相接続した場合には,高調波環流制御が達成できることが示 された。
三つのAFが動作時の挙動
AF I,AF II,およびAF IIIが動作している状況を考える。図5.5は実験システムに おいてAF I,AF II,およびAF IIIが提案動作を行った時の,高調波電流の挙動を示 す。図5.5に示されるように,5.1.1節にて述べた∆abcから流出する成分のみを補償 する動作となる。負荷が発生する高調波電流の零相成分はAFに吸収されず,三つの 単相負荷により構成される∆結線内を環流する(図5.5中の緑矢印)。
以下,提案法を適用したAFを三相接続時に,上記動作が実現できることを説明す る。まず,提案法におけるAF Iの出力電流指令(5.5)式を以下のように変形する。
iAF I h = 2Ks
2Ks+ 1iLab h− Ks
2Ks+ 1(iLbc h+iLca h) + Ks
2Ks+ 1(iAF II h+iAF III h) (5.19)
ここで,(5.19)式の両辺に 2KKs
s+1iAF I h を加える。
3Ks+ 1
2Ks+ 1iAF I h = 2Ks
2Ks+ 1iLab h− Ks
2Ks+ 1(iLbc h+iLca h) + Ks
2Ks+ 1(iAF I h+iAF II h+iAF III h) (5.20) ところで,(5.5)–(5.7)式からわかるように,定常状態において,各AFの出力電流に は以下の関係式が成立する。
iAF I h+iAF II h+iAF III h = 0 (5.21)
(5.21)式を用いて,(5.20)式をiAF I hについて解くと以下の式が得られる。
iAF I h = 2Ks
3Ks+ 1iLab h− Ks
3Ks+ 1(iLbc h+iLca h) (5.22) Ksが1よりも十分大きい値に設定されているとき,定常状態におけるiAF I h が得ら れ,以下式となる。
iAF I h = 2
3iLab h− 1
3(iLbc h+iLca h)
=iLab h− 1
3(iLab h+iLbc h+iLca h) (5.23)
iAF II hおよびiAF III h も同様にして求めることができ,以下式で表される。
iAF II h =iLbc h− 1
3(iLab h+iLbc h+iLca h) (5.24) iAF III h =iLca h− 1
3(iLab h+iLbc h+iLca h) (5.25) (5.23)–(5.25)式は,表5.2に示される三相接続時のAF出力と等しい。以上より,提 案法を適用したAFを三相接続した場合には,5.1.1節にて述べた,負荷電流の零相成 分を補償しない動作になることが示された。
5.2.2 制御法
図5.6は提案制御法の制御ブロック線図を示す。
高調波電流指令値i∗AF I hは高調波電流検出器を用いて生成する。検出の際には,変 圧器二次電流を入力として三相-二相変換器およびd-q変換器を使用した。
また,基本波電流指令値i∗AF I f はAFの直流側に接続されたコンデンサCFの電圧
isa
isb
isc
isa h
isb h
Harmonic Detector
vab′ vdc
AF I
iAF I
Voltage Controller
Ks 2
Current Controller
Vpwm∗
Inverter
PLL
+ –
i∗AF I h
i∗AF I f
図5.6 高調波最小化制御のブロック線図
vdc を制御するために生成される。
i∗AF I f = (v∗dc−vdc)× vab′
Vab′ ×Kc (5.26)
ただし,Kc は.直流電圧制御のフィードバックゲインを示す。
電流制御器は,インバータのPWM電圧指令値vpwm∗ を生成する。電圧指令値vpwm∗ は,i∗AF I とiAF I の比較により求める。電流制御において,高速応答の実現および定 常偏差を零にするために,比例共振制御器を適用した[98] [107]。vpwm∗ は以下式で与 えられる。
vpwm∗ =
Kp+
∑15 n=f,3,5,...
2Kiωcs s2+ 2ωcs+ωn2
·(iAF I h+iAF I f−iAF I) (5.27)
ただし,Kpは比例ゲイン,Ki は共振制御ゲイン,ωcは共振周波数におけるカットオ フ周波数,ωnは基本波および各次高調波の角周波数をそれぞれ示す。
PLLブロックは,系統電圧に同期した信号を,高調波検出器,電圧制御器,および 電流制御器に送っている。