第 9 章 フランスの事例
2. A65 号線ランゴン - パウ区間( A65 Toll Road )
事業分野 有料道路(新設)
発注者 フランス運輸・インフラ整備・観光・海洋省 事業者 A'Lienor(出資者:Eiffage、SANEF)
事業概要 新設する道路の設計・建設・運営・維持管理・更新を事業者が実施する事業。
発注者が施設を所有する。事業者が利用料金を徴収し、事業者は初期投資を 全て利用料金で回収する。料金設定は定めに従い事業者が行う。
事業類型 独立採算事業
ただし運営期間の売上高が一定額を上回った場合のみ、その一部を発注者 に支払う
発注者から事業者への支払い なし
事業者から発注者への支払い 運営期間:占有料(年 1回、売上高が一定 額を上回った場合、売上高に 応じた金額)
事業期間 2006年契約、2011年運営開始予定 コンセッション期間55年間
事業規模 建設費約6.9億ユーロ
事業者の資金調達額約12.1億ユーロ 資金構成 民間資金100%
ただし、一部区間の工事を公共工事で施工し、完成後に事業者に現物供与す る形での支援が行われた(約5,000万ユーロ、建設費の約7%に相当)。
事業の特徴 ・ 事業者は運営期間中、売上高が計画を上回った場合のみ、売上高に連 動した金額を占有量として支払う取り決めとなっており、将来の事業のメリ ットを、発注者が事業者とシェアできる仕組みとなっている。
・ 発注者から、一部道路を公共工事で施工する形で、現物供与での支援が 行われた。
・ 地元企業対策のため、工事の一定割合を第三者に委託する取り決めとな っている。
・ 開通40年目以降、発注者は事業者に過失がなくとも契約解除が可能とな っている。
① プロジェクトの概要 ア. 発注者
フランス運輸・インフラ整備・観光・海洋省
イ. 事業者 A'Lienor
出資者 Eiffage SA 65%
Societe des Autoroutes du Nord et de l'Est de la France(SANEF) 35%
ウ. その他関係者
オーナー支援 APPR(パリ・ライン・ローヌ高速道路会社 Eiffage子会社)
設計建設 GIE A65
土地買収、全体調整、設計、建設
工事30%相当分を入札により第三者企業に発注
運営 SANEF
料金徴収機材・システム供給、運行管理、情報技術
以上の関係を図示すると以下のとおりである。
Eiffage SA 65%
A'Lienor フランス運輸・インフ
ラ整備・観光・海洋省 agreement
APPR オーナー支援
事業者 出資者
発注者
SANEF 運営事業者 SANEF
35%
GIE A65 設計・建設事業者
エ. 事業費 12億ユーロ
うち工事費は約6.9億ユーロ(事業契約にて、工事総額の30%が208,280,000ユーロと記 載されているものから逆算)
オ. 事業期間
建設期間は44ヶ月
運営期間は55年間
カ. 分野・対象施設 有料道路(新規)。
Langon、Marsan山、Pauを結ぶ150.1キロの長さの片側2車線の有料道路。
キ. 事業実施場所
フランス ジロンド県、ランド県、ピレネーアトランティック県
(出典:A65(HP))
② 事業スキーム
本事業の契約内容は以下のとおりである。なお、注記がある部分以外はPFI/PPP推進協議会の書 籍291の契約の概略翻訳による。
ア. 施設所有
発注者が所有する。
事業契約終了時点にて、事業者は資産を無償で発注者に返却する。
コンセッションに必要な土地は事業者が取得し(発注者が無償で提供するものを除く)、取得次第、
発注者の所有物となる。
イ. 業務範囲、リスク分担
・ 事業者は、道路の設計・建設・資金調達を行う。
291協議会(2010),
一部区間については、発注者が建設を行ったうえで、完工後事業者に引き渡され、事業 者が維持管理・運営・修繕を行う。
事業者は、工事総額の最低30%(2005年1月1日時点において208,280,000ユーロ)
に相当する額の工事を第三者に委託する。協議会の注記によると、この規定は地元企業 対策とのことである。
供用開始の期限は、一部区間は契約発効から 40 ヶ月以内、全体については 46 ヶ月以 内。
・ 事業者は、コンセッションに必要な土地を取得する。事業者は、接収した資産の補償額を負担 する。
なお事業者は、本工事の公益に関する宣言により、土地の取得、公共工事に関する提要 法令・規則から生じる全ての権利、接収行為の受益者に対し付与される権限を授権され る。
・ 事業者は、道路の維持管理・運営・修繕を行う。
事業者は、テレコミュニケーション施設を建設・運営する。事業者はこの運営権を第三者に 付与することができる。
事業者は、テレコミュニケーション施設以外の付帯施設の運営について、原則として競争 入札の手順を経て自由に契約を締結することができる。
・ 発注者は、事業者の義務履行欠如に関して、催告の上改善が図られない場合は、事業者に罰 金の支払いを求めることができる。
・ 事業者は、通行料と、関連する付帯施設に関する利用料の徴収を行う。
・ 事業者は、資産を返却資産・買い取り資産・固有資産の 3 つに分類し、資産台帳を作成し発注 者と合意する。これは発注者の許可対象となる。
ウ. 利用料体系変更の条件・手続きに係る主な規定
・ 通行料金は、規定に従い事業者により毎年決定される。
・ 事業契約にて、通行料金の区分、供用開始時の通行料金の上限、供用開始後の改定料金の 算定方法が規定されている。
供用開始時の料金設定については、事業者は供用開始 2 ヶ月前までに国に届け出るとと もに、供用開始前に官報に公表が必要。
供用開始後の料金改定については、事業者は変更の40日前までに国に届け出るとともに、
10日前までに値上げの範囲を公表しなければならない。
・ インターチェンジの料金は事業者が決定する。
・ 事業者は、予約割引料金の設定、期間により異なる料金の設定、高速道路の品質悪化等をもた
らしうる車両への割増料金の設定、事業者に関連する職員への通行料免除をすることができる。
エ. 支払いメカニズム
a 発注者と事業者の間の支払い 原則なし。
運営期間中、売上高が一定額を上回った場合のみ、1年に1回占有量として、売上高に応じた支 払いを行う。
b 事業者の収入
道路の通行収入、関連する付帯施設に関する利用料
オ. 独占条件に係る主な規定 特に規定は見当たらない。
カ. 事業者の本事業からの退出に係る主な規定
・ コンセッション契約の一部ないし全ての譲渡は、発注者による事前の書面による許可が必要。
キ. 従前の従業員の扱いに関する規定
新規に整備する施設であるため、従前の従業員はない。
ク. 契約解除に関する主な規定
・ 不可抗力により契約履行が困難な場合、発注者・事業者は契約を解除できる。コンセッションの 経済的均衡性の混乱が修復不能となった場合、発注者は契約を解除できる。供用開始から 40 年後の12月31日以降、発注者による一方的な解除をすることができる。これらの際、事業者は 税後の財務フローを現在価値化した金額に控除可能な費用を考慮した金額の支払いを受ける 権利を有する。
・ 事業者が外部民間ファイナンスを完済した場合、発注者による解除が可能。この際、発注者は 補償その他の支払いは行わない。
・ 18ヶ月以上の完工遅延等、事業の中断、保証状が不足する場合、事業者の債務不履行が深刻 な場合、発注者は契約を解除できる。この際、事業者は「発注者の損害金額」-「資産の価格」
を発注者に支払う(マイナスの場合は発注者が支払う)。
ケ. 事業期間終了時の施設状態・引継事項等に関する主な規定
・ 事業者は、コンセッション終了時、コンセッションの構築物・施設・その他付属物を良好な状態な ままで発注者に対し引き渡す。
・ コンセッション終了の 7 年前までに、発注者は事業者と協議し、修繕・更新プログラムとコンセッ
ションの構築物を発注者に引き渡すための事前運営プログラムを取り決める。
以上の条件を表に整理した。
リスクの種類 官 民 備考
資産の所有 ○
新規施設整備 ○
資金調達 △ ○ 一 部 現 物 供 与 に よ る 発 注者の支援あり
需要リスク ○
料金設定権限 △ 事業契約に従う。
料金徴収 ○
運営 ○
維持管理・修繕・更新投資 ○
③ 調達手続き ア. 調達手続き
2003年5月に公募が開始され、まずは資格審査のようなプロセスが行われた。4者が応募し、す べてショートリストされた。その後、環境団体等からの反論、一部合意形成の手間取り等から入札プ ロセスが遅延し、2004年7月にショートリストされた4者に応札要請がなされ、その後競争的対話 が行われてルートに関する最適シナリオの模索が行われた。2005年5月にルートが選択され、そ れに基づいて2005年12月に最終入札が行われた。事業者は2006年6月に決定した。
2003年5月7日 公募開始
2003年6月18日 資格審査のようなプロセスに4者が応募、以下の4者がショー トリストされる。
・ Bilfinger Berger BOT GmBH(代表企業), RAZEL, SAPPR
・ EIFFAGE(代表企業)、 SANEF
・ Bouygue TP(代表企業), DTP Terrassements, Colas, DV Construction, EGIS Projects, HSBC
・ ASF(代表企業), ACESA (スペインAbertis の子会社) 2003年9月 入札を予定されていたが、環境団体等からの反論、一部合意
形成の手間取り等から延期 2004年7月 4者に対して応札を要請
ルートに関する複数のシナリオを提示し、競争的対話を通じて 最適シナリオの模索が行われた。
2005年1月10日 入札
2005年5月 ルートに関するシナリオが選択される 住民に対して縦覧手続きが行われる 2005年8月 選択されたシナリオに基づく応札を要請 2005年12月 最終応札
2006年6月 落札者決定