第 9 章 フランスの事例
1. 有料高速道路 M6(Birmingham Northern Relief Road (M6))
第 10 章 英国の事例
① プロジェクトの概要 ア. 発注者
英国 環境運輸地方省 高速道路庁(Highway Agency)
イ. 事業者
Midland Expressway Ltd
出資者は以下のように契約時から現在まで変化している。
時期 出資者 備考
当初 Kvaerner 50%
Concessioni e Costruzioni Autostrade SpA 50%
1999年10月 Macquarie Infrastructure Projects 50% Kvaerner保有の株式を1.7 億USドルで全て購入 Concessioni e Costruzioni Autostrade SpA 50%
2000年9月 Macquarie Infrastructure Projects 75% Autstrade保有の株式の 50%を、将来(2005年ま で)残りの株式も取得すると いうオプション付で取得 Concessioni e Costruzioni Autostrade SpA 25%
2005年6月 Macquarie Infrastructure Projects 100%
ウ. その他関係者
事業者が、建設事業者CAMBBA Contruction Group(Carillion plc、Alfred McAlpine plc、Balfour
Beatty Construction International、AMEC plcのジョイントベンチャー)と 4.855億ポンドで契
約した322。
また、通行料運用についてはAscom Monetelと契約している。
以上の関係を図示すると以下のとおりである。
Macquarie Infrastructure
Projects 100%
Midland Expressway Highway Agency agreement Ltd
CAMBBA Contruction Group 建設事業者
Carillion plc Alfred McAlpine plc
Balfour Beatty Construction International
AMEC plc 事業者
出資者(2010年11月時点)
発注者
Ascom Monetel 通行量運用事業者
322 Dealogic
エ. 事業費
事業者の初期投資額は約9億ポンドにのぼる323。
事業契約に「事業者は政府資金及び政府保証に頼らず、事業者は自らの費用負担およびリスク において実施する」324という規定があることから、M6 Toll道路自体は事業者の独立採算事業であり、
発注者からの支払いは無いと考えられる。
ただし既存道路の維持管理・更新については、発注者から事業者に支払いが行われており325、 独立採算事業の範囲は新設部分に限定されると思われる。
オ. 事業期間
2001年1月から2054年まで53年間 カ. 分野・対象施設
新設の有料道路が対象施設である。
この有料道路は、ウエストミッドランド大都市圏に位置する、上下3レーンずつの全長約43キロの M6のバイパス道路である。事業者が建設したサービスエリアがあり、アメニティ施設やホテルが立地 している。
出典:Macquarie(HP)
キ. 事業実施場所
英国ウエストミッドランド州バーミンガム
323 M6 Toll(fact sheet)
324 Highway Agency (agreement) 2.1
325 Highway Agency (agreement) 3, Part5 of Schedule 8
出典:Highway Agency(HP)
② 事業スキーム ア. 施設所有
施設は事業者が所有する。
イ. 業務範囲、リスク分担
同事業の基本的なリスク分担は以下のように原則事業者が負うものとなっている。
・ プロジェクトに係るリスクは原則として全て事業者が負担する。ただし、住民反対によりプロジェク ト着手が遅延した間の設計規格変更のリスクは発注者が負った326。
・ 事業者は、事業期間中料金収入を得る権利を有する。M6 Toll道路自体は事業者の独立採算 事業であり、発注者からの支払いは無い。
・ 事業者は、サービスエリアを建設する権利を有する。
・ 事業者は、高速道路庁が用地取得に要した費用を高速道路庁に返済する義務を負う。
ウ. 利用料体系変更の条件・手続き
事業者が、料金レベルを設定する権利を有している。また、事業者は需要に応じていつでも料金を 上げることができる(ただし、2年に1回のレビューを行う)、とされている327328。一方、事業契約や関連
326 USDoT(2007) p.3-9 327 MAR(2010)) 328 MEL FS(2005) p.1
規制において、料金の上限設定等に関する具体的な制約は見受けられない329。
New Road and Street Works Act(NRSWA) 1991年
M6 Toll(Collection of Tolls) Regulations 2003年 エ. 支払いメカニズム
a 発注者と事業者の間の支払い
事業契約に「事業者は政府資金及び政府保証に頼らず、事業者は自らの費用負担およびリスク において実施する」330という規定があり、M6 Toll 道路自体は事業者の独立採算事業であり、発注 者から事業者への支払い・事業者から発注者への支払いは無いと考えられる。
ただし既存道路の更新・維持管理については、発注者から事業者に支払いがある331。
b 事業者の収入
道路の料金収入、その他道路事業から得られる収入 以上の条件を表に整理した。
官 民 備考
資産の所有 ○
新規施設整備 △ ○ 用地取得・住民反対リス
クは官
資金調達 ○
需要リスク ○
料金設定権限 ○
料金徴収 ○
運営 ○
維持管理・修繕・更新投資332 ○
③ 調達手続き ア. 調達手続き
1990年に3者がショートリストに残り、1992年に事業者がMidland Expressway Ltdに決定した。
1990年 3者がショートリストに残り、入札依頼を受ける。
1992年2月28日 事業者がMidland Expressway Ltd.に決定、事業契約締結
イ. その後のプロジェクトの経緯
米国交通省のレポート333によると、本プロジェクトは、地元住民の反対等のために事業者決定からプ
329 MEL FS(2005) p.1
330 Highway Agency (agreement) 2.1
331 Highway Agency (agreement) 3, Part5 of Schedule 8、、New Road and Street Works Act(NRSWA) 1991年、M6 Toll(Collection of Tolls) Regulations 2003年
332 更新投資が含まれるか否かはリスク分担として重要な点であるが、多くの事業ではその点明確ではなく、本調査においてはリスク として区別しなかった。以下全ての事例において同様である。
ロジェクト開始までの間が 8 年間かかり、大幅に遅延した。地元住民の反対の最大のものは通行料の 導入にあり、最高裁への異議申立てにまで及ぶ形となった。
以下の経緯は、特に注釈がある箇所を除きDealogic334のデータベースの情報による。
1992年2月28日 事業者がMidland Expressway Ltd.に決定、事業契約締結 この時点では、シャドウトール方式だった335。
1994年、1995年 公的調査の実施(プロジェクトの詳細及び環境への影響)
1997年 労働党政権下で、有料道路とすることが提案された。
1997年3月 公的調査が終了し、事業者のスキームの一部変更が必要との 勧告がなされた。
(事業者決定から設計着手までの間の期間が長く、その間に高 速道路長により道路設計規格が多数変更されたため、変更の 必要が生じた。)
1998年2月 事業者に変更通知がなされた。なお、この変更にかかるコストへ の影響は高速道路庁が負担した336。
2000年3月上旬 事業者が本事業の設計・建設契約の関心表明を募集
2000年7月28日 建設コンソーシアム 2 者から提案を受領。応札者は以下のとお り。
・ CAMBBA ( Carillion 、 Alfred McAlpine 、 Balfour Beatty、AmecのJV)
・ BCMS(Bouygues、Costain、Mowlem、Skanska.のJV)
2000年5月25日 事業者が資金調達プロセスの第1段階を完了し、環境運輸地方 省が事業者に事業進捗許可を出した。
高速道路庁による用地取得プロセスはこの時点で開始された。
2000年9月29日 政府が本有料道路の資金調達、建設に関する協定を承認し た。
事業者はCAMBBAグループと建設契約を4.855億ポンドで締 結した。
契約では、2001 年春に建設業務の主要な部分が開始され、
2004年の上旬に道路の供用開始の予定となっていた。
2001年1月26日 コンセッション期間開始 2003年12月 完工
2003年 供用開始
④ 資金調達・会計処理 ア. 資金調達方法・担保
リードアレンジャーはAbbey NationalとBank of Americaで、68,475万ポンドの建設融資を引き受 けた。
333 USDoT(2007) p.3-9 334 Dealogic
335 USDoT(2007) p.3-9 336 USDoT(2007) p.3-9
本融資は4つのトランシェからなる。建設融資として63,750万ポンド、Autostradeが出資するため のつなぎ融資として3,675万ポンド、環境運輸地方省(DETR)のための保証金のための800万ポンド、
運転資金として250万ポンドである。
また、14,553万ポンドの株主劣後融資、146.9万ポンドの株主出資がある。
2006年にリファイナンスを行った。リファイナンス時は、借り手は事業者からMacquarie Motorways Group Ltd に 替 わ っ た 。 リ フ ァ イ ナ ン ス 時 の リ ー ド ア レ ン ジ ャ ー は Banco Esprito Santo de Investimento SA(BES)、Banco Santander Central Hispano SA(BSCH)、Calyon、Dresdner Kleinwortであった。報道337によると、リファイナンスによりMacquarieは約3.92億ポンドの回収をする ことができたと見られている。
a 2001年2月 当初融資
借り手:Midland Expressway Ltd
£ 68,475万 資金調達総額
1) £ 63,750万 タームローン(16年9ヶ月間)
2) £ 3,675万 ブリッジファシリティ(3年4ヶ月間)
3) £ 800万 信用枠(3年4ヶ月間)
4) £ 250万 リボルビングクレジット(10年間)
b 2006年8月 リファイナンス
借り手:Macquarie Motorways Group Ltd
£ 10.3億 リファイナンス総額 1) £ 10億 タームローン(9年間)
2) £ 0.3億 リボルビングクレジット(9年間) イ. 事業者の会計処理
2009年6月付の最新の財務諸表によると、以下の資産が有形資産に計上されている。コンセッショ ン権等の無形資産の計上はない。
337 PublicService(2006)
2009年6月付の最新の財務諸表は以下のとおり。
a 貸借対照表(単位:千ドル)
b 損益計算書
c キャッシュフロー計算書
⑤ 成果・課題
ア. 事業実施状況(存続、中止等)
存続
イ. 運営状況 a 需要見込み
当初の交通量の見込み量は明らかになっていない。
OECDのレポート338によると、Macquarieが出資にあたり期待したIRRは、21%であったとのこと である。
338 OECD(2005)
b 実績
米国交通省のレポート339によると、2007 年時点で乗用車の交通量はほぼ当初の需要見込みど おりだが、トラック交通量は当初の需要見込みをはるかに下回っているとのことである。
マッコーリーの公表情報340によると、過去数年間の実績は以下のとおり。交通量は微減傾向にあ り、2010年6月期は2004年12月期の約75%となっている。
2004 12月
2005 6月
2005 12月
2006 6月
2006 12月
2007 6月 交通量
通 行 台 数 ( 台/ 日)
50,941 44,089 45,457 43,572 52,874 45,119 財務状況(百万£)
料金収入 22.0 20.7 25.1 23.5 29.4 28.0
その他収入 1.3 0.6 1.0 1.0 1.1 1.3 運営費用 5.7 5.5 5.7 4.6 4.6 4.0
運営EBITDA 17.5 15.8 20.4 19.8 26.0 25.2
EBITDA マ ー ジン
75% 74% 78% 81% 85% 87%
2007 12月
2008 6月
2008 12月
2009 6月
2009 12月
2010 6月 交通量
通 行 台 数 ( 台/ 日)
46,665 39,843 41,174 36,801 40,252 38,290 財務状況(百万$)
料金収入 29.4 27.9 29.2 26.9 29.9 28.4
その他収入 1.3 1.1 1.4 1.1 1.3 1.2 運営費用 3.8 3.6 3.9 3.8 4.1 3.7
運営EBITDA 26.9 25.4 26.7 24.2 27.2 25.9
EBITDA マ ー ジン
88% 87% 87% 86% 87% 87%
出典:MAR(2010)、MIG(2008)
339 USDoT(2007) p.3-10 340 MAR(2010)、MIG(2008)
50,941
44,089 45,457 43,572 52,874
45,11946,665
39,843 41,174 36,801
40,252 38,290 75% 74% 78% 81% 85% 87% 88% 87% 87% 86% 87% 87%
0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000
2004Dec 2005Jun 2005Dec 2006Jun 2006Dec 2007Jun 2007Dec 2008Jun 2008Dec 2009Jun 2009Dec 2010Jun
(台/日)
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
交通量 EBITDAマージン
c 料金設定
料金設定(一部区間(Main Plazas部分)の昼間の料金)の実績値341は以下のとおり。
2004 年 8月から
2005 年 6月から
2008年1 月から
2008年1 月から
2009年1 月から
2010年3 月から ク ラ ス 1 ( 二 輪 車
等)
£2.00 £2.50 £2.50 £2.50 £2.70 £2.70 クラス2(サロンカ
ー等)
£3.00 £3.50 £4.50 £4.50 £4.70 £5.00 クラス3(サロンカ
ー、トレイラー等)
- £7.00 £8.00 £8.00 £8.40 £9.00 クラス4(バン、バ
ス等)
£6.00 £7.00 £9.00 £9.00 £9.40 £10.00
クラス 5(重量物
運搬車等)
£6.00 £7.00 £9.00 £9.00 £9.40 £10.00
ウ. 発注者への影響
米国交通省のレポート342によると、リファイナンスにより事業者が回収した金額について(約 3.92 億 ポンドとみられている)と、事業者は高速道路庁と、この30%をM6有料道路近隣の公共プロジェクト数 件に再投資することで合意したとされている。マッコーリーの公表情報343によると、この額は1.12億ポン
341 M6 Toll(HP) 342 USDoT(2007) p.3-11 343 MAR(2010)