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スペインにおけるコンセッション方式

1. 概況・法体系

(1) PPP・コンセッション方式の概況

スペインにおけるPPP・コンセッション方式の歴史は比較的古く、1960年代半ばから有料高速道路 事業を中心に多くの制度整備がなされ、2003年には高速道路事業で得られた経験をもとに法律

13/2003号(公共事業コンセッション法)が制定され、高速道路以外の事業分野における民間部門の

公共事業参加を促すための法的枠組みが体系化された。

このように古くからコンセッション方式を行ってきたスペイン国内では、Abertis社やCintra社のよう な世界的に展開する民間事業者が生まれ、両社はスペインやヨーロッパ域内のみならずアフリカやア メリカ大陸諸国においても公共交通関連施設を中心としたコンセッション方式の事業の担い手となって いる。

スペインにおけるコンセッション方式の法的枠組みの整備過程は、以下の通りである。

① スペインにおける有料高速道路コンセッションの始まり

スペインにおける本格的なコンセッション方式の適用が始まるのは、建設・維持・運営を目的と する有料高速道路コンセッション方式の入札手続きに関して定めた1965年の政令第3225/1965 号および19民間事業者の利益に対する公的保証の仕組みを導入した1966年の制度規定移行 である。これらの政策は、産業基盤の整備を主眼とした1964年~1967年の経済・社会発展計画 に基づく外国資本の投資の増加を背景として十分な効果を発揮し、1965年から70年代半ばまで に総延長約2,000kmに及ぶ有料道路コンセッション契約が結ばれた。

② 有料高速道路におけるコンセッション方式の停滞と再推進

しかしながら、政権移行前の二度にわたる石油危機を背景として有料道路のコンセッション方 式の事業に対する公的保証がスペイン財政に与える影響は深刻なものとなっていた。また、1982 年に左派政党である社会労働党(PSOE)が政権を獲得すると、同党は道路投資に民間資金を活 用することに反対し、自治州を含む公共側の主導に「無料高速道路(アウトビア)計画」に基づく無 料高速道路の整備および不採算高速道路の再公営化が推進された。これらの結果、1969年

-2001年における政府から海外の貸し手に支払われた支出の約半分は、高速道路のコンセッショ

ン方式事業/無料高速道路への投資に対する為替保証となり、政府の財政赤字は膨らんでいっ た。

1996年に保守政党である国民党(PP)が政権を獲得すると、統一通貨ユーロの導入を見据え た1997年の新EU条約(アムステルダム条約)内の財政安全協定(安全成長協定)を背景として、

政府は有料道路においてコンセッション方式の事業を改めて推進すべく、税制面での優遇装置 や民間事業者の付帯的な関連事業への進出を認めるなどの施策をとった。この結果、1996年

-2004年の間に総延長約1,000kmの高速道路におけるコンセッション方式の事業が実施され

た。

③ 公共事業コンセッション法による法体系の整備とEU指令への適応

2003年、更なる公的インフラ・サービスへの民間の資金・ノウハウの活用を目的とし、公共事業 コンセッション法が制定された。この法整備により、高速道路以外の事業分野においても民間部 門が公的事業の担い手となる法的な枠組みが体系化された。

また2007年には、EU指令2004/18 号『公共機関による工事・物品・役務等の調達に関する

規定112』に対するスペイン国内の公共契約法規全般の適応を行うべく、上述の公共事業コンセッ ション法の大部分を引き継ぎ、公共事業のコンセッション方式以外の官民間契約に関する総括的 な法規として、法律30/2007号『公共契約法』(Ley 30/2007, de 30 de octubre, de Contratos

del Sector Público、以下公共契約法と表記)が制定された。この公共契約法が、2011年1月現

在のスペイン国内におけるコンセッション方式を含む各種PPP関連契約の基本的な枠組みを規 定するものとなっている。

スペインにおけるコンセッション方式の特徴として、①公共の関与が小さいことと、②民間事業者選 定時のプロセスが入札重視でシンプルであることが挙げられている。それを示したのが、以下の図であ り、PFI先進国といわれる英国と比べると公共側の関与がかなり小さいものであるとしている。

図 5 スペインと英国・ヴィクトリア州(豪国)のコンセッションの特性に関する概念図

(出典)World Bank『Public Private Partnership in Infrastructure 2008』

(2) コンセッション方式の制度的体系

スペイン国内におけるコンセッション方式の運用について規定する法的根拠は、資金調達を除く他 の要素に関しては公共契約法に規定され、資金調達に関する規定に関しては公共事業コンセッション 法が網羅的に規定している。公共契約法および公共事業コンセッション法のコンセッション方式に関連 する規定は下記の通りであり、双方ともに官民間契約に関する文脈の中でコンセッション方式が一つ の契約の形態として規定されている。

112 Directive 2004/18/EC of the European Parliament and of the Council of 31 March 2004 on the coordination of procedures for the award of public works contracts, public supply contracts and public service contracts

 公共契約法 第4編題2

 第1題:総則

 第2題:工事・コンセッション・物品・役務・官民協働の契約に係る特別規定

第1章:工事契約

第2章:公共事業コンセッション契約

第3章:管理運営契約113

第4章:物品契約

第5章:役務契約

第6章:官民間契約

 公共事業コンセッション法 第2編題5114

 第1章:総則(公共契約法へ以降後、廃止)

 第2章:公共事業コンセッションの対象(公共契約法へ以降後、廃止)

 第3章:民間事業者の権利および義務(公共契約法へ以降後、廃止)

 第4章:民間資金の調達

 第5章:コンセッションの終了(公共契約法へ以降後、廃止)

また、長い有料高速道路におけるコンセッション方式の事業の歴史を有する道路分野や、公益性の 高い事業である上下水道分野などでは、料金設定や事業期間の設定などの一部の論点に関して事 業分野に固有の運用・規定が取られているが、原則は他の事業分野と同様に公共契約法に依るものと されている。

2. コンセッション方式の定義及び範囲 (1) コンセッション方式の定義

公共契約法では、コンセッション方式について下記のように官民間契約の一類型として定義されて いる。公共施設の工事を内容に含む契約であることと、利用料金を収受しないシャドー・トール方式が 認められていること、の2点が挙げられる。

 公共契約法 第7条『公共事業コンセッション契約』115

 「1.公共事業コンセッションとは、民間事業者(民間事業者)による公共施設の建築・土木工事 のパフォーマンスに関する契約であり、民間事業者は施設の更新・修繕・機能保全・維持管理 を行い、運営権限のみか、あるいは料金収受権を伴う運営権限を得る」

コンセッション方式の主な要件として、公共契約法からは以下の内容が規定されている。

 建築・土木工事等のハード・サービスを含むこと

113 インフラ施設などのハード・サービスの提供よりも、医療や教育などのソフト・サービスを中心に提供する公共施設の管 理・運営に関する官民間の契約。料金の収受、改良を含む維持更新を含む場合が有り、コンセッションと類似する事業方式

(契約形態)であるが、他の調査対象国との不整合を避けるため本調査では詳細には触れていない。

114 Spain(2007)の制定により、第254章『民間資金の調達』を除き廃止。

115 Spain (2007), Artículo 7 . Contrato de concesión de obras públicas.

 民間事業者による利用料金の収受、または公共施設の管理を通じた収入の獲得

 民間事業者のリスクによる公共施設の機能維持116

 40年(※上下水道事業では75年)を越えない有期の事業期間117 (2) コンセッション方式のバリエーション

公共契約法からは下記の通り、コンセッション方式のバリエーションとして①民間事業者の収益獲得 の方法、②民間事業者への対価支払者、③資金調達元に関して、規定されている。

① 民間事業者の収益獲得の方法(施設利用料金の収受/対象施設の商業的利用)

スペインのコンセッション方式における民間事業者の収益獲得の方法として、施設の本来的な 使用に対する利用料金以外に、公共施設の商業的占用による収益の獲得も認められていると思 われる118。ただし、財務報告上これらの収入はコンセッション方式による収入から区別される必要 がある。

② 民間事業者への対価支払者(利用者/管理当局)119

スペインのコンセッション方式における対価の支払者は、必ずしも施設の利用者に限定されず、

発注者である公共からも業務実施対価を得るといういわゆるシャドー・トールを認めている。ただし、

財務報告上シャドー・トールと利用者からの料金収入は区別される必要がある。

③ 資金調達元(民間/公共)120

スペインのコンセッション方式における資金調達は、原則として民間事業者のリスクにより民間 資金を調達するものとされている。ただし、事業の実現可能性確保や公益上の理由などから、補 助金や公的資金による貸付もみとめられている。121

(3) 対象となる公共施設

前述の公共事業コンセッション法および公共契約法では、対象となる施設について、明確に適用範 囲を定めてはいない。特別規定のある道路や上下水道などは対象として認められているものと考えら れる。また、道路については先述の通り広く活用がなされている。

3. コンセッション方式における事業運営権の認識 (1) 事業運営権の法的認識

スペインにおけるコンセッション方式における事業運営権は、原則として債権的性質の強いものであ ると思われるが、一方で民間事業者の人的要件が契約締結の絶対条件とならないような事業に限り、

116 Spain (2007), Artículo 7 . Contrato de concesión de obras públicas. 「サービスを適切に提供するため、あるいは施設 を活用した経済活動を行うために、必要とされる機能的・技術的な改修および近代化」「経済・社会的な要請に沿って、公共 施設の更新・改良・修繕を行うこと」

117 Spain(2007), Artículo 244. Plazo de las concesiones.「 1.公共事業の建設・運営に関するコンセッションは、40年間を 上限として、事業契約において定められた期間に渡って付与される。2.上下水道コンセッションに関しては、2001720 日政令の規定に基づく水道法第134条117に規定された期間(75年間)を上限とする。

118 Spain (2007), Artículo 238. Retribución por la utilización de la obra 施設利用の料金として、商業区域からの開発か ら生じる収入が示されている。

119 Spain(2007), 「事業の経済的効率性の確保や公益上の理由がある場合、当局もまた公的な資金を(コンセッション事業 のために)供出することができ、その形態は補助金、有償貸付、エクイティーローン、劣後債権などの形がとられる」

120 Spain(2007), Artículo 236. Financiación de las obras.

121 Spain(2007), Artículo 236. Financiación de las obras.