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シーガートマリンターミナル(Seagirt Marine Terminal)(アメリカ)

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第 8 章 米国の事例

5. シーガートマリンターミナル(Seagirt Marine Terminal)(アメリカ)

事業分野 港湾ターミナル(既存の停泊所3つ、新規整備停泊所1つ)

発注者 メリーランド州港湾局

事業者 Ports America Chesapeake(出資者:Highstar Capital)

事業概要 新設する 4 つ目の係留所及びその関連施設の建設とバルチモア港のシーガ ートマリンターミナル全体の運営・維持管理を事業者が実施する事業。事業者 が施設を所有する。

事業者が事業収入を得て、事業者は初期投資(建設費、州への支払い等)を 全て事業収入で回収する。料金設定権をどちらが有するかについての明記は なく不明である。

事業類型 独立採算事業

ただし運営期間のコンテナ取扱量が一定額を上回った場合、取扱量に応じた 金額を発注者に支払う

発注者から事業者への支払い なし

事業者から発注者への支払い 契約時 :約1.4億ドル

運営期間:賃借料 年間3,200万ドル 運営開始後5年目以降、年間 コンテナ取扱量が一定量を上 回った場合、コンテナあたり15 ドル

事業期間 2009年契約

コンセッション期間50年間

事業規模 事業者の資金調達額 約3.34億ドル

事業者から発注者への支払額(初期一括払)約1.4億ドル 建設費等 約1.94億ドル

資金構成 民間資金100%(発注者が非課税歳入担保ボンドを発行、事業者に貸付)

事業の特徴 ・ 事業者は、発注者が事業開始前に有していたターミナルに係る既存契約 をすべて引き継いだ。

・ 新設する係留所の設計の大部分は発注者により行われた。

・ 事業者は運営期間中、コンテナ取扱量に応じた支払いを行う取り決めとな っており、将来ターミナルの利用が増えることによるメリットを、発注者が事 業者とシェアできる仕組みとなっている。

① プロジェクトの概要 ア. 発注者

メリーランド州港湾局

・ 事業者は、メリーランド州交通局(MPA)と契約を行う。メリーランド港湾局はメリーランド州交通庁

(MdTA)の傘下にある機関である。

・ メリーランド州交通庁は、本事業開始前までターミナルの所有者であり、事業者は初度の支払い を交通局に対して行う。

・ メリーランド州(交通庁または港湾局)が、ターミナルの土地を所有する。

・ メリーランド州経済開発公社(MEDCO、メリーランド州が設立した、不動産所有・開発のための 法人)は、本事業のために事業者の代わりに2.49億ドルの歳入担保ボンドを発行した。

イ. 事業者

Ports America Chesapeake 出資者

Ports America Group(Highstar Capitalが100%所有) 100%

ウ. その他関係者

・ 事業者は、新設の停泊所の整備について、McLean Contractor Companyに対して委託してい る。州との契約期限は2014年7月だが、建設業者との期限は2012年に設定された。建設費は 9,800万ドル程度の予定である。217

以上の関係を図示すると以下のとおりである。

217 HC(HP)

Ports America Chesapeake

Highstar Capital

100%

Maryland Port Administration

事業者 発注者

出資者

Ports America Group

100%

Shanghai Zhenhua Heavy Industry Co,

ltd.

McLean Contractor Company 建設業者 agreement Maryland

Transportation Administration

Maryland Economic Development

Corporation

非課税ボンド 発行 初期支払

エ. 事業費218

3.34億USドル

事業者からメリーランド州交通庁への初度の支払い 1.4億ドル

ターミナルの更新費用等その他必要費用 1.94億ドル

オ. 事業期間

50年間。事業契約締結は2009年11月頃

RFQに記載されている条件では、事業期間は最低限30年間とされていた。

カ. 分野・対象施設

港湾ターミナル(既存の停泊所3つ、新規整備停泊所1つ)。

シーガートマリンターミナルは、1990年に供用開始したバルチモア港のコンテナターミナル。面積 約200エーカー。3つの既存の45フィートのコンテナ停泊所(コンテナクレーン7つ、構台12個を 有する)と、事業者が新設する4つ目の50フィートの停泊所(4つのクレーンを有する)、建築物、ゲ ート等からなる。

本事業の背景としてRFQにて、「2014年に完成するパナマ運河の拡張を受け、他の東海岸の港 湾に対する競争力をつけるため、50フィート以上の停泊所を備え、より大型の船舶が停留できるよう にする」219ことが必要と記載されている。

218 WEF(2008) p.102-105

コンセッション開始前は、ターミナルはメリーランド州交通庁が所有し、1990年の供用開始当初か ら港湾局が運営を行ってきた。港湾作業はCares Terminals IncorporatedとPorts America Baltimoreが行っていた。

出典:PoB(2009) キ. 事業実施場所

アメリカ合衆国 メリーランド州 バルチモア市

出典:Google Map

219 MPA(RFQ)

② 事業スキーム ア. 施設所有

・ メリーランド州(交通庁または港湾局)が、ターミナルの土地を所有し、事業期間の間、事業者に リースする。

・ 事業者は、クレーンやその他事業期間にわたりターミナル運営に必要な一切の設備(既存、新 設を含む)を所有し、必要に応じて自ら購入する。

・ 事業期間終了後、全ての設備は州のものとなる。

イ. 業務範囲、リスク分担

本事業の契約内容は以下のとおりである。

・ 事業者は、パナマ運河拡張に伴いより大きな船舶が停泊するに対応できるよう、2014年7月ま でに4つ目にあたる50フィートの停泊所およびそのインフラの整備を行う。ただしRFQの時点 で、メリーランド港湾局とその設計コンサルタントにより設計の9割方が完成されており、事業者 はその書類を活用し、同等の強度および耐用性をそなえ、また州が設定する水準に合致した設 計を行わなければならない220

・ 事業者は、既存のターミナル、新設のターミナルを含むターミナル全ての運営を行う。

 事業者は、メリーランド港湾局が定める要求水準を遵守する221

・ 事業者は、事業期間の間排他的運営権を有する。

 事業者は、すべての事業収入を得る。

 事業者は、現在のコンテナビジネスをシーガートに移動・統合することができる。

 事業者は、システムを維持するコストとタイミングを自由に管理することができる。

 事業者は、適当と考えれば新技術の導入を行うことができる。

・ 事業者は、リースしている設備について、自らの費用負担により現在と同等以上の状態に保たな ければならない。

・ 事業者は、州がこれまで有するターミナルに係る既存契約をすべて引き継ぐ。

ウ. 支払いメカニズム222

a 発注者と事業者の間の支払い

・ 事業者はメリーランド州交通庁に対して、コンセッションに先立ち、1.4億ドルを支払う。RFQ223に よると、州は既存のターミナルへの州の投資費用の償還を行うことを目的とすると記載されてい る。

・ 事業者はメリーランド州交通庁に対して、賃借料として年間3,200万ドル(物価変動により調整)

の支払いを行う。

220 MPA(RFQ) 221 Governor(2009) 222 HC(HP) 223 MPA(RFQ)

・ 事業収入を事業者とメリーランド州交通庁で共有する取り決めとなっている。発注者は、コンセッ ション開始後5年以降、年間50万を超える取り扱いコンテナについて、コンテナあたり15ドル

(物価変動により調整)を事業者から受け取る。

b 事業者の収入 すべての事業収入

エ. 従前の従業員の扱いに関する規定

・ 事業者との規定は不明だが、RFQ224にて、従前のターミナルにおいてクレーンや設備の維持管 理サービスに従事している労働者は州が雇用しており、州は本事業の元でそれらの雇用ができ るだけ多く確保されることを期待すると記載されている。

以上の条件を表に整理した。

リスクの種類 官 民 備考

資産の所有 ○

新規施設整備 ○ 増設部分のみ

資金調達 ○ MEDCOが非課税ボンド

を発行する形で支援する が、返済・担保は事業者 が責任を負う。

需要リスク ○ ただし、一定量を超えた

分の収入は、州と事業者 でシェアする。

料金設定権限 ? ? 不明

料金徴収 ○

運営 ○

維持管理・修繕・更新投資 ○

③ 調達手続き ア. 調達手続き

調達手続きは以下のとおりであった。特に注記がない場合はRFQ225による。

2009年4月15日に公募が開始された。6月30日に2者が資格審査を通過した226。資格審査 を通過した者に対して、守秘義務契約を締結して非公表の文書(州による設計文書、事業者が引き 継ぐ既存契約リスト、事業契約案等を含む)が提示されるとともに、RFO(提案依頼書)が提示される

224 MPA(RFQ) 225 MPA(RFQ) 226 MPA(news)

とされている。

提案書の締め切りは9月4日であり、応募者から提案を受け付けた後州は応募者との交渉に入る とされているが、その対象が1者であるか複数であるかは州が決定できるとされている。

2009年4月15日 公募開始、RFQ公表 2009年5月4日 ターミナル見学 2009年5月18日 参加表明の締め切り 2009年6月8日 2者が資格審査を通過

資格が確認された応募者は以下のとおり227

・ Cares Terminals, Inc/Alinda Capital Partners LLC

・ Ports America Group/Highstar Capital 2009年9月4日 提案締め切り

Best and Final Offerにいたるまで州と応募者間で交渉 2009年11月 事業者決定

資格審査の審査基準は、RFQ228によると以下のとおりである。

・ 事業期間中、ターミナルを安全、効率的かつ生産的に維持管理・運営する能力。この項目には、

実績のある経営チームの提供、最新で効率的なターミナル運営システムの提供・運営、州の要 求水準の遵守、労働組合との協働等を含む。

・ 2014年までに、安全かつ効率的な4番目の停泊所を設計・建設し、クレーンや関連する全ての 設備を調達する能力

・ 本事業で必要とされる全ての資金調達を行うに十分な財務能力

・ メリーランド州に経済的利益をもたらすよう、正確で有意義なターミナルのマーケティングプラン を策定する能力

④ 資金調達・会計処理 ア. 資金調達方法・担保

World Economic Forum、PwCレポート229によると、ボンドはMEDCOを通して非課税ボンドが発 行された。ボンドの債務者は事業者であり、事業者の本事業にかかる株式と資産で担保されている。ボ ンドは、Moody’sによりBaa3に格付けされている230

RFQの時点で、事業者からの要求があれば、メリーランド交通庁や、MEDCO等その他の州の機関 を通じて(MPAからは不可能)、非課税ボンドを発行することで資金調達を支援することが可能であり、

また協力する姿勢であることが示されている231

227 MPA(news) 228 MPA(RFQ)

229 WEF(2008) p.102-105

230 Moody’s(2009.12), Moody’s(2010.1) 231 MPA(RFQ)

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