前述の探索形状に対する線形弾性解析結果から,当該構造物は局部的な応力集中が確 認できるため,軸力と曲げを考慮した断面算定を行う。断面算定では,文献9)では円筒 ラチスシェルの斜材や水平材と行った種類毎に断面を決定することが考えられる。また,
形状最適化時に断面も同時に最適化する同時最適化手法の利用も考えられる。しかし,
自由曲面ラチスシェルの構造特性を分析することに主眼を置くため,ここでは,後述の 方法で断面を一度更新する。自由境界辺の部材の断面算定法の構築や,部材断面と形状 の同時最適化手法は今後の課題としたい。
断面算定での荷重条件として,探索形状に対して表
4.1
の断面(断面算定前)を用い て地震応答解析を実施し,4.2.3
節の地震荷重作成法に従って地震動強さλ
E=2.5
の地震 荷重を作成し,表4.2
の荷重の組み合わせを設計荷重として使用する。4.3.1. 許容圧縮応力度
許容圧縮応力度はラチスシェルの座屈を考慮して定める。全ての部材のうち,最も圧 縮軸応力度の大きい部材を特定部材
(m)
と定義し,特定部材の正規化細長比Λ
e(m)を式(4.3)
より求める。ここで,断面算定用の弾性座屈荷重低減係数α
0は0.5
を用いる。許容圧縮応力度は日本建築学会鋼構造設計規準式
(4.4)
を用いて求め,断面算定での検定式(4.5)
を満たす断面を求める。(m) (m)
0 (m)
y
e lin
cr
Λ N
= α N (4.3)
2 (m)
(m) 2
(m) (m)
2 (m) (m)
1 0.24 4 1.29 1 15
9 1.29
13
e
e cr e
y
e e
Λ for Λ
Λ N
N
for Λ Λ
− ≤
+
=
≥
;
(m) 2
(m)
(m) (m) el y
cr
e cr cr
σ σ
Λ σ N
A
=
=
(4.4)
( ) ( )
(m) ( )
( )
(m) ( )
( ) ( )
( ) ( )
1 1
1
i i
cr i
i y el
cr i
i i
i y i y
N M
σ A N
Z σ
σ A
N M
A σ Z σ
± ≤
−
± ≤
圧縮軸力の場合
引張軸力の場合
(4.5)
74
なお,式中の添字
(i)
は断面を算定する任意の部材i
を指す。例えばA
(i)は部材i
の断面積 である。式
(4.5)
の左辺第2
項の分母には部材に軸力と曲げが作用する際の幾何非線形による曲げ応力度の増幅項が考慮されている。ラチスシェルの幾何形態によっては,シェル全 体の幾何非線形性の影響を受け,曲げ応力が大きく増加する場合がある10,27)。このラチ スシェルの曲げ増幅を考慮し,かつ,過度な軸応力度を回避するために,式
(4.6)
を考慮 する。ここで式(4.5)
および(4.6)
中のN
,M
は断面算定用の荷重に対する発生応力(線形 弾性解析)である。式中の (m)el
σcr は式(4.3)の
Λ
e(m)を用いて定める弾性座屈応力度,σcr(m)は 式(4.4)
のN
crから定める許容圧縮応力度である。なお,式(4.7)
の (m)lin
Ncr , (m) el
Ncr ,Ncr(m)は,
それぞれ,座屈解析から得られた座屈荷重を軸力に換算した線形座屈軸力,弾性座屈軸 力,圧縮強度である。
( ) ( ) ( )
i
0.5
el
cr m i
N
σ A ≤ (4.6)
(m) 1 0(m)
(m) 0(m) 0 0(m)
(m) 0(m)
lin lin
cr
el el lin
cr cr cr
elpl
cr cr
N λ N
N λ N α λ N
N λ N
=
= =
=
(4.7)
式
(4.5)
による断面算定の計算では,外径を保持して部材管厚を0.1mm
刻みで更新する。また,応力上,極端に薄い部材が発生するため外径
D
を用いて,t > D/50
の管厚制 限を設ける。4.3.2. 断面算定結果
管厚分布を図
4.4
に示す。最大管厚はそれぞれ,外周部材で10.2mm
,格子部材で5.5mm
,斜材で
6.0mm
となった。第2
章で固定荷重に対して形状最適化された同じ規模,同じ部材で構成する自由曲面の場合,軸力のみを考慮して断面算定し,その結果(図
2.5
),斜材の最大管厚は
20.5mm
となる。この値に比べると今回の断面算定では斜材の管厚が 大幅に減少する。これは,地震荷重を形状最適化時に考慮することで得られる曲面形状 が大きく変化し,地震時の応力の発生が抑えられたことが原因と考えられる。75
図 4.4管厚分布図 5.5mm
6.0mm
10.2mm
A B
E