88 4.5.4.塑性ヒンジの分布とその N-M 関係
4.5.5. 限界変形の仮定と塑性変形の評価
①軸方向ひずみの評価
前述のように当該構造物は
P2
において,部材中央の塑性化が見られる。竹内らの鋼 管の大歪繰り返し実験による研究30)によれば,1
%の等価軸歪(
軸変形/
初期長さ)
を超え る繰り返し軸変形を受けると鋼管は局部座屈が発生し破断に至ることが,径厚比20~30
-300 -200 -100 0 100 200 300
-0.008 -0.004 0.000 0.004 N[kN]
ε 固定荷重時
P5塑性化
-6 -4 -2 0 2 4 6 8
-0.06 -0.04 -0.02 0.00 0.02 My[kNm]
θyp[rad]
固定荷重時
P5塑性化
-4 -2 0 2 4 6
-0.05-0.04-0.03-0.02-0.010.00 0.01 Mz[kNm]
θzp[rad]
固定荷重 P5塑性化
塑性化
(a) N-ε関係 (b) My-θyp関係 (c) Mz-θzp関係
-600 -400 -200 0 200 400
-0.002 -0.001 0.000 0.001 N[kN
ε 固定荷重時
-100 -50 0 50 100
-0.010 0.000 0.010 0.020 0.030 My[kNm]
θyp[rad]
固定荷重時
-100 -50 0 50 100
-0.020 -0.010 0.000 0.010 Mz[kN]
θzp[rad]
固定荷重時
(a) N-ε関係 (b) My-θyp関係 (c) Mz-θzp関係
-30 -20 -10 0 10 20
-0.003 -0.002 -0.001 0.000 0.001 My[kNm]
θyp[rad]
固定荷重時
-300 -250 -200 -150 -100 -50 0 50
-0.0006 -0.0004 -0.0002 0.0000 0.0002 N[kN]
ε 固定荷重時
(a) N-ε関係 (b) Myp - θyp関係
93
程度の鋼管について示されている。λE
=5.0
では,P2
部材の等価軸ひずみは0.6%
程度で サイクル数も少ない。しかし,径厚比が大きくなるほど破断に至るまでの累積歪が小さ くなる傾向が文献30)に示されているため,径厚比が50
のP2
部材(D:139.8mm, t:2.8mm
) では,設計では注意が必要である。本研究での解析方法では部材の破断や耐力の劣化を 考慮することはできない。このため,等価軸歪が1%までの部材については破断しない
と仮定して分析を行う。②塑性回転角の評価
塑性回転角については鋼管部材の塑性変形能力に関する研究31,32)を参照する。円形鋼 管の塑性回転角は片持ち梁モデルから変形能力評価式が提案され 31),塑性ヒンジの回 転角を片持ち梁の自由端に荷重を載荷したときの降伏回転角
θ
eは次のように定義され ている。また,塑性変形倍率η
はθ
eと最大回転角θ
uを用いて式(4.14)のように定義され ている。0
3
p e
θ M L
= EI (4.13)
/ 1
u e
η θ θ = − (4.14)
ここで
L
0は片持ち梁のスパン(
シアースパン)
,M
pは全塑性モーメントである。地震 時の曲げモーメント分布は時々刻々変化するため,L0を正確に定義することは難しい。既往の研究19)にならって,部材中央に発生するヒンジは,
L
0に当該位置の部材長の1/2
を用い,部材端に発生するヒンジは,L
0に当該位置の部材長を用いる。前述のように,塑性回転角は自由境界辺に近い部材では部材座標系
y
軸周りの塑性回 転角θ
ypだけでなくz
軸周りの塑性回転角θ
zpも発生するものの,全体的にθ
zpに較べてθ
ypが大きいことから,θypについて評価を行う。②-1
P1
の累積塑性回転角の評価津田らの一定軸力と変動水平力を受ける円形鋼管柱の実験による研究 33)では,繰返 し載荷による正側(片側)の累積回転角と曲げモーメントの関係が単調載荷の荷重変位 関係と比較的よく対応することが示され,さらに,変形能力が次式(4.15)で提案されて いる。ここで
η
95は最大耐力M
max後の0.95M
maxに対応する塑性変形能力である。( ) ( )
2 1
95
0.00247 0.572 2.4
y
η β β
β D t σ E
− −
= + −
=
(4.15)
P1
部材は両端をピン支持点となる部材であり,軸力が発生せず,曲げモーメントが94
繰返し作用するため,式
(4.15)
を用いて評価を行う。P1
の最大塑性回転角はθ
yp=0.030rad
となり累積塑性回転角Σθ
yp=0.129rad
となる。また,式(4.13)から計算する降伏回転角θ
e は1.00x10
-2rad
,式(4.15)
からη
95=10.18
となる。ここで,解析による累積塑性回転角Σθ
yp は正側と負側の塑性回転角を合わせた値であり,片側の累積塑性回転角を略算的に0.129/2=0.0645
とすれば,応答による塑性変形倍率η
は6.5
程度となり,式(4.15)の塑性変形能力を満足する。ただし,本解析法では歪み硬化の影響や曲げモーメントによる局 部座屈の進行は考慮されていないので,繰り返し載荷により局部座屈域が広がりや,こ れに伴う耐力低下についてのより正確な応答の分析は、今後の課題としたい。
前述のように部材
P1
は軸力が作用しておらず,当該部材の耐力低下によるラチスシ ェルの崩壊に影響は少ないと考えられる。このことから,以下では,P1
を除いて最も累 積塑性回転角が大きいP2
の塑性回転角の評価を行う。②
-2 P2
の塑性回転角の評価P2
の塑性回転角は,N/N
yが0.9
程度で塑性化が起きた後に,塑性回転角が増大する。当該部材は履歴のサイクル数は少なく,累積塑性回転角と最大塑性回転角は大きく変わ らないものの,ここでは,軸力比が極めて大きいことから,歪集中を考慮し,累積塑性 回転角に注目する。
鋼構造限界状態設計指針36)の冷間成形円形鋼管の幅厚比区分では,塑性変形倍率
η
の 値を最大値で4
と規定している。このためη =1,2,3,4
に対応する限界塑性回転角θcrypを式(4.16)
により求め,η に対応する限界地震動強さλ
crEを線形補間により調べる。解析では両端ばねモデルを用いて,塑性回転角を求める。ここで,降伏回転角
θ
eは式(4.13)より,θ
e=0.897x10
-2rad
となる。図4.25
に,P2
における累積塑性回転角Σθ
ypと全節点で最大の 鉛直変位δ,および Σθ
ypとλ
Eの関係を示す。また,λ
crEを表4.9
に示す。η=4
としたと き,λ
crEの平均値は5.14
となる。限界塑性率をη=4
としたとき,平均的には安全限界相 当の地震動に耐えることとなる。なお,当該構造物の鋼管の管厚比区分はP-I-2
相当で あるため,η=2
で評価すれば,地震動強さλ
E=4
程度に耐えることとなる。cr
yp e
θ
=ηθ (4.16)
95
図 4.25 P2の累積塑性回転角